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2006年3月

2006年3月29日 (水)

[映画]ブロークバック・マウンテン その2

まだネタバレ無し。

やっぱりこの話は、「カウボーイ」というのが鍵なわけ。

世の中には、ゲイであることがある程度容認されるであろう職業や社会的グループがある。例えば芸術家の類。デザイナーなんかもそうだろう(多分)。その一方で、カウボーイというのは、おそらくは一番ゲイであることを許容されない人種なんじゃないかと思う。何しろカウボーイは、西部開拓時代以来、「フロンティア精神」と伝統的な「男らしさ」の象徴で、保守的なアメリカ人男性のアイコン的存在、ある種の理想的男性像であるのだから。そんなわけで、観念上、カウボーイとゲイが相容れないものであるのは当然っちゃ当然。

だから、「ゲイのカウボーイ」という題材は、日本人が想像する以上に(一部の)アメリカ人にとってはショッキングなんだろうと思う。

それから、「ブロークバック・マウンテン」の舞台がアメリカの保守的な片田舎(ワイオミング)であるということの意味をよくよく分かってないと、この話のどうしようもない哀しさは全く伝わってこないんじゃないだろうか。

少し話が飛ぶようではあるけれど、思い出されるのは先のアメリカ大統領選挙である。当時、日本では、対テロ、イラク戦争が大統領選の最大の争点であるかのように報道されていた。もちろんそれは正しい。しかし、在米の複数の知人友人らの話を総合すると(受け売りで申し訳無いのだが)、どうも影の、というか真の争点はイラクでもテロでもなく、同性愛婚や妊娠中絶の是非-要するにキリスト教的な倫理(モラル)の問題-にあったようなのである(もちろん、こういう見方も事実の一面を捉えているに過ぎないのだろうけれど、イラクにせよ同性愛・中絶にせよ、結局のところキリスト教に帰結してしまう問題であるあたり「なんだかなぁ」ではある)。とりわけ、ブッシュの強力な支持層である中西部(ワイオミングも中西部に入る)の、キリスト教的に保守的な層にとってみれば、同性愛婚や中絶を公的に認めようとするケリー及び民主党の姿勢はまさに悪魔の所業であり、到底容認することができない、そういうことであったらしい。
これが2004年のお話。

日本の田舎の凄まじさといえば横溝正史だが、アメリカはアメリカで、全く別種の田舎の凄まじさがあるということである。

一見、技術的にも思想的にも世界の最先端を突っ走っているかのように見えるアメリカは、その一方ではまるで中世ヨーロッパを彷彿とさせる、頑迷な保守層を内包している国であり、むしろそういった保守層こそが「アメリカの主流」なのではないか、というのが昨今の私の印象である。少なくとも、いわゆるリベラルと保守との間で、強烈な二極分化が起こっているように見える。

「ブロークバック・マウンテン」の設定は1963年から20年、ラストは1980年代である。決して大昔のことではない。むしろ、この話は現在に生々しく繋がるものと捉えてもさほど問題が無いような気がする(ちなみに、ワイオミング州では90年代に、一青年が「ゲイであるが故に」虐殺される事件が起きている)。

なかなか映画の本筋に入れないなぁ。次こそは、ということでその3に続く。

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[映画]ブロークバック・マウンテン その1

★★★★★

<ストーリー>
1963年、ワイオミング。イニス(ヒース・レジャー)とジャック(ジェイク・ジレンホール)はともに20歳、カウボーイの青年である。2人はひと夏の間、ブロークバック・マウンテンで羊の放牧管理の仕事に従事することになる。厳しい環境下で助け合ううちに2人は意気投合するが、友情がそれ以上のものへと変化するのに大して時間はかからなかった。
しかし、仕事を終えて山を降りた2人は再会の約束もしないままに別れる。閉鎖的で保守的な社会で、2人で共に生きるという選択肢は存在しなかったのだ。イニスはすぐに許婚のアルマと結婚し、ジャックも大金持ちの娘のラリーンと結ばれ、それぞれ家庭を築く。
数年後、イニスの元にジャックから1枚の葉書が届く。

とりあえずネタバレ無し。

私はゲイに対してはニュートラルな立場を取っている。特に賛美はしないけれど、アンチではないということ。仮に友人や同僚がゲイであっても全く構わないし、同性愛婚は認めれば良いと思っている。人の性的嗜好について過剰反応したり、面白おかしくネタにしてたりするのを見聞きすると不愉快になるし悲しくなる、ということで、ニュートラルというか、明らかに「左」ですか。ただ、いわゆるBLややおいの類はほぼNG(あの手のものは「物語」としてゲイである必然性が感じられないから)。とまぁ、一応スタンスを明らかにしておいて。

いまだかつて、こんなに大泣きして見た映画があるだろうか?というくらい、ダラダラと泣いてしまった。周囲に人がいなかったら、多分声を上げて泣いていたと思う。既に原作を読んでてオチも分かっているというに、一体どうしたことだろう。メンタル下降気味か?

ストーリー自体の感想は原作を読んだ時とほとんど変わらないんだけど(過去記事参照)。

まずいえるのは、原作つきの映画化としてこれだけよくできている作品も珍しいということ。元が短編だから細部をカットする必要が無いとはいえ、非常に丁寧に脚本化されていて無理が無いし、原作に無い部分の膨らませ方にも説得力がある。台詞自体は少ないけれど、心情表現なんかは非常に緻密で雄弁な印象を受ける。俳優陣も粒揃いで、寡黙で無骨、どこか繊細さを宿すイニスのヒース・レジャー、陽性で天衣無縫なジャックのジェイク・ジレンホールと、どちらも非常に成功した配役で、2人のケミストリーも違和感が無い。女優陣も、年の取り方などが非常にリアルで良かった。

でも、脚本や俳優陣の素晴らしさもさることながら、とにかくあのブロークバック・マウンテンの風景が全てを物語っている。あの映像はちょっと反則だろう。。。いやね、もう頭っから「これはヤバイ!」って思ったのよ。あのブロークバック・マウンテンの、壮大かつ峻厳でありながら、どこまでも透明で美しい夢のような光景。冒頭からノックアウト気味である。羊の海とか見るだけで、なんだか涙腺がヨレヨレしてきてしまった(え、羊でか?)。その後もそのまま目を潤ませたまま見続け、かなり早い段階で堤防決壊。
それにしても、映像の力とは凄いもので、2人にとっての楽園であるブロークバック・マウンテンの美しさと、「下界」=世知辛い現実社会の対比をこれだけはっきり見せられると、分かり易い描き方だなぁとは思いつつも、その説得力に感心してしまう。特に、あのどんよりとした町の雰囲気はちょっと真綿で首を絞めるような感じがあって、田舎町の言い知れぬ閉塞感とか、(イニスが感じているであろう)あからさまではないにせよ確実に存在する差別的な空気を思わせて、ちょっとすごいなぁと思う。

