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2008年6月

2008年6月30日 (月)

レビューについて

洋書多読関連のレビューに記載しているYLは、SSS英語学習法研究会の基準による、読みやすさレベル(YL: Yomiyasusa Level) です。0~10までで、数値が高くなるほど難易度が高くなります。例えば、「Harry Potter」シリーズでYL7.5~9.5、「The Lord of the Rings」でYL9~9.9、「The Da Vinci Code」でYL9、といった感じ。易しめの一般PBで、YL6~8ぐらい。

★は五段階評価で、★0.5足したい場合には「+」をお尻につけてます。目安ですが、★三つで、「まぁまぁ面白かった」くらいです。
★は付けたり付けなかったり、かなり適当。

できるだけ公平なレビューを、、、と思った時期もありますが、諦めました。
ただ、良し悪しと好き嫌いは分けたいと思っています。

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2008年6月22日 (日)

ルトスワフスキ、チケット発売

約束のコンチェルト クリスチャン・ツィメルマン ルトスワフスキのピアノ協奏曲

2008年 11月20日(木) 19時開演 サントリーホール
 ルトスワフスキ:ピアノ協奏曲 (ツィメルマンに捧げる)
 メシアン:ほほえみ
 チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」

2008年 11月23日(日) 18時開演 サントリーホール
 ルトスワフスキ:ピアノ協奏曲 (ツィメルマンに捧げる)
 メシアン:ほほえみ
 ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」


本日、2公演分のチケット発売日(一般)でした。

この週末の狂乱のBBL祭り(正確にはジル大祭ですが)のせいで、正直いって綺麗さっぱり忘れていました…。
はー、思い出して良かったー(まぁ、焦らずともまだまだチケットはあるみたいですが)。

とりあえず、私的ベストポジションが取れたので満足満足。


Japan Artsの頁にはあと2公演の日程が載ってますね。
11月21日(金)  東京オペラシティ コンサートホール
11月26日(水)  東京文化会館

追記:
ショパン・シューベルトのDVD、20日にHMVから発送されたみたいなんですが、送付先を実家にしちゃったのでまだ未確認です。
巷のお店にももう入荷してるんでしょうか。

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<モーリス・ベジャール追悼 特別公演>モールス・ベジャール・バレエ団 2008年日本公演 6月15日(日)

10日(火)のボレロプロを見たら見事に火がついてしまい、6月15日(日)の「バレエ・フォー・ライフ」も見ることに。
「バレエ・フォー・ライフ」は断片的にしか知らなかったので、ちゃんと全部見てみたかったし。
10日の「イーゴリと私たち」「アダージェット」でジル・ロマンに完璧にノックアウトされて(昔っから「上手いなー、すごいダンサーだなー」とは思ってたんだけど、まさか生オーラがあそこまで強烈だとは……。もうなんだか今まで生で見なかったは「不覚!!」としか言い様が無い)、「バレエ・フォー・ライフ」でジルを見たい!という気持ちも抑えがたくなってしまったということもある。
その時点でジルが出るかどうかは未定だったけど。
※キャストは当日の朝発表


結果的には、ジルはお休みだった。
東京最終日、休むかね……。
ジル以外も大分顔ぶれが違ってて、いわゆるセカンド・キャスト(といっていいのかな)の日だった。
まぁ、ジルは13日(金)、14日(土)と出ずっぱりだったようなので、3日連続ってあるのかなぁ?とは思ったし、一応「出ないかも」という覚悟はしていたけれど、それでも当日の朝、キャスト表を見て軽ーく傷心…。

ただ、「怪我して代役」よりかはなんぼかマシなので、気を取り直して劇場へ向かった。
10日は舞台向かって左側の2階席だったけれど、舞台が1/3くらい見切れる席でストレスがたまったので(つーか見切れる席で10000円超はいかがなものかと…)、今度は逆サイドの見切れない席をチョイス。


45歳でHIVで亡くなったジョルジュ・ドンとクイーンのフレディ・マーキュリーへのオマージュであるところのこの作品、音楽はクイーンの楽曲が中心でモーツァルトも数曲用いられている。

