ツィメルマン 軽井沢コンサート
大賀さんに感謝をこめて
クリスチャン・ツィメルマン 特別演奏会
軽井沢の子供たちへの音楽活動支援特別コンサート
2008年7月11日(金)19:30開演 軽井沢大賀ホール
昨秋予定されていながら、本人の交通事故負傷及び後遺症のために延期されていたコンサートに行ってきた。
<プログラム>
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第10番 ハ長調
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番 ハ短調「悲愴」
ショパン:ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調
それにしても、ベートーヴェンの32番……。
うううう。
まぁ、今ツィメルマンの32番を聴いてしまったら「もう思い残すことはない」って燃え尽きる可能性が無きにしもあらずなので、これで良かったのも。。。
それはそうと、モツソナは私6回目だ(正確には5.5回目?←遅刻して外でモニター鑑賞だったので)。
ツィメルマンさん、そんなにこの曲好きですか。。。
モツソナといったら、これしか弾かないし。
この曲のどの辺にそんなに惹かれるのかとくと教えて欲しい今日この頃。
まぁでもショパンの3番が聴けるのは嬉しい。
これだけだとちょっと時間的に短いと思うけれど、チャリティだからあまり無理をしないって感じかな?
何となく、小コンサートというかサロン・コンサートっぽい選曲だなぁ、なんて思ってみたり。
てな感じに、プログラムに一喜一憂(乱高下)しつつ軽井沢へ。
駐車場は他県ナンバー多し。
皆さん、「いざ鎌倉軽井沢!」ってな具合に馳せ参じたってところでしょうか。
・モーツァルト
さくさくすぱすぱ、テンポ速めの演奏。
あまり間(ま)を取らない感じで、前回のロマン派っぽさのある甘口モーツァルトとは大分印象が異なる。
装飾音の入れ方も前と違ってて、時々「お?」と思わせる。
音自体はホール中にスコーンと抜ける感じではなくて、少しウェットだったかな?
音の響き方は、座った場所が大きいとは思うけれど(今回、ちょっと席のチョイスを誤りました…)。
・ベートーヴェン
俄然、ピアノが鳴り出す。
こちらもやっぱりテンポが速い。
疾走する、駆け抜けるベートーヴェン。
重厚というよりかは刃物系のスマートな演奏。
前へ前へ、ぐいぐいと引っ張られる感じのドライヴ感があって、これはライヴで聴くべきだな、という一曲。
休憩
・ショパン
私にとって、初生3番。
開始前にツィメルマンが短いスピーチをし、3番は大賀さんの希望で、明日の新潟とは違うプログラムになった云々。
で、話終ったと思ったらあっという間に弾き始めてしまい、曲の出だしに拍手が被る(まただ…)。
今回、コアなファンが多かっただろうから、ツィメルマンの弾き出しが速いっていうのをよく知ってるお客さんばかりだと思うんだけど、それでも間に合わないって、あなたどんだけせっかちなんだ。。。
さて、第一楽章、第二楽章は、ツィメルマンだったらこう弾くだろうな~という予想通りの演奏。
さすがに何十年も弾き込んでいるだけあって、どのフレーズも説得力充分。
「そうそう、これこれ」的に安心できる感じというか。
なんだか、初めて聴く気が全然しませんです……。
第一楽章は元気良くはじまり、第二楽章は細かい音型の切れの良さが際立ってて「ううう、やっぱり上手い…」と思ったけれど、白眉は第三楽章だった。
予想をはるかに上回る素晴らしさで、霊性漂う「歌」の世界に文字通りトリップ。
第四楽章は、終わりにかけてドカドカドカドカっとたたみかけてて、ややout of control気味に走らせている感もあったような。
全体的には、貫禄というか王道というかオトナの余裕というか、影が無くて健全な印象を受けた。
生き生きパワフルな3番で、ポジティブ光線全開な感じ。
もっとドシリアス路線でも…と思う部分も無いわけではないんだけど、今回、コンサートの成り立ちとしてはプライベートな色彩が強いし、ホールも小さくてお客さんもKZ常連さんが多かっただろうから、弾き手の精神状態としては大分リラックスモードになるかもなぁ、、、なんて思ってみたりして。