内容に触れられないままこんな長さになってるので、以下次号ということで。

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2006年3月28日 (火)

マイCDsのお家建設

今まで、我が家にはCDラックというモノが無かった。それでは200~300枚もあるCDをどうしてたかというと、段ボールの中に詰めたままか、もしくはデッキの上に載せるか、はたまた床に置くか(ヒドイよな…)。最近では床に「置く」などという生易しい状況ではなく、積むだけ積み上げたCDの山が雪崩を起こして床一面に散らばっているという散々な有様。さすがの私もウンザリしてきて、ホームセンターに行ってCDラックを買ってきた。1350円也。安いなー。まぁ、安いだけのことはあって、個々の棚の高さがCDに合ってるのか微妙。っていうか、合ってない。でもまぁ、細かいことは気にすまい。

早速組み立てて、一軍CDをつめつめ(ニ軍はいまだ段ボールの中)。

こんなんなりました。

Mycds

それにしても、上から二番目の左側、ドイツ・グラモフォンで真っ黄っ黄ね。。。

部屋はちっとも片付かないけれど、CD周りだけ妙にすっきり。

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2006年3月25日 (土)

ツィメルマン ショパンのピアノ協奏曲第1番聴き比べ #2

②キリル・コンドラシン+アムステルダム・コンセルトヘボウ版(1979) ライヴ録音
私が持ってる音源はコレ。

B00002DEH7Chopin: Piano Concertos; Works for Piano & Orchestra
Fryderyk Chopin Carlo Maria Giulini Eliahu Inbal
Deutsche Grammophon 1999-11-09

by G-Tools

基本的に①のジュリーニ版(以下G版)と音楽的な方向性はほとんど変わらない。ただし、こちらの方がいかにもライヴらしくて、ミスタッチがあったり、会場の雑音が若干入ってたりと、生(なま)な雰囲気が強い。録音はちょっと残響が多いかな。

ツィメルマンの演奏は、G版同様、瑞々しくリリカルでいかにもショパンらしい正統的な感じだけれど、かっちり感は若干薄れている。
実は、このコンドラシン版(以下K版)の一番大きな特色は、ツィメルマンのノリの良さ。なんかあったのか?というくらい、ノリノリで弾いている。コンドラシンのせいなのかな。

なんというかなぁ、普段はいくら飲んでも顔色一つ変えず脳ミソも呂律も足元も全く乱れない、何があっても酔っ払わない酒豪が、今日の宴会ではいつもよりちょっとだけご機嫌麗しくて快調だぞって感じである(どーゆー例えだ…)。

要するに、K版は、G版よりもロマン派風味がやや強めなんである。決して自分に酔って冷静さを欠いているというわけではなく、良い具合にテンション高めというところだろうか。
G版もよくよく聴けばしっかりロマン派してるけれど、K版はよくよく聴かなくても、ストイシズムの中からなみなみと溢れ出てくる何とやら(甘さとかロマンとか叙情とか情熱とかその他色々)って感じで、しかもその溢れ出方が恣意的でも作為的でもなくて、素のツィメルマンって感じなのが何とも素敵ですよ。

それにしても、これ、テンポ速くないか。ぱっと聴いた限りでも、明らかにG版より速い。
演奏時間を比較すると明白。

G版
第一楽章 20:04
第二楽章 10:40
第三楽章 9:44

K版
第一楽章 19:21
第二楽章 10:05
第三楽章 9:44(拍手入りなので、実質9:20を切ってる)

まぁそれでも、一楽章はツィメルマン的にはどってことない。軽々。
ちょっとどうしちゃったのよ?っていうのは、三楽章である。テンポの緩急や、強弱の付け方なんかもG版よりも振幅が大きいのは良いとして(特に上昇音型の加速がキレっキレで、三楽章冒頭はすごく鮮やか)、後半に向けて結構突っ走ってるのがなんとも意外。なんかツィメルマンにしては珍しく、かなり一生懸命(ってか必死に?)弾いてるような気配がある(それともライヴはいつもこんなもんなんだろうか)。でも、コンドラシンの煽りを真っ向から受けて立つだけではなく、がっちり主導権を握って、ラストに向けてぐいぐいと前に進んでいく感じはとてつもなくカッコ良い。しかもオケともびったり合ってて見事。
お客さんも、オケの演奏が終わらないうちからフライング拍手&ブラボーである。

もしかして、これの単品が廃盤になってるのって、ノリノリに飛ばしてるのを本人が「若気の至り」とか思って再販拒否してるとかだったりして…。私はすごく面白いと思うんだけどなぁ。

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2006年3月24日 (金)

The Master and Margarita

んごろさんの日記「猫は、本棚で午睡する♪」で話題に上っていた「巨匠とマルガリータ」(「悪魔とマルガリータ」)。

ロシア文学なのだが、英訳本を持っている。なんでかというと、昔フランスに行った時に知り合った人に、お勧め小説として強烈にプッシュされた本なのである。何といって勧められたかはもう覚えてないのだが、日本語訳が見つからなかったため、確かアマゾンで英訳本を探して、それで手を打ったのであった。だけど、当時の私は根性が無かったので、数行読んだだけで放り出し、そのままどこぞに埋めていたのである。

0802130119The Master and Margarita
Mikhail Bulgakov
Grove Pr 1987-09

by G-Tools

このたび、んごろさんのおかげで、めでたく積読の山から発掘(文字通り発掘だった…)。
この本、私にとっては、「ロシア文学の英訳本にして、パリの思い出本」という珍妙な位置付けの本である。久し振りに現物を見たら、パリに行きたくなってきた。なんか連想ゲームみたいだな。

とりあえず、パラっと開いてみた。
ん?意外と易しい、かも。後々難解になるのかもしれないけれど、とりあえずは何とかいけそうな気がする。

そして、またもやHowl放り投げの予感。

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2006年3月23日 (木)

[映画]ヒストリー・オブ・バイオレンス

<ストーリー>
トム・ストール(ヴィゴ・モーテンセン)はアメリカ中西部の小さな町でダイナーを経営している。妻のエディ(マリア・ベロ)は弁護士で、子供は男の子と女の子が一人ずつ。夫婦仲は極めて良好で、幸せで平穏な日々を送っていた。
ある日、ダイナーに2人の強盗が押し入り、トムは客や従業員の身を守るために正当防衛で強盗を射殺する。一躍町のヒーローとなったトムは、国内のメディアの注目も集めることとなる。数日後、事件を聞きつけた大勢の客で繁盛するダイナーに威圧的な2人の男が訪れ、旧知の仲であるように、トムに「ジョーイ」と呼びかける。

実は結構前に見てたんだけれど、ちょっと感想書きづらくて。これ、家族物なのか?サスペンスなのか?なんか妙なテイストの映画だったなぁ。
ただし、俳優の演技は見応えがあった。やっぱりヴィゴは上手くて、微妙な表情の変化なんかももちろん上手いけれど、身にまとう雰囲気の変化とか、なかなか見もの。マリア・ベロの苦悩する妻ぶりも良かった。

以下、ネタバレあり、かな?

