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2006年6月22日 (木)

Krystian Zimerman, A Pianist Who Abhors Compromise

結構面白かったので、一応訳してみました。乱暴な素人訳&結構意訳につき、危なっかしいところがある点、ご了承ください。ただし、間違いは教えて下さい(自分で発見した場合は随時直します)。

こういうの読むと、やっぱり、お髭氏って結構難しい人だな、と思う。

元記事

クリスティアン・ツィメルマン 妥協を拒むピアニスト

David Patrick Stearns
Philadelphia Inquirer
2004年11月8日

ポーランド人のピアニスト、クリスティアン・ツィメルマンは、いかなる音楽的系譜や典型例といったものからも距離を置いている。彼は大層真摯で学究的であるが故に、1975年に18歳でショパンコンクールの勝者として有名になって以来、年に50回を超える演奏活動は行わないなど、アンチ・キャリアな側面を保持している。それらの大部分は、多かれ少なかれ、妥協に対する気難しいまでの嫌悪を反映しているのである。
彼は録音には積極的ではなく、彼があるレパートリーに対して準備ができたと感じるまでには数十年を必要とすることもあり、さらにそれから、録音された音源を承認するまでに数年を要するのである。そうした慎重さと対照的に、本日のKimmel CenterにおけるPhiladelphia Chamber Music Society主催の演奏会のプログラムをツィメルマンが発表したのは、わずか数週間前のことであった。
彼は強迫観念に囚われたへそ曲がりなのか、それとも非凡な音楽観の持ち主なのか?木曜日、彼のNYのマネージメントオフィスであるICM Artistsの事務所においては、彼は概ね後者であった。

Davivd Patrick Stearns: 色々なところで、あなたはクオリティの維持を確実なものとするするために、自分のピアノとともに演奏旅行をするといって譲らない人として知られていますね。

Krystian Zimerman: 私は人には同じようにしろとは勧めません。大層時間を取られますし、非常にコストもかかります。当てにならない輸送会社を頼らなければいけませんし…。私はドイツ中部の野原で立ち往生して、ベルリン・フィルに間に合わなかったんです。まさに2ヶ月前のことです。そして、私は今、その会社を訴えなくてはいけないんですよ。全くもって馬鹿げてます。

DPS: 皆、しばしば、あなたがそのような状況下で、どんな風にお金を稼いでいるのだろうかと思っています。あなたの2人のお子さんはそろそろ大学生ですよね。スイスの美しい都市、バーゼルに住むというのは、安上がりではないでしょうし。

KZ: 一体何にお金が必要でしょう?金銭は最も小さい問題です。私は誰しもが貧しかったポーランドの出身ですし。素晴らしい生活をしていますよ。

DPS: あなたは、レパートリーのわずか1%しか録音しないと仰ってきました。あなたが躊躇する原因は何ですか?

KZ: 私にとって、録音というのは、決定的に素晴らしい現象を、2トラックのステレオの中にいかにして押し込むかという問題なのです。デジタル録音が登場したとき、いかにヴァイオリンが金切り声をあげているように聴こえたか覚えているでしょう?最初の6年間というもの、私はこの技術を嫌って、録音をしなかったんですよ。
私は科学技術というのは、すさまじいまでに演奏を変えてしまったと思います。音質というものは音楽に対して、悪く作用しています。音楽のためにはなっていないのです。これが極めて滑稽に聞こえるということは分かっていますよ。しかし、音そのものが音楽よりも重要視されるあまり、皆、音楽というストーリーを聴かなくなっています。音楽とは音ではなく、音とともに物語られるストーリーなのですが。

DPS: それでは、もし、CDの音の美しさというものが、音楽が持つメッセージを凌駕しているのであれば、主にその罪を負うべきは、あなたがしばしば共演したヘルベルト・フォン・カラヤンということになりますね。彼の晩年20年間においては、実演でもCDでも、彼が指揮したもの全てが、執拗なまでの、同種の輝きを有してます。

