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2008年4月13日 (日)

平野 啓一郎「葬送〈第1部(上)〉」

4101290334葬送〈第1部(上)〉 (新潮文庫)
平野 啓一郎
新潮社 2005-07

by G-Tools

近頃「平野氏結婚」のニュースを見かけてpetit violaさんのお宅で紹介されていたのを思い出し、ちょうど長距離移動の機会もあったので旅の供に買ってみた。

物語は1849年10月30日、葬儀の場面によって幕を開け、そこから1846年にさかのぼる。
ショパン、ジョルジュ・サンド、ドラクロワを軸に物語が進むけれど、意外なほどにドラクロワに描写の力点が置かれている。

とりあえず第1部の上巻を読了しただけだけれど、とんでもない力作の予感。
(あと3冊あるのでこういうのもなんだけど)書き手のスタミナというか、筆力を感じる。
平野氏の作品は芥川受賞時に「日蝕」を読んで以来になるけれど、大分イメージが違うかもしれない。
今回は割と正統的な印象。

これでもか、というくらいに心理描写が精緻。
とりわけ、ドラクロワの芸術談義や芸術的思索が非常にリアルである。
芸術家の芸術をめぐる思考の軌跡をここまで懇切丁寧に書き込める人というのも稀有ではないかと思う。

とりあえず、先の展開が楽しみ。



余談。
平野氏の文章は描写が非常に緻密で、情景が目に浮かぶのは大変よろしいんだけんど。

「嘗てのショパンは、もっと厳格に内面の生活を覆い隠して、彼の音楽さながらにコロラトゥーラ風の軽妙な華やかさをその一挙手一投足に鏤めて、側にいる者らを魅惑した筈であった。喋りながら手を動かすと、指の先から音楽が零れ落ちそうであった。冗談の一つ一つが、金の糸で刺繍されているかのように輝いていた。突飛な二つの話題を、言葉に徐々に変位記号を付してゆきながら巧みな転調の連続によって結びつけ、会話を先導した。その声はまるで毛足の長い特別の絨毯の上に放たれているかのように、音に過度が立たず、耳に心地好かった」(文庫p.33)

こんな風に形容されてるショパンですが、気が付いたらすっかり、若き日のツィメルマンさんで想像(妄想?)してしまってまして…。なんだか妙に落ち着かない気分になるし、キャラ的にもちょっと違う気もするし、うーん、うーん、困った…とどうでも良いことに頭を抱える今日この頃。

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