続きを読む "[映画]ヒストリー・オブ・バイオレンス"

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ツィメルマン ショパンのピアノ協奏曲第1番聴き比べ #1

①カルロ・マリア・ジュリーニ+ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団版(1978) ライヴ録音 
カップリングにジュリーニ+ロサンゼルス・フィルのP協奏曲第2番(1979)

B000060N7Rショパン:ピアノ協奏曲第1番・第2番
ツィマーマン(クリスティアン) ジュリーニ(カルロ・マリア) ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団
ユニバーサルクラシック 2002-03-21

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これ、デビューアルバムだったかな。ショパン・コンクール優勝の3年後のライヴ録音で、ケレン味の無い、大変丁寧できちんとした演奏である。

とにかく文句無く上手い。安定感抜群で、しっかりと地に足がついた感じは、とても21歳とは思えない。音の粒も完璧なまでに揃ってて、どんなピアニッシモの音であっても一つ一つの音がくっきり聴こえてくる。ツィメルマン特有の完璧な技巧とその類稀なコントロールが、既にこの時点で出来上がっていたということが分かる。
ちなみに、私がこれがライヴ版だということに気が付いたのはつい最近のことで、ずっとスタジオ録音だと思っていた。それくらい完成度が高いし、いかにも余裕綽々という感じで堂々たる風情である。

音色は非常に端正なのだが、同時に、青春の煌きそのままの明るさに満ちている。もう、一楽章の冒頭の和音からして“きらんきらん”である。それでいて、端から端まで品が感じられるのは、いくら若くてもさすがはツィメルマンといったところか。「品」といっても、線の細さはあまり無くて、「上品」「気品」よりもむしろ「品格」といった方が似つかわしい。
そして、とにかく颯爽としてて、迷いや曇りが感じられない。根暗いところや屈折したところがまるで無いし、育ちが良さを窺わせるというか、さぞや良い家庭で育ったんだろうなぁ、などと思わず想像してしまうような雰囲気がある。姿勢が良くて、涼やかな目でまっすぐに前を見ているような、そういう好男子のイメージである。

正直、ショパンの協奏曲第1番については、もっと良い演奏が世の中にあると思う。腕が立って、しかも個性的でインパクトのある演奏という意味で。ツィメルマンの演奏は決して強烈な個性を感じさせるものではないし、楷書的で教科書的に過ぎるという人がいるであろうことも、理解できる。

それでもやはり、このピアノ協奏曲を「ショパン若き日の青春の調べ」と捉えるのであれば(作曲当時、ショパンは20歳くらい)、この溢れんばかりの瑞々しさ、清冽さ、リリシズムは何にも代え難い資質である。総じて楷書的であるとはいっても、ツィメルマンの演奏は繊細な詩情に満ちていて、随所にしみじみとした切なさや甘さも垣間見える。そういう意味では、若手技巧派にありがちなスポーティに過ぎて情緒に欠ける演奏や、個性を主張するあまり「ショパンらしさ」とは離れてしまっている演奏などとは完全に一線を画している。ショパンのピアノ協奏曲の本来あるべき姿に極めて近いといえるだろう。

ただし、これの一年後に録音したカップリングの2番の方が音楽的に良い演奏かな、という気はする。この2番、要するにショパンが初恋(片想い)の苦悩を綿々と綴った曲なんだけど(何かこう書くだけで恥ずかしいな)、ツィメルマンの演奏は、聴いてると小っ恥ずかしさのあまり、頭を抱えて転げまわりたくなるような、そういう雰囲気がものすごくある。曲の方向性として、完全に正解ということなんだと思う。

2番の方が良いのは、単に相性の問題なのか、それともツィメルマンが一年の間にメキメキっと成長したのか。多分後者だろうと私は思っている。

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2006年3月22日 (水)

とりあえず

ツィメルマンのチケット取れました。後発チケットなので、別に焦る必要無かった感じだけれど、これで一安心(気合の入ったファンは既にサントリー・浜離宮あたりを押さえてるだろうし)。

しかし、最前列…。ロックコンサートじゃあるまいし。
別に最前列を狙ったわけではなくて、ネット購入でS席は後ろの方のSを割り振られたり、A席は最前列中央だったりとどうも座席割がイマイチな中、B席最前列中央寄りというのがあったので。

手見えるかな。見えないだろうな。そんでもって、鼻歌とかは聞こえるんだろうな。。。

でも久し振りのコンサートだなぁ。嬉しい。今、気分がほわほわしてます。

でも、とっととプログラムを発表して欲しい。予習できないから(っていうか、プログラム未定でこれだけチケットがはけるってのがすごいのだが)。まだ悩んでんの?ツィメルマン先生。別に何弾いてもいいから、とりあえず決めてくれないかなぁ。
でも、アンコールにジョン・ケージの「4分33秒」※というのはやめてね。お願い。でも、アンコール無しとケージとどちらが良いかときかれると、、、微妙。

※ジョン・ケージの「4分33秒」
20世紀音楽界に波紋を投げかけた現代音楽作品。4分33秒の間、舞台上の演奏者は何も音をださないで、ピアノの開閉によってその開始、楽章の区切り、終了を示す。要するに、演奏されない、無音の音楽。

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2006年3月21日 (火)

名前の表記のこと 追記

ショパン・コンクール(2005)のネット上のドキュメンタリー映像(オールポーランド語字幕無し…)を見てたら、どうも「クリスティアン・ツィンメルマン」といってるようです。
とりあえず、すっきり(か?)。

まーでも、ツィメルマンでいいや、もう。。。すんません、大雑把で。

あと、繰り返しますけど、別にツィマーマンでもツィメルマンでもツィンメルマンでも、他人がどう呼ぼうと全然気にしてませんので(発音的にはどれもさほど遠くないだろうし)、○○○○○という表記でなければならぬとかそういう話ではありませぬ。そこんとこよろしく。

