Antonio Barbosa のショパン・マズルカ全集
Frédéric Chopin: Mazurkas (Complete) Frederic Chopin Antonio Barbosa Centaur 2008-03-25 by G-Tools |
今年、CDを何枚買うか分かりませんが、確実にトップ10入りすると思います。トップ5かも。
アントニオ・バルボーザ(1943-1993)、ブラジルのピアニストだそうです。50歳の若さで心臓発作で亡くなってしまったのだとか。名前も聞いたことのないピアニストでしたが、HMVの視聴音源を聴いて「これはいけるかも?」と思い、入手したCDを一聴して、ううむ、これはすごいかも、、、と唸ったのでした。バルボーザ、ネット、手持ちの資料等で色々調べてみたんですが、詳細が分からないんですよね。CDのブックレットにも、簡単に録音歴が載っているのみ。それを見る限り、レパートリーはショパンが多かったのかな?という感じですが。
流れるような、そしてとても自由なピアニズムです。音色やフレージングに独特の揺らぎや瞬きがあって、そこが大きな魅力になっています。ルバートはかなりしっかり入ってると思いますが、頭でこねくり回した挙句、、、みたいな感じはなくて、今まさに音楽が迸しり出てきたかような鮮度の高さがあるので、作為的に聞えません。センスがものすごく良いんだと思います。
方向性としては貴族的な洗練美といった風情も多分にあるので、その辺は好き好きだとは思います。例えばショパンの大曲なんかを弾くには若干線が細いような気もしますが、リズム的には非常にシャープでキレがあり符点などにも甘さがないので、マズルカ、ポロネーズあたりはとても良いのではないかと思います。
一曲一曲、宝石のような演奏で、本当にゾクっとさせられるほど美しい瞬間に満ちています。そして、美しい音の波の中に繊細な感情が揺らめく様は、奏者の(もしくは作曲家の)私的な独白そのもののようでもあり、とても人間味のある演奏だと思います。
最後に収録されているマズルカ風ロンド、初めて聴きましたが、これがまた目が覚めるような演奏で、ちょっとすごいです。曲としては少々取りとめがないような気がするのですが、全然飽きないんですよね。くるくる変わる曲想に振り回されることなく実に天衣無縫だし、何よりもとにかく瑞々しいです。なんていうか、この曲をこれ以上素敵に弾くことって果たして可能なんだろうか?と思ってしまうほど。
バルボーザ、他の録音も探してみようと思います。
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コメント
こんばんは。
青猫さんのこの記事を読んで、とても興味を持ちました。
私も是非聴いてみたいです。
青猫さんはいつもながら、ピアニストの魅力を手に取るように表現していらして、
文章がうまい!!と感心です。
ほとんど知られていないピアニストの中にも
このバルボーザのように
素敵な演奏がまだまだたくさんあるんですね。
私は いつも 決まった人に偏りがちなんですが
もっといろいろなピアニストを
聴いてみようと思います。
投稿: プーとパディントン | 2009年1月17日 (土) 23:39
プーとパディントンさん
こんばんは。
こんなに一生懸命マズルカを聴いたのは初めてってくらい気に入って、リピートしてます(^_^)。そして、マズルカってこんなに良い曲がいっぱいあったのか~と感じ入ってます。
ピアニストに限りませんが、こういう思いもかけない出会いがあると本当に嬉しいものですね。どんなものか全く分からないCDを初めてかける時はドキドキというよりもビクビクしてしまいますが(^_^;)。
メジャーどころを押さえるだけでも大変なので、なかなかこういうCDまで手が回りませんが、アンテナを上手くはってキャッチできれば良いなーと思います。
投稿: 青猫 | 2009年1月19日 (月) 22:18
こんにちは。はじめまして。
僕もマズルカ集でバルボーザを初めて聴きました。
スケルツォ集のCDも素晴らしいですよー。
以下のサイトで試聴できるようです。
http://classicvinyl.biz/audio/listing?filter0=antonio_barbosa
投稿: nimo | 2009年1月25日 (日) 19:13
nimoさん
はじめまして&ようこそ。
バルボーザのスケルツォ、ご紹介ありがとうございます♪
本当に素晴らしいですね。
この人がもうこの世にいないのがなんか信じられないような気持ちにさせられます。
これから、マズルカだけじゃなくて、他の音源もどんどん復刻して欲しいですね。
投稿: 青猫 | 2009年1月27日 (火) 20:38
青猫さんのレビュー見てこのCD買いました。
さっき1枚目だけ聴いたんですけど、すごーくいいですね!!
