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2009年5月19日 (火)

クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル  2009年日本公演 in サントリーホール その1

クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル
2009年5月18日(月)19:00開演 サントリーホール

J.S.バッハ:パルティータ 第2番 ハ短調 BWV826
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 作品111
休憩
ブラームス:4つの小品 作品119
シマノフスキ:ポーランド民謡の主題による変奏曲 作品10
※プログラムA


浜松より一週間あいて、私にとっても2発目のサントリーに行ってきました。
ブログに感想を書くという点では、これくらい感覚があいてた方が余裕があって良いですね。連チャンをやると、一個書く前に次のコンサートの記憶が混じってしまいますし。

さて、席は1階センターブロックで、ステージから遠過ぎず近過ぎずの場所。音はまぁ見たまんまでした。

バッハは音楽の起伏が浜松よりも大分大きくて、良かったです。
シンフォニアの冒頭、キメキメに見得を切る感じがツボでした。離鍵までのタメが、ツィメルマン節とでもいいたくなるような粘り腰で。
結構ウェットに聞こえたり、ロマンチックな部分があったり、切れ味鋭かったりと、かっちりとしたフォルムの中でいろいろな表情を見せてくれました。
今回は足元も少し見えましたが、ペダルは結構細かく踏んでましたね。

ベートーヴェンは、一応2回目ということもあって、浜松よりは大分落ち着いて聴けました。とはいえ、ずっと脈拍90、血圧130(推定)くらいはあったような気がしますが。
第一楽章は、狂気と正気、此岸と彼岸、闇と光を行ったりきたり。忙しい人ですね、本当に……(冗談ではなく)。えーとですね、単なる「真っ黒いベートーヴェン」だったら、聴いてる方は割と楽だと思うんですよ。でもツィメルマンの場合は、真っ黒けっけではなくて、真っ黒と真っ白の間をめまぐるしく行ったり来たりしますから。交錯、とはちょっと違うし、グレーゾーンも無くて、あたかもコインの表裏のようにぱっと切り替わる。人格が分裂してるんじゃないかと思うほどで、ついていくのが大変というか、無理についていこうとするとこちらの頭がおかしくなりそうというか。白い部分はいかにもツィメルマンらしい光を感じるのですが、それがあっという間に真っ黒に豹変するサマが、大っ変に恐ろしいです。まじめな話、これは一種のホラーじゃないかと。
あ、あとですね、私にとったらものすごーく珍しいことなんですが、とにかく呼吸が合わないのですよ。まだプレトニョフの32番の方が合うってくらい(えええ?!)、全っ然合わないんです。特に、フレーズの入りがことごとく合わなくて、この梯子の外されっぷりはいっそ見事なほどだなーと、困りつつ妙な感心をしてしまいました。まぁ、この曲の構造上、第一楽章で奈落の底に落とされるくらいでちょうど良いという気もするので、困ったまま第二楽章へ。
第二楽章は、まぁ何しろツィメルマンさんですからね。確実に天国に行けそうです。お葬式には、シマノフスキの「ポーランド民謡…」の葬送行進曲なんかじゃなくて、こっちをかけるべきなんじゃなかろうかと真剣に思ってしまいました。
符点いっぱいのタンタタンタタンタタンタ…の部分は、やっぱり、半端無く楽しい音楽になっていまして、ツィメルマンの顔にはこういうの大好きです!って書いてありました……。そうか、だから秋はガーシュウィンなんですね。。。
というのは置いておいて。
この第二楽章は、音楽としても演奏としても、人間が最後に到達しうるものの最上のもの、一番天上に近いものを聴かせてもらっているのではないかと思わせるものがありました。でも、神の領域に入る、とかそういうことではなくて、非常に人間的というか、あくまでも人間という存在に対する賛歌であるような、そんな印象を受けました。

あああ、さっくり書こうとしたのに長くなっちゃった。
続きます。。。

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Pianist: Krystian Zimerman」カテゴリの記事

コメント

青猫さん、こんばんは!
バッハは、ラフォルジュルネで、ピアノやチェンバロ、チェロといろいろ聴いたので、しかも響きの悪い東京フォーラムの後のせいか、ツィメ様の音色にはびっくりいたしました。

ベートーヴェンは、初めて乗ったジェットコースターみたいに、どこにどう連れて行かれるのか、不安と期待で大変な事になった・・・という感じでしたねー。

「ピアノを聴く」というような生やさしいものではなく、「クリスティアン・ツィメルマンを体験する、または体感する」というような一夜でした。

投稿: Melody | 2009年5月20日 (水) 01:25

Melodyさん

こんばんは。
今回、あえて音がきれいとか上手いとか、いわゆるメカニックのことはあまり書かない方向で感想を書いているのであまり触れてませんが、やっぱりあの音色はちょっと普通じゃないですよね。ブラインドで聴いても「あ、ツィメルマン」って分かりそうです。
ベートーヴェンは、キラキラ~の部分の美しさや透明度の高さと、暗い音との対比がすごかったです。暗い方は、音に黒い影が落ちてるような印象で、ああ、こういう音も出せるんだなぁ、、、と驚いてしまいました。
ベートーヴェンがジェットコースターっていうのは、言い得て妙ですね!遠心力でめちゃくちゃに振り回された気がします……。

私も、ピアノを意識しない瞬間が結構ありました。音楽を体験というか、そうですね、Melodyさんがおっしゃるように、ツィメルマンを体感した一夜でした。

投稿: 青猫 | 2009年5月21日 (木) 01:08

今晩は

ツィメ様のソロ・リサイタルってなんでこんな疲れるんでしょうね(笑)。

2連チャンで聴いた翌日、無性にブレハッチ君が聴きたくなりましたもん。
軽いとかそういう事じゃなくて、ホッとさせてくれる気がして

ごく普通にツィメ様を楽しんで帰られる方も多いと思うのですけどね~。

「その2」も楽しみにしております


投稿: petit viola | 2009年5月21日 (木) 02:03

petit violaさん

こんばんは♪
いやー、今回はツィメルマンさんも疲労困憊でしょうが、聴いてる方の消耗も半端ないですね。
もちろん、綺麗ね~と満足して帰られる方も多いと思うのですけどね。
いえ、別に私が満足してないってわけでは全く無いです。
というか、満足とか不満とかそういう次元を完全に超越してしまっているような気がいたします。。。

その2は、もうちょっとお待ちくださいませ(すみません)。

投稿: 青猫 | 2009年5月22日 (金) 01:10

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