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2006年2月 2日 (木)

ちょっとロンドン3日目 その3

結局、Tate Modernはどの地下鉄駅からも均等に遠く、Southwark駅とBlackfriars駅とどちらが最寄駅なのか微妙。とりあえず、南方のSouthwark駅は明らかに道がごちゃついてて不安だったこともあり、高校生の集団がゾロゾロと北に向かって歩いていくのに何となくくっついていってしまった。ちょっと考え無しか。それでも、建物の後ろ側(テムズ川側)に回ってMillennium Bridge(ミレニアム橋)を渡り、無事Blackfriars駅まで出られた。そこから地下鉄でPiccadilly Circusに移動して、Piccadilly Theatre(ピカデリー・シアター)へ。

Guysanddolls1
ここは夜のネオンが素敵。

受付で無事チケットを受け取った後は、いったん外に出た。前日のHer Majesty's theatreといい、ここといい、劇場内で何かをしようにもロビーはとにかく狭いし、飲み食いをするような場所も無い(休憩時間なんかはバーが利用できるのかな)。
近くのホテルの中のお店で軽く燃料補給をしてから、劇場に戻ってプログラムとか舞台写真集などを買ってみる。ファントムもそうだったけれど、プログラム(俳優プロフィールが中心)と舞台写真集が分冊で、どうせなら一冊にまとめて欲しいところ。ただ、舞台写真集は初日が開かないことには話にならない(写真が撮れない)だろうから仕方が無いんだろうけれど。
ぷらーっとしてたら、日本人の女性に声をかけられてしばし歓談タイムとなった。今回、孤独を感じるような長さの旅では全く無かったのだが、思わぬところでユアン談義ができて大変楽しく、開演に向けていやでもボルテージが上がる。彼女は複数回「Guys and Dolls」観劇予定だそうで(「レ・ミゼラブル」「Billy Elliot」も見たそうだ)、なんかすごく羨ましい。
場内は赤を基調にしており、いかにもミュージカルらしい華やぎのある劇場である。客席の雰囲気も、ファントムよりも良かった気がする。っていうか、ファントムは全体的にお客のマナーが悪かったんだよな。。。
席は一階席の後方でまずまずセンターに近く、角度的には問題無し。もう少し舞台に近ければなーとは思ったけれど、チケットを取れてこの場に来られただけでも良しとしなくては。

さて、いよいよGuys and Dolls開演。

舞台は1930~40年代ニューヨークの下町。サイコロ賭博師のネイサン・デトロイト(Douglas Hodge)は、凄腕の賭博師スカイ・マスターソン(Ewan Mcgregor)に「スカイは、次に出会った女性を自分に恋させることができるか」という賭をしかける。自信たっぷりのスカイだったが、ネイサンが指差した女性はサラ・ブラウン(Jenna Russell)、救世軍の堅物軍曹だった。

いやー、楽しかった!
ストーリーは4人の男女のラブコメでどうということもないんだけれど、コメディ色が強く、笑うシーンが多くてすごく楽しめた。時々笑いに、というか英語についていけなくてかなり切なかったけれど。

実をいえば、チケットを押さえてからずっと私の頭を離れなかったのは、ユアンがお休みをしやしないか、ということだった。何せ週に8公演だし、長丁場の終盤だから疲労もピークに達しているだろうし、冬場だから風邪とか喉まわりの不調なんかも心配だった。何しろ、私は今までに芝居やバレエで代役にあたったことが複数回あるし、例えば一ヶ月の公演であれば、楽日が近いと役者の喉が半潰れなんていうのはよくあること。なので、ある程度の覚悟はして行ったのだが、ロビーにはキャスト変更のお知らせもなくてまずは一安心、実際にユアンが舞台に登場した時には心底ホッとしたものである。ちなみに、このユアン初登場シーンでは、後方で「ひーっ」と盛大に息を呑んでるお姉さん方がいたけれど、まぁ気持ちは分からないではない。

なお、ここんとこオビ=ワンとLWRばかり見てたので、ヒゲの無いつるっとした顔のユアンはちょっと新鮮だった。あと、やっぱり舞台は重労働ということなのか、思ったよりもずっと細身に見えてそれもちょっと驚き。それにしても、出てきた瞬間に「ほわぁぁぁ…」とハートを飛ばす代わりに「あー、やっぱ猫背だよ…」などと思ってしまう私は本当にファンなのか。まぁそれでも、「こうして改めて見ると、すごく整った顔してるよなぁ」と感心したりもしたのだけれど。

