The Piano Shop on the Left Bank
![]() | The Piano Shop on the Left Bank: Discovering a Forgotten Passion in a Paris Atelier Thaddeus Carhart Random House Inc (P) 2002-03-12 by G-Tools |
総語数71,000、YL8.5くらい?
パリに住むアメリカ人の筆者は、子供の幼稚園の送り迎えごとに「デ・フォルジュ・ピアノ店」というどこか謎めいたピアノ店の前を通りかかり、何となく気にかかっていた。しばらく前からピアノを買いたいと思っていた筆者は、ある日、意を決して「デ・フォルジュ」のドアをノックしてみる。それは、単に中古ピアノを手に入れるというだけではなく、「ピアノ」という奥深く、魅惑的な世界への扉でもあった。
ピアノという楽器を愛する全ての人へ。
思わずキャッチコピーもどきを捻り出してしまうほど素晴らしい、ピアノにまつわるノンフィクションである。ノンフィクではあるが、その語り口は詩的かつファンタジックであり、まるで小説を読んでいるかのようであった。
筆者と、由緒のあるピアノを魔法のように再生し、生命を吹き込むピアノ職人リュックとの交流を中心に、ピアノにまつわる様々な(主に筆者の身近な人々の私的な)エピソードが語られるが、どれも珠玉の物語といった趣。
また、筆者が、デ・フォルジュに出入りしたり、ピアノのレッスンを受けたりしながら、長らく忘れていた音楽の喜びを取り戻していく様子は、読んでいて心温まるものがある。例えば「大人のピアノ」現在進行形の方にとったら、我が身のことのように思えるのではないだろうか。
また、この本には様々なピアノが登場する。プレイエル、エラール、スタインウェイ、ベヒシュタイン、ベーゼンドルファー、ファツィオーリ等々。それぞれのピアノの魅力が丁寧に、繊細に描かれており、ピアノといえばスタインウェイが一番なんだろうな、と漠然と思ってた私には結構目から鱗であった。
実はこれ、数年前に邦訳を見かけて以来、とても気になってた本だったので、ついつい邦訳も購入してしまった。とても良い翻訳で、こちらはこちらで楽しかった。ちょっとしたピアノのお勉強にも良い。
![]() | パリ左岸のピアノ工房 T.E. カーハート Thad E. Carhart 村松 潔 新潮社 2001-11 by G-Tools |
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コメント
ううむ、強烈な誘惑が。
これでサーモスタット壊れたかのような過激な暑さだったら、朦朧とした意識下で、ふらふらっとぽちっとな、してしまいそう~(@◇@;;)辛うじて暑さが一段落しているので踏みとどまっています。熱帯雨林のレビューも高いですね。
投稿: パインツリー | 2006年8月13日 (日) 22:13
パインツリーさん、こんばんは。
これ、ピアノ弾かれる方は面白いんじゃないかと思います(多分、弾かない方でも大丈夫だとは思いますが…)。
ノンフィクションといっても、堅苦しさとか殺風景な感じはなくて、非常にトーンが優しいですよ。
観光地ではない、生活感溢れるパリ(カルチェ・ラタン)の描写も魅力です(^^)。
投稿: 青猫 | 2006年8月14日 (月) 00:31
この本、大好きです〜!
時々引っ張り出して読み返してます。
ピアノ好きにとってはファンタジーに近いですよね。
私が読んだのは邦訳ですが
原書を読める青猫さんがうらやましいです。
投稿: かねこ | 2006年8月14日 (月) 07:32
かねこさん、こんにちは。
扉を開けたらその奥には別世界が広がってて…って、本当にファンタジーですよね。何しろ、リュックは「妖精」のお世話係ですからね(^^)。
それにしても、こんなピアノ生活を送ってみたいものです。
実はこれ、5月くらいから読んでいたのですが、のんびり読みながら、もう一冊買ってお髭の師匠に「帰りの飛行機の中でどうぞ」なんていってプレゼントしようかなぁなんて妄想が脳裏をかすめたことがあったんですよね(^^;)。結局、釈迦に説法だわと思って、止めたのですが…。
投稿: 青猫 | 2006年8月14日 (月) 23:53