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2006年3月25日 (土)

ツィメルマン ショパンのピアノ協奏曲第1番聴き比べ #2

②キリル・コンドラシン+アムステルダム・コンセルトヘボウ版(1979) ライヴ録音
私が持ってる音源はコレ。

B00002DEH7Chopin: Piano Concertos; Works for Piano & Orchestra
Fryderyk Chopin Carlo Maria Giulini Eliahu Inbal
Deutsche Grammophon 1999-11-09

by G-Tools

基本的に①のジュリーニ版(以下G版)と音楽的な方向性はほとんど変わらない。ただし、こちらの方がいかにもライヴらしくて、ミスタッチがあったり、会場の雑音が若干入ってたりと、生(なま)な雰囲気が強い。録音はちょっと残響が多いかな。

ツィメルマンの演奏は、G版同様、瑞々しくリリカルでいかにもショパンらしい正統的な感じだけれど、かっちり感は若干薄れている。
実は、このコンドラシン版(以下K版)の一番大きな特色は、ツィメルマンのノリの良さ。なんかあったのか?というくらい、ノリノリで弾いている。コンドラシンのせいなのかな。

なんというかなぁ、普段はいくら飲んでも顔色一つ変えず脳ミソも呂律も足元も全く乱れない、何があっても酔っ払わない酒豪が、今日の宴会ではいつもよりちょっとだけご機嫌麗しくて快調だぞって感じである(どーゆー例えだ…)。

要するに、K版は、G版よりもロマン派風味がやや強めなんである。決して自分に酔って冷静さを欠いているというわけではなく、良い具合にテンション高めというところだろうか。
G版もよくよく聴けばしっかりロマン派してるけれど、K版はよくよく聴かなくても、ストイシズムの中からなみなみと溢れ出てくる何とやら(甘さとかロマンとか叙情とか情熱とかその他色々)って感じで、しかもその溢れ出方が恣意的でも作為的でもなくて、素のツィメルマンって感じなのが何とも素敵ですよ。

それにしても、これ、テンポ速くないか。ぱっと聴いた限りでも、明らかにG版より速い。
演奏時間を比較すると明白。

G版
第一楽章 20:04
第二楽章 10:40
第三楽章 9:44

K版
第一楽章 19:21
第二楽章 10:05
第三楽章 9:44(拍手入りなので、実質9:20を切ってる)

まぁそれでも、一楽章はツィメルマン的にはどってことない。軽々。
ちょっとどうしちゃったのよ?っていうのは、三楽章である。テンポの緩急や、強弱の付け方なんかもG版よりも振幅が大きいのは良いとして(特に上昇音型の加速がキレっキレで、三楽章冒頭はすごく鮮やか)、後半に向けて結構突っ走ってるのがなんとも意外。なんかツィメルマンにしては珍しく、かなり一生懸命(ってか必死に?)弾いてるような気配がある(それともライヴはいつもこんなもんなんだろうか)。でも、コンドラシンの煽りを真っ向から受けて立つだけではなく、がっちり主導権を握って、ラストに向けてぐいぐいと前に進んでいく感じはとてつもなくカッコ良い。しかもオケともびったり合ってて見事。
お客さんも、オケの演奏が終わらないうちからフライング拍手&ブラボーである。

もしかして、これの単品が廃盤になってるのって、ノリノリに飛ばしてるのを本人が「若気の至り」とか思って再販拒否してるとかだったりして…。私はすごく面白いと思うんだけどなぁ。

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