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<ストーリー>
1965年3月、キューバ革命政府の要職にあったチェ・ゲバラは忽然と姿を消した。様々な憶測が飛び交う中、カストロはキューバ共産党中央委員会の場で、ゲバラの「別れの手紙」を公表する。ゲバラは1966年、大統領の独裁政権下にあるボリビアに潜入し、再び革命戦争に身を投じる。しかし、現地の共産党の協力は得られず、やがてゲリラ軍は苦境に陥っていく。
「チェ 28歳の革命」の続きということで、半ば義務的に見てまいりましたよ。前作よりも良いという前評判もありましたが、、、うーん、困ったね、こりゃ。
最初に書いておきますが、私は基本的にデル・トロ=ゲバラはどうにも違和感が拭えないんですよね(28歳の感想でもアレコレ書きましたが)。映画の出来不出来以前に、そこがもう致命的でした。まぁその辺は28歳の段階で分かってたことでもあるんで、分かってて見るな、とか、嫌々見といてわざわざ文句を言うな、というご意見もあることでしょう。ごもっともです。ごめんなさい。
まぁ、デル・トロは迫真の演技でゲバラにしか見えない、という意見も多々見かけますんで、デル・トロOKな方にとったら彼の熱演だけでも見る価値があるでしょうし、きちんと映画にも入り込めるのではないかなぁ、などとも思います。
ゲバラがどうなったかを知らない人はこの映画を見に行かないような気がしますが、以下、一応ネタばれです。
映画はカストロがチェの「別れの手紙」を読むシーンから始まりますが、ここはやはり感動的でした。この後120分以上映画は続くんですが、最終的にはこれ以上の感動は無かったかも……(それもいかがなものかと)。
構成は前編よりもシンプルで、時間軸の前後等はなし。したがって、1人の人間が着々と追い詰められていく様、死にゆく過程を2時間以上にわたって見せられるわけです。これは結構シンドイです。
前編以上に盛り上がりに欠けるのは、ボリビアでのゲリラ戦の失敗、捕らえられて処刑という話の流れ上無理もないと思いますが、ゲバラの内面にはほとんど踏み込まないので、やはり感情移入はしにくかったです(馬に八つ当たりするシーンとかはありましたが)。
とはいえ、ジャングルの風景描写は透明感があって悲壮感が漂うほど美しいし、音楽も非常に切なく印象的で、そういう意味ではゲバラの生き様に対する哀切の念を呼び起こす要素が皆無というわけではないです。
最後、ボリビア政府軍に捕らえられたゲバラが「神を信じるか?」と問われるシーンがあります。それまで散々人の裏切りにあってきたであろうに、「私は人間を信じる」と言い切るゲバラ。極限状態にあっても人間愛を失うことがないゲバラの姿は、前編の「革命とは愛だ」というセリフ(うろ覚えですが)を思い出させるものでした。監督は戦士としてのゲバラに焦点を当てたかったようですが、個人的にはこのシーンのためにこの映画はあったのかもしれない、とも思います。
はー、それにしても前編後編で4時間半、長かった、疲れた。。。ただ、前編ではキューバ革命の成功=ゲバラの生を描き、後編ではボリビアでの挫折=ゲバラの死を描くという二部作の構成は、アリだと思います。エンタメとしては、前編だけにして、もっと華々しくヒロイックに描いた方が良いとは思うのですが、エンタメとして作る気はさらさら無かったんでしょうし。
これは想像ですが、ソダーバーグはむしろ後編(ゲバラの挫折と死)に重きを置いたんじゃないですかね。というのは、なぜゲバラが「20世紀最大のカリスマ」と呼ばれるか、ということに関わってくると思うのですが、ゲバラはキューバ革命の成功だけでは、おそらくはここまでのカリスマにはなりえなかったんじゃないかということがあると思うんです。彼が今なお「正義のアイコン」たるのは、キューバでぬくぬくと家族と幸せに過ごすことも十分可能だったのにも関わらず、わざわざボリビアに行って39歳で理想に殉じた、その点においてこそ、だと思うのですよね。だから監督は、何が何でも後半を描きたかったんじゃないか、と想像するわけです。でもだからといって、ゲバラを映画化するにあたって、ボリビア編「だけ」ってのもあり得ない。ビジネスとしてまず成り立たないと思います(私だって、ひたすら負け戦だけ2時間半とか、勘弁してくれって思う)。なので、前編と後編、明と暗を明快にした上で、後編でひたすら苦しいボリビアでのゲバラの最後の日々を虚飾なく描き切る、というのは監督の志(こころざし)の高さでもあろうと思うので、そこは「買い」なのではないかと思います。正直、ドキュメンタリーを見た方が良いんじゃね?みたいな気分がないわけではないですが、あの日々追い詰められていくゲリラ戦の過程を追体験するというのは、やはり映画というメディアならでは、といえるのではないでしょうかね。
そんなわけで★★★
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