いいものを教えていただきました。感謝です。
投稿: かねこ | 2009年2月 1日 (日) 16:50
かねこさん
お気に召されたようで、良かったです。
私としては「なんかヘンだな、このマズルカ…」と思うことなく聴けたのですが、実際にポーランドにいらしたりポーランド語をやってらっしゃる方にとったら、また全然印象が違うかもしれませんから、かねこさんに気に入っていただけてほっとしました(笑)。
投稿: 青猫 | 2009年2月 3日 (火) 20:38
青猫さん、こんばんは。
このCDの入手には、とても日にちか゛かかってしまい、やっと二日ほど前に、送られてきました。その替わりちょっと安めに買えたかも・・・
青猫さんのコメントどおり、とても素敵なマズルカで、今飽きずに聴いています。
こんなに、飽きずにマズルカを聴き続けることができたのは初めて。
聴いていて、バルボーザは限りなくショパンに共感していて、まるでショパンになりきって弾いているように感じられました。
ライナーノーツのバルボーザの写真も、ちょっと濃い目のイケメンで、かっこいいです。他の演奏ももっともっと聴いてみたくなるピアニストでした。
ありがとうございました
投稿: プーとパディントン | 2009年2月 5日 (木) 21:17
プーとパディントンさん
こんばんは!
このCD、地上のお店で買うと、ちょっと試しに買うにはややお高めかもしれませんね。
バルボーザ、気に入っていただけたようですね(^_^)。
私もマズルカ全曲を一曲一曲、飽きずにじっくり聴くことができたのは初めての体験でした。飽きないのは、それぞれの曲の特徴とか性格とか情感みたいなものが明確に現れているからかもしれませんね。
バルボーザの演奏は本当にショパンらしいって言ってしまって良いと思うのですが、ショパンの人となりとか感性とか、あとはその時々の気分みたいなものが伝わってくるように思いました。
こんなにマイナーなピアニストなのに(というのもアレですが)、皆さんと語り合うことができて嬉しいです♪
投稿: 青猫 | 2009年2月 6日 (金) 23:31
バルボーザ、本当に懐かしい名前です。ショパンのポロネーズ集とワルツ集のレコードをもっています。英雄ポロネーズの輝かしい躍動感とリズム、一度は生で聞いてみたいピアニストでした。20数年前に来日経験もあるようです。
投稿: shun | 2009年10月 8日 (木) 14:35
Shunさん
こんにちは、コメントありがとうございました。
バルボーザ、LPしか出てない音源があって何とももったいないですね。ショパンのワルツにポロネーズ、とても良さそうですね。ポーランド人以外としては決定盤では?と想像をたくましくしてしまいます。なんとかCD化して欲しいものです。生で聴けたらどんなにか良かったことでしょうね…。
投稿: 青猫 | 2009年10月 8日 (木) 17:50
ゲーテが、世界は素晴らしい演奏に満ち溢れている、という意味の事を言ってます。
バルボーザを聴いて本当にそうだと思いました。
こんな音を聴くと、石でも感動を語らずにはいられない・・・・ので、ここにコメントさせて頂きました。
投稿: クライスラー | 2012年3月25日 (日) 02:52
クライスラーさん
コメントありがとうございます(お返事が遅くなりごめんなさい)。
石でも感動を語らずに、、、まさに思わず言葉を紡ぎたくなる、霊感に満ちた演奏ですよね!
世の中には素晴らしい演奏が本当にいっぱいあるものだとしみじみしてしまいます。
投稿: 青猫 | 2012年4月 4日 (水) 11:42