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Oxford (Oxford Bookworms Factfiles)

0194228479Oxford (Oxford Bookworms Factfiles)
Andy Hopkins Joc Potter
Oxford University Press 1998-02-05

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総語数3600、YL2

Oxford Bookworms FactfilesシリーズのLevel2、700語レベル。薄いので、あっという間に読める。

大学町として有名なOxfordについての、簡単なガイド本である。Oxfordの歴史、産業、観光、行事、大学などについて、コンパクトにまとめている。写真は色々入ってるけれど、もう少し町並みの写真が見たかったかな。

大分前に一度読んだ本だけれど、自分がちょっと前に英国に行ったということもあり再読。OxfordってLondonから随分近いんだなぁとか、色々と実感を伴って読めるのが良い。

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2006年3月20日 (月)

ツィメルマン ショパンのピアノ協奏曲第1番聴き比べ #0

というわけで、ツィメルマンのショパンのピアノ協奏曲第1番聴き比べ企画始動。一応連載っぽくなる予定。

ツィメルマンのショパンのP協奏曲第1番の正規版は以下の3種。

①カルロ・マリア・ジュリーニ+ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団版(1978) ライヴ録音 
カップリングにジュリーニ+ロサンゼルス・フィルのP協奏曲第2番(1979)

B000060N7Rショパン:ピアノ協奏曲第1番・第2番
ツィマーマン(クリスティアン) ジュリーニ(カルロ・マリア) ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団
ユニバーサルクラシック 2002-03-21

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②キリル・コンドラシン+アムステルダム・コンセルトヘボウ版(1979) ライヴ録音
※コンドラシン版は単品としては廃盤。単品はコレ↓

B00005FJNUショパン:P協奏曲第1番
ツィマーマン(クリスティアン) アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 コンドラシン(キリル)
ユニバーサルクラシック 1999-11-01

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単品ではなくて企画CD(またの名を抱き合わせCD)で入手可能。↓が比較的入手しやすく、巷のお店でもたまに見かける。ただ、これはツィメルマン以外にアラウとか色々入ってるし、カップリングのP協奏曲第2番は①と同じ録音なのでちょっとお徳感は薄い。ただ、2枚組みにしてはお安いので、他に何が入っててもまぁ構わないんだけど。

B00002DEH7Chopin: Piano Concertos; Works for Piano & Orchestra
Fryderyk Chopin Carlo Maria Giulini Eliahu Inbal
Deutsche Grammophon 1999-11-09

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HMVの商品頁

③本人弾き振り(ピアニスト兼指揮者)+ポーランド祝祭管弦楽団版(1999) スタジオ録音
第1番と第2番の2枚組。1番のテンポがあまりにもノロくて、1枚に収まらなくなっちゃったんだとさ。

B00005FJ6Fショパン/ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 作品11
ツィマーマン(クリスティアン) ポーランド祝祭管弦楽団 ショパン
ユニバーサルクラシック 2000-01-13

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結論からいうと、どれもそれぞれ良さがあって捨て難い。個人的には②の三楽章がすごく好きかな。いずれ、一個ずつ感想上げていきます。

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2006年3月18日 (土)

From the Mixed-Up Files of Mrs. Basil E. Frankweiler



総語数35000、YL6.5
★★★★★ 

<ストーリー>
家のことが嫌になったクローディアは弟ジェイミーを伴って家出を企てる。クローディアたちが向かったのは、なんとニューヨークのメトロポリタン美術館。美術館に隠れ住むことにした2人は、「サバイバル」に頭を悩ませながら様々な発見をしていく。やがて、2人はミケランジェロ作とされる天使像に心惹きつけられ…。


邦題「クローディアの秘密」。
大都会の冒険って感じで、すごくわくわくした。長女で12歳という、子供大人なクローディアのキャラクターは非常に説得力があるし、経済観念の発達した9歳のジェイミーもとても面白くて、姉弟の会話が本当に楽しい。楽器ケースに必要な物を詰め込んで出かけるとか、そういうディテールも良い。ピリッと知的な雰囲気で、子供だけに読ませるのは勿体無い本である。

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名前の表記のこと

外国人の名前のカタカナ表記は難しい。元の発音と違う表記で固定されてしまっている例も多い。
明らかに元の音と違うことが分かっている場合、どうするべきか。一般的な表記を採用するのが手っ取り早いし、読み手にとっても分かり易いけれど、それが好きな俳優だったりすると、なんか申し訳ない気分になるし、書いてて居心地が悪い。
仮に、できるだけ正しい音に近付けたとしても、本当にこれで良いのか?という疑問が残ったりする。何しろ、アとエの中間とか、カナにしきれない音も一杯ある。
アルファベット表記のままにするのが一番間違いが無いけれど、それはそれで馴染みの無い人にとっては分かり難いものである(ちなみに私は、つい最近、「Jeremy Irons」を見て誰だかぱっと分からなかった。好きなのに。)。

私はいまだにカート・コベインにするかコバーンにするか悩むし、レネー・ゼルウィガーもルネーと書いたりレネーと書いたりアルファベットを使ったりと、まちまちのような気がする。ユアンについては、苗字を書かないという手で逃げている。

昨今の悩みはお髭のピアニスト氏。国内のCDは「ツィマーマン」、コンサートの呼び屋さんは「ツィメルマン」表記を採用している。「ツィマーマン」は英語読みかな。ポーランド語ではZは「ジ」らしいけれど、Zimermanという苗字はドイツ系の名前が変化したものなので「ツィメルマン」でOKらしい。
一応、このブログでは「ツィマーマン」が分かり易いかな、と思って「ツィマーマン」を使ってるけれど、何となく落ち着かないような気がする(ひとが使う分には全然気にならないんだけど)。やっぱりアルファベットに逃げるかなぁ。
それとも、いっそのこと「お髭のピアニスト氏」で統一するか(長いよ!)。…冗談です。

そういうわけなので、その時々で表記が違っててもご寛恕下さい。

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2006年3月17日 (金)

ブラームス:交響曲第1番 のだめカンタービレ

近況コーナーに上げたのだが、長くなっちゃったので本記事化。ちょっとけなしてるからいずれ消すつもりだったけれど、書いちゃったので一応残しときます。

B000ALJ16Sブラームス:交響曲第1番~のだめカンタービレ
R☆Sオーケストラ 千秋真一 千秋真一 R☆Sオーケストラ
キングレコード 2005-09-22

