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2006年4月29日 (土)

ツィメルマン ショパンのピアノ協奏曲第1番聴き比べ #5

さて、ごく一般的に流通しているツィメルマンのショパンのピアノ協奏曲第1番の音源に関するレビューは、前回まででひとまず終了。

今回は少々番外編的なブツで、先月大汗をかいて入手したツィメルマン@ショパン・コンクール本選ライヴ(1975)の録音である(このマイナーCD入手にいたる経緯その他については、コチラを参照)。(11月19日追記: もしかしたら、入賞者演奏会の演奏かもしれません。本選ライヴかどうか決め手が無く、ボチボチ調査中です。すみません)

Zimerman1975_2

録音状態があまり良くないのでちょっと公平に評価し難いところも多々あるのだけれど、まずは結論から。とりあえず「将来性を買われた優勝」に一票かなぁ。2位のディーナ・ヨッフェを聴いてないのでどっちが良いとかそういうことは分からないのだけれど。
確かにツィメルマンの演奏だな、という気はする。ただ、最初に聴いた時はちょっと荒いかなぁと思ったのである(まぁ、比べている対象というのが、Mr.Perfectであるところの現在のツィマーマン氏本人であったりするので、それはそれで公平さを欠いているとは思うのだが)。ただし、予選の演奏よりはずっと良くて、コントロールもきっちり効いてる感じ。こじんまりとした小品よりは構成のしっかりした大曲の方が向いているというのはこの頃から変わってないのね、と思ったりして。

第一楽章
ソロの冒頭はテンポゆっくり目で、しっかり丁寧に入ってくる。毅然としてるというか、妙に腰据わってないか?そして徐々にテンポアップ。指は大変よく回っているし、芯のある打鍵で粒もよく揃ってる。ただ、コンクールだから当たり前かもしれないけれど、そこかしこでミスタッチがあるのがちょっと惜しいかな。ただ、ミスをしてもその後ヨレヨレと崩れることはないので、そういう意味では年に似合わない落ち着きと風格があって立派。

第二楽章
これぞ、ショパン的デリカシー。移ろいゆくポエジー。澄み渡った小川を思わせる、清冽な演奏である。まるで、星がキラキラと降ってくるようなそんな雰囲気がある。

一楽章もニ楽章も、技術的な面はさて置いて(置くのか)、音楽性の成熟度の高さには驚かされる。まるでグラデーションの如く無限に変化する音色と音量は、既にこの頃から健在。この人の辞書には「のっぺり」とか「平板」とかいう言葉は存在しないのだね。
そして、とにかくしっかり歌ってるんだなぁ。瑞々しく、切々としててすごく良い。ルバートのかけ方なんかも絶妙である。しっかりテンポを落としてタメるんだけれど、流れは阻害しないしギクシャクもしないし。こういうのはやっぱりセンスというヤツですね。

ちなみに、彼の場合、基本的には繊細で詩情溢れるピアニズムで、いわゆる「男性的」な演奏とは違うんだけれど、控え目であるとか柔弱である印象は不思議と無い。その音楽に、極めて堅固な、確固とした何かを感じるのは、今も昔も変わらないかな。

第三楽章
生き生きとしてて精彩に満ちている。グングン前に進む推進力に満ちた演奏で、パンチも効いているし、抜群に冴えてて、鮮やかな印象。なるほど、若武者の如く果敢な様が何とも良いですなぁ。弱冠18歳にして、オケを引っ張るかのような感じもあり、「世界制服へとまっしぐら」(Byポエム佐久間…じゃありません)という形容も、あながち間違いではない。
こういう三楽章だと客席は盛り上がるね。

とまぁ、結局のところベタ褒めしているけれど、その実、前回までに紹介した3種類の録音の方が、技術的な精度は圧倒的に高いと思う。ライヴ録音とスタジオ録音を単純に比較するのは愚かしいとは思うけれど、無編集と思われる1979年のライヴ版(コンドラシン版)と比べても、完成度という点で歴然とした差がある。じゃぁ、1999年の弾き振り版(こちらはスタジオ録音だけど)と比較してどうかというと、これまた40超えてからの方が圧倒的に上手かったりする。
そんなの当ったり前じゃん、というかもしれないけれど、「ピアニストの技術的なピークは20歳前後で、後はゆるやかに衰えていく」という人もいるくらいなので(おそらく、手指の「運動能力」という意味では、スポーツ選手やダンサーなんかとさほど変わらないんだと思う。もちろん、衰え方は個人差が大きいと思うけれど)、20代に入ってから30代にかけて、技術的にあれだけグングンメキメキ伸びた(ように聴こえる)というのは、ちょっと驚異的なことであるように思う。ツィメルマンの場合は、内面の充実と技術的な進化が、かなりの時期まで正しく比例していたような気がする。普通は反比例するんだけどねぇ。

だから、彼がショパン・コンクールで評価されたのはむしろ音楽性とか表現力の方なんじゃないのかな?という気がしないでもないのである。確かに三楽章とか聴いてると技術的にも極めて高水準だと思うけれど、それよりも、18歳であれだけ「音楽的に」弾けるというのはなかなか無いよなぁ、と感心した私(かなり贔屓目が入ってることは自覚してますが)。

そんなワケで、いよいよ次回は総括ということで最終回。ってまだ書くのか。

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