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2007年1月18日 (木)

イーヴォ・ポゴレリッチ ピアノ・リサイタル in サントリーホール

2007年1月15日(月) サントリーホール

<プログラム>
ブラームス:カプリッチョ 嬰ヘ短調 op. 76-1
ブラームス:間奏曲 イ長調 op. 118-2
ショパン:ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 op. 35 「葬送」

休憩

ラフマニノフ:楽興の時 op. 16

アンコール
ショパン:夜想曲 変ホ長調 op.55-2
バラキレフ:イスラメイ(東洋風幻想曲)

※ココログがメンテ中だったので、某所に書いておいたメモの(ほぼ)転載です。

私はポゴレリチを普段あまりちゃんと聴いてないし、ライヴで聴くのも初めてなので、きちんと語る言葉を持たない。ただでさえ、感想を書くのが難しい人であるような気もするし。
結論から言えば、かなり面白く聴いてきた。前回の来日公演のレビューや、漏れ聞こえてくる私生活上の噂等を総合して、あまり過度の期待をしないようにしようと思っていたのと、彼のスタイルがこちらの感性に合わなくてもそれは仕方が無いことだと、ある程度覚悟をして行ったのが良かったのかもしれない。なかなか普通じゃない雰囲気のコンサートで、貴重で得難い体験だったと思う。

私は当日券でRBブロックの席(ステージ向かって右側の二階席)を買ったのだが、これが大正解だった。二階席の奥の方だとどうしてもピアノの音が遠くで鳴ってる感じになるし、一階席だと音が頭上を飛び超えて行くような時があるけれど、今回座ったところは舞台にも比較的距離が近くて、音が本当にダイレクトに飛んできて、細部まで手に取るように分かってすごく良かった。実際の距離よりもずっと近くで鳴っているような感じがあって、まるで目の前で弾いてるような臨場感があった。感動…。

ステージ上は照明を極限まで絞ったという感じで、ぼやっと薄暗かった。まるで地下のカーブみたいで、ちょっと異様な雰囲気だったなぁ。カーブっていうか、むしろカタコンベか…?
そして、ピアノには譜面台がのっていた。
まぁリヒテルだって晩年は譜面を見てやったんだし、その方がストレスが少ないというのなら別に良いんだけど…。

今回は予習をしないで行ったので、個別の曲についてちゃんと書けないんだけど、どの曲も総じてテンポが遅かった。特に遅いところは、限界まで引き伸ばしていて、もう音の断片に近いような感じ。まるで、一つ一つの音符を「個別に」響かせることが最重要課題とでも言いたいかのような…。もはや、流れが悪いとか粘るとかそういうレベルではなくて、ついつい脳内でメロディを再構成したくなるような、そんな感じだった。特に間奏曲は、アファナシエフで遅いのに慣れてる私でも「遅い!」と思ったので、相当遅かったと思う。
葬送ソナタは、速い箇所は普通に速かったけれど、遅いところはそれこそ分解気味だったので、緩急の差が大分激しかった。ただ、3楽章はむしろテンポを速く取ってあり、「葬送行進曲」として結構真っ当な解釈だったと思う。4楽章は音の響かせ方が独特で、意外な旋律(?)が聴こえてきたりしてこれはこれでアリかな、と思った。4楽章は、そもそも曲自体が異様なので、ポゴレリチのスタイルは結構合ってたかもしれない。

ラフマニノフはあまりよく知らない曲なので、割と素直に聴けた。もしかしたら、結構聴いたことがある曲だけど、あまりにも原型を留めてなくて気が付かなかっただけなのかもしれないのだが…。

遅い分、一つ一つの音色がどんなものかはよく分かる。
ピアニッシモ、ピアノは響きがとても綺麗だと思った。多彩で、繊細。意外なことに(オイ)、天上的な美しささえ感じた。メロディの流れに乗るのではなく、個々の音の響きそのものに身を委ねて揺蕩うような聴き方というのも、結構気持ちが良く、至福の瞬間だった。
他方、フォルテはまさに轟音で、「ピアノってこんなに音大きかったっけ」と思ったほど。ただ、圧倒的な迫力といえばその通りなんだけれど、うーん、ちょっと叩き過ぎという気がしないではない。汚いとは思わないけれど、どうしても乱暴に聞こえてしまう時がある。あれだけバン!と鳴る、というのは、それだけですごいことのような気もするのだけれど。
ピアノのパートとフォルテのパートのコントラストやギャップというのは、(音量だけではなく、表情という意味でも)本当にビックリするほど大きいんだけど、例えば他の音はモソモソと弾いてて、一音だけ唐突にビーン!!と鳴らしてみたりと、ちょっとギョっとさせられることもあったりした。ただ、それがカンに触るとか神経を逆撫でされるということもなく、そういう意味では、私はポゴレリチとはそんなに相性が悪くない、のかも…?
少なくとも、あの特異すぎる表現についていけずに、カヤの外に置いてけぼりにされるような疎外感といったものはなかった。まぁ、あの異次元空間のような「雰囲気」に呑まれてた、ということなのかもしれないけれど、ああいう世界を作り出してしまうというのも、やっぱり並大抵のパワーではないと思う。

アンコールのイスラメイは、すごかった。イスラメイって今まで聴いたことがなくて、でもイスラメイなんだろうなと思って聴いてたんだけど、見事な超絶っぷりにびっくり。鬼神のような、というんだろうか(それとも魔王のような、というべきか)。それまでのノロノロとした演奏とは別人のようだった。これもポゴレリチ、ということか。
イスラメイ、もう一回聴きたいなぁ。

終演は10時ちょっと前。色々な意味で、結構疲弊したコンサートだった。

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コメント

今晩は♪

お仕事お疲れ様です。
ポゴ氏、行ってこられたんですね。私もすごく気にはなってたのですが・・・。
ホールは違いますが、RB席、お髭氏の西宮公演の時に座ってました。ものすっごい、音が飛んできますよね?私もあれは発見でした。ピアノの音だけじゃなくて、お髭氏の鼻歌とか、客席からの雑音もすごい飛んできましたけどね。

白状しますと、昔ツィメ氏の後ですぐにポゴ氏に乗り換えた事があります(汗)。当時は彼の異端児ぶりが私のハートを捉えて離さずという感じで・・・すぐ冷めましたが(オイ)。 どうも偏屈・変人系に弱いんです、私。ツィメ氏、ポゴ氏は演奏スタイルは両極端の様な気もしますが、変人というカテゴリーには二人とも仲良く入ってると思いますです(笑)。

投稿: petit viola | 2007年1月21日 (日) 03:12

petit violaさん、こんにちは(^^)。

ポゴさん、怖い物見たさで行って参りました。行って良かったです。

舞台のすぐ脇の2階席、ホールにも寄ると思いますが、サントリーはすごく良いですね。仰るとおり、会場の雑音もすごーくよく聞こえますし(^^;)、ポゴさんの演奏中の「ふーーーー」「しゅーーー」っていう深呼吸なんかまで聞こえてきました(笑)。

ピアニストは他の楽器奏者と比べても変人が多いのではないかと思っていますが(別に偏見ではないと思う…)、お髭氏とポゴ氏は東西横綱という気がしないではありません。あ、変人じゃなくて、ユニークといえばいいのかしら(笑)。
キャンセル魔だったり仕事嫌いだったりするとファンとしては困りますが、人と違うものを生み出す人というのは、感性その他、普通であるはずが無いですよね。奇人変人おおいに結構、受けて立ちますともー(笑)。
っていうか、私もオモシロイ人が好きなんですね、きっと。

投稿: 青猫 | 2007年1月21日 (日) 19:09

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