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2009年5月13日 (水)

クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル  2009年日本公演 in 浜松  その2

後半はブラームスとシマノフスキ。

私、ブラームスのop.119って別に特に好きな曲じゃないんです。が、今回、あまりの美しさに本当に涙が出そうになりました。。。第一曲の間奏曲はクララ・シューマンが「灰色の真珠」と称したそうですが(プログラムより)、あれは"灰色"ではないでしょう。。。じゃぁ、カラフルだったかというとそういうわけではないのですが、強いていえばやっぱり水の雫のイメージかなぁ。クリスタルとかそういう鋭利な感じではなく、真珠みたいな粒粒の感じでもなくて、流動的でちょっとだけ不定形な感じ。
それにしても、いやー、なんという世界なんでしょうね。雑念ゼロで、もうとっくに達観しちゃって遠い昔をしみじみと思い出しているような風情。第2曲の間奏曲の中間部なんかはものすごく優しくて、慈愛のようなものすら感じます。ツィメルマンさんって、本当に優しい人だよなぁ、、、と泣けてきてしまった。。。
端から端まで、流れていく音楽にひたすら身をゆだねて耽溺する至福の時間でございました。

シマノフスキの「ポーランド民謡のテーマによる変奏曲」は、ツィメルマンが去年アンコールでフィナーレ近辺を演奏してくれていますが、このツアーで晴れて全曲公開ということになりましたね。ぱちぱち。
大変良い曲だと思うのですが、音源は少ないし、演奏もあまりされないし、なんでこんなにマイナーなのかって不思議になる曲です。シマノフスキ、20世紀ってだけで敬遠する方もいるような気がするのですが、むしろ後期ロマン派な雰囲気が濃厚で、その辺のピアノ曲がお好きであればすんなり入れるのではないかと。技巧を凝らしてて、いかにもピアノらしい華やかさもあるので、かなり聴き易い曲だと思います。弾く側にとったら相当な難曲ではあるとは思うのですが、同じシマノフスキの「仮面劇」や「メトープ」みたいに複雑怪奇過ぎて音符と音符を解きほぐさないと、、、みたいな感じは無いのではないかと思います。

さて、ツィメルマンの「ポーランド民謡のテーマによる変奏曲」フルバージョン、絶対良いに違いない!!!という期待、じゃなくて確信のもと挑んだのですが、まぁ期待以上というかこちらも超ド級の規格外だったというか。なんかもんのすごかったです。
冒頭のテーマを聴いて、この時ばかりは2階席で良かったなーって思いました。一音一音の響きが空間に広がっていく美しさといったら無かったですもん。
どの変奏曲もそれぞれの特徴をバリっと提示してて素晴らしかったですが、第八変奏の葬送行進曲が圧巻でした。いわゆる葬送行進曲系の曲を弾かせて、この人の右に出る人が果たしているんでしょうかね???左手の打鍵があまりにも強烈で、ピアノのことが心配になるというか、一音一音、ゴーン、ゴーンと鳴るたびにむしろ我が身のことが不安になるというか、「も、もしや殺されるんじゃないだろうか…」と恐れおののいてしまいましたよ。っつーか、これって一体どんな葬式なんだようぅって突っ込んでしまった……(葬式でさらに死人が増えるんじゃなかろうかと……)。
ともあれ、ツィメルマンの演奏って、ショパンの葬送もそうなんですが、まるで葬列が見えるようなんですよね。この辺、本当に見事だと思います。
第二変奏からすでにフォルテの鳴りっぷりが圧倒的でしたが、それは実は序の口だったんです。第八変奏からフィナーレにかけて、どこまで出るんだ一体?と呆れるような音の情景が広がっておりました。いやはや、凄まじかったです。

アンコールは無かったんですが、それで良かったと思います。一体全体、これ以上何を弾けというのか、と。今回は全然無しですかね。Bプロはブラームスがトリらしいので、何かあるかもしれませんが。。。

私、今回のツアーでは(今のところ)連チャンの予定は無いんですが、正解でした。とてもじゃないけれど、こんなのを連日なんて聴けない!って思いましたもん(“こんなの”を4連チャンで演奏するツィメルマンもいい加減化け物じみてますが)。
すでに1日目でかなりお腹いっぱいになってしまいまして、私はあとこれ(32番とシマノフスキ)を4回も聴くのかと思うと、大丈夫か私?と少々不安になってくるくらい。