初演は1997年で、ベジャールは70歳だった。
そもそも70歳でクイーンっていう時点で感性が相当柔軟ではないかと思うのだけれど、、ロックとバレエが違和感なく調和してる様が見事で、その瑞々しく溌剌としたセンスに脱帽。
ベジャール・バレエのダンサーは、総じて技術的に端正で上手い(つまり、純クラシックを躍らせても一流ではないかと思わせる)人が多いと思うけれど、それでいてあそこまでロックに合ってるというのがすごい。
そして、クイーンの中に、モーツァルトの曲が数曲混じってるのがツボだった。
モーツァルトが、「生と死」というこのバレエのテーマをすごく引き立ててる気がする。

端から端まで本当に楽しくて仕方がなかった。
バレエでこんな高揚感は本当に久しぶり。
しまったな、こんなに面白いんだったら、もっと早く見ておけば良かったよ。

さて、この日のメインはバティスト・ガオンだった。
文字通り出ずっぱりの大活躍。
小柄で細身で、少年じみた雰囲気があって(いくつだ?)、すっきりしたラインが繊細さをかもし出しつつも薄味にならない甘さもあって、魅力的なダンサーだと思った。
ジルが他の日に踊ったパートをほぼそのまま踊ってたのではないかな。

実はバティストを見ながら、ジルがこんだけ踊ればそれはそれは美味しくて眩暈がしそうな話なんだろうけれど、「明」と「暗」でいえば「暗」の方向のインパクトが強すぎるのではないかという思いがよぎらないではなかった。
バティストは終始黒い衣装を着ていて、その他のダンサーたちは白が多いから、このバレエ自体「黒」と「白」の対比という見方ができると思うのだけれど(黒=死、白=生という図式は単純に過ぎますかね)、ジルがやったら「黒」が本当に底無しに真っ黒!!になりゃしないか。。。

とか何とかつらつら考えてたんだけど、じゃぁそれ以外の皆さんはどうだったかというと、実はこの日は首の調子が悪くてイマイチ集中力を欠いていたり、何よりも全体的に情報量が多すぎて上手く処理し切れず(無念)。
えーと、ダヴィット・クピンスキーのRadio Ga Gaが良かったなーとか、大雑把な感想はあるんだけど、どうもダンスの洪水に飲み込まれた感が……。
そう、ベジャール・バレエは情報量がものすごく多い!
クラシック・バレエの場合は基本的にヒエラルキーがはっきりしてるので、極端な話、主役がソロを踊っている場合は主役「だけ」見てれば事足りるという面がある。
舞台の中央で踊る人と、その他大勢(群舞)の人たちの役割の差が大きいので、どこを見れば良いかのポイントがはっきりしている。
ところがベジャール・バレエはですねー、パ・ド・ドゥやってる周りで、平気でソリスト級の人々がそれぞれ違う振り付けで踊りまくってたりするわけですよ。
これは困る。
本当に困る。
わたしゃどこ(誰)を見れば良いの???あー、そっちにオクタヴィオがー…とかなんとか、目がウロウロと泳いだ挙句に、非常に散漫な見方をしてしまったりするもんだから、目玉が8つくらい欲しいって本気で思ったですよ…。


最後の「The show must go on」ではジルも舞台に登場したけれど、いやー、ド貫禄というか。。。
なんであの人は立ってるだけであんなに存在感があるんだろう。

「The show must go on」は「ムーラン・ルージュ」以来大好きな曲だけど、ジルと「The show must go on」の組み合わせはちょっとツライ。
「The show must go on」(ショウは続けなければならない)ってのは、舞台人のある種哀しい業ではないかと思うのだけれど、ベジャールがいなくても「ベジャール」の名前を冠したカンパニーは続いていくわけで。
ベジャールの後を引き継いだジルのことを思うと、本当に泣けてくる。。。


