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2007年2月11日 (日)

レイフ・オヴェ・アンスネス ピアノ・リサイタル in 彩の国さいたま芸術劇場

2007年2月10日(土)  彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール

<プログラム>
シベリウス: キュリッキ - 3つの抒情的小品 Op.41
       《13の小品》より〈悲歌的に〉Op.76-10
       《13の小品》より〈練習曲〉Op.76-2
       《5つの小品》(樹木の組曲)より〈白樺の木〉Op.75-4
       《10の小品》より〈舟歌〉Op.24-10
グリーグ: ノルウェー民謡による変奏曲形式のバラード ト短調 Op.24

休憩

シェーンベルク: 6つの小さなピアノ曲 Op.19
ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 Op.111

アンコール:
バッハ/ブゾーニ:主イエスキリストよ、われ汝を呼ぶ
メンデルスゾーン:無言歌 嬰ヘ短調 op.67-2
グリーグ:抒情小曲集第1集 op.12より
 6.ノルウェーの旋律
 5.民謡

2回目なので、やや散漫な感想を。

まずは、彼はCDよりもライヴの方がずっと素晴らしいピアニストである、ということを主張しておこう。
とりあえず、CDのあの精度を落とさずにライヴで弾くってだけでも、全くもって信じられんのだけど(誰かが「バケモノ」っていってたけど)。
ダイナミックレインジも明らかに違うし、音楽的にも、ライヴの方が格段に豊かだと思う。
なんなんでしょうね、一体。


シベリウスを聴きながら、「あ、間(ま)が美しいな」と思った。

アンスネスは、無闇にタメない。
妙なリタルダンドもしない。
基本的に、インテンポの傾向が強いピアニストではないかと思う。

それでいて、静寂を感じる瞬間がある。
まるで、北欧の美しい自然の中、たとえば湖畔で一人佇んでいるかのような(←非常に安易なイメージであることは認めます)。
でも、それは決して、孤独を感じさせるものではない。
彼は、聴き手を孤独にはしない。


白眉はシェーンベルク。
僅か数分の曲だったけれど、これを1時間聴いてても良い、と思った。
どこか時間を超越したような、永遠性を感じさせる響き。
こんな、身震いするほどに美しい12音音楽がこの世に存在するとは夢にも思わなかった。

ベートーヴェンは、第一楽章については、水戸よりも少しだけ勢いを感じたような。
それでもやはり、崩れることなく、どこまでもきっちり弾いていた。

精緻で明晰な、バッハ的な(というと乱暴かな)構築美の世界。
そして、彼岸的な崇高美。
この、圧倒的な対比と収束。
この2つの要素があんなに高次元で融合し、昇華し得るなんて…。

ピアノ・ソナタ第32番、他のピアニストの演奏をそんなにたくさん聴いているわけではないけれど、おそらくこの演奏が私のこれからのスタンダードになる。
そう思った。

アンコールは結構ボケっとしてたので、少しだけ。
バッハ、綺麗だったな。
実はあまりバッハっぽくは聞こえなかったんだけど。
ベートーヴェンはそれこそガチガチに構築的なところもあったのに、こちらはとてもメロディアスだった。
こういう、哀愁漂う哀し気な旋律を弾かれると、「反則…」と思ってしまう。
ベートーヴェンの2楽章もそうだったけれど、内に秘めた哀しみをしみじみと感じて胸が痛くなる。
哀しいんだけどそれを大声で叫ぶことができないような、でも癒えることのないような深い思い。

…アンスネスって一体どういう人なんだろう。


終演後は、サイン会にもう一回並んで、とことん“人たらし”な笑顔を拝んで帰路についた。
アンスネス、写真で見る限りはあまり北欧ってイメージでもなかったけれど、実物は確かに北欧っぽさを感じるお顔立ちだった。
どうでもいいけど、今回は、お兄さんというよりもオジお兄さんかな?と思ったのはなんでだろう(水戸はワンコみたいなお兄さんだったんだけどな)。

↓これはお兄さんな笑顔。
Andsnes


しめは、かねこさんとアンスネストーク(時間があまり無くてバタバタしちゃってごめんなさい)。
それにしても、そんなに私、アンスネスにはまりそうな気配濃厚だったでしょうか。。。


以下、書こうかどうしようか迷ったけれど覚書なので書いとこう。
別にアンスネスが悪いのではない、と思うのだけど(先入観持っちゃうとアレなんで、これから聴く人は聴き終ってから読んで下さい)。

今日は、ピアノが少々ギラついた音だった。
まぁ、それ自体はどうということもないし、音色が下品だ、ということでもない。

ただ、素の音と、ソフトペダルを踏んだ時の音の落差がかなりあってそれがやや残念。
どこでソフトペダルを踏んでいるのかが、足元を見なくても一目瞭然というか。。。
水戸の時も多分大分踏んでいたと思うけれど、全くといって良いほど気にならなかったので、多分楽器の個体差なんだろうな、と思う。

ピアニシモフェチとしては、ちょっと気になってしまったのですよ。
あれだけ音の変化が階段状に聴こえちゃうと、ちょっと勿体無いな、と思った。

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Pianist: Leif Ove Andsnes」カテゴリの記事

コメント

青猫さん、おはようございます。
土曜日はアンスネストークできて楽しかったです。
でも青猫さんのツィメルマントークの方が凄いと思う(笑)。
見習います。

アンスネスの休符は美しいですね。
アンサンブルやコンチェルトだとそこに他の楽器が入って、それがまた美しいんです。


>彼は、聴き手を孤独にはしない。

うーん、名言…!

