クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル 2009年日本公演 in 浜松 その1
クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル
2009年5月11日(月)19:00開演 アクトシティ浜松中ホール
J.S.バッハ:パルティータ 第2番 ハ短調 BWV826
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 作品111
休憩
ブラームス:4つの小品 作品119
シマノフスキ:ポーランド民謡の主題による変奏曲 作品10
※プログラムA
私にとっての本ツアー一発目、浜松公演に行ってまいりました。
1階2階ともにすっごい空席がありまして、うわー勿体ない…と思ってしまいました。
私チケットを取ったのが遅かったので、1階席の残席を見ないで2階にしてしまったんですが、あれだったら1階席でも結構近くで聴けたかも。。。
まぁ良いや。2階席でも全然遠くはなかったし、2階のせいか残響がかなり多めだった音響もベートーヴェンの頃には耳がすっかり慣れました。バッハで始めの音を聴いた瞬間、あまりの残響にうわ、えらいこっちゃ、どーしよーって思ったんですけどね。。。
さて、バッハのシンフォニアはテンポが大分ゆっくり目で、荘重な感じで、あれこれはちょっと違うかも?(比較対照は去年の新潟のバッハ)と思ったのですけどね。結論からいうと、私は結構淡々と聴いてしまいました。あれ、こんなんだったかな?ってくらいに、割とさらさらっと終わってしまいまして、やや拍子抜けしたというか。いやもちろんデフォルトで音の粒揃いまくりで横の線縦の線とかまぁ文句のつけようもないんですが、もうちょっとゴリっとしたところがあると思ってたんだけどなー…と。まぁ素晴らしくキレイなバッハではありましたが。
なんかツィメルマンってば、演奏中に客席の方(角度的には2階席の方)を何回も見てまして、あれ、こんなにこっちの方を見る人だったかな、どうもおかしいなって思ってたら、どうも照明不具合だった模様です。
ベートーヴェンの前に、I'm sorry, ライトがどうのって謝っていました。
さすがのツィメルマンも、ちょっと集中を欠いていたのかも。
照明って眩しかったり影ができて鍵盤が見難かったりと、いろいろ難儀することがあるようですね(どうでもいいですが、私は照明が目に入って譜めくり事故を起こしたことが…。あう、思い出しちった…)。
バッハを聴きながら、実は内心、このテンションでベートーヴェンいけるんかいな、どーすんだよ一体って思ってたのですが(すいませんね、失礼なファンで)、やっぱりツィメルマンは伊達にツィメルマンじゃない(意味不明)、と思った32番でした。
思い起こせば2007年、軽井沢で32番弾くよというアナウンスに狂喜乱舞して、でも結局はキャンセルされてしまい、去年はその振替のコンサートをやったけど32番は悲愴に化けてて、、、要するに私はずーーーーーっとこの瞬間をアレコレ想像たくましく待っていたのです。
でもその一方で、感動できるかについてはあまり自信がなかったんです、ええ。ツィメルマンだったらこう弾くんじゃないかなぁ、でもそう弾かれたらたぶん私的には違う、になるかも、、、とそれはもう勝手に想像しまくって自己完結していたのです。今考えるとバカ過ぎるというか、この期に及んでまだツィメルマンをなめてましたって話なんですが(懺悔…)。
えーとですね、もう、全っ然想像と違いました。どうしましょうってくらい。
意外と、いや、かなりマニエリスティックで、いびつなところや綻び、暗さもあって。まさか、あんなネ暗い、地獄から鳴り響いているような低音がきけるとはねぇ……。端正にまとめようとすれば200%構築美を極められる人が、こういう演奏をしますか、うーん、勇気あるなー…と、ほとほと感じ入ってしまったのでした。ライヴだと、意外と枠からはみ出る人だとは思っておりましたが、いつもは1.5歩くらいだとすれば、このベートーヴェンは5歩くらいぐぐいっと外に足を踏み出しておりまして。ってそれはもう、はみ出してるとかそういうレベルじゃないんじゃないかと。これはおそらく、ベートーヴェンが描き出した、綺麗事ではない何事かに向き合っているということだと思うのですね。すなわち「人間」というもの(それも醜悪さとかネガティヴな部分)に逃げずに相対している、といっても良いのではないかと思います。ツィメルマンってやっぱり、安全圏にいられても絶対にそこにはいない人なんですよね。私はツィメルマンのそういった勇敢さに、いつも心を打たれてしまうのです。。。
