[映画]トレインスポッティング DTSスペシャル・エディション①
トレインスポッティング DTSスペシャル・エディション 〈初回限定生産〉 ユアン・マクレガー アーヴィン・ウエルシュ ダニー・ボイル 角川エンタテインメント 2005-03-11 by G-Tools |
★★★★★
<ストーリー>
舞台はスコットランド・エディンバラ。
ヘロイン中毒のマーク・レントン(ユアン・マクレガー)は、失業手当を貰いながら仲間とドラッグ浸りの毎日を過ごしている。時には禁ヤクを決意しても、結局はまた再開の繰り返し。彼らの悲惨な日常は、押しつぶされそうな閉塞感の中、悪化の一途を辿っていく。それでもレントンは、何とか荒んだ状況から抜け出ようと試みるのだが・・・。
ネタバレ無し感想。
久々に★5つ。極めて主観的に。まぁ、★なんていつでも主観的なものではあるけれど。
今まで、レンタルビデオ屋で何度も手に取りながら、何度も棚に戻し続けること数年。スコットランドのドラッグ中毒の若者達を描いた衝撃作なんて聞いて、ドラッグ問題だけでもへヴィーなのに、よりによってスコットランドかよ…と、それはもうジメついた、地を這うような重苦しい映画を想像した私は、「よほど元気な時じゃないとダメだな」と借りるタイミングを逃し続けてきた。食わず嫌いは、ホントいかんね。
決して万人向けの作品ではないし、生理的に受け付けないという人も結構な割合でいるような気がする。私も家族にこのDVDを貸そうという気にはならないし、ごく真っ当な感性の持ち主、いわゆる良識的な人にはちょっと薦めにくい。
私自身、これを公開時(1996年)に見ても果たして「イイ!」と思ったかどうか。当時は今より人間が練れていなかった、というかスレてなかったので、仮に見たとしても彼らの無軌道ぶりに眉を顰めるだけだったかもしれない。だけど、9年の間に(?)着々とスレてしまった今の私には、まさにドンピシャな作品だった。
別にドラッグに溺れる彼らに共感するわけではないけれど、「理解できない」と完全に斬って捨ててしまえるほど、私はできた人間でもおキレイな人間でもないし、昔よりも、自分のダメっぷりも含め、ある程度人間の弱さを直視できるようになったということかもしれない。もちろん、こういうものを「理解できない」「許しがたい」という人がいるということは理解できるし、そう思えるのは実に健康的で幸せなことだと思う。決して嫌味などではなく。
しかし、まさかこういうテイストだったとは思わなかった。イギリス映画というと、派手さとは無縁、淡々としてて、内容も映像も暗めというイメージが強かったけれど、「トレスポ」は「地を這う重苦しさ」どころか、爽快感すら感じさせるテンポの良さと色彩豊かで明るい映像、時代を映すキャッチーなブリティッシュ・ロック等々の見事な融合によって、まごうことなきエンターテイメント作品に仕上がっている。「オシャレ系映画」などとも呼ばれ、レビューなどにひたすら「カッコいい」「クール」という形容詞が踊るのを見ると、「決してそれだけじゃないでしょ」といいたくなるけれど、確かに編集や選曲の驚くほどの上手さは、そういった要素だけが取り沙汰されるのも分からないではないほど、群を抜いたセンスの良さを感じさせる。
実際には、(映像のおかげで随分小綺麗には見せているとはいえ)ご飯時には見たくないようなエグくて下品な描写は随所にあるし、登場人物たちはカッコいいどころか、ほぼもれなく「コイツら本当に救い難いな・・・」という自堕落なダメ人間たち。「人間さしたる理由も無くここまで墜ちてはいかん」という見本みたいな連中だったりする。そして、漂うのは倦怠感と無気力、閉塞感、絶望感、飢餓感、孤独感。これを単にカッコいいとかオシャレだという言葉で片付けてしまうことが可能なのは、所詮はドラッグやエイズは他人事という日本人の平和ボケした感性の為せる業だと思うのだが(実際に他人事かどうかは怪しい気もするけど)。
しかし、かくいう私も、「トレスポは90年代最高の青春映画」という評を見て、「青春映画」の部分に違和感を覚えるのだから、五十歩百歩ではある。「青春映画」っていうのはもうちょっとこう、デリカシーがあって、瑞々しく切ないものなんじゃないだろうかね、と思わずにいられないのは、とりもなおさず、私の青春がそれなりにまともで、「トレスポ」のような「青春」とは縁が無かったということなのだろうから。
さて、相変わらず長くなってるけれど、次回は(多分)ネタバレでレントン@ユアンについて。
<オマケ>
英語について。これ、ゴリゴリのスコティッシュ・アクセントである。スコティッシュ・アクセントってどんなの?って訊かれたらこれを見せれば良いってくらい、ゴリゴリである。何しろ、アメリカ公開時には英語字幕が付いたっていうんだから、すごい。むかーし、エディンバラの英語を初めて聞いた時は本っ当に何一つ分からなくてそりゃショックだったけれど、この映画のロバート・カーライルもとんでもなく強烈である(共演者も全部は分からなかった、という話があるくらい)。リスニングに自信のある方は是非挑戦されたし。
まぁ、ロバート・カーライルはともかく、スコティッシュのイントネーションというかリズムはなかなか独特で面白い。なお、ここまでバリバリのスコティッシュ・アクセントのユアンも最近では珍しいような気がするので、結構貴重かも。
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コメント
やっと見ましたー。私もこの手のは避けてましたが、評判いいので見てみるか、と覚悟を決めて臨みましたが・・・思ったほど暗くなかったし、なるほどよくできてます。やはりユアンはドラマやってるほうが好きです。この数年「ソプラノ」とかのかなりえぐいギャングスター物見てたせいか、それほどショックではなかった。あれもよくできてるけど、もっと残酷です。10年前はイギリス系英語は全然だめだったけど、さすがに今は大丈夫ときた。(笑)最近見たイギリス物ではビリー・エリオットが好きでした。この映画も相当なまってましたが。
投稿: misao | 2005年9月27日 (火) 23:25
そう、トレスポって「よくできてる」って感じですよね。ユアンの演技もとても良くて、いまだに「トレスポのユアン」とか「トレスポ以来の名演技」とかいわれてしまうのがよく分かります。
ビリー・エリオットというと「リトル・ダンサー」でしょうか。いかにもイギリスらしい映画でしたね。私はバレエが好きなんですけれど、バレエで頑張る男の子好感度高く描いてるなぁと思いました。
「ソプラノ」は見たことないです。レンタル屋さんにあるかな?
投稿: 青猫 | 2005年9月28日 (水) 19:14