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2006年3月 3日 (金)

クリスティアン・ツィマーマン「ショパン 四つのバラード/舟歌/幻想曲」

B00005FHXJショパン:バラード.幻想曲
ツィマーマン(クリスティアン) ショパン
ユニバーサルクラシック 1991-05-25

by G-Tools

★★★★★(本当は★10個付けたいくらい)

クリスティアン・ツィマーマン強化月間です。
ツィマーマンに関しては、元々一昨年くらいにラフマニノフのCDを2ヶ月くらい病の如くエンドレスで聴き続けたくらい好きなんだけど、最近また重篤状態なので、気合入れて褒め殺してます(殺してどうするよ…)。

実はこれ、私が今更どうこういうのもアレなくらい、世間的に大変評価の高いアルバムである。ツィマーマンは超が付く完璧主義者らしいので、基本的にアルバムは出しさえすれば高水準というピアニストではあるのだけれど、とりわけこのアルバムの完成度の高さたるや、ちょっと他に例を見ないような気がする。

ツィマーマンは1975年のショパン・コンクール優勝以降、レパートリーがショパンに偏ることを避けていたようで、ショパン・コンクール覇者としてはあり得ないくらいショパンを録音していない。これはなんと8年ぶりのショパン・アルバムで(この世にはショパン全集=16枚くらいか?を一人で録音するピアニストがいるというのに!)、ツィマーマンが持てる美質を全てつぎ込んだ、まさに渾身のショパン・アルバムになっている。

それにしても、仮に私がピアノを生業にしてたら絶望してピアノをやめたくなるんじゃないかと思うほどの超名演である。聴いてると「うわ、すご…」と頭を抱えたくなるし、凹む(何故凹む?)。他のピアニストのどんな超絶技巧の演奏を聴いても、そういうことは全然無くって、「うわわ、なんじゃこれ~」と笑い飛ばすくらいのものなのだが、これに関しては聴くとどうも「打ちのめされる」感覚が強い。それくらい圧倒的。

まず、ピアノというのはここまで美しい音が出るのか、と愕然とした。思わず恍惚となるような、きらきらと瞬く、究極の美音である。硬質で透明感があってどこまでも精緻、まるで冬の朝の空気のように透徹した響きである。といっても、突き放したような感じや余所余所しさは無く、デリカシーと詩情に満ちた、ショパン的リリシズムの極みといったらいいだろうか。そして、リリカルなだけじゃなくて、その強靭な打鍵に「うわー、叩いてるなぁ」とびっくりしたくらい、パショネイトでありドラマチックでもある。

一音一音、どうしてその音をそういう風に鳴らすのか、強弱、ニュアンス、リズム、テンポ等々、全てにおいて完璧に吟味されている。この人のピアノには「何となく」が介在する余地は皆無で、曖昧さというものが全くない。

とんでもない超絶技巧を駆使する一方で、フレーズの歌わせ方はゆったりと絶妙な間(ま)をとりながらも、とにかく流麗である。そして、流れていくだけではなくて、音やフレーズの立ち上がり方が非常にくっきりとしていて立体的である。

どの曲も甲乙つけ難いけれど、「舟歌」がとにかく素晴らしい。この曲、今までに色々な機会に散々聴いているけれど、まさかこんなに美しい曲だったとは思わなかった。
バラード四番もクレッシェンドの持っていき方なんかが、もうなんともいえない。とにかく聴いて下さい、としかいえない名演。

それにしても、この人のショパンは瑞々しさの中にどうしようもない哀しさみたいなものが垣間見えて、時々なんとも切ない気分にさせられる。ただ美しいだけの世界ではなくて、魂の深いところに訴えかけるものがある。だから「打ちのめされる」のかなぁ。。。

敢えて欠点をあげれば、難しいところをあまりにも軽々と弾いちゃうものだから、全然難曲に聞こえないというところ(いや、別にそれ欠点じゃないから)。とにかく正確無比で、音の粒の揃いっぷりといったら、惚れ惚れを通り越して呆れてしまう。アラ探しモードで一生懸命聴いてみても(止めなさい)これといって穴が見当たらない。
あと、基本的に弾き手が(多分)極めて真面目なキャラクターなので、デモーニッシュな感じはほとんど無いし、少し端正過ぎる、という人はいるかもしれない。

でも、これは本当にひたむきな演奏である。おそらくは現役トップ3に入るであろうほどの超名手が、一体どこまで真摯にピアノに向き合えば気が済むのか…と思わず畏敬の念を覚えてしまうような、そんなひたむきさがある。あまりにストイックでちょっと修行僧じみてて、天上の音楽というか、彼岸的な響きに聞こえなくもない。ある種の「行き着くところまで行き着いてしまった」音楽である。

確かにこれだけの演奏をするには無茶苦茶時間かかるわなぁ、と納得しつつ、やっぱりもう少し新譜出してくれ…と身悶えする今日この頃。

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