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覆面指揮者+覆面オケによる録音を「千秋真一とR☆SオーケストラのデビューCD」として発売した前代未聞の企画CDである。ライナーノーツもばっちりなりきりって感じで、佐久間学がブラ1に寄せたポエムなんかが載ってる。
試みとしては非常に買いなのだが、千秋のブラ1だったらもうちょっとこう、聴いて「おお!」と驚きがあるような演奏が良かったなぁ。別に特別下手でも悪くもないんだけれど、佐久間がポエム吐きたくなるような演奏ではないんだよね。
若いオケ(の設定)だから爽やか路線で軽く、というのは分からないではないけれど、それだったらもっと颯爽とした、推進力のある演奏をして欲しかった。音が痩せて聞こえるのはいただけないし、全体的に表情に乏しくてのっぺりしてる。これはすごく個人的な意見だけれど、千秋ってそもそもはヴァイオリン弾きなわけで、弦出身の指揮者がああいう平板な弦の鳴らし方をしてはいかんと思う。むしろ、管楽器の方が印象が良い。

こういう企画モノだから、色々ブラ1を聴いた上でシャレとして楽しむというのはありだと思うけれど、のだめで初めてクラシックに触れて「じゃぁブラ1聴いてみようか」という人がこれを入口にするのは、ちょっとなぁって気がする。余計なお世話だとは思うけれど。ただ、この曲が本来持つ実力はこんなもんではない、と思うわけ。

瑞々しい青春の調べのようなブラ1であれば、私はケルテス版(ウィーンフィル)を勧める。別に千秋っぽいということではないけれど、若々しい感じはすごくある。そして、重厚さのあまり無い優美な演奏で、この曲の旋律の美しさが非常に引き立っている。
ちなみに、ケルテス(1929-73)は不慮の事故で若くして亡くなったハンガリー人指揮者で、いまだにその夭折を惜しむ声が多い。

B00005HW1Yブラームス:交響曲第1番
ケルテス(イシュトヴァーン) ブラームス ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ユニバーサルクラシック 2001-04-25

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ちなみに、名盤として名高いのはミュンシュ版(他にも色々あるんだろうけれど、未聴)。

B00005NDD5ブラームス:交響曲第1番
ミュンシュ(シャルル) パリ管弦楽団 ブラームス
東芝EMI 2001-09-27

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フランスのオケとはにわかに信じ難いほどに、重い。暗い。えらく遅い。そしてとにかく響きが分厚い。好き嫌いは別として、いわゆるブラ1らしい演奏というと、やっぱりこれかな、という気がする。

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2006年3月16日 (木)

「のだめカンタービレ」キャラクターBOOK

4063720799「のだめカンタービレ」キャラクターBOOK
講談社 2005-10-28

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この手の企画本としては、内容が充実している。こういうのって、本編を丹念に読めば分かることしか書いてない物が多いけれど、これはなかなかよくできている。
まず、キャラクター・データの項は、それぞれの設定が詳しく載っていて、本編に載ってない情報も結構ある。あと、クラシック入門みたいなコーナーでオケの編成・楽器の解説が載ってるのも親切だし、現在活動中のプロの演奏家による、弾き手側の視点に立った楽曲解説が面白い。「ボレロはインテンポ(メトロノーム通りの一定したテンポ)でやってると、聴き手にはノロく聞こえるから微妙にテンポアップしながら弾く」とか「ブラ1の冒頭のティンパニはついつい張り切りすぎちゃって指揮者に注意されちゃう」とか。確かにここぞとばかりに、ドンドコ叩きまくってる人いるね。。。

実は、一番のお気に入りは「千秋のお料理レシピ」だったりして。紹介されてるのは「おフランス風田舎煮込み」だけだけれど、簡単で美味しいのでよく作ってる。

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2006年3月14日 (火)

ジョン・ハウ:ファンタジー画の世界inカナダ大使館

JohnHowe

ジョン・ハウ:ファンタジー画の世界

ガンダルフの顔、結構怖いな。

というわけで、とある平日、ほとんど貸切状態のギャラリーでしみじみと見てきた。しかしカナダ大使館というところは、随分カジュアルなところだ。ギャラリーには(カメラはあったかもしれないけれど)監視の人もいないし、そもそも地下のあの辺のスペースに職員らしき人がほとんどいない。大使館入り口のガードマンさんもそうだったけれど、ぴりぴりした感じがないのは、カナダのお国柄かな?(アメリカ大使館なんか周辺に近付くだけでもなんかおっかないのに)

ギャラリーは地下2階にある。さほど広くはない。でも明るくて、とても綺麗なお部屋である。

壁一面、所狭しとかけられた作品たちは、当たり前だけれど、印刷で見るよりもずっと重厚で深みがある。加えて、画面を覆う幻想性は、これぞ、ファンタジーという感じである。仮に、誰かに、ファンタジーってどんな感じ?と聞かれたら、あれを見せてあげれば良い。そんな風に思う。

会場では「Lord of the Brush」というハウの制作メイキング(?)DVDが流れていた。面白そうだったけれど、何故か全部フランス語に吹き替わっていたので(英語と仏語の交互上映なんだろうか)、途中で力尽きました。ダメダメ…。

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2006年3月13日 (月)

Star Wars Underworld (Star Wars: the Last of the Jedi)

大変久し振りのSWスピンオフ、EP3直後のThe Last of the Jediシリーズの3である。そろそろ4巻も出るなー…。

0439681367Star Wars Underworld (Star Wars: the Last of the Jedi)
Jude Watson
Scholastic Paperbacks 2006-02

by G-Tools

総語数24000、YL5

<ストーリー>
Ferusと彼のパートナーのTreverは、ジェダイ聖堂に捕らわれの身になっているジェダイがいるという噂を聞き、ジェダイ聖堂に侵入する。そこで彼らが遭遇した人物は…。
やがて、彼らはコルサントの地下に潜っていく。

この辺から段々、コルサントの地下が舞台になってくる。EP3のコルサントはキラキラしい摩天楼って感じだったから、地下といわれると新鮮。
反帝国組織も登場し、上手くEP4に繋がりそうな感じである。

以下、ちょっとだけネタバレ。
オビ=ワンは出番あれだけかい?通信だけ?一回休みなのかそれともこのまま出てこないのか…。

ちなみに、4巻。

0439681375The Last of the Jedi 4 (Star Wars: the Last of the Jedi)
Jude Watson
Scholastic Paperbacks 2006-04

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2006年3月12日 (日)

