Brokeback Mountain
Brokeback Mountain Annie Proulx Scribner 2005-11 by G-Tools |
ネタバレ無し。
総語数86000ではなく、8600です、念のため。55ページの短編で、ほとんどGRのような体裁の本である。
甚だ乱暴な物言いであることを承知で言ってしまえば、自由の国であるはずのアメリカは、その実大変保守的な国だと思う。そして、極めてマッチョ志向が強い。
カウボーイとは、マッチョの一つの典型なんだと思う。そのカウボーイが、アメリカの中でもとりわけ保守的な土地(ワイオミング)で、異性ではなく同性の「唯一無二の存在」に出会ってしまったとしたら・・・。
ちょっと英語に難儀しながら読んだのだが、淡々とした語り口の中にも強く訴えかけてくるものがあってあとを引く。軽々しい言葉を拒むような雰囲気もあり、少なくとも「純愛」という安易な言葉はふさわしくない。日本ではこれから映画が公開されるから、色々と話題に上るんだろうけれど、「ゲイのカウボーイの純愛」なんて薄っぺらい言葉で紹介されるのかと思うと、ちょっとやりきれないような哀しいような。いや、映画見てないから分からないんだけど。
ホモ・フォビア(homophobia=同性愛嫌悪、同性愛恐怖)という言葉があるけれど、同性愛者であるというだけでリンチ・殺人の対象になることがあるアメリカ。都市部と農村部では随分違うだろうけれど、同性愛に対する嫌悪、というか憎悪は、実のところ日本よりもずっと強いようで、キリスト教的宗教倫理に関わるだけに非常に根深いものがあるようだ。ちょっと前にヒラリー・スワンク主演の「ボーイズ・ドント・クライ」という、実話を元にした映画が話題になったが、モデルとなった事件が起きたのは1993年、決して大昔の出来事ではないのだ。
「Brokeback Mountain」の設定はさらに保守的であったであろう1960年代。なんかちょっと想像を絶するものがある。
とかなんとか、いろいろと思うところもあり、何よりもよく理解できないところがあったので、もう一回読み直すつもり。今度は朗読とともに。Audiblでも扱い有り。
Brokeback Mountain Annie Proulx Campbell Scott Simon & Schuster (a) 2005-11-15 by G-Tools |
書籍はこんなのもあり。映画の脚本付きだから、お得かもしれない。
Brokeback Mountain: Story to Screenplay Annie Proulx Larry McMurtry Diana Ossana Scribner Paperback Fiction 2005-12-27 by G-Tools |
映画「ブロークバック・マウンテン」は、2006年3月4日(土)公開。
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コメント
お久しぶりです。この原作ってそんなに薄いんですか?じゃあ読もうかしら。こないだマイケル・クライトンの‘Time Line’読みましたが時間がかかってしかたなかった。面白かったですけどね。(長い、といえばThe Load Of Ringsほどのこともありませんが)
とにかく映画は良く出来ていました。時々アップが辛い(笑)、という以外は切ない映画でした。これがオスカー取れたらたいしたものですが、審査員は保守的だしなあ。
投稿: misao | 2006年2月25日 (土) 03:21
Brokeback Mountain、薄い上に字も大きいです。日常的に英語を読まれる方だったら、30分~1時間というところではないでしょうか。
映画、ご覧になったのですね。私も3月公開早々に見に行きたいと思ってます。
そういえば、アカデミーも近付いてきましたね。Brokeback…の対抗馬はミュンヘンという話もききましたが、もしこの二択だとしたら保守系にとったら究極の選択じみているような気がきます(^^;)。もちろん、保守系にも色々な立場があるでしょうけどね。
投稿: 青猫 | 2006年2月25日 (土) 22:35