ユアンのスカイ・マスターソンは映画版のマーロン・ブランドのそれとは全然違ってて、ちゃんとユアンなりのスカイになっていた。マーロン・ブランドのスカイはすごく斜に構えてて、ちょっとヤバ目な色気がたぷたぷしている感じだったけれど、ユアンの方はもう少し爽やかというか、危険度低めな感じというか。普段のやんちゃな可愛いさはやや控え目で、胡散くさ過ぎることのない適度な非堅気っぷりがなかなか良く、ハンサム度も割と高かった気がする。うーん、さすがにちょっと落ち着いたというか、大人になったのか?
ユアンは役によって結構声を変えるけれど、今回はやや低めに押さえたような感じで、なおかつニューヨーク訛りなので普段と雰囲気が全然違った。あえていえばベルベット・ゴールドマインのカートのような少しざらっとした声で、ちょっと悪い感じを出していた(んだと思う。喉の問題ではないと思うのだが)。
ユアンの歌は確かに線が細いといえば細いけれど、音程がびたーっと合っていたのには感心した。まぁ、LWRでギター片手にちょろっと歌っているのを見るだけでも、ものすごく音感があるということは分かるのだけれど。クリスチャンの時よりも低い方がよりしっかりしてたような気がするけれど、高い方もばっちりで、やっぱり伸びがある。スカイの最大の見せ場である「Luck Be A Lady」のラスト、キメの高音は「え、そこまで出るの?」って感じで、場内も相当盛り上がってた。
事前にユアンの出番が少ないということをきいていたのだが、確かに出ずっぱりという感じではなかった。まぁ、映画の通りといえば映画の通りだったので特に不満は無いのだけれど。

そういう意味では、このGuys and Dollsは「ハリウッドスター・ユアンの一人舞台」では全くなくて、主役はあくまでも4人。特にGuysよりもDollsの方が歌もダンスも見せ場が多くて、その分インパクトがあった。しかも、ネイサンが役作りなのか、常にトホホな雰囲気を漂わせており、その分Dollsのパワフルさが際立ったというか。
女性陣は、サラ・ブラウン役のJenna Russell、アデレイド役のJane Krakowski共々、抜群に歌が上手く、思わず「さすが本場…」と唸ってしまった。ビクともしない揺ぎ無い音程に、表情豊かで緩急自在な歌いっぷりで、音楽の彫が非常に深い。特にアデレードのナンバー(「Adelaide's Lament」だったかな)は、字余りというかメロディに対して歌詞がギュウギュウづめの難曲だけど、それを見事に歌いこなしていた。なおかつダンスシーンではコケティッシュな魅力も振りまきまくり、まさにエンターテイナーという感じ。いや、すごかったです。

個人的な印象としては、ユアンはやっぱり映画で一番輝く人だと思うのだが、このメンツに混じってさほど見劣りしないというのは本当に立派だと思う。それに、いわゆる舞台人のオーラとはちょっと違うけれど、やっぱりスターらしい華があって魅力的。何より、あれだけ歌って踊ってくれたら、ファンは文句無いでしょう。

宿に帰っても興奮冷めやらず、1回しか見られないことや次の日に帰らなくてはいけないのがなんとも悲しく、その晩は全然眠れなかったのであった。完全に帰国時鬱発症である。

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コメント

テムズ南岸は未知の世界です。
行った気分になれます。
青猫さんにロンドン・劇場系エンターテイメントの案内をしていただきたいなぁ、と思うパインツリーなのでした。映画館は経験済みですが、劇場はおっかない先入観があり近づけません(^^;)

嗚呼、倫敦にいきたくなってしまった~!

投稿: パインツリー | 2006年2月 4日 (土) 14:10

テムズ南岸はTate Modern以外は行ってないのでよく分かりませんが、Tate開館以来、再開発されていろいろ変わりつつあるそうですね。

ロンドンの劇場は楽しいです(^^)。日本の劇場は、大体どこも綺麗で新しくて近代的ですが、ロンドンの劇場には芝居小屋らしい雰囲気があって良いです。
今回二劇場のみですが、別におっかないことは何もなかったですよ。ミュージカルなので大衆的とはいいつつも、客層は総じて上品な感じだったように思います。Guys~では、お隣がとても素敵な老紳士とレディのカップルで、それがちょっと印象的でした。
これが小劇場の実験的な演目だったりすると、また雰囲気が変わるかもしれないですね。英語的にもハードルが高いし(^^;)。

次こそは、ロイヤル・オペラハウス!と新たな野望を燃やす私です。

投稿: 青猫 | 2006年2月 4日 (土) 15:26

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