絶版CDをめぐる冒険

ここしばらく、とある絶版CDを追い求めて、世界中の密林及びオンラインCDショップとeBayを探し歩いていた。英語圏だけでは埒があかず、仮に見つかってもいざ買う時にどーすんのよ?というような、独語サイト、伊語サイト、挙句の果てには東欧言語サイトまでお出かけする始末。しかし無い。無いったら無い。
オンラインだけではなく、地上の中古店も探すのだが、とにかく影も形も無い。

ところがである。今日、某リアル大型CD店に立ち寄って下の方の棚をチマチマとチェックしたら、2枚もある。あまりに驚いて、立ち上がったら眩暈がしてしまった。しかも、改めて上の方の棚を見たら平積み状態というか、10枚近くバサバサと置いてある!思わず買い占めてやろうかと思ったよ。

とにかく1枚をレジに持っていき、大事に大事にカバンにしまいこんで、ドキドキしながら帰路に着いたのであった。あー、なんか勿体無くて聞けないなー。。。

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2006年3月11日 (土)

紅茶

うちにある紅茶三種。全部ダージリン。これに職場の"置き茶葉"が加わるわけだが、それは割愛。

3teas

ウィンターフラッシュ(オカイティ茶園)というのはちょっと珍しい種類(普通ダージリンは、ファーストフラッシュ(春摘み)、セカンドフラッシュ(夏摘み)、オータムナル(秋摘み)という分類になる)。香りがちょっと春っぽくて爽やかで、味は秋っぽいというか。

それから、別の紅茶屋さんから、オカイティのオータムナル。オカイティもちょっと興味がある茶園だったし。

がぶ飲み!キャッスルトンというのは、お買い得ダージリン。何しろ一日1リットルも飲むのでね。。。キャッスルトンというのはダージリンきってのブランド茶園だけれど、これはブロークンタイプで(比較的)安い。下手な大手メーカーの缶入り紅茶買うよりかは良いような。

ちなみに、ネットでよく使うお店はセレクト・ショップ(楽天店舗もあり)、シルバーポットかな。紅茶のお勉強にも良い。

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2006年3月 8日 (水)

動くツィマーマン

B00005I94Mブラームス:ピアノ協奏曲1&2
ユニバーサルクラシック 1989-09-25

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ブラームスのピアノ協奏曲第1番(1983)、第2番(1984)のライヴ映像のVHSである。DVDは現在入手困難につき、たまたま見つけたVHSを安く入手。ただし、音は劇的に悪い。まるで調律が狂っているかのように聞えたりする。VHSとしては標準なんだろうけれど、改めて昨今のDVD・CDの有り難味が身に沁みた。
ただし、音源は下記のCDと同じ(ライヴ録音+映像収録セッションだったらしい)なので、ちゃんとした音をCDで確認できるのが救いである。(2007年10月2日訂正:この時のライヴ収録は、収録日が複数日あるので、CDとDVDがそれぞれおどの日の音源を使ってるかは、未確認です。すみません)

B00005FIUMブラームス : ピアノ協奏曲 第1番ニ短調
ツィマーマン(クリスティアン) ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ブラームス
ユニバーサルクラシック 1995-09-01

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B00005FJ9Xブラームス : ピアノ協奏曲 第2番変ロ長調作品83
ツィマーマン(クリスティアン) ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ブラームス
ユニバーサルクラシック 1998-10-01

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実は、私はブラームスのピアノ協奏曲はあまり好みじゃない。別に嫌いというわけでもないのだが、先の新譜、ラトル&ツィマーマンを聴いた時も、↑のバーンスタイン&ツィマーマンを聴いた時も、どうものめり込めない感じがあった。
もちろん、素敵な旋律はいっぱいあるし、瞬間瞬間で「おお!」と思うことはあるのだが、何しろブラームスの協奏曲というのは、オケが分厚くて聴いてると疲弊する。俗に「ピアノ付き交響曲」とも呼ばれたりするのは、「ピアノとオケのシンフォニックな対話」云々というのはもちろんあろうけれど、要するに「協奏曲だけれどオケは伴奏(従)ではないよ」ということである。というのも、ブラームスは、ピアノを特別目立たせるような曲の作り方をしていないのである。ソリストは文字通り「多勢に無勢」状態で、音量全開のオケ(ン十人)と渡り合わなくてはいけない、ということである。これはおそらく相当キツイ。いかにピアノが音のデカイ楽器だといっても、1対ン十人はやはり不利といわざるを得ないのである(何しろ、ピアノと伴奏が全く同じ旋律を弾いてたりする。ピアノ、埋もれるってば!)。しかも、1番も2番も50分と長尺で、ピアノは出ずっぱり、まさに体力勝負、パワー勝負の曲である。
ブラームスの協奏曲は、ピアノにせよ、ヴァイオリンにせよ、「うわぁ、これはソリストは大変だなぁ」という思いが先に立ってしまい、どうも楽しくないことが多い。

ただ、このVHSの目的は、若くて髭の無い(重要)ツィマーマンが動いているところを見ることにあったので、音が悪かろうが曲が好みじゃなかろうが、それはたいした問題ではない。

映像の何が良いって、弾いてる手を見られることである。
ツィマーマンの手は、ごく普通の手に見える。巨大でもごつくもないし、指が特別長いわけでもない。でも、おそらくはその手にかかって弾けない曲などこの世には存在しないであろうことを思うと、「うーん、きれいな手をしているなぁ」と感心しながら、なんかすごく不思議な気分になる。

しかし、CDで聴いてて分かってはいるけれど、あの技術的な隙の無さを視覚的に目の当たりにすると、かなり衝撃的である。とにかく、堅牢である。それにしても、ブラームスの協奏曲というのは、おそらくは耳で聞く印象よりもずっとずっと難しい。なんなんだ、あのオクターブトリルは。ブラームスさん、もしかして嫌がらせですか。

とはいえ、さすがはツィマーマン、苦労して弾いている風は皆無である。それどころか、この人ってば本質的にはショパン弾きなんかじゃないんじゃないか?ってくらい、ガッツンガッツン豪快に弾いている。打鍵がかなり強烈で、フォルテでガンガン押していくところなんかすごい迫力である。当時、ショパン的なデリケートで詩的なイメージを持ってた人はかなりビックリしたんじゃないだろうか。もちろん、どんなに叩いても音色は端正で煌びやかだし、スローパートはやっぱりとてつもなく美しいんだけれど、全体的に非常に切れ味が鋭くて歯切れが良く、跳躍感がある。それでいてドーンと安定感があって、なんというか、腰が据わっているのだ。

