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2006年3月 2日 (木)

[映画]ミュンヘン

なんか大昔に見てほとんど忘れてるんだけど、何も書かないのも気持ちが悪いのでメモ。

<ストーリー>
1972年、ミュンヘン・オリンピックの選手村で、イスラエルの選手11人がパレスチナ・ゲリラ「ブラック・セプテンバー」によって殺害されるという事件が起こる。イスラエルは国家的な報復を決意し、暗殺チームのリーダーとしてモサドのアヴナーに白羽の矢を立てる。アヴナーは人を殺したことなど無かったが、身重の妻を残して欧州に向かう。

★★★★☆

ネタバレ無し。

近年のスピルバーグ作品ではダントツに良いと思う。割とスピルバーグらしからぬスタイリッシュな感じもあって(失礼な)、よく出来てる映画だと思った。メッセージ性という意味においても、個人的には「シンドラーのリスト」よりもこちらの方が好き。あれはあれで良いと思うけれど、ちょっとやり過ぎな感も無いわけではないので。
まぁ、いずれにせよ、これは見た方が良い映画だと思う。政治的な是非の問題ではなくて、世界で起こっていることの「一端」を知るという意味で(あくまで「一端」だけど)。

基本的なストーリーは、アヴナー率いる暗殺チームがパレスチナのテロリストの幹部を一人一人始末していく様子を追っていく、というものなんだけれど、緊張感の持続のさせ方、緩急の付け方が絶妙。あと、70年代の雰囲気を非常に上手く出してて、私は映画版の「ジャッカルの日」を思い出した。あの追いつ追われつな感じとか、緊迫感に満ちた展開とか、ちょっとざらっとしてて色あせた感じの画面なんかもよく似ている。
こういう言い方が正しいかは分からないけれど、「ミュンヘン」は上質のエンタメ作品になっている。決して重いだけの映画ではないし、別に陰惨というほど暗いわけでもない。

キャストはアヴナーのエリック・バナがやっぱり良かった。バナってすごく普通の雰囲気なんだけれど、この「普通」っていうのがすごく大事。愛する妻がいてもうすぐ子供が生まれる、本当にごく普通の、しかも善良な青年が、「暗殺」に携わるという事実の重みがズンとくる。
そして、最初は任務に成功して喜んでいたアヴナーが、やがて自分たちの行為に疑問を持ち、また目に見えない敵に段々追い詰められていく様子にすごく説得力がある。
今更言うまでも無いことなんけれど、スピルバーグは「目に見えない恐怖」を描くのがえらく得意な監督である。テロや暗殺の恐怖って、要するに相手の見えない怖さで、疑心暗鬼ゆえに「やられる前にやってしまえ」になるんだと思うんだけれど、その辺の描き方がすごく上手いし、もちろんバナの演技も立派だった。

というわけで、久し振りにスピルバーグを見直した「ミュンヘン」でした。

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コメント

ミュンヘン、よかったですよね!
やはりあまり話題にならない日本の民意の低さよ(苦笑)
おっしゃるとおり、見えない敵への恐怖が、ハッキリ体感できましたよねー。
「ジョーズ」や「激突」にしても、出るまでが怖い!を見せるのが上手いスピルバーグ。
観客の想像力をバカにしないその手法が、シリアスでヘビーな題材をこれまたおっしゃるとおり「上質のエンタメ作品」に仕上げていますね。
テロとの戦いが「亡霊」との戦いだってことは「華氏911」でも描かれていましたっけ。
この泥沼の中、こういった映画を作るマイケル・ムーアもスピルバーグも正義の人と言えるかもですね。

投稿: 丸々 | 2006年3月 3日 (金) 22:40

ミュンヘン、日本ではちょっと地味な感じですね。売れてるのかなぁ?私が行った時は混み混み状態で、久々に前から四列目とかいうシンドイ位置で見てしまいましたが。

こういう作品を作るのはハタからは窺いしれない苦労があると思いますが(圧力とかもその他諸々)、スピルバーグは立ち位置がニュートラルで、かつ信念を感じさせて、非常に立派だと思いました。

投稿: 青猫 | 2006年3月 4日 (土) 19:48

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