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2006年6月27日 (火)

音楽の友 2003年7月号

ちょっと長くファンをやってる方ならお持ちの方も多いと思われる、音楽の友の2003年7月号。お髭氏が前回、来日した際の特集号である。

ネットで「インタビューが大層面白かった」という情報を得たのでいずれちゃんと探そうと思っていたのだが、先日、実家の近くのブックオフに行ってみたら実にあっさり発見。ここは音友のバックナンバーが豊富にあることは分かってたのだが、ここまで労なくして見つかって良いのだろうか(もしかしてちょっとマゾッ気入ってる?でもさ、お髭氏の絶版CD探すのなんか、えらい大変なんですよ…)。

さて、これを棚から引っ張り出した瞬間、顔がどばっと緩んだね。古本屋で音友をまじまじと眺めてにやける女。しかもにやける対象はユンディやマキシムなどではなく、ほとんど白髪の(以下略)。

Ontomo200307

内容は以下の通り。
公演レポート(カラー)
来日記者会見の様子(カラー)
講演会「ツィメルマン、「ピアノ」を語る」(「スタインウェイ・デー」記念講演から)の要約(カラー)
インタビュー(カラー+モノクロ)
コンサートレビュー(モノクロ)
アリシア・デ・ラローチャの引退コンサートで花束を贈るツィメルマン(モノクロ写真)。

なんか盛りだくさん過ぎて眩暈が…。

中でもインタビューが抜群に面白かった。

内容は、どういう風にレパートリーを広げるのか、コンサートプログラムの作り方、現代音楽について、バーゼルでの教育活動について等々。

お髭氏ってよく作曲家の自筆楽譜をチェックしているみたいだけど(ラフマの時もフィラデルフィアまで行ったとかいってたし)、ブラームスの協奏曲やリストのソナタの自筆楽譜を見た時のことなんかを話している。自筆にこだわる理由については以下のように述べている。

「この作品をブラームスが大急ぎで書いた時のヒステリーぶりを見たかったからです。手書きの原稿を見ると、その人の性格についての情報が得られます。たとえば、ある箇所で座りこんでしまって、何度も何度も消したり書いたりして、紙に穴があきそうなほどなのが見てとれる。ところが同じ作品の別の箇所ではスイスイと空中を泳ぐよう。楽想がすでに出来上がっていて、快調に進んでいるわけです」(P.153)

それにしても、こういう一次資料重視な姿勢ってやっぱり研究者のそれだよねぇ、と思う。
ちなみに、この30年でブラームスのP協奏曲の草稿を見たのはお髭氏だけだそうだけど、果たしてそれで良いんですか、ブラームス研究者の皆様。

ちなみに、彼のPower Bookには、自分で書いた山のような楽譜(複数バージョン)がファイルで収められてる模様(弾く曲の楽譜は、全て自分で書いてみるんだそうだ)。質問にもPower Bookの中味を見せながら答えていたようで、メカ大好きな感じがプンプンと伝わってくる。文字通り「これ(Power Book)が無いと生きていけない」状態ではないかと推察される次第。

バーゼル大での教育についても色々と喋ってて(今はもう辞めてしまったそうだけど)、愛情深い、熱心な先生であったことがうかがえる。

最後に演奏哲学を語ってる部分は、非常に興味深い発言をしていた。今まで、断片的には聞こえてきていた内容なんだけれど、まとめて読んで色々と得心した。

「私は楽器に興味があるのではありません。楽器は音楽を表現するための道具として使うだけです。作品に対する興味はむろん少々多くありますが、もっと興味があるのは、作品のなかに潜んでいる情動です。音符には興味がありません。音色にもです。でも、そこに私のパラドクスがあるのです。私は楽器の製造や立ち上げに関わり、音響にこだわり、音を分析するのです。私の音楽に影響を与えるファクターとしてのピアノを排除するために、ピアノという楽器に関心を持つのです」(P.154)