で、そのジルは、17日(火)と20日(金)の大阪公演には出演という話が割と早い段階で出ていた。
一応、一瞬だけ「ううう、大阪なんか行けるかー!」とやさぐれたんだけど、次の瞬間、割とあっさり「とりあえず行く努力だけはしてみるか…」と思考の転回。
こう、一旦前向きになっちゃうと、もうダメで。
はー、先月くらいは「あ、来月はベジャールだ。上手くスケジュールが合ったら行けるかも」くらいの、ごくごくゆるーいノリだったのに、一体何事なんだろう、この怒涛の展開は。


そんなわけで大阪編に続く(本当は今日、大阪編まで書いちゃうつもりだったのに、全然到達できなかった…)。

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2008年6月21日 (土)

全部予習用

B00005QCFTクイーン・ライヴ!!ウエンブリー1986
クイーン
EMIミュージック・ジャパン 2001-11-21

by G-Tools
B000000OE7Made in Heaven
Queen
Toshiba 1995-11-07

by G-Tools

クイーン2枚。
いずれもベジャールの「バレエ・フォー・ライフ」の予習用として。
実は6月15日(日)の公演には間に合わなかったんですが(前日に買ったけど聴く時間が無かった…)。

B00005FJCKバッハ:トッカータ ハ短調
アルゲリッチ(マルタ) バッハ
ユニバーサル ミュージック クラシック 2000-05-24

by G-Tools

7月のお髭さん予習用。
某所で「押しの強いパルティータ2番」ということでご推薦いただいたもの。
速え…。

B000CEBONQJanácek, Nielsen: Piano Works
Leos Janacek
Virgin 2008-01-13

by G-Tools

9月のルガンスキー予習用。
ヤナーチェクのピアノ・ソナタ変ホ長調「1905年10月1日街頭にて」をやるんだそうですが、全然知らんのですよ。

ルガンスキーは昼のパガ協、夜のリサイタル両方行きます。
なんだかマチネ・ソワレみたいだなー。

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2008年6月14日 (土)

<モーリス・ベジャール追悼 特別公演>モールス・ベジャール・バレエ団 2008年日本公演

2007年11月22日に80歳で亡くなったモーリス・ベジャールの追悼公演。
NBS公式HP

運良く都合が付いたので当日券で見てきたんだけど、かなりインパクトがあって、ふらっと行った割には強烈に後を引いている。

Photo
ロビーに飾られた、在りし日のベジャールの写真。
彼の死は、まさに「巨星堕つ」としか言いようのないものだったと思う。
ベジャールがいなかったら、20世紀のバレエはあれほど面白くはなかっただろうな……。
ありがとう、ベジャールさん。
心よりの感謝を捧げるとともに、改めてご冥福をお祈りします。


2008年6月10日(火)19:00開演
東京文化会館
<プログラム・キャスト>
これが死か SERAIT-CE LA MORT?
ジュリアン・ファヴロー
カテリーナ・シャルキナ
カトリーヌ・ズアナバール
エリザベット・ロス
ダリア・イワノワ


イーゴリと私たち IGOR ET NOUS
シェフ: ジル・ロマン
パ・ド・カトル: カテリーナ・シャルキナ、カルリーヌ・マリオン、ダリア・イワノワ、ルイザ・ディアス=ゴンザレス
パ・ド・トロワ: ダヴィッド・クピンスキー、ジュリアン・ファヴロー、ダフニ・モイアッシ
パ・ド・ドゥ:マーティン・ヴェデル、カトリーヌ・ズアナバール


祈りとダンス LA PRIÉRE ET LA DANCE
ルーミー: 男性全員
3つのバラ: ルイザ・ディアス=ゴンザレス、カトリーヌ・ズアナバール、ダリア・イワノワ
炎: バティスト・ガオン
デュオ: カテリーナ・シャルキナ、ジュリアン・ファヴロー
ゴレスタン: 男性全員
パ・ド・ドゥ: ヨハン・クラプソン、アレッサンドロ・スキアッタレッラ
パ・ド・トロワ: ジュリアーノ・カルドーネ、エティエンヌ・ベシャール、ニール・ジャンセン、アルトゥール・ルーアルティ
パ・ド・カトル: ガブリエル・バレネンゴア、ティエリー・デバル、マーティン・ヴェデル、エクトール・ナヴァロ
ソロ 1: 那須野 圭右
ソロ 2: ドメニコ・ルヴレ