それにしても、2番の第一楽章や第二楽章はキメキメで、恐ろしくカッコいい弾きっぷり。音も演奏スタイルも実に決然としている。しかも、一楽章が終わって二楽章に入る前に、バーンスタインの方を見てふっと微笑むあたり、余裕があり過ぎてなんかムカつく(え?)。

あー、なんか繰り返し聞いてたらブラームスの協奏曲も良い曲に聞こえてきちゃったよ。特に2番。もちろん、映像に惑わされているという自覚はある。そのくらい、この頃のツィマーマンは颯爽としててかっこいい。伝え聞く、ショパコン優勝当時の初々しい好青年っていうイメージとは、随分雰囲気が変わっているんじゃないかという気がする。このブラームス収録時は27、8歳、悪い意味ではなくて芸術的野心満々って感じだし、演奏の方も数年前の録音なんかとは一味も二味違う幅とかスケールの大きさと、若さに似合わない風格がある。

いやはや、予想以上に堪能してしまった。DVD再販しないかな。

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2006年3月 6日 (月)

The Cinema (Oxford Bookworms Factfiles

0194228118The Cinema (Oxford Bookworms Factfiles)
John Escott
Oxford Univ Pr (Sd) 1997-04-17

by G-Tools

総語数5600、YL3.2

気が付いたら、アカデミー賞である。今年はBrokeback Mountainなのかな、やっぱり。候補作をほとんど見てないので個人的にはイマイチ盛り上がりに欠けるのだが、ファッションチェックは楽しみ。

時期的にこんなのも良かろうと思い、「The Cinema」を手に取ってみた。非常にコンパクトにまとまった映画入門書である。1997年発行の本なので最新の情報ではないけれど、内容は、映画史をはじめ、アニメ史、裏方、ロケ、特撮、スタント、メイク、映画館についてなどで、薄い本ながらなかなか勉強になる。写真が多いのもとっつきやすくて良い。

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2006年3月 4日 (土)

髭つながり(?)

ツィマーマンのバラード集のジャケット写真がオビに似てるという衝撃的(?)なご意見を複数の方から頂き、死ぬほどウケてしまった。言われてみればオビ髭だー。基本的に生真面目で勤勉で、放っておくと洞窟入って瞑想しそうなところも似てるかも(あくまで勝手なイメージですが。ツィマーマンってなんかひたすら練習してそうなので)。

そういえばツィマーマン、髭のせいなのか、どこぞのブログ様で「お爺さんピアニスト」と書かれてて、私は密かに「失礼な!」と憤慨していたのだが、彼はまだ50前である(まだお誕生日前だし)。「巨匠」とか呼ばれるからジジイのイメージなのか?まぁ、やっぱり髭のせいで老けて見えるということなんだろうけれど。
バラード集の写真も30歳を出たくらいだと思うけれど、かなり落ち着いて見える。それこそ大昔は、「絶世」の美青年かどうかはともかくとしても、それこそ紅顔の美少年って感じで、「貴公子」の名を欲しいままにしていたようなのだが。外見も音楽も、良くも悪くも(いや別に悪くは無いのだが)人間って変わるものだなぁ、としみじみさせられるピアニストである。

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2006年3月 3日 (金)

クリスティアン・ツィマーマン「ショパン 四つのバラード/舟歌/幻想曲」

B00005FHXJショパン:バラード.幻想曲
ツィマーマン(クリスティアン) ショパン
ユニバーサルクラシック 1991-05-25

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★★★★★(本当は★10個付けたいくらい)

クリスティアン・ツィマーマン強化月間です。
ツィマーマンに関しては、元々一昨年くらいにラフマニノフのCDを2ヶ月くらい病の如くエンドレスで聴き続けたくらい好きなんだけど、最近また重篤状態なので、気合入れて褒め殺してます(殺してどうするよ…)。

実はこれ、私が今更どうこういうのもアレなくらい、世間的に大変評価の高いアルバムである。ツィマーマンは超が付く完璧主義者らしいので、基本的にアルバムは出しさえすれば高水準というピアニストではあるのだけれど、とりわけこのアルバムの完成度の高さたるや、ちょっと他に例を見ないような気がする。

ツィマーマンは1975年のショパン・コンクール優勝以降、レパートリーがショパンに偏ることを避けていたようで、ショパン・コンクール覇者としてはあり得ないくらいショパンを録音していない。これはなんと8年ぶりのショパン・アルバムで(この世にはショパン全集=16枚くらいか?を一人で録音するピアニストがいるというのに!)、ツィマーマンが持てる美質を全てつぎ込んだ、まさに渾身のショパン・アルバムになっている。

それにしても、仮に私がピアノを生業にしてたら絶望してピアノをやめたくなるんじゃないかと思うほどの超名演である。聴いてると「うわ、すご…」と頭を抱えたくなるし、凹む(何故凹む?)。他のピアニストのどんな超絶技巧の演奏を聴いても、そういうことは全然無くって、「うわわ、なんじゃこれ~」と笑い飛ばすくらいのものなのだが、これに関しては聴くとどうも「打ちのめされる」感覚が強い。それくらい圧倒的。

まず、ピアノというのはここまで美しい音が出るのか、と愕然とした。思わず恍惚となるような、きらきらと瞬く、究極の美音である。硬質で透明感があってどこまでも精緻、まるで冬の朝の空気のように透徹した響きである。といっても、突き放したような感じや余所余所しさは無く、デリカシーと詩情に満ちた、ショパン的リリシズムの極みといったらいいだろうか。そして、リリカルなだけじゃなくて、その強靭な打鍵に「うわー、叩いてるなぁ」とびっくりしたくらい、パショネイトでありドラマチックでもある。

一音一音、どうしてその音をそういう風に鳴らすのか、強弱、ニュアンス、リズム、テンポ等々、全てにおいて完璧に吟味されている。この人のピアノには「何となく」が介在する余地は皆無で、曖昧さというものが全くない。

とんでもない超絶技巧を駆使する一方で、フレーズの歌わせ方はゆったりと絶妙な間(ま)をとりながらも、とにかく流麗である。そして、流れていくだけではなくて、音やフレーズの立ち上がり方が非常にくっきりとしていて立体的である。

どの曲も甲乙つけ難いけれど、「舟歌」がとにかく素晴らしい。この曲、今までに色々な機会に散々聴いているけれど、まさかこんなに美しい曲だったとは思わなかった。
バラード四番もクレッシェンドの持っていき方なんかが、もうなんともいえない。とにかく聴いて下さい、としかいえない名演。

それにしても、この人のショパンは瑞々しさの中にどうしようもない哀しさみたいなものが垣間見えて、時々なんとも切ない気分にさせられる。ただ美しいだけの世界ではなくて、魂の深いところに訴えかけるものがある。だから「打ちのめされる」のかなぁ。。。

