ハンブルク・バレエ「椿姫」
2/18(水) 18:30開演 神奈川県民ホール
2/19(木) 14:00開演 神奈川県民ホール
ハンブルク・バレエの「椿姫」、2月18日(水)のソワレ、19日(木)のマチネに行ってきました。
って、いつの話だよ…ってくらい時間がたってしまいましたが、メモが残ってると気持ち悪いんでアップさせていただきます。。。
本当は個別に感想を書くべきなんでしょうが、ひとつひとつ詳細に覚えているわけではないので、まとめてとりとめなくいきたいと思います。
「椿姫」はヴェルディのオペラが有名ですが、ノイマイヤー版バレエは、音楽は全てショパンを使っています。これが意外と、ものすごく合っています。19世紀という時代の空気であるとか、パリのサロンという場の雰囲気みたいなものがうまくオーバーラップするんですね。
あと、劇中劇として「マノン」が登場するのもバレエ版に特徴的な点でしょうか。マルグリットとアルマン、マノンとデ・グリューという二組の男女のイメージなどが、微妙に、時として密にリンクするという趣向になっています。
舞台はマルグリットの死後、彼女の遺品の競売のシーンから始まります。そこにマルグリットの恋人だったアルマンが飛び込んできて、居合わせた父親にこれまでの出来事を語り始めて、第一幕、マルグリットとアルマンの出会いのシーンへ、、、という流れ。
第一幕は、本当にびっちり、ピアノ協奏曲の2番なんです。1楽章は「マノン」観劇のシーンで用いられ、劇中劇になる「マノン」は終盤に至るまで重要なモティーフになります。マルグリットは、享楽的で男を破滅させる(そして自分も破滅する)マノンに自らの境遇を重ね合わせるのですが、このマノンの影というのがずっとマルグリットを苦しめる、と。
そして、2楽章。ここがとにかく泣かせます。マルグリットの想いを寄せるアルマンは、咳の発作で自室に下がったマルグリットを追いかけてきて、介抱をしながらつい激情にかられて愛の告白をしてしまう。最初は余裕たっぷりにからかうかのような素振りを見せるマルグリットに対して、アルマンは文字通りひれ伏して愛を請うのですよ。音楽がP協2番のラルゲットで、若者の初恋の歌ですから、もうこれは反則ではないか、、、というくらいに説得力があります(仮にこれが20代のツィメルマンの演奏だったら、もうこの段階で滂沱の涙に違いない)。
あと、音楽の当て方でうまいと思ったのは、マルグリットのテーマとしてソナタ3番の3楽章が用いられているのと、マルグリットとアルマン父が会うシーンの前奏曲諸々です。前奏曲2番の不穏な感じはいかにも~ですが、17番が意外と良い。一見明るい曲調ですが、これがマルグリットとアルマンの幸せだったひと時を象徴しているようで、それでいて刻一刻転調していく様子がマルグリットの揺れる心を表しているように思われました。で、「雨だれ」の陰鬱な曲調で、悲劇的な別れが決定と。極めつけは、マルグリットが去ったことを知ったアルマンが踊るソロが24番。まさにほとばしる激情と絶望って感じです。
とか何とか、かかってる曲に対していちいちやってると永遠に終わらないので、以下適当に。
18日は、アレクサンドル・リアブコがアルマン、ジョエル・ブーローニュがマルグリットという組み合わせ。19日は、チャゴ・ボアディンがアルマン、シルヴィア・アッツォーニがマルグリット。も、本当に、二組二様、それぞれキャラが全然違いました。
サーシャのアルマンは、誠実でまっすぐな好青年といったところでしょうか。最初の登場シーンからして、舞台に飛び込んでくるその走りっぷりが鬼気迫っていて、踊らなくてもこちらをがっと引きつけてしまうようなところもあります。
そうかと思えば、なんか正座が妙に似合ってたりして、マルグリットのそばにちょこんと座るさまが異様に可愛かった…っていうのはどうでも良い部分なんですが、いやーでもカワイかった。カワイかったんだようぅぅぅ。←壊れた。
ま、何しろ、最初の方のパドドゥでも、マルグリットの足にすがりつくアルマン、全然ウザく見えませんからねー。ひたすらひたむきで、ほだされるマルグリットの気持ちが丸分かりですよ。
普通に考えると、アルマンって甘ちゃんの世間知らずで、見てる側の共感を呼ぶキャラではないと思うのですが(むしろ、「こんのバカ男!」と罵倒したくなるタイプというか……)、サーシャ@アルマンはその純粋さと情熱が、とても魅力的でした。しかも、繊細で、どこか痛々しさもあって。こういうアルマンだと、泣けるんですよねぇ。。。
ジョエルのマルグリットは、良い感じにトウが立ってて、女王様然としています。ちょっとお高い雰囲気のある女性で、非常に分かりやすい印象。前半がいかにも高嶺の花という感じなだけに、後半の哀れさが際立ちます。
サーシャ&ジョエルの組合せは、どうしようもない、やるせないような悲恋の雰囲気がしっかり出てて、説得力がものすごかったです。
この日のカーテンコールは、一階総立ちのものすごいスタオベでした。
二日目、チャゴとシルヴィアのカップルは、ストーリーが違うんじゃ?ってくらい雰囲気が違いました。チャゴは、髪の毛くるくるでいかにもラテン系っぽい風貌のせいもあってか、ややのんきな坊ちゃん臭が漂ってまして、うん、まぁキュートなんですけどね……。こののんきさが許せるかどうかはまぁ好き好きではないかと思います。
シルヴィアは、元々小柄で童顔なせいもあって、少女のような雰囲気があると思うのですが、本当に出てきた瞬間が鬼のようにカワイくて、もうどうしようかと思ってしまった。。。それでいて、しっかり艶っぽさや華やぎ、たおやかな女性らしさもあって、娼婦でもあり天使でもあり、みたいなちょっと一言では言い表せない雰囲気がありました。私のイメージする「ファムファタル」=魔性の女に近い感じ。それでいて、達観してるような雰囲気とか慈母のような表情を見せたりとか、まぁなんていうか奥行きのある表現であったように思います。
マルグリットってなぜか黒髪のイメージがあるのですが(最初に見たのがオペラで、コトルバスだったからかな)、シルヴィアの金髪のマルグリットというのも、紫の衣装に合ってて本当に美しかったです。
後半、マルグリットが病み衰えていくところでは、小柄なシルヴィアの痛々しさが胸に迫ってきて、えーとなんていうか、悲恋というか、一人の女性の悲劇を目の当たりにしました、、、という感じに泣けました。
二組とも大変見ごたえがありまして、本当に大満足だったのですが、できることならサーシャ&シルヴィアの組合せで見てみたいなぁ、、、などとも思った二夜でございました。
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