ボレロ BOLÉRO
エリザベット・ロス
ドメニコ・ルヴレ、那須野 圭右、ジュリアン・ファヴロー、マーティン・ヴェデル、エクトール・ナヴァロ、ヴァランタン・ルヴァラン、ティエリー・デバル、ガブリエル・バレネンゴア、バティスト・ガオン、アレッサンドロ・スキアッタレッラ、オクタヴィオ・デ・ラ・ルーサ、ヨハン・クラプソン、エティエンヌ・ベシャール、ダヴィッド・クピンスキー、ジュリアーノ・カルドーネ、ニール・ジャンセン、シャルル・フェルー、アルトゥール・ルーアルティ


実は生モーリス・ベジャール・バレエ団は初めてで、顔と名前が一致しないのがちょっと難だったのだが。
ベジャール・ダンサーはみな強靭でしなやか。
技術的に破綻が少なく、意外なほどに端正でアカデミックな印象もある。
それでいて、実に雄弁である。
物を言う肉体とはこういうことか、と思う。


「これは死か」
死の間際の男性のもとに、かつて愛した女性たちが現れる。薄いピンク、ローズ色、バイオレットと異なる色のレオタードを着た3人の女性たちと、男に覚えのない白いレオタードの女性。
男は四人の女性とかわるがわる踊り、それぞれに異なる恋愛模様を見せる。
女性陣はそれぞれのキャラクターにメリハリが利いててみな良かったけれど、中でも「白」が本当に美しかった。
最初誰だか分からなかったんだけど、ダリア・イワノワで合ってますか?
ジュリアンとの緊張感溢れるパ・ド・ドゥも印象的だった。


「イーゴリと私たち」
2007年に振り付けが開始された作品で、ベジャールが亡くなったことで未完となった。
プログラムには「エスキス(素描)」とある。
イーゴリとはストラヴィンスキーで、ストラヴィンスキーの曲とリハーサル中のストラヴィンスキー自身の声が用いられている。
シェフ=指揮者がジル・ロマン。
燕尾服で登場のジルのかっこよさといったらなかった。
とにかく体のキレがすさまじく、変拍子にもばっちりびったり合っていて、お見事というしかない。
今年48歳というのが本当に嘘のような動き。
そして、ちょっとした手の動き一つで空間を支配してしまう、あの強烈な存在感と演技性は何ものにも替えがたい。
カリスマティックで、華があって、でもその華は単純にぴかぴか輝くような種類のものではなくて。
光り方が少しだけ複雑で、どこか影の存在を思わせる。
底光りするような、それでいて強い輝き。
色気もある。
とんでもなく魅力的であった。


「祈りとダンス」
中東、イラン、ギリシャの音楽や舞踊に想を得た、(キリスト教からみて)異教的な雰囲気の濃厚な作品。
ちゃんと女性も踊ってたんだけど、男性ダンサーの印象が強い。
特に男性群舞はエネルギッシュで(でもスタイリッシュでもある)、つくづくベジャール・バレエって男バレエだよな、、、などと思った。

~休憩~

「アダージェット」
休憩後、最後の「ボレロ」へという順番のはずだったんだけど、大サプライズがあった。
ベジャールの愛した東京の初日ということで、一演目追加というアナウンス(詳細)。
これがなんと、ジル・ロマンの「アダージェット」で。
血が逆流するかと思った……。
ベジャールからジョルジュ・ドンへ、そしてジルへと引き継がれた「アダージェット」。
いまだかつて、あれほどダンサーの存在(肉体と精神)を近くに感じたことはなかったかもしれない。
ホール中がジルに共鳴したのではないだろうか、とすら思う。
本当に、なんてダンサーなんだろう。
これから踊る機会はどんどん減っていくんだろうけれど、惜しいなぁ。。。


