クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル 2010年 日本公演 武蔵野文化会館
2010年5月13日(木)19:00開演 武蔵野市民文化会館
プログラム
ショパン:ノクターン第5番 嬰ヘ長調 Op.15-2
ショパン:ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 Op.35 「葬送」
ショパン:スケルツォ第2番 変ロ短調 Op.31
休憩
ショパン:ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 Op.58
ショパン:舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
本日、ツアー初日でございました。
まだ聴いてない方ばかりと思いますので、簡単に。
えーと、少し痩せたのではないかと思います。
髪もお髭もやや長めで、相変わらず笑顔が素敵ー。
にこやかでしたよ。
それから椅子が新バージョン。
座る面に少し傾斜が付いてて、座ると前に体重がかかるような感じでしょうか。
さて、演奏の方ですが、20年前の録音やDVDと違うっていうのは当たり前といえば当たり前なんですが、2006年のツアーのソナタ2番、2008年の軽井沢のソナタ3番とも、大分印象が異なりました。
ある意味、壊れてきてるというか、、、端正さを放棄しつつあるように感じられました。
これは必ずしもネガティヴなニュアンスではありません。
演奏において何を優先させるか、ということではないかと思うのですよね。
去年、シマノフスキや32番を聴いてても思ったことなので、以前と少し方向性が変わってきているということなのかもしれません。
ノクターンはひたすらに美しい。
これ以上いうことがありません。
いや、本当に嫌味でもなんでもなく。
ぼーっとうっとりしてたら、あっという間に終わっちゃった。
ソナタ2番。
1楽章のラストの盛り上がりの凄まじいこと!先月末のウィーンのコンサートでは、楽章間で拍手が起きてしまったそうですが、ええ、拍手したくなる気持ちは分かります、ってくらいの、圧巻のクライマックスでした。
あと、やはり葬送行進曲が聴き所でしょうか。
個人的には、ツィメルマンって、当代きっての葬送行進曲弾きではないかと思います。
病的にはならないけれど、深く、重い。
4楽章は、旋律が意外なほどに明瞭に聴こえてきまして、なかなかメロディアスな印象でした。
ふーむ、こういう曲だったか。。。
前半の〆はスケルツォ2番で、確かにソナタ2番の4楽章でしめるより、すわりが良い印象でした。
DVDの演奏はかなり四角四面でシリアスなスケルツォですが(あれはあれで大変にカッコいい)、今回はなんだか角が取れたような感じ。
ちょこっとユーモアや飄々とした雰囲気が垣間見えて、なんだか生(ナマ)な感じもあって。
ダイナミックでパワフルで、後半からラストにかけての怒涛の盛り上げが、大変見事でした。
ソナタの3番については、JAのブログに「……ポリーニ?」って感じのキャッチコピーがついてますけど、はい、確かに文句無いです。まさに王道。
というかですね、実は私、先の5月5日にポゴレリチのリサイタル(@トータル3時間)に行ったのですが、そこで演奏されたショパンのソナタ3番が、(予想通りではありますが)とにかく激遅の異形のショパンで、客席はまさに死屍累々、みたいな状態だったのですよね。。。
その時のダメージがまだ若干尾を引いていたのですが、ツィメルマンの3番の王道っぷりに、トラウマが癒されるような感もあり、そういう意味では大変心地よかったです。
実際には、癒し系とかそういう生易しい演奏では全くなかったと思うのですが。
演奏家がその曲にかけてきた年月の重み、というだけではなくて、まさに人一人の人生の有り様を見ているような気にさせる、渾身の演奏でありました。
弾き終わったツィメルマン、ちょっとおどけた風に「ふう、疲れた」って仕草をしてたのがおかしかったですが、あれはかなり本音だったんじゃないでしょうかね。
舟歌も、美しいながらもかなりスケールの大きさを感じさせる演奏でしたが、うーん、やっぱり3番がラストの方がバランスが良いように思いました。
アンコールはなし。
まぁ、あれだけ弾けば、お疲れでしょうしね。
今回のプログラムも、一貫してアンコールなしではないかと予想しています(わかんないけど)。
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コメント
青猫さん、こんばんは。
さすがのレビューですね。分かりやすいです。
私にとってはとりすました感じがして距離感(ソナタの3番以外)があったショパンが少し身近に感じられて、所沢のチケットを買い足しました。
これからの長い日本ツアーの中で、表現がどんなふうに変化していくのか、しないのか、とても楽しみです。
それから、赤系統のものが胸にあったように見えたのですが、そのようなものを身につけていましたか?私は2階席最前列だったのですが、よくわからなくて気になっています。
投稿: pomodoro | 2010年5月15日 (土) 22:38
札幌のコンサートに私は来週いってきます。
ところでツィメルマンは結婚してますか?
