レイフ・オヴェ・アンスネス ピアノ・リサイタル in 水戸芸術館 #1
2007年2月4日(日) 水戸芸術館
<プログラム>
グリーグ:ノルウェー民謡による変奏曲形式のバラード ト長調 作品24
シューマン:4つの小品 作品32
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 作品111
休憩
ムソルグスキー:組曲<展覧会の絵>
アンコール
モンポウ:湖
リスト:ヴァルス・アンプロンプチュ
レイフ=オヴェさん、前から3列目で拝んできた。
アンスネスといえば、日本での知名度はさておいて、世界的には現在若手トップと目されるピアニストである。
ラフマニノフのライヴ録音から判断するに、実演もそりゃ上手いだろうし、まぁ悪いわけは無いだろうとは思っていた。
ただ、「感動」できるかどうかについては全く予想が付かなかった、というのが正直なところ。
「上手いなー。でもそれで?」とか思ったりして、と若干危惧していたのである。←ラフマがそうだ、という意味ではありません。
実際のところどうだったかというと。
こんなに幸せな気分になったのは久し振り。
外は寒いけれど、気持ちはほかほか、顔は緩々。
本が読みたいから、という理由で車じゃなく電車で行ったというのに、帰りはほけーっとし過ぎて、本を開きもしなかった。
さぞやアホ面を晒していたことだろうなぁ。。。
そんなわけで、ほわほわ状態で帰宅したのである。
オペラシティ(8日)やフェスティバル(←すみません、間違えました)シンフォニーホール(12日)はまだ残席があるそうですが(水戸も8.5割くらいだったかな?)、勿体無いので、ピアノ好きの方には是非行っていただきたいと思います。
さて、まずは各曲雑感をば。
・グリーグ:ノルウェー民謡による変奏曲形式のバラード ト長調 作品24
まずはグリーグの、思わず息を呑まずにはいられない、夢のようなピアニッシモの音色にグッとくる。掴みはオッケー、どころではなく、はっきりいって“心臓鷲掴み”である。
いやー、あれはヨロメキますよ、オクサマ。
この曲は、グリーグが両親を亡くした悲しみの中で書いた作品だそうだけど、目に見える分かり易い慟哭ではなく、哀愁かな。どこか諦念を感じさせるような、心の奥底の哀しみ。
・シューマン:4つの小品 作品32
すみません、私はやっぱりシューマンとは相性が悪いみたいで、何を書いて良いのか分かりません。演奏が悪いわけではないと思うんだけど。
・ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 作品111
これ聴いて、もう帰っても良いや、な気分になってしまった。帰らなかったけど(もちろん帰らなくて正解)。
「苦悩との闘争を経て勝利を得る」とは、プログラムの解説にあった言葉である。
この第32番は、苦悩との闘争(第1楽章)と、その末の救済(第2楽章)、ということなんでしょうね。
第1楽章はスタイリッシュで、奇をてらうことなく、非常にストレートに弾いている印象。
良いですね、この、音楽が真っ直ぐこちらに届いてくる感じ。
推進力があって、音のキレ味も申し分ないし、決然としたカッコ良さもある。
ただ、苦悩との闘争というには少し重心が軽いような気がしなくもないけれど、そこはやっぱりアンスネスだし、ということだな。
不思議なのは、技術的に穴もスキも全く無いのにも関わらず、どこか優しさを感じさせるところ。
あれだけバリっと、目が覚めるように鮮やかに弾ける人なのに、聴き手をはねつけるような厳しさや息苦しさが無い。
基本的に、非常に晴朗で、すこやかなのである。
そのせいかどうなのか、第1楽章ですでに救済の光が仄見えているような印象だった。
ロマネスクの薄暗い教会に、うっすらと光が差し込むようなイメージかなぁ。
これは、彼の音色が常に明るい、柔らかな光を孕んでいるせいもあると思うのだけど。
圧巻だったのは第2楽章。
このピュアネスはどうだろう。
濁りの無い、透明度の高い清冽な響きは、まさに天国的である。
真摯でピュアな、そして優しく包み込むような彼の音色は、この世のものとは思えない世界を描き出していた。
ベートーヴェンは、間違いなく魂の安寧を得たのだ、と思った。そんな演奏だった。
休憩。
#2に続く(なんか長いよ、今回…)。
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