「ボレロ」
エリザベット・ロスがメロディ。
エリザベット・ロスは存在感があって、力強くしなやか。
日本人ダンサーの那須野君が目立つところで踊ってて、結構見入ってしまった。
彼は「祈りとダンス」でソロを踊ってたけれど、そちらも良かった。


「アダージェット」のおかげで、私の中では「ボレロ」が思ったほどには盛り上がらなかったけれど、本当に見ごたえのある楽しい公演だった。
「ナマモノは可能な時には多少無理をしてでも見ておくべし」というポリシーの元、急遽別プロの「バレエ・フォー・ライフ」も見届けることにしてしまった。
そんなわけで、日曜日、上野に出没の予定。

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2008年6月 7日 (土)

CD散在録

脈絡のない3枚。

B00005FJH6ブラームス名演集(2)
ケンプ(ヴィルヘルム) ブラームス
ポリドール 1998-03-05

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ヴィルヘルム・ケンプのブラームス。

B000GALFPIホルスト:惑星(冥王星付き)
ラトル(サイモン) ホルスト サーリアホ
EMIミュージック・ジャパン 2006-08-23

by G-Tools

Times OnlineにはPodcastのコーナーがあり、iTunesのストアで「The Times Classical Podcast」としてバックナンバーが聴けます。
そこでラトルがホルストの「惑星」について語ってる回があったので、聴いてみようかと(ラトルの喋りがカッコよかったってのもある…)。
なんかSWのEP3のサントラを思い出します(順番が逆ですが)。
あ、あと「のだめ」ドラマでも印象的に使われてましたね。

「The Times Classical Podcast」には、ドミンゴ、ヴェンゲロフなんかも登場してます。


B000RY42IAラヴェル:ピアノ協奏曲
ユンディ・リ プロコフィエフ ラヴェル
UNIVERSAL CLASSICS(P)(M) 2007-08-29

by G-Tools

先日、NHKのユンディ&小澤の番組(このCDのプロコの方のリハ、レコーディングを追っかけたもの)を見たので、買ってみました。
ユンディ、10年後くらいにどうなるか楽しみです。

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2008年6月 5日 (木)

[映画]パリ、恋人たちの2日間

公式HP

監督・脚本・製作・編集・音楽・主演:ジュリー・デルピー

全部自分でやる人、ジュリー・デルピー。
才人だと思う。
何しろ、英語と仏語で脚本書いてるしね。。。

1995年の「恋人までの距離<ディスタンス>(ビフォア・サンライズ)」の続編に当たる「ビフォア・サンセット」(感想)で、ジュリー・デルピーは監督のリンクレイター、共演のイーサン・ホークとともに脚本を手がけていた。
「ビフォア・サンセット」はある意味会話「だけ」の映画だったけれど、それだけに脚本の密度、充実度が素晴らしかったので、今回、どんな会話が交わされるのか、非常に楽しみであった。

期待通りのできだった。
同じパリを舞台にしていることもあって「ビフォア・サンセット」を彷彿させる部分もあるけれど、よりリアルでフランスっぽい印象。
フランスっぽい=オシャレ、という意味ではなく。
風景一つ取っても内側から見てるような感じがするし、風景や風物その他諸々、アメリカ人が撮るフランスとはやっぱり異質な気がする。

ストーリーはごくシンプル。
フランス人の写真家のマリオン(ジュリー・デルピー)とアメリカ人のインテリア・デザイナー・ジャック(アダム・ゴールドバーグ)はNY在住で、付き合って2年になる。べネツィア旅行の帰りにマリオンの実家のあるパリに立ち寄るが、マリオンの両親をはじめ、ジャックにとってパリはカルチャーショックなことばかり。
しかも次々とマリオンの過去の男性遍歴が明らかになり、ジャックの我慢も限界に。
果たして2人の関係やいかに……。

