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2006年3月 8日 (水)

動くツィマーマン

B00005I94Mブラームス:ピアノ協奏曲1&2
ユニバーサルクラシック 1989-09-25

by G-Tools

ブラームスのピアノ協奏曲第1番(1983)、第2番(1984)のライヴ映像のVHSである。DVDは現在入手困難につき、たまたま見つけたVHSを安く入手。ただし、音は劇的に悪い。まるで調律が狂っているかのように聞えたりする。VHSとしては標準なんだろうけれど、改めて昨今のDVD・CDの有り難味が身に沁みた。
ただし、音源は下記のCDと同じ(ライヴ録音+映像収録セッションだったらしい)なので、ちゃんとした音をCDで確認できるのが救いである。(2007年10月2日訂正:この時のライヴ収録は、収録日が複数日あるので、CDとDVDがそれぞれおどの日の音源を使ってるかは、未確認です。すみません)

B00005FIUMブラームス : ピアノ協奏曲 第1番ニ短調
ツィマーマン(クリスティアン) ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ブラームス
ユニバーサルクラシック 1995-09-01

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B00005FJ9Xブラームス : ピアノ協奏曲 第2番変ロ長調作品83
ツィマーマン(クリスティアン) ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ブラームス
ユニバーサルクラシック 1998-10-01

by G-Tools

実は、私はブラームスのピアノ協奏曲はあまり好みじゃない。別に嫌いというわけでもないのだが、先の新譜、ラトル&ツィマーマンを聴いた時も、↑のバーンスタイン&ツィマーマンを聴いた時も、どうものめり込めない感じがあった。
もちろん、素敵な旋律はいっぱいあるし、瞬間瞬間で「おお!」と思うことはあるのだが、何しろブラームスの協奏曲というのは、オケが分厚くて聴いてると疲弊する。俗に「ピアノ付き交響曲」とも呼ばれたりするのは、「ピアノとオケのシンフォニックな対話」云々というのはもちろんあろうけれど、要するに「協奏曲だけれどオケは伴奏(従)ではないよ」ということである。というのも、ブラームスは、ピアノを特別目立たせるような曲の作り方をしていないのである。ソリストは文字通り「多勢に無勢」状態で、音量全開のオケ(ン十人)と渡り合わなくてはいけない、ということである。これはおそらく相当キツイ。いかにピアノが音のデカイ楽器だといっても、1対ン十人はやはり不利といわざるを得ないのである(何しろ、ピアノと伴奏が全く同じ旋律を弾いてたりする。ピアノ、埋もれるってば!)。しかも、1番も2番も50分と長尺で、ピアノは出ずっぱり、まさに体力勝負、パワー勝負の曲である。
ブラームスの協奏曲は、ピアノにせよ、ヴァイオリンにせよ、「うわぁ、これはソリストは大変だなぁ」という思いが先に立ってしまい、どうも楽しくないことが多い。

ただ、このVHSの目的は、若くて髭の無い(重要)ツィマーマンが動いているところを見ることにあったので、音が悪かろうが曲が好みじゃなかろうが、それはたいした問題ではない。

映像の何が良いって、弾いてる手を見られることである。
ツィマーマンの手は、ごく普通の手に見える。巨大でもごつくもないし、指が特別長いわけでもない。でも、おそらくはその手にかかって弾けない曲などこの世には存在しないであろうことを思うと、「うーん、きれいな手をしているなぁ」と感心しながら、なんかすごく不思議な気分になる。

しかし、CDで聴いてて分かってはいるけれど、あの技術的な隙の無さを視覚的に目の当たりにすると、かなり衝撃的である。とにかく、堅牢である。それにしても、ブラームスの協奏曲というのは、おそらくは耳で聞く印象よりもずっとずっと難しい。なんなんだ、あのオクターブトリルは。ブラームスさん、もしかして嫌がらせですか。

とはいえ、さすがはツィマーマン、苦労して弾いている風は皆無である。それどころか、この人ってば本質的にはショパン弾きなんかじゃないんじゃないか?ってくらい、ガッツンガッツン豪快に弾いている。打鍵がかなり強烈で、フォルテでガンガン押していくところなんかすごい迫力である。当時、ショパン的なデリケートで詩的なイメージを持ってた人はかなりビックリしたんじゃないだろうか。もちろん、どんなに叩いても音色は端正で煌びやかだし、スローパートはやっぱりとてつもなく美しいんだけれど、全体的に非常に切れ味が鋭くて歯切れが良く、跳躍感がある。それでいてドーンと安定感があって、なんというか、腰が据わっているのだ。

それにしても、2番の第一楽章や第二楽章はキメキメで、恐ろしくカッコいい弾きっぷり。音も演奏スタイルも実に決然としている。しかも、一楽章が終わって二楽章に入る前に、バーンスタインの方を見てふっと微笑むあたり、余裕があり過ぎてなんかムカつく(え?)。

あー、なんか繰り返し聞いてたらブラームスの協奏曲も良い曲に聞こえてきちゃったよ。特に2番。もちろん、映像に惑わされているという自覚はある。そのくらい、この頃のツィマーマンは颯爽としててかっこいい。伝え聞く、ショパコン優勝当時の初々しい好青年っていうイメージとは、随分雰囲気が変わっているんじゃないかという気がする。このブラームス収録時は27、8歳、悪い意味ではなくて芸術的野心満々って感じだし、演奏の方も数年前の録音なんかとは一味も二味違う幅とかスケールの大きさと、若さに似合わない風格がある。

いやはや、予想以上に堪能してしまった。DVD再販しないかな。

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Pianist: Krystian Zimerman」カテゴリの記事

コメント

こんにちは♪
この映像、残念ですが見たことないんですよー。
もし見たら、私もブラームスの協奏曲を好きになってしまうかもしれませんね!(笑)
DVD再販大希望です☆

