2007年11月22日に80歳で亡くなったモーリス・ベジャールの追悼公演。
NBS公式HP
運良く都合が付いたので当日券で見てきたんだけど、かなりインパクトがあって、ふらっと行った割には強烈に後を引いている。
ロビーに飾られた、在りし日のベジャールの写真。
彼の死は、まさに「巨星堕つ」としか言いようのないものだったと思う。
ベジャールがいなかったら、20世紀のバレエはあれほど面白くはなかっただろうな……。
ありがとう、ベジャールさん。
心よりの感謝を捧げるとともに、改めてご冥福をお祈りします。
2008年6月10日(火)19:00開演
東京文化会館
<プログラム・キャスト>
これが死か SERAIT-CE LA MORT?
ジュリアン・ファヴロー
カテリーナ・シャルキナ
カトリーヌ・ズアナバール
エリザベット・ロス
ダリア・イワノワ
イーゴリと私たち IGOR ET NOUS
シェフ: ジル・ロマン
パ・ド・カトル: カテリーナ・シャルキナ、カルリーヌ・マリオン、ダリア・イワノワ、ルイザ・ディアス=ゴンザレス
パ・ド・トロワ: ダヴィッド・クピンスキー、ジュリアン・ファヴロー、ダフニ・モイアッシ
パ・ド・ドゥ:マーティン・ヴェデル、カトリーヌ・ズアナバール
祈りとダンス LA PRIÉRE ET LA DANCE
ルーミー: 男性全員
3つのバラ: ルイザ・ディアス=ゴンザレス、カトリーヌ・ズアナバール、ダリア・イワノワ
炎: バティスト・ガオン
デュオ: カテリーナ・シャルキナ、ジュリアン・ファヴロー
ゴレスタン: 男性全員
パ・ド・ドゥ: ヨハン・クラプソン、アレッサンドロ・スキアッタレッラ
パ・ド・トロワ: ジュリアーノ・カルドーネ、エティエンヌ・ベシャール、ニール・ジャンセン、アルトゥール・ルーアルティ
パ・ド・カトル: ガブリエル・バレネンゴア、ティエリー・デバル、マーティン・ヴェデル、エクトール・ナヴァロ
ソロ 1: 那須野 圭右
ソロ 2: ドメニコ・ルヴレ
ボレロ BOLÉRO
エリザベット・ロス
ドメニコ・ルヴレ、那須野 圭右、ジュリアン・ファヴロー、マーティン・ヴェデル、エクトール・ナヴァロ、ヴァランタン・ルヴァラン、ティエリー・デバル、ガブリエル・バレネンゴア、バティスト・ガオン、アレッサンドロ・スキアッタレッラ、オクタヴィオ・デ・ラ・ルーサ、ヨハン・クラプソン、エティエンヌ・ベシャール、ダヴィッド・クピンスキー、ジュリアーノ・カルドーネ、ニール・ジャンセン、シャルル・フェルー、アルトゥール・ルーアルティ
実は生モーリス・ベジャール・バレエ団は初めてで、顔と名前が一致しないのがちょっと難だったのだが。
ベジャール・ダンサーはみな強靭でしなやか。
技術的に破綻が少なく、意外なほどに端正でアカデミックな印象もある。
それでいて、実に雄弁である。
物を言う肉体とはこういうことか、と思う。
「これは死か」
死の間際の男性のもとに、かつて愛した女性たちが現れる。薄いピンク、ローズ色、バイオレットと異なる色のレオタードを着た3人の女性たちと、男に覚えのない白いレオタードの女性。
男は四人の女性とかわるがわる踊り、それぞれに異なる恋愛模様を見せる。
女性陣はそれぞれのキャラクターにメリハリが利いててみな良かったけれど、中でも「白」が本当に美しかった。
最初誰だか分からなかったんだけど、ダリア・イワノワで合ってますか?
ジュリアンとの緊張感溢れるパ・ド・ドゥも印象的だった。
「イーゴリと私たち」
2007年に振り付けが開始された作品で、ベジャールが亡くなったことで未完となった。
プログラムには「エスキス(素描)」とある。
イーゴリとはストラヴィンスキーで、ストラヴィンスキーの曲とリハーサル中のストラヴィンスキー自身の声が用いられている。
シェフ=指揮者がジル・ロマン。
燕尾服で登場のジルのかっこよさといったらなかった。
とにかく体のキレがすさまじく、変拍子にもばっちりびったり合っていて、お見事というしかない。
今年48歳というのが本当に嘘のような動き。
そして、ちょっとした手の動き一つで空間を支配してしまう、あの強烈な存在感と演技性は何ものにも替えがたい。
カリスマティックで、華があって、でもその華は単純にぴかぴか輝くような種類のものではなくて。
光り方が少しだけ複雑で、どこか影の存在を思わせる。
底光りするような、それでいて強い輝き。
色気もある。
とんでもなく魅力的であった。
「祈りとダンス」
中東、イラン、ギリシャの音楽や舞踊に想を得た、(キリスト教からみて)異教的な雰囲気の濃厚な作品。
ちゃんと女性も踊ってたんだけど、男性ダンサーの印象が強い。
特に男性群舞はエネルギッシュで(でもスタイリッシュでもある)、つくづくベジャール・バレエって男バレエだよな、、、などと思った。
~休憩~
「アダージェット」
休憩後、最後の「ボレロ」へという順番のはずだったんだけど、大サプライズがあった。
ベジャールの愛した東京の初日ということで、一演目追加というアナウンス(詳細)。
これがなんと、ジル・ロマンの「アダージェット」で。
血が逆流するかと思った……。
ベジャールからジョルジュ・ドンへ、そしてジルへと引き継がれた「アダージェット」。
いまだかつて、あれほどダンサーの存在(肉体と精神)を近くに感じたことはなかったかもしれない。
ホール中がジルに共鳴したのではないだろうか、とすら思う。
本当に、なんてダンサーなんだろう。
これから踊る機会はどんどん減っていくんだろうけれど、惜しいなぁ。。。
「ボレロ」
エリザベット・ロスがメロディ。
エリザベット・ロスは存在感があって、力強くしなやか。
日本人ダンサーの那須野君が目立つところで踊ってて、結構見入ってしまった。
彼は「祈りとダンス」でソロを踊ってたけれど、そちらも良かった。
「アダージェット」のおかげで、私の中では「ボレロ」が思ったほどには盛り上がらなかったけれど、本当に見ごたえのある楽しい公演だった。
「ナマモノは可能な時には多少無理をしてでも見ておくべし」というポリシーの元、急遽別プロの「バレエ・フォー・ライフ」も見届けることにしてしまった。
そんなわけで、日曜日、上野に出没の予定。
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