劇的なことは何も起こらない、どこにでもありそうな他愛のない話だけれど、実に楽しい。
肝はやはり会話=脚本である。
マリオンとジャックに加え、マリオンの両親や昔の彼氏たちなどがさまざまに入り乱れ、ユーモラスでウィットに富んだ、そして時には強烈なやり取りが展開する。
時にあけすけで、身も蓋も無い台詞の数々。
「ビフォア・サンライズ」「ビフォア・サンセット」と比較すると格段にロマンス度が低くなっている。
少なくともジャックにとっては、パリはちっともロマンチックな場所ではない。
マリオンとジャックが住んでいるNYでは、2人は英語で会話をしているのだろうが、故郷で母国語を喋って本来の自分に戻ったマリオンは、ジャックにはまるで見知らぬ女性のように感じられたかもしれない。
しかも会う男性がことごとく彼女の元彼で、2人が自分の理解できない言葉で必要以上に(とジャックには思われたであろう)親しげに語り合うとなれば、不愉快だろうし疎外感を感じることは想像に難くない。
ホームグラウンドで生き生きとするマリオンに対し、ジャックは諸々のストレスに耐えかね、思わず「ここはパリじゃない。地獄だ!」と叫ぶ。

どうしてもジャックに同情してしまうシチュエーションなのだが、だからといってマリオンが悪女というわけではない。
これぞフランス女、ということなんだと思う。
マリオンとジャックの間に横たわるのは、男と女の違いであると同時にフランス人とアメリカ人の文化的な溝であある。
セクシャルなことに対する捉え方も意外なほどに異なる。
ジャックに比べて、マリオンの方が圧倒的に大らかな感じ。
マリオンの母親が343人の…というくだりは、アメリカとフランスの対比として非常に象徴的である。
※ちなみに、この343人の中にはボーヴォワール、サガン、ドヌーヴなんかが含まれる。フランスでは1971年に合法化したけれど、アメリカではいまだに大統領選でまで喧々諤々やってるアレです。

いわゆるロマンチックコメディとは全然違う、ユーモラスでセンスの良い、刺激的な会話劇。
「素のジュリー・デルピーも、こんなんかな…」なんて思わせる部分もあって、面白い。
それにしても、フランス女の生態はなかなかに興味深い。

★★★★


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2008年6月 2日 (月)

[映画]チャーリー・ウィルソンズ・ウォー

公式HP

<ストーリー>
時は1980年代、冷戦華やかなりし頃のアメリカが舞台。
テキサス選出の下院議員チャーリー・ウィルソン(トム・ハンクス)は酒と女を愛する、およそ真面目とは程遠い政治家だった。しかし、 テキサスの富豪ジョアン(ジュリア・ロバーツ)に促されてソ連に侵攻されたアフガニスタンの現状を知るに従い、アフガンの人々を救うために立ち上がる。


軽くネタバレありかも。


ストーリー的には実話に基づいた社会派ドラマになりそうなものなのだが、深刻ぶらず、あくまでもコミカルな作りに徹した印象。
あまりのノリの軽さに、ついついソ連の共産主義に対するアメリカの勝利を明るく描いた能天気・勧善懲悪映画なのか?と思ってしまったが、最後の最後できちんとメッセージを伝えている。
持ち上げといて最後でドスンと落としているような感じだが、その辺に作り手のバランス感覚や良心を感じさせる。

チャーリーの行動の是非を論じるのは難しい。
あの時点において、チャーリーの義侠心とその結果は責められるものではないと思う。
ただ、その後アフガン国内では内戦やタリバンの台頭などがあり、やがては9.11テロに繋がっていくという流れを考えると、運命の皮肉を感じると同時に、つくづく戦争の後始末はきちんとね…と思わずにはいられない。

ところで、チャーリーのドラッグ使用について捜査を行う人物として、ジュリアーニの名前が出てくる。
9.11テロの際にニューヨーク市長として陣頭指揮を取ったあのルドルフ・ジュリアーニである。
ジュリアーニが「あの時チャーリーをとっ捕まえてたら…」と思ったかどうかは定かではないけれど、なんとも不思議な巡り合わせである。

9.11とは?アメリカのアフガン侵攻とは?イラク戦争とは?といった諸々の国際情勢のについて考える一つのきっかけとして、なかなか良い映画ではないかと思う。

★★★+

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