投稿: 朱猫 | 2010年5月16日 (日) 19:03
こんばんは!びわこ行ってきましたよ~
なかなかいい雰囲気だったのでは、と思っています。
私的にはスケルツォとソナタ3番がすごくよかったです。ソナタ3番の3楽章に入る前に一度弾きなおされたような・・・ひとつ音が鳴って、髪を撫で上げで改めて弾き始められたように思いましたが、気のせいか・・・?
アンコール、今日もなかったですが、なくていいと思います。これだけのプログラム、アンコールがやたら盛り上がっちゃったらかえってもったいないですから。
びわ湖ホールはロビーからの眺めがとってもいいんですよ。青猫さんもまたの機会には旅行がてらいらしてください。京都も近いし。
投稿: yuko | 2010年5月16日 (日) 22:53
こんばんは。
私もびわ湖ホール行ってきました。
ソナタ3番よかったです!舟歌もただただ美しい。でも青猫さんと同じで、ソナタ3番が最後の方がよかったかなって思いました。
yukoさんのおっしゃるとおり、3楽章の前に一音だけ鳴って弾きなおされましたね。。。
びわ湖ホールは初めて行ったのですが、ロビーからの眺めは素敵ですね。
ただ、演奏中の観客のマナーが気になりました。
咳は仕方ないとしても、アラーム音が鳴り続いたり、鼻をかんだり(それも舟歌の時!)。
それから隣の席の若い男の子の寝息も・・・。
次は2週間後の西宮。こちらも初めて行くホールなので楽しみです。
投稿: miyuki | 2010年5月16日 (日) 23:30
miyukiさんはどの辺のお席だったのでしょう・・・
アラーム音、5時半くらいですかね、私も遠くで聞こえたような気がしたのですが、最近耳鳴りがひどいので、気のせいかと思ってました・・・ほんと迷惑ですね。演奏者にもすごく失礼だし。
私の席の近くにはちいさな女の子がいて、さすがに声は出していなかったもののじっとしていられずに前後左右に動きまくってました。どうしても視界に入ってしまい、気が散って嫌でしたよ*--*
私もちいさな娘がいるので、いい音楽を聞かせたいという親心はわかるのですが、音楽を堪能したいという気持ちを邪魔されたくないという思いもあるので、子供向けのコンサート以外は連れて行かないようにしています。
咳も、せめてピアニッシモのときだけは我慢して欲しいですね・・・
投稿: yuko | 2010年5月17日 (月) 07:52
pomodoro さん
こんにちは♪
武蔵野にいらしていたのですね。
ツィメルマンのショパンは、CDはともかく、生演奏は人間味があると思います。
初日と最終日では、ガラっと印象が変わるかもしれませんね。
最終日は最終日でなかなか雰囲気が良いことが多いので、お楽しみに~。
(真ん中あたりでもう1日くらいいかがですか?(笑))
胸の赤いものについては、、、すみません、分かりません。。。
すごく近くで聴いていたのですが、気づきませんでした。
顔ばっかり見てたんだわ、私……。
投稿: 青猫 | 2010年5月17日 (月) 23:03
朱猫さん
こんばんは、はじめまして。
札幌公演にいらっしゃるのですね。
私はKitaraには行ったことがありませんが、良いホールだそうなので、ツィメルマンの美しい音の響きを堪能できそうですね。
ツィメルマン、結婚していますよ。
投稿: 青猫 | 2010年5月17日 (月) 23:09
yuko さん
すみません、、、いろいろありまして、私もびわ湖に行ってしまいました。。。
琵琶湖を目の前にした、きれいなホールでした。
眺めがとても良かったです。
私もスケルツォが良かったと思います。
3番は確かに弾き直しというか、一音弾いてっていうのがありました。
調律か何かに問題があって、そのまま袖に引っ込むんじゃないかって思ってちょっとドキドキしてしまいましたが、そのまま弾きましたね。
アンコールは今回は無しで統一ではないですかね。
おそらくはあのプログラムは考え抜いた上で選んだものだから、そこに何か付け加えると全体の統一感が壊れると考えているのではないかと想像しています。
あの後にワルツとかマズルカとか弾かれてもちょっとねぇ、、、って思うので、私もアンコールはいらないと思っています(そもそも、ソナタの3番が終わった段階で相当消耗してそうだし…)。
投稿: 青猫 | 2010年5月17日 (月) 23:59
miyuki さん
初めまして、どうぞよろしくお願いします。
あの曲順は、舟歌で明るく、後味よく終わりたいということなのかしら。。。
観客席はいろいろありましたね。
アラームは確かに5時半になったような気がします。
咳も少々気になりましたが、びわ湖のお客さんはちょっと拍手が早かったな~。
響きの収束をとてもとても大事にする演奏家なので、もうちょっと待っても良いかな、と。
まぁ、あまりガチガチな雰囲気でも肩が凝りますが、咳をする時はハンカチで押さえるとか、演奏家が手を下ろしてから拍手をするとか、ちょっとした心遣いがあればみんな気持ちよく聴けるのにね、と思うことがままあります。
西宮では良い雰囲気の中で素晴らしい演奏が聴けると良いですね。
投稿: 青猫 | 2010年5月18日 (火) 00:42
yuko さん
私の席も近くに小さなお子さんがいまして、ちょっと落ち着きなくてですね……。
ずーっと視界に入ってたので、正直参ったなぁ、、、という感じでした。
週末の早い時間帯のコンサートはある程度しょうがないんですけどね。
よこすかでは、かなり細かい注意事項が書かれたマナーちらしが配られてました。
そのせいか、客席はそれなりな感じでしたが、かわりに(?)舞台袖の奥から異音がしていました。
コンサートって、いろんなノイズがありますねー。
演奏家本人の鼻歌や唸り声がうるさいってケースもあったりしますしね(笑)。
ツィメルマンも、結構フンフン歌ってました(あ、うるさいという意味ではありません、ハイ)。
投稿: 青猫 | 2010年5月18日 (火) 01:15
おお!びわ湖にいらっしゃってたのですね!!いつもながらすごいパワーですね^^このツアー、あと何回行かれるのでしょう??もしかして全部!?