こういう形のコンサートだと、どうしたって鬼気迫るって風にはならんだろうなぁ、とか。
この辺、通常リサイタルの3番と聴き比べてみたいところだけど、つくづく生演奏って面白いなぁって思いましたよ。
アンコールはまずはブラームス(作品119)から第1曲。
一語一語言葉をつむぐような、しみじみと語りかけるような風情で、味わいと透明感が両立した演奏。
やっぱりブラームス、合いますねー。
そして、お次ななんと切望していたシマノフスキの「ポーランド民謡の主題による変奏曲」(作品10)から抜粋。
これだけでも軽井沢に来た甲斐があったというもの。
第7曲は珠を転がすような優美な演奏で思わずため息がこぼれるほど美しかったし、フィナーレでは鬼のような超絶技巧、強烈なダイナミックレインジを披露。
超ド級のスケール感で、圧巻だった。
ツィメルマンさん、お願いです、どうかどうか、いつかフルに10曲、日本で演奏して下さい。。。
そんなこんなで大盛り上がりでコンサートも無事終了。
はー、楽しかった。
さて、お次はバッハとベートーヴェンとブラームスとバツェヴィチ、オールBプログラムの新潟へ。
新潟編に続く。
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コメント
青猫さん、BBL祭りが覚めやらぬ中で、KZ氏の演奏会を楽しまれたようですね。
私は2公演とも今回は都合がつかず、結局行くことができませんでした。残念です!!昨年は11月に所沢でデュオを聴きましたが、今頃になるとやはりソロ演奏が無性に聴きたくなります。でもソロは来春までお預けです。そのときはおそらくOp.111弾いて下さるでしょうね・・・。
投稿: ジゼル | 2008年7月16日 (水) 15:13
ジゼルさん
BBLとツィメルマン、盆と正月がいっぺんに来たようなものでした。
ジゼルさんは残念でしたね。
来春、来日予定なんですか?(すみません、BBLにかまけてて全然チェックが…)それとも海外遠征されるのでしょうか。
今回、32番弾いてくれないと分かった時はガッカリしましたが、悲愴もすごく良くて、聴けて良かったです。
投稿: 青猫 | 2008年7月16日 (水) 21:40
青猫さん、来春のことですが、もしかしたら他のアーティストさんとKZさんを取り違えているのかもしれません。不確かなことを書いてしまいごめんなさいね。
(でも今や拠点がありますから、毎年来日して是非演奏して頂きたいものです。)
P.S. Op.13は超有名曲ゆえに、KZさんの演奏が際立って素敵なのが感じられます。
投稿: ジゼル | 2008年7月16日 (水) 23:52
横レス失礼します。ジャパンアーツの来年のピアニストシリーズにツィメルマン氏のお名前がありますよ。
http://www.japanarts.co.jp/hatsubai.htm
投稿: かねこ | 2008年7月17日 (木) 19:10
はじめまして。
わたしも大賀ホールの演奏会に行きました。
お尋ねですが、アンコール全ての曲目分りますか?
投稿: かたつむり | 2008年7月18日 (金) 00:14
横レス失礼します
アンコール曲ですが、ホームページに記載されております
http://www.town.karuizawa.nagano.jp/index_o.asp
投稿: クレオ | 2008年7月18日 (金) 10:57
ジゼルさん
下でかねこさんが教えてくだいましたが、ジゼルさんのご記憶のとおりのようですね♪
「悲愴」、あれだけの超有名曲で、しっかりツィメルマン色になってて本当にすごいですね。有名曲の場合、誰それのイメージが強過ぎてねぇ、、、なんてことにも往々にしてあるんですが、その辺のことを全て吹っ飛ばす力演&名演であると思います。
NHKの映像という形ではありますが、残してくれて本当に良かったです。
投稿: 青猫 | 2008年7月19日 (土) 18:45
かねこさん
おおお、情報ありがとうございます~!!
