« ツィメルマン 軽井沢コンサート | トップページ | Steinway & Sons Magazine Summer 2007 »

2008年7月17日 (木)

りゅーとぴあピアノリサイタルシリーズ№20 クリスチャン・ツィメルマン ピアノリサイタル

新潟以来、終わってしまった寂寥感を胸に抱きつつも、私はやっぱりツィメルマンが好きなんだわーとしみじみ幸せをかみ締めて生きてます。
新潟の前に軽井沢アウトレットで大散財してストレス解消したんですが、買物の快楽というのは一瞬なんですよね(しかも、後で空しくなったりする…)。
良いコンサート、良い舞台の後にしばらく続く高揚感、幸福感に勝るものはありません。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2008年7月12日(土)17:00開演 りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館 コンサートホール

<プログラム>
J.S.バッハ:パルティータ ハ短調(第2番)
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」
休憩
ブラームス:四つの小品 Op.119
バツェヴィチ:ピアノ・ソナタ第2番

アンコール
シマノフスキ:ポーランド民謡による変奏曲 作品10
より第7曲、第9曲、第10曲


それにしてもこのプログラムで1公演のみってのもあまりにも勿体無いような気がしてならない。
バツェヴィチなんか仕上げるの大変だろうに…。


さて、初めて行ったりゅーとぴあは、素敵なホールだった。
キャパシティの割にはこじんまりとした感じのある作りで、舞台と客席の距離がかなり近い(その分、3階席の高さは結構ありそうだけれど)。
これだったら2階正面あたりがベストかも。


早速各曲感想へ。

・バッハ
1. シンフォニア
冒頭、荘重な和音が響き渡る。
輝かしい音の粒がどこまでも端正に、緩みなく連なっていく。
タッチが違うせいなのか(浅め?)、ピアノの調整のせいなのか、チェンバロのようにも聴こえる。
果たしてこの楽器のまま「悲愴」をやれるものなのだろうか?という思いがよぎる。
2. アルマンド
一つ一つ、じっくりと音を紡いでいく感じ。
高音が綺麗。
透明感のある音、くぐもった優しいpp、いずれも美しい。
3. クーラント
一転して音がきりっと締まり、指さばきの軽快さ、俊敏さが際立つ。
特に左手に甘さが一切感じられず、曲をぎゅっと引き締める。
4. サラバント
また音が変わる。柔らかく、控え目に、優しく。
5. ロンド
一曲の中ではあまり大きな表現の振幅を作らないで、曲単位の性格を前面に出してメリハリをつけてる感じかな?と思ったらロンドは一転して強弱の幅が大きくなった。
テンポは揺れないながら、後半に向けて盛り上がっていく様が気持ち良い。
6. カプリッチョ
テンポ速めでも、一切崩れることなく、バリバリっと文句無しに上手い。
音のキレ、立ち上がりの良さは絶品。
2本の手で弾いてるとは思えないような、縦と横の重なり、連なり。
豪華絢爛でありながら、拡散することなくあくまでも緊密。
しかも生き生きとした躍動感がみなぎる。
うわわ、すごい、毅然とかっ飛ばしてて、かっこいい!
お見事です。


・ベートーヴェン
ヨーロッパでやったというバッハ→ベートーヴェン間の鍵盤チェンジ(アクション取替え?)は無し。
さすがにこのためだけににわざわざスペアの鍵盤持ってこないか。。。

冒頭の和音のじゃーん、恐ろしいほどにバッハと音が違う。
えええ、さっきと同じピアノだよね?何もしてないよね???
オタオタしているうちに、一気に加速。
速い、速いよ、ツィメルマンさん。
このガン!とアクセルを踏み込む感じ、あっという間にピアノからフォルテに到達するクレッシェンドとの相乗効果で、いやおう無しに前へ前へ引っ張られていく。
くー、、、たまらん。
性能の良いスポーツカーってこんな感じなんでしょうかね。
もうどこで加速するのか大体分かってるのにも関わらず、いざギアが入ると「わわわ、きたきたきたきた、あーーれーー」てな感じに、体の内から突き動かされる感じ。
血が沸騰するような感覚。

一楽章では息をするのも憚られるような雰囲気だったのが二楽章でほっと緩み、三楽章で再び聴き手をぐわしっと掴んで放さず、最後まで駆け抜ける。
一切フォルムの崩れない、稀有な熱演だった。


