Krystian Zimerman speaks #2
続き、インタビュー部分。
あなたのピアノの訓練は完全にポーランドでなされました。あなたは自分をポーランドのピアニストだと思いますか?
私は大変幸運なことに、国から国へ行ったり来たりするような場所に住んでいました。我々はポーランドの文化から大きな影響を受けてます。もちろん、そこはポーランドですから。そして、ロシアは長年にわたって東欧圏に多大な影響力がありましたから、ロシア文化の影響もあります。もちろん、それによって音楽や文化が到来します。昔のドイツ文化からの影響も大きいですね。
実に面白いのですが、私の師はパリで学んでいたので、フランス文化もたくさん吸収しました。ポーランド人にとっては、フランスは常に尊敬する国なので、フランスの影響も大変重要です。少なくとも4つの文化がその場所でぶつかり合っていて、私がまさにそれら全ての間にいたのは大変幸運なことでした。
だから、私は非常にくつろいだ気分でロシアの音楽、ラフマニノフの協奏曲を演奏します。当然、ショパンもそうです。ブラームスやベートーヴェンもしっくりと馴染んだ気分で演奏できます。そして、ラヴェルやドビュッシーも同様です。
あなたは作曲家の国のスタイルで演奏しますか、それともあなた自身のスタイルで演奏しますか?
私は11月にウィーンでモーツァルトを演奏しますが、上手く演奏したいと思います。私は彼らの国の音楽に対して良くありたいと思います。時々、自身の文化にどっぷりつかったピアニストがいますね。そうするのは安全です。つまり、自分の出自であるところの、自身の文化と仲良くしている限りあれこれ言われませんし、良い評価も得られますから。
私にとって最も魅力的なことは、パリで頑固にドビュッシーのリサイタルを開いたり、指揮者のピエール・ブーレーズとラヴェルの協奏曲を、またフランス物の室内楽曲を演奏するなどして、それが板についていることを示したり、その国で現地の言葉で人々とやり取りをすることなのです。
これはグローバリゼイションの数少ない利点の一つです。私たちは文化的にお互いに恩恵を受けるようになってきてます。
ヴァーモントのリサイタルでは、ベートーヴェンの古典派の作品とロマン派の作品を演奏する予定ですね。どのようにして、これらの違いにアプローチするのですか?
私が思うに、ある意味では、全ての音楽はロマン派的です。といっても、私がバッハをロマン派的に演奏したいということではありませんよ。だけど、バッハは自分の演奏をロマン派的だと思っていました。というのも、ラフマニノフはいませんでしたしね。そして、彼は自作自演をしなくてはなりませんでした。
想像できますか?バッハは火曜日と水曜日に作曲して、木曜日にリハーサルをし、土曜日と日曜日に演奏し、月曜日には次のカンタータの作曲を開始していました。これが数年続いたんです。その間、彼は子供たちを火曜日に失い、土曜日に埋葬したこともあります。そして彼はまた演奏をしたんです。
この事が彼の音楽に無関係だとか、彼の音楽が心の叫びではないなどとはいえませんよね。カンタータを聴けば、驚くべき情動の集積があるということが分かります。
私は、その時点では彼は自分をロマン派的であると思っていたと確信しています。彼は、数百年後にシューマンやショパンが現れるということは知る由もありませんでした。彼は他の作曲家同様にロマン派的であり、それは単に手法が変化しているというだけのことなのです。
もし、我々がチャイコフスキーの手法をバッハに当てはめようとしたら、酷いことになるでしょう。だけど、その内容は、チャイコフスキーやショパンと同様にロマン派的なのです。
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