投稿: かねこ | 2007年2月12日 (月) 07:19

青猫さん、こんにちは。
青猫さんの記事を読み、ますます行かれなかったことが残念に思えました。うちからわずか10~15分くらい近いところだけに尚更です。
私は、普段オペラ以外のコンサートは年に一回も行かないのですが、ツィメルマンを知ったり、こちらにお邪魔するようになってから、オペラ以外のジャンルにももっと行きたくなっています。
今年は、ツィメルマンとクレーメルのコンサートだけは、平日でも どんなに仕事に追われていても 絶対に行こうと固く心に誓っています!!(笑)

投稿: プーとパディントン | 2007年2月12日 (月) 10:54

青猫さん、こんにちわ。青猫さんのアンスネスレポートを見て私もTOCで行われたリサイタルに行って参りました。ベートーベン32番、素晴らしかったです。そして展覧会の絵、見事!!としか言いようのないくらいの素敵な演奏でした。そしてアンコールのリストのvalse-impromptu...可愛い!!ほんと、愛らしい音楽でした。なぜか北欧系よりドイツ系のほうが合うのでは・・と勝手に思ったりもしました。エヘヘ 暫くはhorizonsをヘビーローテーションな日々が続きそうです。

投稿: クレオ | 2007年2月12日 (月) 11:12

かねこさん、こんにちは。
アンスネストーク、ありがとうございました。
ファン歴10年の方相手に、無神経な暴言を吐いてないことを祈るばかりです。

>見習います
って何をでしょうか(^_^;)。でも、ツィメルマントークだったら、一晩でもできるかも。。。←誰か止めてください。

アンスネスの室内楽なんかも良さそうですね。彼も、自分以外の音を良く聴いて素晴らしいアンサンブルを作りあげるんじゃないか、なんて思います。

プーとパディントンさん、こんにちは。
彩の国、いらっしゃれなくて残念でしたね。今回、当日券もゼロで、本当に満員でした。キャパが小さいですし、チケ代も安かったですしね。彩の国は、良いコンサートが目白押しで、主催者が頑張ってるな~と思いましたよ。
クレーメルとツィメルマンのデュオは、私も頑張って(無理して)馳せ参じたいと思います!

クレオさん、こんにちは。
お久し振りです(^^)。
わ~、拙文を読んでオペラシティにいらしていただいたなんて、すごく嬉しいです!(しかも楽しんでいただけて)。
オペラシティでの演奏は、本当に本当に素晴らしかったようですね。皆さん大絶賛の嵐で、オペラシティに行けなかった私はちょびっと羨ましいな~なんて思っていました。←欲張り。
ベートーヴェンも展覧会の絵もリストも、本当に素晴らしかったですよね。アンスネスは、ドイツ系もすごく良いと思います。32番の一楽章、すごーくカッコ良かったです。
オペラシティ、今回は大分空席があったようですが、大ホールで完売御礼になる日も近いんじゃないかと思います(^^)。でもチケ代はあまり高騰して欲しくないなぁ…。

投稿: 青猫 | 2007年2月12日 (月) 17:32

はじめてコメントさせていただきます。
本日(あ、日付変わってる;)大阪公演行って参りました。
ばっちり間の美しさを堪能してきました。フレーズ終わりの微妙な余韻や休符の流れが絶品でもうウットリ。
ピアニシモも素敵でした。
彼の姿、私の目にはわんこなおじ兄さんに映りました(笑)。

投稿: きぁにゃ | 2007年2月13日 (火) 00:12

きぁにゃさん、ようこそ(^^)。

大阪公演、楽しまれたんですね。
良かった、良かった。
ウットリしますでしょ?
響かせ方とか、余韻、間の取り方が本当に繊細ですよね。
CDよりも、実演の方がそういう所がよく分かるような気がします。

あの人好きのする笑顔は、本当、わんこですよね~(笑)。

投稿: 青猫 | 2007年2月13日 (火) 16:27

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ブックマークさせていただいてるブログの アンスネスの来日公演の感想の記事にリンクを貼っておきます。 (↑後で自分が読み返したいから) 青猫さん@英語めぐり レイフ・オヴェ・アンスネス ピアノ・リサイタル in 水戸芸術館 #1 レイフ・オヴェ・アンスネス ピアノ・リサイタル in 水戸芸術館 #2 レイフ・オヴェ・アンスネス ピアノ・リサイタル in 彩の国さいたま芸術劇場 青猫さんにもお話ししまし�... [続きを読む]

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