・ブラームス
水のしずくがぽたぽたと滴り落ちるような第1曲の出だしに、一気に別世界に連れていかれる。
まろやかに、しっとりしめやかに、生き生きと、洒脱に、、、4曲の中で様々な表情を見せる。
厚みのあり、そして水際立った和音の響きは巨大な建造物を想起させる。
全体に漂うのは、大人の分別と精神の透明感。
常に高いところを見続けている五十路男性の面目躍如たるブラームスだった。

後期のピアノ曲集、是非録音して欲しいものです。


・バツェヴィチ
2年前に聴いた時も「こりゃすげーや…」と呆れ果てたものだったけれど、今回もここまでやるか?!的に渾身の演奏。
そして、今回の来日は、この曲に照準を合わせてきたんじゃないだろうかと思わせる、鬼のようなパーフェクトぶり。
それにしても、この人がノッてしまうと本当にものすごいことになる。
ピアニストが曲を奏でているという感じではなくて、音楽そのものが迫ってくるような感じ。
「こういう解釈なんだ」ではなくて、「この曲はこういう曲なんだ…」と否応なく思わされるというか(それを「説得力」というのかもしれないけれど)。

バツェヴィチのソナタ2番は、もしかしたら生ではもう一生聴けないかもと思っていた曲なので、また生で聴けた幸運に、いくら感謝してもし足りない気分。


アンコールは前日同様、シマノフスキ。
「作曲ポーランド民謡による変奏曲 作品10」より第7曲、第9曲、第10曲を連続して演奏。
楚々とした、珠を転がすようなppから、一体どこまで出るんだ?ピアノ大丈夫か?!と思わせる豪快なff(もしかしたらffffくらい?)まで、本当にやりたい放題が可能な音量のレインジの広さと、ここぞという時に腰が引けず、また息切れもしない精神的・肉体的スタミナに最敬礼(この辺はバツェヴィチでも思ったことだけど)。
いやー、あらゆる意味でタフだよな。。。
とにかく華麗で煌びやか、かつ重量級のアンコールだった。


大盛り上がりの中、ツィメルマンさんは何度かアンコールに登場し、最後は「じゃーねー」という感じに両手を振って舞台を後にした。

また11月に会えますように。


オマケ:
軽井沢で大変見目麗しいヨーロピアン青年を見かけ、現地でお会いしたMelodyさんともしやツィメルマンさんの息子さん?と色めきたっていた。
新潟も聴きにくるかも、、、と思って目を皿のように場内を見回していたら(挙動不審)、いた!いました!
「息子さんかも?」と思って改めて見てみると、確かに若い頃のツィメルマンに似ている。
しっかり面影がある。
しかも、パパの若い頃よりもさらにハンサムではないか、と思わせるほど超絶美貌…。
ご両親の良いところを受け継ぐとああいうお顔立ちになりそうだな~とか、いかにも育ちが良さそうな感じだな~、ツィメルマンさんお行儀にはうるさそうだしな~とか、一緒に旅行するくらいだから仲良いんだろうな~等々、しょうもないことをアレコレ考えてたら心の準備をする間もなく開演とあいなってしまい、あ、ツィメルマンさん、待ってー!、みたいな状態でバッハに突入してしまいました…。
本当にゴメンなさい、ツィメルマンさん…。

|

« ツィメルマン 軽井沢コンサート | トップページ | Steinway & Sons Magazine Summer 2007 »

Pianist: Krystian Zimerman」カテゴリの記事

コメント

2公演のレポ、読ませていただきました。青猫さんの幸せをほんのちょっとだけわけてもらった気分です。

買い物の快楽ってほんと後に残らないのに(モノはあるのに)、コンサートの感動って手元にはチケット1枚しかなくてもいつまでもいつまでも残ってますよね。そこまで感動できるコンサートや舞台に出会えることはそうあるものではないと思いますが、青猫さんはこのひと月で何度も出会うことができたんですね。うらやましいです。

うらやましいといえばヨーロピアン美青年・・・(笑)。
私も見てみたーい!

