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2006年11月 4日 (土)

楽器というのは「手段」であって「目的」ではない、とはいえ…

Z氏インタビュー雑感。

私はかつてヴァイオリンをかじっていた(すっかり過去形)ので、自分の楽器を持っている。ただ、現在はそれを人に貸してて平素は思い出しもしないくらいなので、マイ楽器に対する執着は極めて薄い方である。我ながらひどい持ち主だと思う。

だけど、そんな私ですら、楽器ケースが電車の網棚にのせられているのを目撃したりすると「信じられん!」とびっくりするし、楽器をコインロッカーに預けるなんて話をきくと、言語道断だと思ったりする。地べたにケースを置くのすら、ちょっとどうかと思う(友人の知人で、地面に楽器ケースを置いてて、目を離した隙にバックしてきた車に轢かれたという話をきいたので。そうでなくても、不用意に下に置くと見知らぬ人に蹴りを入れられたりするんですよ…)。

なんか話がズレてるけれど、要するに何が言いたいのかというと、演奏家にとって楽器というものが命の次くらいに、もしくは3番目くらいには大切なものであろうことは容易に想像できる、ということ。ヴァイオリンとピアノとでは多少事情や思い入れの度合いが異なるだろうけれど、どちらにせよ自分の楽器というのは大事な物には違いない。

だから、ピアノを壊された、なんて話を読むと本当に胸が痛むし、他人事ながら悲しくなる。不可抗力ならまだしも、わざわざピアノを破壊するなんていうのはほとんど焚書みたいなもので、完全に野蛮人のすることだと思うんだけどなぁ。

今回インタビューを読んでてしみじみと思ったのは、ツィメルマンという人は、精神的に強靭でポジティヴなんだな、ということである。根が明るいというか。これは演奏聴いてても思うことなんだけど。
普通、こういう事があったら「コンサートなんか止めた止めた!!」となったり、下手すれば厭世的な気分になっても無理は無いだろうに、などと思うのは素人考えなんだろうか。もちろん、お髭氏といえど、その時々では(もしかしたら猛烈に)怒ったり悲しんだり落ち込んだりしてるんだろうけれど、結果的にはしっかり仕事をしてるあたり、偉いというか立派というか存外図太いというか。もちろん、プロだから当たり前という意見もあるだろうけれど、「プロここに極まれり」なミケランジェリあたりだったら即ツアーキャンセルじゃなかろうか、などと思ったりもするのである。これ、比較対象がマズイですかね(というよりも、ミケさんは「プロ」ってのとはちょっとニュアンスが違うかも…)。
単純に国籍で物事を判断するのはあまり好ましいことではないとは思うけれど、そういう強さというのはやっぱり腐っても(腐ってません)ポーランド人気質のなせる業なのかな、などという考えもチラとよぎったりしたのである。

ところで、インタビュー中で言及している「最近練習している協奏曲」ってルトスワフスキですかね、やっぱり。

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コメント

青猫さん、こんばんは!
楽器にしても、そのほかの何かにしても、自分が大切にしているものを、どんな理由にせよ、壊されるのは許せないし耐えられないと思うのだけれど、ツィメルマンは、何が一番自分に重要かという事をとても強く意識しているというか、ピアノを弾いてメッセージを届けることが、彼自身が使命と思っているのかも・・・と感じているのですけれど。どこでもドアがあって透明人間になれたら、ヨーロッパの彼の演奏会に行きたいですねぇ・・・。

投稿: Yoshimi | 2006年11月 5日 (日) 00:34

器が大きい、というとものすごく軽く薄っぺらい感じになっちゃうんですが・・・。どんな大量な水でもどぼどぼ入っちゃうような気がしますね。
Polish Festival Orchestraでもメンバーの選出、演奏だけでなく、スケジュール、移動手段、衣装や食事の手配まで関わったというのは、尋常な精神の持ち主じゃ出来ないと思うんですよね。普通の芸術家ならキレルでしょう。
あれだけ完璧な演奏をして尚且つメインの音楽をお届けするために派生する雑多な事に手を抜かない、そして出来る限りの妥協にも応じる、って自分に厳しく人に優しくの典型!?(そんなもんじゃないって・・・)

あのポジティヴさは、青猫さんがおっしゃるように、やっぱりポーランドのお国柄だと私も想像します。ツィメ氏には人間としての強い生命力を感じます。

投稿: petit viola | 2006年11月 5日 (日) 15:20

Yoshimiさん
そうですよね。ツィメルマン氏は本当に多種多様な事柄に対して強烈なこだわりを見せるので、見てる方はつい勘違いをしてしまうんですが(笑)、彼にとって本当に大事なことというのはすごくシンプルかもしれないですよね。楽器にも音符にも音色にも興味がない、なんて仰ってますしね。
ヨーロッパの演奏会も良いですが、NYのカーネギーも行ってみたいです。うーん、でもやっぱりヨーロッパで聴いてみたいかな。コンセルトヘボウやムジークフェライン、憧れます。

ptite violaさん
弾き振りの時のエピソードを見聞きすると、ホント化け物だなこのヒトは(←相変わらず失礼)、って思いますよ(^_^;)。見かけによらず(笑)、非常に前向きで精神的にタフな方だとお見受けしました。あの、目的に向かって邁進するエネルギー量はものすごいものがあると思います。
まぁ、音楽家に限らず、一流と呼ばれる方はそういう方が多いかもしれないですけど。。。

投稿: 青猫 | 2006年11月 5日 (日) 22:37

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