音楽(表現したい「内容」)に完璧に集中するために、それ以外の外部的な要素(楽器や音響)についての不安材料(リスク)を完全に排除する。いうなれば、後顧の憂いをたつ、ということかな。

「音色に興味がない」という発言を意外に思った人も結構いたようだけど、要するに、音色の吟味も含めた演奏技術というのは、決してそれが最終目的ではあり得ず、ごくごく基本的な前提に過ぎないということ。テクニックのために音楽があるのではなく、テクニックは音楽のためにある。当たり前なことのようだけど、あれだけ腕が立つ人がいうと重みが違いますよね。


バックナンバーの紹介なので、引用なんかも少し入れてみました。ただ、音友のバックナンバーはそんなに入手が難しいものではないと思うので、是非古本屋さんででも探してみてください。

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Pianist: Krystian Zimerman」カテゴリの記事

コメント

こんにちわ!ナイスなもの手に入れられましたね~。表紙がお髭氏なんて、青猫さんがにやけるのも無理ありませんね。来月号の音友ももしかしたら・・・ドキドキ!

音がすばらしい、と絶賛を送っておきながらこういうのもなんですが、音色に興味がないという気持ち良くわかります。

あの方は本当はピアニストなんかじゃないと自分では思っているんでしょうね。自分とかピアノとか消えてしまえ、ぐらいに感じてるんじゃないでしょうか・・・。残したいのはただ「音楽」なんでしょうね。

いつも貴重な情報をありがとうございます!今後も頼りにさせてください~(笑)!

投稿: petit viola | 2006年6月27日 (火) 17:37

こんにちは。

ふふふ、お写真がどれもなかなか素敵な感じで良いですよ~♪

私も散々音色がきれいとか技術的に上手いとか言いまくっといてアレなんですが(^^;)、お髭氏の演奏には、きれいとか上手いとかでは済まされない何かというのが必ずあるような気がします。浅薄さとは無縁だし、心の深いところにズバっと切り込んでくるものがあるんですよね。

ちなみに、私はこれを読んで、最近とみに感じていた「お髭氏って理知的に見えて、実はすっごいロマン派でemotionalな人だよねぇ…」という印象をまた強めました。

投稿: 青猫 | 2006年6月28日 (水) 20:58

今日お天気良かったので、下のチビを連れて(電車好き)ちょっと遠くの古本屋まで電車に揺られて行きました。かなり大きなビルのワンフロア殆ど全部使ったところなんで、きっとあるだろうとはやる心を抑えつつ出向いたのですが、音楽の友なんて一冊もありゃぁしませんでした(泣)。クラシック系雑誌は店主の趣味により置いてないのかしら???鉄道雑誌はラック1台まるごとだったので息子大喜びでした。後はオークションかなぁ。

前置きが長すぎてすみません。
ツィメ氏の内なるエモーション、普段の落ち着いた態度、表情等からは分からないところが、私的にはそそられますね。
狂わせてみたい~(笑)。

バツェヴィチでちょっと狂っていた気もしますけど(爆)。

投稿: petit viola | 2006年6月29日 (木) 23:31

こんにちは。

音友、見つからずに残念でしたね。大昔のものではないから、数としては結構古本市場に出てるかなぁと思ったのですが…。お近くにクラシック音楽関係を得意にしている古本屋さんなんかがあると良いですね。無事、入手されることをお祈りしております。

お髭氏、見るからに暑苦しいではなくて、冷静と情熱のせめぎあいみたいなところがあるのが、何とも良い感じです。

投稿: 青猫 | 2006年7月 1日 (土) 08:18

"バーゼル大での教育についても色々と喋ってて(今はもう辞めてしまったそうだけど)、愛情深い、熱心な先生であったことがうかがえる。"

Would it be possible for you to scan that part of the article he is talking about his piano teaching in Basel and send it to me as email attachment?

Thank you
Eimo

投稿: eimo | 2006年8月 7日 (月) 23:28

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