投稿: かねこ | 2008年7月17日 (木) 19:07

公演レポありがとうございます。
直に聞くにはもちろん及びませんがその片鱗を想像する事ができてシアワセです(^^)

秋のオケとの共演が待ちきれません(^^)

投稿: すなみ | 2008年7月17日 (木) 21:19

青猫さん、こんばんわ!!
りゅーとぴあ、私も行けばよかった・・後悔x100,000回・・・・
バツェビチ・・・・あぁあぁぁぁぁぁぁ・・・・・
聴きたかったです・・・でも、私も軽井沢へは行きました!!
ピアノソナタ3番の4楽章・・泡ふきそうになり、極めつけはシマノフスキ・・・もう、昇天というかノックダウンというか、あの演奏はもう、、、、、凄かったですよね。
あまり言葉にしてしまうと陳腐になるような気がして・・
それにしても交通費なぞ気にせず新潟公演に行けばよかった・・
しくしく。。
かねこさまの情報によりますと、来年も来られるのですね~~♪♪
わーい☆わーい☆
因みにプレトニョフもRNO率いて、来年5月か6月ごろ来日予定みたいですよ~~
来年が今から楽しみであります!!

投稿: クレオ | 2008年7月17日 (木) 21:29

こんばんは!本当に立ち居振る舞いの美しい、いかにも礼儀正しい
好青年・・・でしたよね。ってしゃべった訳じゃないけれど。
遠目にもそれと分かる品性というかねぇ・・・。(*^_^*)
すぐに帰国しちゃったんでしょうか?
それとも東京で夜遊び番長でしょうか・・・。(笑)

投稿: Melody♪ | 2008年7月18日 (金) 00:08

かねこさん

6月7月は身も心も財布も大忙しでした…。
でもこういう幸せって半永久的に続くものなので、買物で散財するよりもよっぽど有意義で心の糧になるなぁって思います。
ナマモノに興味の無い人からすれば、遠征につぐ遠征でバカじゃなかろうかって思われる気もしますが、一度味をしめてしまうと歯止めがききませんね…。

ヨーロピアン美青年、久々に正統派の王子様を見た気がします。どこぞの公国の王子様ですっていわれても信じそう…。
髪の色が若い頃のパパそのままです(ということは、遺伝子的に若白髪決定…?)。
さすがに瞳の色までは確認できませんでしたが、どなたがご存知ないかしら(笑)。

投稿: 青猫 | 2008年7月19日 (土) 19:12

すなみさん

ツィメルマンの協奏曲は未経験なので、秋は本当に楽しみです。
でもこう頻々と来日してくれるとなると、ルトスワフスキも良いけどラフマニノフとかブラームスとかプロコフィエフとかやってくれないかなぁ、、、とか欲張りになってしまいます(あ、プロコはレパートリーに無いかも)。

投稿: 青猫 | 2008年7月19日 (土) 21:45

クレオさん

軽井沢いらしてたんですね~。
私もシマノフスキにぶっ飛びました(アンコールが一番良かった…←正直者)。
いえ、お髭さんのシマノフスキだったら絶対良いに違いないって思ってはいたんですけど。
サプライズで聴けて嬉しかったです。

新潟、遠いですもんね(軽井沢から近いかなーと思ったら、そうでもなかったです…)。
プログラムも前日か前々日くらいまで出ませんでしたし、それだとやっぱり二の足踏みますよね(^_^;)。
私は32番!!って半ば確信してチケットを取って、しっかり振られてしまったんですが、個人的には結果オーライでした(まぁでも「悲愴」やバツェヴィチはもう聴いたよ…な方もいたかも)。

来年はプレトニョフも来日なんですね!
大忙しだ~(今から目が回る…)。
…弾き振りやらないですかね(笑)

投稿: 青猫 | 2008年7月19日 (土) 22:04

Melodyさん♪

うふふ~、若い頃のツィメルマンさんによく似てて、昔からもファンの方は会場で見てドッキリだったんじゃないでしょうか。
お席に関係者と思しき方が挨拶にみえたりしてましたが、その対応ぶりがまたスマートな感じで。。。

もしかしたら今頃、親子であちこち遊び回ってるかも?!

投稿: 青猫 | 2008年7月19日 (土) 22:23

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74079/41847555

この記事へのトラックバック一覧です: りゅーとぴあピアノリサイタルシリーズ№20 クリスチャン・ツィメルマン ピアノリサイタル:

« ツィメルマン 軽井沢コンサート | トップページ | Steinway & Sons Magazine Summer 2007 »