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2006年12月19日 (火)

[映画]敬愛なるベートーヴェン

<ストーリー>
1824年、第九の初演を4日後に控えたベートーヴェンの元に、1人の女性写譜師アンナが派遣されてくる。作曲家志望のアンナは、女性ながら音楽学校で一番優秀な学生であり、ベートーヴェンの譜面の間違いを指摘できるほど彼の音楽を理解していた。ベートーヴェンは彼女の才能に驚き、写譜の仕事を任せることにする。
難聴を抱え、気難しく自己中心的で、粗暴なベートーヴェンは孤独であった。彼は甥のカールを溺愛してピアニストにしようとしていたが、自分の才能の無さを自覚するカールにとっては叔父の期待は疎ましく、ベートーヴェンの愛情は空回りするしかなかったのである。
いよいよ第九の初演日を迎えるが、ベートーヴェンは難聴のため、指揮台に立つ不安と恐怖にかられていた。アンナは舞台の上からベートーヴェンにテンポや入りのタイミングを合図する役を引き受け、2人の共同作業としての第九初演が始まる。


第九のシーンは、思わず目頭が熱くなるほどに素晴らしい。まぁ、師走に第九ってだけで対日本人的には反則技って気もするけれど。
エド・ハリスの指揮ぶりがなかなか堂に入ってて、しっかりベートーヴェンっぽく見えるのも良いんだけど、実はエド・ハリスよりもダイアン・クルーガーの方が上手い。手の動きがやたら綺麗で優雅だな、と思ってたんだけど、そういえば、この人ってロイヤル・バレエ・スクール出身だったわ。なので、音楽に振らされてる、じゃなくて音楽と一体になっている感じがあって、とても美しかった。

実際、ベートーヴェンとアンナが視線を交わしながら第九を指揮するシーンは、2人の魂の深い結びつきを、どんな言葉を用いるよりも雄弁に物語っている。頭の中に“神の声”を聴いて楽譜にするベートーヴェンと、それを手助けするアンナが、実際に2人で「音楽」を生み出していくシーンは、神の神髄に触れ、その声を聴いた時に感じる恍惚感のようなものを連想してしまうほど、濃密であり、また官能的だった。

そんな訳で、第九でちょっと盛り上げ過ぎだったんじゃないのか、と思わないではなく、相対的に、他の要素が薄く見えてしまったような気がする。
生涯独身で難聴に苦しんだベートーヴェンの、最晩年の孤独や苦悩。
女性の作曲家が認められない時代における、才能ある女学生アンナの葛藤。
そんな2人の、音楽を介して生まれる信頼と絆。
どれも方向性としては納得のいくものだったので、それぞれをもう少し突っ込んで欲しかった。
そういう意味では、「アマデウス」と比べてドラマとしての「凄み」が足りなくて、ちょっと勿体無いかな。目指すところが違うといえば違うんだけど。。。

まぁでも、サントラの選び方・挿入の仕方も申し分ないし(P協4番2楽章の冒頭の重厚なこと!)、音楽映画として佳作であると思う。

なんか、ベートーヴェンの後期ソナタをむしょうに聴きたくなってきたなぁ…。今夜はアファナシエフにしよう。
ベートーヴェン:最後の3つのソナタ(HMV)

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コメント

敬愛なるベートーベン2回観てきました。1回目は家人と。2回目は今日一人で観てきました。1回目「第9」で家人はとても感激して、一気にクラシックが好きになったみたいです。エド・ハリスのタクト振りも板についていましたね。それ以上にダイアン・クルーガーがベートーベンにキューを送る呼吸の合わせ方が見事で、ホント官能的でした。作品は幾分かは脚色してあるけど史実に忠実に描いたとのことで、ベートーベンの時代のピアノが今の時代のピアノと違い鍵盤も少なく、音色も豊かとはいえない時代にすばらしい曲を残したベートーベンの作曲していた様子が描かれていてとても見ごたえがありました。ベートーベンの心に残った言葉(曲は生き物だ。まるで形を変える雲や潮の満ち引きと同じだと・・・)すぐ同じ言葉を言ってるツィメルマンさんとおんなじだ~~~」と思いましたわ。ツィメルマンさも音楽は生きもだとおっしゃってますね。「サントラ盤がすんばらしい!!」同感です。それを聞きたいがために厭きもせず3回目行くつもりです。かなりネタばれしちゃったかしら?そうだとしたらごめんなさい(-_-;)

投稿: バイエル | 2006年12月20日 (水) 22:19

バイエルさん、こんばんは。
第九のシーンは本当に圧巻でしたね。
エド・ハリス、元々好きな俳優なんですけど、今回のベートーヴェンも良かったです(^_^)。まぁでも、お顔は本物の方が怖いかしら(笑)。

>ベートーベンの時代のピアノが今の時代のピアノと違い鍵盤も少なく、音色も豊かとはいえない

あ、なるほど~。なんか酷いピアノ使ってるなって思ったんですよね(^_^;)。

そうだ、「音符と音符の間の沈黙」に言及しているところがありましたよね。あ、ツィメルマンと同じこと言ってる…って思いました。そのほかにも良いセリフが色々ありましたね。

3回目も楽しまれて下さいね!

投稿: 青猫 | 2006年12月21日 (木) 23:06

どうもこんばんは
TBさせて頂きました

選曲とお二方の演技は実に素晴らしかったのですが、後半の演出は自分には合わなかったようです。

確かに「師走に第9」は反則技ですね、生オケで全曲聞きたくなっちゃったです。

投稿: ビヨ | 2006年12月22日 (金) 00:36

こんにちは、TBありがとうございます。

第九を真ん中に持ってきたのが、ちょっと構成的に難しかったでしょうか?ストーリー的には早々にヤマが来ちゃった感じもないわけではないですしね(^_^;)。

生オケで第九、良いですねぇ。CDでちゃんと聴いてみようかな。

投稿: 青猫 | 2006年12月22日 (金) 18:39

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良い雰囲気の予告編を見て、やっぱりクラシック好きなら見とかなきゃいけないかな、と [続きを読む]

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