いよいよ毎年来るつもりなんでしょうか…。
身と財布がもたん、、、と思いつつも、今度こそ32番を弾いて~~~!とお祈りしてます。
バッハもまた聴きたいし、シマノフスキも是非是非是非是非…。
投稿: 青猫 | 2008年7月19日 (土) 18:46
かたつむりさん
はじめまして。
ご訪問&コメントありがとうございます。
さて、お尋ねのアンコールですが、ブラームス(作品119)から第1曲と、シマノフスキの「ポーランド民謡の主題による変奏曲」(作品10)の一部です。
シマノフスキは第7曲と、第10曲は確実なんですが、第9曲をやったかどうかがちょっと記憶があいまいでして。。。
第9曲と第10曲は全く別個のヴァリエーションではなくて、作りとしては第9曲からそのまま10曲に突入する感じなので、多分第9曲もフィナーレの前にやったんじゃないかと思うんですが、ちょっと自信がありません。
ピティナのHPに根津理恵子さんの演奏の音源があるんですが(シマノフスキ : ポーランド民謡の主題による変奏曲 / Wariacje ne temat ludowy polski op.10)、11分10秒くらいからが第9曲です。
12分16秒あたりからが第10曲(楽譜を見たわけではありませんので、手持ちの別の奏者のCDのトラックと付き合わせれば、ですが。場合によってはトラックの切り方がいい加減だったりするので、多少前後するかもしれません)。
もしよろしければ、ご確認いただければと思います(第9曲、軽井沢で聴いた!ということであれば是非教えてください)。
投稿: 青猫 | 2008年7月19日 (土) 22:36
クレオさん
フォローありがとうございました♪
軽井沢のすぐ後に新潟を聴いてるので、記憶がちょっと混じってしまってて、少し濁した書き方をしてしまったのでした。
聴いたらすぐ記録しとかないとダメですねぇ。。。
投稿: 青猫 | 2008年7月19日 (土) 22:49
青猫さん
お久しぶりです。2年ぶりくらいにお邪魔します。私も軽井沢に行ってきました。バッハのパルティータとベートーベン32番を期待していたのに、当日プログラムを見たら、モツソナ10番と悲愴だったのでがっかりしたのですが・・・悲愴は今まで聞いた中で最高でした。この曲ってこんなに素晴らしかったんだと、はじめて気づきました。
あと、大賀ホールはピアノには最適だと思いました。過剰な残響がなく、一番ナチュラルな響きで、どこで聞くツィメルマンよりも良かったです。
実は今回初めて母を連れて行きました。母は音楽に関してはド素人で今まで誘っても「私には違いがわからないから」と言って辞退していたのですが、なんと「ピアノだけの音には思えない!凄すぎる!」と言って涙ぐんでたんです。特別に音楽に精通していない人にも、本当に素晴らしい演奏はしっかり伝わるんですね。
ところで、帰宅時にびっくりするような出来事が・・・
軽井沢駅のホームで最終の新幹線を待っていたら急に周囲がざわざわしたのでふと顔を上げたところ、1メートルくらいの至近距離に、ツィメルマンご本人が!にわかに自分の目が信じられず、ただただ呆然と立ちつくしてしまいました。。。とてもにこやかで、フレンドリーな感じの方でした。キャスターをご自分で転がし、花束も自分で抱えてらっしゃいました。高崎経由でその日のうちに新潟へ移動されたようです。
投稿: 三毛猫 | 2008年7月22日 (火) 01:24
三毛猫さん
お久しぶりです♪
軽井沢、いらしてたんですね。
私もあのプログラムが発表された時はちょっとショックでした。
基本的にはツィメルマンが弾けば何でも良いのですぐ立ち直りましたし、悲愴も3番も聴けて良かった!って思いましたけれど。
大賀ホール、私も良いホールだと思いました。
私の席はちょっとイマイチなところもあったのですが(私の好みとちょっとズレてたというか)、残響が多過ぎず、ステージと客席も近くてとても素敵な空間でしたね。
あれくらいの小ホールでツィメルマンを聴く機会なんてめったに無いでしょうから、本当に貴重だったと思います。
お母様も楽しまれたとのこと、軽井沢までいらした甲斐がありましたね~。
最高のお母様孝行になりましたね♪
ツィメルマンさん、最終の新幹線で移動で、同じく最終の新幹線で東京に帰られる方と一緒になったようですね。
1メートルの至近距離は羨ましいです~!!
ああ、私も近くで見たかった…。
ファンには、とても丁寧ににこやかに応対される方ですよね。
そうですか、やっぱり自分の荷物は自分で、なんですね。
あ、坊ちゃんが少し荷物持ちしてたりして…(妄想)。
でも色々うかがってると、今更ながら、私もその日のうちに一緒に新潟に移動すれば良かったかも…なんて思ってしまいます(笑)。
投稿: 青猫 | 2008年7月23日 (水) 00:47
青猫さん、こんにちは。おひさしぶりです。
軽井沢と新潟に行かれたのですね。ほんとに羨ましいです。
でも、青猫さんの臨場感たっぷりの記事を読ませていただいて、
ツィメルマンの音が聴こえてくるようでしたよ。
私は、彼の演奏に接する機会がとても少ないので、
こちらの記事は本当に貴重です
投稿: プーとパディントン | 2008年7月31日 (木) 15:49
プーとパディントンさん
お久しぶりです。
軽井沢と新潟が終わってしまって寂しい限りですが、秋の協奏曲もありますし、元気出していきたいと思います。
来年も来日するみたいですから、その時はきっとがっつり全国回ってくれるんじゃないでしょうか(なんだかんだ言いつつ半年おきくらいに来てるような……)。
投稿: 青猫 | 2008年8月 1日 (金) 23:46