The Lord of the Rings: Weapons and Warfare : An Illustrated Guide to the Battles, Armies and Armor of Middle-Earth
![]() | The Lord of the Rings: Weapons and Warfare : An Illustrated Guide to the Battles, Armies and Armor of Middle-Earth Chris Smith Houghton Mifflin (P) 2003-11-01 by G-Tools |
「ロード・オブ・ザ・リング」三部作は、どの場面を切り取ってみても、美術・デザインの素晴らしい映画である。CGや大がかりなセットだけではなく、ほんの一瞬しか映らないような細かな物も、詳細な設定と共に極めて精巧に作り上げられていて、「どうせ見えないんだからこのぐらいで良いでしょ」的な手抜きが微塵も感じられないのは本当に尊敬に値すると思う。こういう作り手の誠意や隙の無さは、自然と表に滲み出てくるものだが、この映画の全体的な画面の締まりの良さなども、多くの職人が精魂込めてコツコツと細部を積み重ねたという事実があったればこそだと思う。
さて、本書は映画「ロード・オブ・ザ・リング」三部作に登場する武器・甲冑その他、戦闘関係の資料集である。文字ぎっしり、写真・イラストたっぷりの超充実の1冊で、(一部で)「武器本」とも呼ばれている。基本的には、各種族ごと、各登場人物ごとに項目が分かれていて、それぞれの剣、弓、甲冑などの詳細な解説がついている。武器といえど、ほとんど美術工芸品といってもいいぐらい美しいものが多く、特に細部の装飾などは惚れ惚れしてしまう。
ところで、美術・デザイン関係に特化した本としては「ロード・オブ・ザ・リング・アートブック」他2冊が出版されている。にも関わらず、わざわざ武器・甲冑・戦闘という極めて狭い分野をフィーチャーした資料集として、アートブックシリーズから独立した形で出版されるあたり、本書はこの映画の凝り性ぶりをを象徴するような本でもあるだろう。まぁ、単にPJとリチャード・テイラー(Wetaディレクター)というNZきってのオタクの愛がやや偏った方面に注がれた結果だ、という見方もできるのだが。何しろ普通に考えたら、「武器本」が出版されるのに「衣装本」が出ないというのもかなり摩訶不思議な現象なわけで、これは戦闘オタクPJの偏愛のなせる業なんだろうか、などとも思ってしまうのである(衣装はちょこちょこアートブックシリーズに収録されているけど、個人的にはちょっと物足りないので独立した「衣装本」を出して欲しい)。
個人的に一番おかしかったというか、「ここまでやるか?!」と思ったのが、「Range Weapon Comparative Chart Maximum Effective Distance (Yards)」なるページ。これは何かというと、主に各種族の弓矢の有効射程距離(マックス)をチャート(表)にしたもので、例えばモルドールのオークの矢は100ヤード、ゴンドールの矢は200ヤード、エルフの矢は350ヤード、レゴラスのロスロリアンの矢は400ヤード飛ばせる等々、きちんと「設定として決まっている」のである。おそらく、弓の太さとか長さとか形状によって、理論的に「○○ヤードまで飛ばせる」ということをちゃんと考証してあるんだろう。全くご苦労なことだと思う。
ちなみにかなり余談だけど、アラゴルンが持ち歩いてる弓矢は戦闘用というよりも狩猟用で、殺傷能力的にはイマイチらしい。矢が短くて完全に引き絞れないため75ヤードしか飛ばない、という記述もある。従って、FotRのモリアのシーンで彼が弓を構えた時に見せたへっぴり腰は(へタレてるとか悪口をいわれてたけれど)、それなりに説得力があるのかなと思ったりして(←考えすぎですか)。
あと非常に重宝するのが、主要な戦いの解説付きプラン(地図)。例えば、「ゴンドールの包囲&ペレンノール野の戦い」の場合、この地図を見るとどこからロヒアリムが救援にやってきて、どこから海賊船が上陸したかとかが一目瞭然なんである。「指輪物語」関係の地図は他にも数種類出版されているけど、完全映画設定の戦闘プランというのは珍しいと思うので、映画を見てて東西南北が分からなくなるという人(私のことだ)にはとても良い。
邦訳は今のところ無し。
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