KZ: 私は最初のCDの披露の場にいたのですが[1980年代初頭]、危うくその場を立ち去るところでした。カラヤンはそこにいましたが、彼がCDが普及されなくてはならないと思った理由というのは、そうなれば自分のヨット上でCDをかけられるからだったんです。

DPS: CDは、正確さに対する聴き手の要求も高くしましたね。これについてはどうお考えですか。

KZ: アルトゥール・ルーヴィンシュタインが私に話してくれたのですが…。彼は午前中にブラームスのソナタの2番に初めて目を通して、それを夜のコンサートで弾いたそうです。私は信じられないと思いましたよ!だけど、彼は言ったのです。「当時は、私たちは正確に弾かなかったんだよ。通して弾かなかったりね。曲の強い印象を与えようとしたんだ」。今、私は自分の学生たちに、最も大事なのは音符ではないと言っています。私は彼らに、作曲家がその曲を書いた動機というものを弾いて欲しいと思っています。

DPS: あなたの練習習慣はどのようなものですか。

KZ: コンサートホールに行くまで、曲の最初から最後まで通して弾かないこともあります。私にはその曲の理想形がありますが、実際に鍵盤に触ることによって、あまり早い段階で妥協をしたくないのです。私はその曲を知ろうと努めますが、練習は最小限に留めておきます。そうすれば、舞台上で最初にそれを生み出すことができるのです。

DPS: あなたは共演者に合わせてテンポを変えることでも知られますが。

KZ: 「私が」テンポを変えるのではありません。コンサートホールの音響によってどうするかが決まります。あらゆる楽曲は、コンサートごとの演奏というものに変わります。かつて、私がカラヤンとザルツブルグとルツェルンで共演した時、彼はルツェルンでは高度が高いから演奏のテンポが上がると言いました。心拍数も上がるし、と。私は「そんなバカな」と言ったのです。だけど、演奏を比べてみると、ルツェルンのものはテンポが速かったのです。脳や心臓が命じるんですね。
また、時が経てば、演奏は変わっていきます。私はリストの曲の2つの音源を比較したのですが、一つは1985年のもの、もう一つは1986年、18ヶ月後のものです。ただ、1986年には私の母が亡くなっているのですが。私は、それらが同じ人間の演奏であるとは信じられませんでした。私は何か違ったことをしているわけではないのですよ。音楽というのは、実に、魂から生まれるものなのです。あなたも、これより適切な説明というのは見出せないでしょう。音楽とは、魂の声なのです。

DPS: そして、最愛の人の死は全てを変えるでしょうね。

KZ: 望むと望まざるとに関わらず、ですね。[母が亡くなって]6ヶ月間というもの・・・ピアノから鳴ってくるのは叫びでした。取り乱した叫びでした。

DPS: あなたのラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を演奏する計画というのはどうなりましたか?2000年にフィラデルフィアで演奏すると発表がありましたが、それから中止したんでしたね。

KZ: 予定していたわけではありません。第3番は、ステージ上に持ち込むのが困難なほどの情動を内包しています。重火器みたいなものです。もし第3番をコンサートで演奏するとしたら、おそらく我を失うか、燃え上がってしまうでしょうね。

DPS: あなたはそもそも、何も考えないでただ演奏するということはあるのですか?

KZ: ちょうど昨日、ジャズを弾きましたよ。

DPS: 即興演奏をするのですか?

KZ: そうです。だけど、あなたがそれを聴くことは無いでしょうね。売るためのものではないのです。

DPS: 売る?

