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2006年4月30日 (日)

ツィメルマン ショパンのピアノ協奏曲第1番聴き比べ #6

というわけで、まとめ。というほど大したものでもないのだけれど。

よほど好きでもない限り、ツィメルマンのショパコンを複数枚揃えるという人もいないだろうから、結局どれを買うのが良いのかという話にもなってくると思うので、各ポイントや書き忘れたことなどを簡単に。

①ジュリーニ版

B000060N7Rショパン:ピアノ協奏曲第1番・第2番
ツィマーマン(クリスティアン) ジュリーニ(カルロ・マリア) ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団
ユニバーサルクラシック 2002-03-21

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ジュリーニ版はとにかくアラが全く無く、非常にスタンダードな1枚。全ての音が非常にきっちり鳴っていて、変な味付けも皆無なので、実際にピアノを弾く人がショパコンを勉強する時のお手本なんかに良さそうな感じ。


②コンドラシン版

B00005FJNUショパン:P協奏曲第1番
ツィマーマン(クリスティアン) アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 コンドラシン(キリル)
ユニバーサルクラシック 1999-11-01

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↓コレにも収録されてます。

B00002DEH7Chopin: Piano Concertos; Works for Piano & Orchestra
Fryderyk Chopin Carlo Maria Giulini Eliahu Inbal
Deutsche Grammophon 1999-11-09

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HMVで扱いあり。
コンドラシン版は、個人的には一押し。三楽章なんか、何度聴いても「すごい…」と唸ってしまうほどオトコマエで、しかも美しい。まさに文武両道の貴公子的演奏。三楽章後半(6分以降とか)って相当難所続きだと思うのだけれど、圧倒的なテクで見事に弾き切っている。切れ味が鋭くて、バッサバッサという音が聞こえてきそう。
ついでに、これのDisc2にはオケ伴奏付きの「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」がくっついてくるというのがなかなか美味しい。元々はジュリーニと録音したショパンのピアノ協奏曲第2番のLP時代のカップリング曲だったんだけど(当時は第1番と第2番は別々のLPだったらしい)、CD化された際に第1番と第2番が1枚のCDに収まった代わりに、弾き出されて行き場を失ったものと思われます。そういう意味では貴重。ポロネーズ独特のリズムや跳躍感が素晴らしいし、身悶えするほど甘くてロマンティックなフレーズも有り。あーもう、ポロネーズ集を録音して欲しいよう(録音して欲しいものが一杯だ…)。


③本人弾き振り版

B00005FJ6Fショパン/ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 作品11
ツィマーマン(クリスティアン) ポーランド祝祭管弦楽団 ショパン
ユニバーサルクラシック 2000-01-13

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弾き振り版は、もう好みの問題としかいえない。ツィメルマンのファン、ショパンの協奏曲好き、コアなクラシック音楽好きは、あるいは「聴かなくてはいけない」CDかもしれないけれど、「とりあえずショパンの協奏曲を聴いてみたい」という向きにはあまり勧めない。大変オモシロイ演奏ではあるんだけどねぇ。。。3枚目くらいのショパコンとしてはよろしいんじゃないでしょうか。


④コンクール本選ライヴ
これに関しては入手困難だし、別にお勧めというワケでも無く。何しろ、ショパン・コンクール後のツィメルマンの成長ぶりというのは、これだけ伸びる人も珍しいってくらい劇的なものなので、ファンでなければ無理して10代の頃の演奏を聴く必要性は無いような気がするし。ただ、「ああ、お髭氏にもこんな時があったのねぇ」とか「お髭氏も人間だったんだ!」などというある種失礼な感慨に浸れるCDではある。って書くとまるで「下手だ」といってるみたいだけど、比較対象が「世界一上手い(現)ツィメルマン」では18歳ツィメルマンも分が悪過ぎるということである。


さて、何故か長期連載になってしまった聴き比べ企画もこれにて無事最終回。

#0 アルバム情報
#1 ジュリーニ版
#2 コンドラシン版
#3 弾き振り版①
#4 弾き振り版②
#5 ショパン・コンクール本選ライヴ
#6 まとめ(本記事)

とりあえず完走できて良かったです。

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Pianist: Krystian Zimerman」カテゴリの記事

コメント

感想・完走お疲れ様でした。

音楽音痴でまともなコメントもできませんが、とにかく青猫様の怒濤の如く"愛"と"勢い"でひた走るレビューに圧倒されました、ハイ。

>何度聴いても「すごい…」と唸ってしまうほどオトコマエで、しかも美しい。まさに文武両道の貴公子的演奏。三楽章後半(6分以降とか)って相当難所続きだと思うのだけれど、圧倒的なテクで見事に弾き切っている。切れ味が鋭くて、バッサバッサという音が聞こえてきそう。

こんなものを読んでしまった日には、何がなんでも聴かないといけないような気になって・・・うひー(^^ゞ
DarkLordの面目躍如といったところでしょうか?

投稿: 玉兎 | 2006年4月30日 (日) 22:23

音楽を主体的に聴く方は音楽音痴に非ず、だと思いますです(^^)。

相変わらずダラダラなレビューをお読みいただき、ありがとうございます。ぺこーり。
軽い気持ちで始めた連載ですが、どうしてこんなに長くなってるんでしょうか(笑)。最初は3回で終わるつもりだったんです。ええ、本当に(倍じゃん…)。「愛」が溢れてこぼれているのは、PJの「キング・コング」やお髭氏のショパコン(新録)だけではないということですね。人の振り見て我が振り直せってヤツです(比べるのも何ですが)。

コンドラシン版は結構マイナーなんですが(基本的に廃盤なので)、ショパンがお好きな方には猛烈プッシュしたい録音です。熱く、麗しく、ひたすらカッコ良いのですよ。そして、なんであのテンポであんなにちゃんと弾けるのか、非常に謎な演奏でもあります(^^;)。って、あれ、またSithモード入ってきたぞ(笑)。

投稿: 青猫 | 2006年5月 1日 (月) 23:12

愛に満ちあふれたレビュー、楽しく読ませていただきました。
すっかりしっかり誘惑されまくって、ここ最近の私、マスターのラフマニノフとショパンのヘビー・ローテ中です。この方の曲は、聴けば聴くほどアブナイ何かのように取り込まれてしまいそうです。(これでライブを聴いたらどうなっちゃうんだろう)

投稿: すなみ | 2006年5月 2日 (火) 01:36

お髭氏の演奏を楽しんでいらっしゃるようで、大変嬉しいです(^^)。

ショパンはバラード集でしょうか。
マスターの演奏には、強烈な求心力と恐ろしいまでの説得力がありますよね。思わず、「この曲の演奏は、これしかない!」という気分にさせられます(そして他の奏者の演奏を受け付けなくなってしまうという弊害が…)。

マスターの手にかかると、どんなつまらない(?)曲も、途端にキラキラしだして名曲にへーんしーん!というのも素敵(^^)。←やや耳が腐り気味?

コンサート楽しみですね♪

投稿: 青猫 | 2006年5月 2日 (火) 21:02

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