それにしても、つくづく映像って雄弁だな~と思います。
テレビなんかでも、いろんなアーティストが実際に弾いている姿を目の当たりにすると音も音色も違ったものに聴こえてきますよね。
ライブだったら尚更!その同じ空間に居合わせているだけでも鳥肌立ちます(^^;)

5月の演奏会、行きたいけど行けません(涙)。
ドラえもんの「どこでもドア」があればいいのになぁ。。。

投稿: バラくま | 2006年3月14日 (火) 11:05

誰もが「若い頃のツィマーマンは美青年だった」「本物のショパンみたいだった」「まさに鍵盤の貴公子だった」と誉めそやすものですから、逆に「ちょっと大げさなんじゃないの?」と疑わしく思っていたのですが、これを見て、当時アイドル並に騒がれたというのも分かるな~と思いました。弾いている姿がとにかくかっこいいです。

ライブはスタジオ録音と比べると、演奏は荒っぽくなりがちですけれど、映像が付いてるとなるとまた話は別ですよね。弾いてる姿から演奏者のオーラとかパワーが感じられますし(^^)。

5月のコンサート、いらっしゃれないのは残念ですね。私は色々と厳しいのですが、何とかして行こうと現在画策中です。。。

投稿: 青猫 | 2006年3月14日 (火) 21:22

はじめまして。ツィマーマンで検索して、こちらを見つけました。私は今年になって音楽のブログを始めました。「のだめ・・」からブラームスにはまり、ブラームスのピアノ協奏曲からツィマーマンにはまり始めているところです。今はラフマニノフの2番!!!です。昨日、遅すぎたかも・・・と思いながらも、電話して、5月のコンサートのチケットをゲットできて夢のようです。
 また、寄らせていただきます。

投稿: プーとパディントン | 2006年4月 1日 (土) 21:16

プーとパディントンさん、ようこそいらっしゃいませ(^^)。ツィマーマンファンの方においで頂けて嬉しいです。
プーとパディントンさんは、のだめ→ブラームス→ツィマーマンに至ったのですね。私ものだめは大好きです。登場する曲を全部聴きたくなるのでCDが増殖するのが難ですが(笑)。
ツィマーマンってブラームスと相性が良いですよね。今日は昼間、たまたまブラームスの1番(ラトル)を聴いていたのですが、20年前とは方向性が全然違ってて、でもこれはこれで良いなぁと見直していました。っていうか、旧盤よりも随分テンポは上がってるし、音色は煌びやかで洗練の極みだし、なんかやっぱりすごいわこの人、とほとほと感心していたのでした(^^)。

ラフマニノフの2番は、個人的にはもう決定版です。私にとって、あれ以上のラフマ2番は多分もう一生出会えないだろうなぁ、でもそれでも良いもんねっていう気分です。

5月のコンサート、楽しみですね。私も待ち遠しいです。

是非また遊びに来てくださいね(^^)。

投稿: 青猫 | 2006年4月 2日 (日) 01:39

 いや〜実に面白い内容で、一気に読まさせていただきました。私もショパンコンクールの前後からのツィメルマンファンで( NHKはコンクールの映像を流す前、彼の家の様子や妹にピアノを教える様子を流していた)、彼が地元に来たときにはすかさず行っていました。でも最近来てくれないとほざいていたら、今年の12月にコンサートがあります。今懐が寂しくてチケットが買えないでいますが、月末には買う予定です。ルイサダも行く予定。実はひょんなことでyoutubeでこのブラームスの協奏曲の動画を見つけたのですよ。それより少し以前からブラームスの協奏曲の第2が脳内再生されっぱなしで。で、家の中でCDを探したら、ブラームスのピアノ協奏曲の1番は見つかりました。バラードと舟歌も。でも肝心な大好きなNo.2がなく、でもまだ入手可能で近々購入予定です。No.1は入手不可能のようでした。DVDもあったのですね。でも昨今のテクノロジーの発達に感謝。No.2で微笑む様子も見れましたし。(笑)
とにかく何かと拘りの人ですね。サインは緑色でしかしないし。。。今まで自分のバラードの楽譜にサインしてもらってましたが、若かりし頃の自分のサインに驚いておいででした。
 でもWIKI読むと、最近は東京にいる時間が長いとか・・・。震災後はどうなのでしょうね。どこかに行かれていたりして。また色々なご報告お待ちしております。バイリンガルを目指す私としては英語のお話も興味あります。正直日本はいつまで住めるかわかりませんものね。。。。。。(福岡は玄海原発に何かあるとアウト)

投稿: りん | 2013年9月 7日 (土) 19:05

りんさん、初めまして。
コメントありがとうございました。
(すみません、先週出かけておりまして気付くのが遅れ失礼しました)

ルイサダさん、実は生で聴いたことが無いのです。
ショパンコンクールの時のことはうっすらと記憶にありますが。

ツィメルマンさんのソフトは大体DVDで視聴可能ですね。
ブラームスの協奏曲2曲もちゃんとDVDになって良かったです。
新しいものがなかなか出てこないのが難ですが。

アメリカにいらっしゃらなくなった分、日本にいる機会が増えたような感じですね。
震災の時も日本にいらしたそうですが。
最近は本当によく来日されるので、ありがたみが薄れているような気がしなくもありません。。。(あまり頻繁だとお財布が…)

英語はなかなか継続ができず、うわーっとやって休んでうわーっとやって、というのを繰り返しております。
だから上達しないんだと思いますが。
特段語学の才能が無いんですけど、そういう人間がこれくらいやるとこんな感じ、というのが伝わると良いと思っています。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

投稿: 青猫 | 2013年9月15日 (日) 21:10

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