KZ: 私は夜、素晴らしい曲を探し出したりして過ごしますが、それらをコンサートで演奏するというわけではないのです。実際、新しい曲を探して練習をしている私自身と、それをコンサートホールで売る人間という、2人の人間がいるのです。私は48年くらい、両者を統合させようと試みているのですよ。

DPS: 2人の間には、どのくらいの距離があるのですか。

KZ: 分かりません。


※[ ]は原文に付いている捕捉です。

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コメント

こんばんは!またまたおじゃましています。
3番演奏して、燃え上がるクリスチャンを見たい!ような気もしますよね。(笑)ドイツグラモフォンのHPにもインタビューがありますが、3番の解釈はとても難しいというような事をおっしゃっているような・・・英語なので。(^_^;)
http://www.deutschegrammophon.com/special/index.htms?ID=zimerman-rachmaninov
このインタビューを読んで、初めてツィメルマンというピアニストの演奏を聞いたのは、FMラジオだった・・・という記憶が蘇ってきました。

投稿: Yoshimi | 2006年6月23日 (金) 01:36

こんにちは。
とっても興味深いインタビュー紹介ありがとうございます。うーんやっぱりマスターって、マスター(マイスター)なんだなーというか、他人が見ると一つの瑕瑾もないようなお茶碗を気に入らないと割ってしまう名陶工の雰囲気を醸し出しているような(^^;)
それはそれとして彼のジャズって聴いてみたいですね。ガーシュウィンから想像するにさぞやさぞや...

投稿: すなみ | 2006年6月23日 (金) 10:26

こんばんわ!こちらの記事大変興味深かったです。紹介して頂いてありがとうございます。私が(多分青猫さんも?)ツィメさんに対して抱いている、まっすぐで不器用な人というイメージをまた固めました(笑)。一々、運送会社訴えなきゃならないなんて・・・そりゃそうしないと、ツィメさんも訴えられそうですもんね。
後お母様の死のくだりでは、ちょっと涙してしまいました。そういう事があったのかと。最後の方のコメントで彼が使う「sell」って言葉がすごく悲しく聞えてしまったんですけど。彼のお家のリビングで(私のお家の狭いリビングでもいいけど)奏でてくれるピアノはどんなに素敵でしょうねえ。売るためのものでない音楽は。

自分の記事に青猫さんの記事を紹介させていただいたのでトラックバックさせて頂きました(本番は初めてかも!です。ドキドキ)

投稿: petit viola | 2006年6月24日 (土) 01:23

Yoshimiさん、こんにちは。
是非是非、3番弾いて欲しいですよね~。どうぞ燃え上がって下さい!という感じです。ご紹介のグラモフォンのインタビュー、こんな感じでしょうか。
「3番には大きな敬意の念を抱いていますが、現段階では、私の3番についての思考をレコーディングに反映させる準備ができてないと思っています。3番の演奏解釈は大層複雑で、上手くいくかどうか分かりません。本当に感情に溢れた曲なので、私は聴くたびに涙してしまうのです。先ほど言ったように、ラフマニノフの協奏曲というのは演奏するものではありません。協奏曲を生きるものなのです。そしてこの曲(3番)を演奏するということは生命を危険に晒すようなものなのです…」
ラフマ3番を聴くたびに泣いちゃうというお髭氏がとても好きです(笑)。でも、あなたの演奏で泣きたいわ、というファンが大勢いますよ~とご本人に言いたい…。

このインタビュー、CDのライナーノーツに載っていたものだったと思うのですが、私のラフマのCDのライナーノーツが不良品なので(表紙だけお髭氏で、中身は全然違うオペラだったりするのです(^^;))、ちょっとその辺記憶が曖昧です。

投稿: 青猫 | 2006年6月25日 (日) 09:46

すなみさん
お髭氏のジャズ、今までだったらちょっと想像できないな~と思ってしまうところですが、ガーシュインが思いのほか(失礼だってば)素晴らしかったですものね。意外と大胆に遊ぶのも似合うというか。うーん、こんなに何でもできて良いのかって感じも無きにしもあらずです(^^;)。
ジャズでも何でも、お髭氏がお遊びでピアノを弾く姿、見てみたいですよね。っていうか、練習風景を見たいですが。