まぁでも、体力を付けて、予習復習もして、最終日までがんばろうっと。がんばったらがんばっただけ、受け取るものも大きいですから。

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Pianist: Krystian Zimerman」カテゴリの記事

コメント

今晩は。
レポありがとうございました。楽しみにしていました♪

ブラームスの第一曲、美しかったですよね~。
私も青猫さんと似ていて、雨の雫のイメージで聴いていました。
アファナシェフを聴いてる時には感じなかった事です。

リズミカルに落ちてくる雨音ではなくて、あっちの葉っぱから、ぽつぽつ、こちらの花びらからぽろぽろと、ぱらり、ぽろり、と雫たちの戯れみたいでした・・・。

私は連ちゃんで聴いた口ですが、まだなんとか生きています

『ポーランド民謡~』はその日によって何が出るかわからんのだな、と思いました。1日で全然違ってました。次の京都が楽しみです(ってかちょっと怖い?)

投稿: petit viola | 2009年5月13日 (水) 21:16

petit violaさん

こんばんは~。
ブラームス、本当に良いですねぇ。音楽がこれ以上無いってくらい自然に体の中に染み込んできました……。
一曲目は、ちょっと哀しい感じもあるんですが、今切実に哀しい!ではない感じが逆に切なかったな~。。。(遠い目)

そうそう、私もぽたりぽたりと垂れる雫のイメージでした。葉っぱからゆっくり落ちていく感じで。
本当、op.118とかop.119とかあの辺の小品だけで一晩やっていただいても良いです。

petit violaさんは次はBプロですね!何が出てくるんでしょうね。個人的には、Bプロでももれなく32番とシマノフスキがついてくるのが本当に嬉しいですので、あとはもう何でも良い、です。

投稿: 青猫 | 2009年5月13日 (水) 23:11

プログラム後半のレポートも楽しく拝見しました。ありがとうございます。

一昨年、学生時代からファンだったクレーメルとのスーパーデュオで初めてツィメルマン生演奏を聴いて魅了されました。誰でも録音と実際の生演奏では異なるものだとは思いますが、ツィメルマン氏違いすぎです。

あの時サントリーホールに足を運んだ多くのツィメルマンファンの方たちは、たぶん伴奏だからか、怪我をした後で準備不足のためからか、クレーメルに対して遠慮しているのではと感じたかもしれませんが、クレーメルより一歩下がった立ち位置を取り続けるのとは異なり、音楽ではツィメルマンがクレーメルに「さぁ、行きますよ!」とウィンクをしながら煽っているように私には感じられました。

昨年のルトスワフスキ・ピアノ協奏曲ではCDの音楽とのあまりの違いに同じ人が演奏しているとは思われませんでした。

青猫さんが表現するツィメルマン・レポートは愛に溢れていて素敵です。


投稿: pomodoro | 2009年5月14日 (木) 11:29

pomodoroさん

クレーメルとのデュオにいらしてたのですね。
……私も結構言いたい放題書いた記憶がありますが、まぁそれはファンの繰り言みたいなものでして、、、(スルーして下さい……)。フォローするわけではありませんが、アンサンブルとしては至高のものであったと思います。あれだけキャラクターの違う二人が、同じ方向を向いてて、実に楽しい音楽の時間であったなぁ、と。

そうですね、ツィメルマンは、録音と生が全然違いますね。
録音は録音で芸術品なんですが、私はライヴの方が彼の音楽性や人間性がよりストレートに伝わってくるようで好きです。
ライヴの方がずっと元気が良くて楽しそうですし(笑)。

あはは、愛だけはいっぱいありますからね~…。
ツィメルマンファンをやってると難儀なことも多いですが(CDが出ないとかプログラムが前日発表だとか公式HPが無くて情報収集が大変だとか…)、でもなんだかんだいって、注いだ愛はちゃんと(というかおつり付きで)報われてしまうんだよなぁ、、、と幸せをかみ締める今日この頃です。