敢えて欠点をあげれば、難しいところをあまりにも軽々と弾いちゃうものだから、全然難曲に聞こえないというところ(いや、別にそれ欠点じゃないから)。とにかく正確無比で、音の粒の揃いっぷりといったら、惚れ惚れを通り越して呆れてしまう。アラ探しモードで一生懸命聴いてみても(止めなさい)これといって穴が見当たらない。
あと、基本的に弾き手が(多分)極めて真面目なキャラクターなので、デモーニッシュな感じはほとんど無いし、少し端正過ぎる、という人はいるかもしれない。

でも、これは本当にひたむきな演奏である。おそらくは現役トップ3に入るであろうほどの超名手が、一体どこまで真摯にピアノに向き合えば気が済むのか…と思わず畏敬の念を覚えてしまうような、そんなひたむきさがある。あまりにストイックでちょっと修行僧じみてて、天上の音楽というか、彼岸的な響きに聞こえなくもない。ある種の「行き着くところまで行き着いてしまった」音楽である。

確かにこれだけの演奏をするには無茶苦茶時間かかるわなぁ、と納得しつつ、やっぱりもう少し新譜出してくれ…と身悶えする今日この頃。

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2006年3月 2日 (木)

[映画]ミュンヘン

なんか大昔に見てほとんど忘れてるんだけど、何も書かないのも気持ちが悪いのでメモ。

<ストーリー>
1972年、ミュンヘン・オリンピックの選手村で、イスラエルの選手11人がパレスチナ・ゲリラ「ブラック・セプテンバー」によって殺害されるという事件が起こる。イスラエルは国家的な報復を決意し、暗殺チームのリーダーとしてモサドのアヴナーに白羽の矢を立てる。アヴナーは人を殺したことなど無かったが、身重の妻を残して欧州に向かう。

★★★★☆

ネタバレ無し。

近年のスピルバーグ作品ではダントツに良いと思う。割とスピルバーグらしからぬスタイリッシュな感じもあって(失礼な)、よく出来てる映画だと思った。メッセージ性という意味においても、個人的には「シンドラーのリスト」よりもこちらの方が好き。あれはあれで良いと思うけれど、ちょっとやり過ぎな感も無いわけではないので。
まぁ、いずれにせよ、これは見た方が良い映画だと思う。政治的な是非の問題ではなくて、世界で起こっていることの「一端」を知るという意味で(あくまで「一端」だけど)。

基本的なストーリーは、アヴナー率いる暗殺チームがパレスチナのテロリストの幹部を一人一人始末していく様子を追っていく、というものなんだけれど、緊張感の持続のさせ方、緩急の付け方が絶妙。あと、70年代の雰囲気を非常に上手く出してて、私は映画版の「ジャッカルの日」を思い出した。あの追いつ追われつな感じとか、緊迫感に満ちた展開とか、ちょっとざらっとしてて色あせた感じの画面なんかもよく似ている。
こういう言い方が正しいかは分からないけれど、「ミュンヘン」は上質のエンタメ作品になっている。決して重いだけの映画ではないし、別に陰惨というほど暗いわけでもない。

キャストはアヴナーのエリック・バナがやっぱり良かった。バナってすごく普通の雰囲気なんだけれど、この「普通」っていうのがすごく大事。愛する妻がいてもうすぐ子供が生まれる、本当にごく普通の、しかも善良な青年が、「暗殺」に携わるという事実の重みがズンとくる。
そして、最初は任務に成功して喜んでいたアヴナーが、やがて自分たちの行為に疑問を持ち、また目に見えない敵に段々追い詰められていく様子にすごく説得力がある。
今更言うまでも無いことなんけれど、スピルバーグは「目に見えない恐怖」を描くのがえらく得意な監督である。テロや暗殺の恐怖って、要するに相手の見えない怖さで、疑心暗鬼ゆえに「やられる前にやってしまえ」になるんだと思うんだけれど、その辺の描き方がすごく上手いし、もちろんバナの演技も立派だった。

というわけで、久し振りにスピルバーグを見直した「ミュンヘン」でした。

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フィギュアスケート雑感

今更な話題だけれど(いつもいつも今更な話題ばかりだ…)先日、やっとフィギュアスケートを見た。既に結果が分かってるので、ドキドキもせず他のことをしながら斜めに(こら)見ていた。

荒川選手、おめでとうございます。大人の貫禄で良かった。トゥーランドットっていう選曲も素晴らしい。イタリアオペラだけれど、とてもアジア的で(まぁ、舞台はヘンテコ古代中国ですが。出てくる三大臣の名前なんかピン、ポン、パンですよ。いやマジで)。

プルシェンコ。実は彼が(多分)16歳くらいの時から見てる。
当時から凄まじかったけれど、今回、相変わらず可愛い気の感じられない隙の無さで(褒めてます)完全勝利。予想通りではあるけれど。まぁトリプルジャンプがダブルになったのは、さすがのプルシェンコも人の子か、と思った。でも、この人はもう住んでる世界が違うとしか言い様が無い。フィギュアスケート史において、現時点においては間違いなく最強。この人の突出ぶりというのは、バレエにおけるシルヴィ・ギエムみたいな感じかな(ってこの例えで分かる人いる?)。
エキジビションもちょっとどうかしてた。何なんですか、あの複雑怪奇なステップ炸裂は。普通、エキシビションって疲労がピークに達してるし緊張の糸が切れてたりするから(当然だー)、結構皆さんヨレヨレだったりするのだが。なんであんなに元気なんだ。。。

ジョニー・ウィアー。経歴をよく知らないんだけれど、あれは完全にバレエをみっちりやってた動きだなぁ。バレエ・体操転向組?ヒラヒラ衣装が似合うあの容姿は貴重かも。

そういえば、今回、ラフマニノフのピアノ協奏曲2番を選曲してた人が複数いた。どちらも最初の和音が分散和音だったけど(ラフマ2番は手が小さい人にはしんどい曲で、最初の和音なんかも手が届かないと分散させて弾かざるをえなくなります)、あれはアシュケナージだろうか。
巷では、フィギュアスケートで使用した曲を集めた企画アルバムが大人気みたいだけれど、皆さん、一楽章だけとかじゃなくてちゃんとフルサイズ聴きましょう。名曲というのは全楽章良いものです。

そのうち、ラフマ2番の聴き比べレビューでもやるかな。。。(と、また時期を外した企画を考えるヤツ)マイベストは当然ツィマーマンなんだけれど、リヒテルとかも良いし。

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