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2005年2月26日 (土)

[映画]ビフォア・サンセット

★★★★★、、、★★★★☆+かな。万人向けではありません。

「恋人までの距離(ディスタンス)」(1995)(原題: Before Sunrise)の続編。

「恋人までの距離(ディスタンス)」はとても優れた恋愛映画だと思う。ベルリン国際映画祭で銀熊賞(監督賞)を取ってるし、イーサン・ホークとジュリー・デルピー主演なのに、なんで日本ではこんなに不遇なんだろうか。カルトな恋愛映画といえば聞こえは良いけど、要はマイナーということだ。国内でDVD化されてないので、しょうがなくUS版を所有しているけど、リスニング量が膨大なんだ、この映画。。。

↓「Before Sunrise」US版DVD

Before Sunrise
Ethan Hawke,  Julie Delpy,  Richard Linklater
Castle Rock 2001-11-06


by G-Tools

「恋人までの距離」は、ハンガリーからパリに帰るフランス人女性セリーヌと、ウィーンから飛行機に乗って帰国予定のアメリカ人青年ジェシーが、ユーロトレインの中で出会うところから始まる。意気投合した2人は、ウィーンで1日を共に過ごす。
旅という非日常の中で恋が芽生える過程を描いた作品で、たった1日の恋愛模様ををドキュメンタリータッチで追いかけている。特殊な仕掛けもプロットも無く、極論すれば、2人の会話のみで成立している映画。だけど、恋が生まれる瞬間というのを、これほどリアルに、丁寧に、繊細に表現している作品は他に見当たらない。
セリーヌは、議論好きでだけどギスギスしてなくて、ナチュラルな魅力に溢れたパリジェンヌ。ジェシーは、ナイーブで感受性豊かな文系君(イーサン・ホークはこの手の役がホント上手い)。セリーヌもジェシーもとにかくよく喋るキャラクターで、ほぼ全編、恋愛、人生、思想、その場で見聞きしたことなどについてひたすら言葉を積み上げる。2人が話す内容は時には青く、頭でっかちかもしれないけれど、若者らしく純粋で、キラキラと輝いている。セリーヌもジェシーもともに頭が良くて感性が鋭く、何というか、相性抜群な2人なのだ。脚本の妙と、ジュリー、イーサンの演技力が生み出す類稀なケミストリーのおかげだろう、恋愛映画としての説得力はとにかく群を抜いている。

「ビフォア・サンセット」も、基本的には前作と同じスタイルを踏襲しており、主役2人の喋り倒し映画になっている。恋愛映画の舞台としてはこれ以上のものは無いであろうパリの風景ですら、2人の怒涛の会話の前には影が薄い(そういう意味では、「ロスト・イン・トランスレーション」で「東京」が重要な役割を担っていたのとはかなり趣が異なる)。とにかく脚本がよく練られていて素晴らしく、2人の演技もとても自然で、アドリブのようなテンポの良さもある。
ただし、「ビフォア・サンセット」は、普通の(ハリウッド的)恋愛映画を期待する人には勧めない。それから、この映画自体が「恋人たちの距離」のネタバレになっているので、前作のその後を想像して楽しみたい人はきっちり封印すべし、である。


以下「恋人までの距離」「ビフォア・サンセット」ネタバレ







「恋人までの距離」のラストで、セリーヌとジェシーは、半年後にウィーンで再会することを約束する。物語はそこで終わり、2人が再会したのか否かは、見る人の想像力に委ねられている。「言わぬが花」というわけで、とても余韻のあるラストシーンだった。

「ビフォア・サンセット」では、「恋人までの距離」から2人の再会叶わぬまま、9年が経過している。
ジェシーは売れっ子の小説家になり、9年前の「あの日」をモデルにした小説のキャンペーンでパリを訪れていた。書店のイベントで、記者を前に自作について語るジェシー。
「この女性は実在するのですか?」
「ここはパリで、キャンペーンの最終日だから、“イエス”と答えておきましょう」
「2人はその後再会したのですか?」
「祖父の言葉で代えれば、それを言ってしまったら全てがおじゃんになる、です」
そう答えるジェシーは、ふと、店の隅にセリーヌの姿を認めて息をのむ。ジェシーの帰国までの時間は、わずかに1時間半しかない…。

ジェシーの出発までを、81分間の上映時間の中で、ほぼ完全にリアルタイムで追いかけていく。
2人は思いがけない再会を喜ぶ一方で、9年前の「あの日」は相手にとって何だったのか、相手が約束の日にどうしていたのか、さらには「今」のお互いの気持ちを探り合う。ズバリ訊きたくても訊けなくて、ついつい当たり障りの無い話題を振ってみたりと、核心に向けてじれったくも緊張感溢れるやりとりが展開するのだが、この辺の腹の探り合い(言葉が悪いなー)の描写と、会話の背後に透けて見える心理描写は実に見事。

「ビフォア・サンセット」は2人が年を取った分、「恋人までの距離」よりもよりリアルな内容だ。恋愛映画としては、前作の方が夢があったしロマンティックだった、とも思う。ジェシーは既に結婚して子供もいるけれど、夫婦仲は冷え切っているし、セリーヌはこれまでの恋愛で傷つき、現在恋人がいるものの相手のことを切実に欲しているわけではない。30歳を過ぎて厳しい現実に直面している彼らがほんの束の間寄り添う姿から感じるのは、甘さよりも切なさや苦さだ。その切なさたるや、まるで、心臓を雑巾絞りされるような感じすらある。

大人になってしまった2人はこの後、どういう選択をするのだろうか?うーん、何とか幸せになってくれませんかね、この2人。

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コメント

風邪でしたか!
でももう大丈夫そうですね?更新記事がどーんと増えてますし(^^)
ここ数日は驚くほど暖かいかと思うといきなり雪が降ってみたり、三寒四温とはよく言ったものです。あとちょっとで本当に春になるのでなんとか風邪ひきもインフルエンザもなしで乗り切りたいです。

さて「ビフォア・サンセット」。地味そうな作品ですけど、映画方面にそれほどアンテナをはっていない私の視界にもちらちらと作品評などが入っきます。映画”通”には注目作品なのではないでしょうか?

投稿: gyoku-to | 2005年2月27日 (日) 13:40

さすがに体力は消耗してますけど、風邪に効く食べ物をいっぱい食べて、なんとか大丈夫です(^^)。皆様も風邪やインフルエンザにはお気をつけ下さい。

「ビフォア・サンセット」、いかにも低予算系の、でもwell-madeな映画でした。well-madeといっても、本当に会話しかないんですけどね(^^;)。
「恋人までの距離(ディスタンス)」を見て気に入られた方、普通とは違う恋愛映画を見たいという方にはお勧めです。山椒は小粒でピリリと辛い、そんな感じ(どんな感じだ?)。

投稿: 青猫 | 2005年2月28日 (月) 00:32

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95'のアメリカ映画です。 イーサン・ホークと、ジュリー・デルピー主演です。 ア [続きを読む]

受信: 2005年3月24日 (木) 01:57

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