投稿: 青猫 | 2009年5月14日 (木) 22:27

ご無沙汰してすみません(●^o^●) 早くカキコしたかったのですが永いことカキコしてなかったので、はずかしいなあと思ったりして躊躇していました。でもだんだん記憶が薄れていくのと青猫様そしてpetit viola様のレポに同感することが多くてカキコします。
兵庫のコンサート行って来ました。まず1番前列の20番目ですからちょうどお顔と足元がよく見える位置で音も一音一音はっきりと聞けるところでした。バッハですが割合ペダルを沢山踏んでおられたのですが、私の耳にはチェンバロのように聞こえ、曲想もどこかモーツアルトに近い感じがしました。逆ですね。モーツアルトがバッハに近い。以前同僚のピアニストからお髭氏がバッハの曲にペダルを踏みすぎだということを言われたと書いてあり、お髭氏の反論は忘れましたが、確かにペダルは頻繁に踏んでおられましたが、チェンバロのように聞こえたのはお髭氏のすごい技術と思います。そして一転ベートーベン・32番、(この曲はとても聞きたかった)第一楽章 なんともいえない内臓にしみわたる強烈な音、体中硬直、ベートーベンが甥の自殺さらに自分の病気との闘い、そんな苦悩がピアノから伝わってくるのです。なんとすごい演奏!!全身全霊を傾けた演奏。あの音がいまでも耳から離れません。そして第二楽章の優しさ。何か第九交響曲の苦悩と歓喜に通づるように感じました。ベートーベンはピアノ演奏がとても上手だったそうですが、32番のような曲を書いたベートーベンまた、ベートーベンが乗り移ったようなお髭氏の演奏本当に素晴らしかった。私のお隣におられたご婦人もなんと素晴らしい!!と称賛されていました。そしてブラームス。
私も泣いてしまいました。青猫さまもおっしゃるようにクリスタルのしずく。本当になんという世界(同感です)。そして最後のシマノフスキ。「葬送行進曲」始めて聞きました。本当に葬儀の列が私の目の前を通りすぎていくようで見事でした。あの度迫力のすさまじいフォルテ(よくピアノ線がきれないなあなんておもいながら)。でもあんなすさまじいのにご本人は平然と弾いておられる。さすがに弾き終えたときは汗びっしょりで、お疲れになった感じですがあの弾いておられる時の平然はすばらしいと思いました。Rpetit viola様はよく勉強されてて次回京都も行きますが、少し勉強しておこうかなと思っているところです。アンコールはなかったですが、お隣のご婦人たちもアンコールなくても充分と言っておられました。岐阜はノリノリだったそうですが京都も楽しみです(。・w・。 )。

投稿: バイエル | 2009年5月17日 (日) 14:26

バイエルさん

お久しぶりです。
お帰りなさいませ(^_^)。

詳しい兵庫レポ、ありがとうございます!
自分の行ってない公演について、お話をうかがっていろいろと想像するのもまた楽しいです。
良いなぁ、お顔と足元、そして汗まで見える最前列、すごく羨ましいです(まずそこか)。
浜松ではお顔も足元もよく分かりませんでしたので。。。
実はペダルワークはものすごく気になる部分なので、次チケット取る機会があったら、足の見える席を狙ってみようか、なんて思ったりもします(笑)。

32番はサントリーで2回目を聴いてまた思うところがあったのですが、それは改めてまた書きますね(って勿体つけるほどたいしたことではありませんが…)。

シマノフスキの葬送行進曲では、本当に低弦をブチ切るんじゃないかと思ってしまいました。
あんなぶっとい弦、どうやったら切れるか分かりませんが、でも本当に心配になってしまいました。
フィナーレも、去年アンコールで聴いた印象とはまた全然違ってて、大分パワーアップしていました。。。
あのシマノフスキの後にはアンコールは蛇足になりますよね。
ツィメルマンさんももう弾きたくないって感じでしょうし、お客さんもお腹いっぱいというか、消耗の度合いがかなり激しいんじゃないかと。。。
ピアノのコンサートってこんなに疲れるものでしたっけ、なんて思ってしまいました(^_^;)。
つい最近、ラフォルジュルネで、いくつかコンサートをはしごしてヘラヘラとお気楽に楽しんできた身としては、かなりなギャップがあります。。。

京都では、いよいよBプロの全貌があきらかになりますね~。
また是非お話をお聞かせくださいね。

投稿: 青猫 | 2009年5月19日 (火) 01:07

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