フレーズフレーズで目まぐるしく変化し、嵐のように荒れ狂う一楽章。聴いてる私は終始落ち着かない気分で、ひたすら胸をかき乱されるし、挙句の果てにだんだん息苦しくなってしまって、正直、もうお家に帰りたい……って思ってしまったんですよね。ツィメルマンのコンサートで、こんなことありえんって思うのですが、本当にもう勘弁してくれって5%くらいは思ってしまいました。
一転して二楽章は、まるで暴風雨が過ぎ去った後の崇高な祈りと浄化のようで。ブギウギ(といって良いのか分かりませんが)の部分なんかは、ものすごーく喜々としてて速めのテンポでグイグイ押してたりして、えーとこれはちょっとノリが良すぎやしませんか、、、ベートーヴェンに聴こえん…と笑ってしまったのですが、最後にはちゃんと成仏できました(私が)。
いやでも、本当にグッタリしてしまって、休憩になってもしばらく立ち上がれませんでしたが。
後半に続きます。
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コメント
初めまして、pomodoroと申します。
実は今回初めてツィメルマンの演奏に触れる母をさいたま芸術劇場に同伴することになっていて、
ロサンゼルス公演での抗議声明もあり、Aプログラムの構成が少し重くないかと心配しておりました。
でも、青猫さんの感想を読んで、心配するのをやめました。
生身の人間が演奏する時間と空間を共有できるその瞬間を味わえばいいのですね。
たとえBプログラムの発表が当日までなかったとしても、
そのほうが感動できることもあるかもしれないと前向きに考えることにします。
感想の続き楽しみです。
投稿: pomodoro | 2009年5月12日 (火) 15:07
pomodoroさん
はじめまして、拙ブログへようこそ。
コメントありがとうございました♪
お母様とご一緒されるのですね。良いお母様孝行になると良いですね~。
Aプロはどうでしょう、32番は重いといえば重いですが、1楽章さえクリアできればあとは浮上できるのではないかと。。。
シマノフスキは、途中経過はどうあれ(笑)後味は良いと思われます。
LAでの抗議声明ですが、個人的には声明というようなスタンスのものではなくて、、、よりシンプルな、人間的な感情の発露なのではないかと思っているのですが。まぁ、これは本当に勝手な憶測というか想像というかなんというか、なのですが(ツィメルマンさんに違う!って怒られるかも?)。
ツィメルマンと時間、空間、そしてもちろん音楽を共有できるのは、本当に幸せなことだと思っています。ライヴに行けば行くほど、彼が録音を嫌がる理由がいやというほど分かってしまうのですよね。。。
さいたま公演、中くらいのホールで、距離感もちょうど良い感じではないでしょうか。どうぞ楽しまれてくださいね!!
投稿: 青猫 | 2009年5月13日 (水) 22:59
私は、いろいろ迷った末、自宅から近いさいたま芸術劇場に行くことにしました。
いよいよ来週です。
予習しようと思っていたのですが、青猫さんの詳しい記事を読ませていただいて、この記事で十分!!と思いました。後は、当日無心の境地で聴くのみです(笑)
投稿: プーとパディントン | 2009年5月16日 (土) 02:52
プーとパディントンさん
こんにちは♪
おお、こちらにもさいたま参戦の方が。
私のコレを予習代わりなんて、そんな、、、(主観まみれですよ……)。
日々、違う演奏を繰り広げているような気もするので、是非是非無心で挑まれてくださいませ~。
私はさいたまは行かないのですが、レポ楽しみにしてます♪
投稿: 青猫 | 2009年5月16日 (土) 10:56