投稿: 青猫 | 2006年6月25日 (日) 21:12

petit violaさん
> まっすぐで不器用な人
融通は利かないでしょうし(笑)、決して世渡り上手でもないでしょうし。

私も「sell」はちょっとキツイ言葉だなと思ったのですが(英語のインタビューだから表現が直裁的になったのか、もしくはちょっとペシミスティックな気分だったのか…)、まぁでも、そういうジレンマってあるだろうなぁとは思います。純粋に音楽を愛する気持ちと、それをビジネスにすることとの折り合いをどうつけるのか、みたいな。お髭氏的には、コンサートのためとかではなくて、何も考えないでただただ曲を勉強するのが一番楽しいのかも…(^^;)。
それにしても、近しい人に聴かせるためだけに弾かれる彼のピアノというのは、どんななんでしょうね。

あ、TBありがとうございました~(^^)。

投稿: 青猫 | 2006年6月25日 (日) 21:35

こんばんは!
我を忘れて、燃え上がり、その瞳には涙が・・・なんていう状態でピアノ弾かれたら、こちらの心臓は口から飛び出しますよね・・・。あぁいつか3番弾いて欲しい!
そう言えば、いろいろ探していたら、う~んと昔にNHKのFMでベルリンフィルの定期演奏会を録音したモノが出てきました。小澤征爾さんの指揮、ツィメルマン様のブラームスP協1番です。瑞々しくて、美しくてエネルギッシュで。。。年代をメモし忘れたのですが、たぶん80年代かと。

投稿: Yoshimi | 2006年6月25日 (日) 23:48

Yoshimiさん、こんにちは。

貴重な音源をお持ちですね。羨ましい~。
小澤氏との共演でブラームスですか。かなり爽やか&キレイ目路線と想像するのですが(笑)。比較的重めなバーンスタイン版とはまた雰囲気が随分違うんでしょうね(^^)。

投稿: 青猫 | 2006年6月27日 (火) 00:27

お詫びです。

その後、とある方のご好意でラフマP協奏曲のライナーノーツ日本語版を確認させていただいたのですが、思いっきり誤訳してました。ゴメンなさい!

私ってば、勝手にお髭氏を泣かせてしまいました…。願望?(殴)

間違いは、「本当に感情に溢れた曲なので、私は聴くたびに涙してしまうのです」とした部分です。
原文は
it's so laden with emotion that it tears me to pieces every time
I hear it.
ですが、「it tears me」のtearは他動詞なので、これで「泣く」などという意味にはなりません。「it tears me to pieces」で「バラバラに引き裂く」くらいの意味でしょうか。全体の意味としては「本当に感情に溢れた曲なので、私は聴くたびに身を引き裂かれるような思いがするのです」という感じですね…。
本当に失礼しました。猛省。

教訓:和訳する時は、マメに辞書を引きましょう。

投稿: 青猫 | 2006年7月 7日 (金) 02:49

あらぁ~泣かせたかったわぁ(笑)。
原文の方は読んでなかったので気付きませんでしたけど、私もよくやりますぅ。易しい単語の方が多義語である場合が多いんですよね。易しい単語ばっかり続いて並んでるとかえって、どういう意味かさっぱりわかんない事ありません?

この記事の場合いづれにせよ、ツィメ氏の心は激しく揺さぶられているのですから、意味合い的にはそんなに遠くないですもの。オッケーですよ!いつも記事を翻訳して下さってありがとうございます!

投稿: petit viola | 2006年7月 7日 (金) 20:51

petit violaさん、こんにちは。

温かいお言葉、ありがとうございます(;;)。願望というか思い込みのなせるわざですが、何ともチョンボ過ぎです。。。
仰るとおり、往々にして易しい単語ほど読み違えちゃうんですけどね~。

和訳は懲りずにやろうと思ってます。何しろ、英文記事の場合、ザーッと読んでも、内容がなかなか脳ミソに残ってくれないので(鳥頭)。いっそのこと全訳しちゃってブログに残したほうが、後々良いかなぁと思ってます。

投稿: 青猫 | 2006年7月 9日 (日) 16:09

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