ツィメ様、やっぱ歌ってはりましたよね、私もわりと前の方だったのでちょっと聞こえました。最初は誰かの鼻息か?と思ったのですが、タイミングが曲の呼吸と合ってたので多分ツィメ様のお声なんだろうと・・・
私はこの選曲&曲順、すごいって思ってます。バラードのプログラムもあるんですよね、でも私はこのソナ3が聴けて本当によかったです。3楽章を聴いてるときは本当にここにいてよかった、って思いました。雰囲気的に、舟歌がアンコールっぽかったような・・ソナ3の興奮を気持ちよく治めてもらえた気がしています。
今後のご報告も待ってますね~*^^*
投稿: yuko | 2010年5月18日 (火) 08:04
はじめまして。いつも、寄せていただいて居ります。びわ湖は運よく、最前列で、目の前でした。
(※3楽章の前に一音だけ鳴って弾きなおされましたね)←真ん中あたりの鍵盤の沈み具合?と言うのでしょうか、
「ここだけ、おかしいやん!?」て感じで、三分の一ほどの所まで2回沈めはって、三回目、最後に一音「ポン」と鳴りました。
首をかしげはって、本当に、ドキぃーーっと、しました。
投稿: たま | 2010年5月18日 (火) 09:21
yuko さん
いえ、全部は行きません。無理です(笑)。
モットーは行ける時に行ける所に、なんですけど、あと何回行けますかねぇ。。。
ツィメルマン、鼻歌と鼻息は結構聴こえますね(笑)。
コンサートって、単純にピアノの音だけではなくて、耳からも目からも色々な情報が入ってきて、なんか人間臭さを感じることが結構あります。
確かに、今回のプログラムは、舟歌が3番のアンコール的な感じがしますね。
アンコールにしては大曲ですし、軽い演奏でもないのですが、3番の後にアンコール的に弾く曲としては、ちょうど良いボリュームかもしれませんね。
バラ4のプログラムもありますが、本人的に本当にやりたいのは舟歌の方で、Bプロについては「どうしてもプログラム変えろっていうなら、しょうがないなぁ。バラ4ね」的な選択ではないかと邪推しておりますが、どんな演奏になりますかねー。
Bプロはほぼ短調ばかりで、かなり重そうです。。。
投稿: 青猫 | 2010年5月20日 (木) 00:15
たまさん
初めまして。
ようこそいらっしゃいました。
最前列、目の前で聴かれてらしたのですね。
羨ましい!
(私も実は最前列でしたが、端の方でした)
3楽章の前の弾き直し、詳しいレポをありがとうございました~~。
やっぱり、弾き難いのか鳴りにくいのか、鍵盤で気になる箇所があったのですね。
今回、ピアノが万全じゃないのかな……。
ちょっと心配です。
また遊びにいらして下さいね。
投稿: 青猫 | 2010年5月20日 (木) 00:26
私もびわ湖を聴きに行きました。ソナタ3番の「弾き直し」、遠目(3階席)からは鍵盤に付いたゴミか何かを拭き取る際に音が鳴ってしまったように見えましたが、鍵盤の調子が悪かったようですね>たまさん
第3楽章の出だしはD#(右手はオクターブ)ですが、鳴ったのはGでしたから、弾き直しではないように思います。
個人的には、アンコールでバラ4弾いてほしかったですが……
投稿: あわわ | 2010年5月20日 (木) 00:33
あわわさん
はじめまして。
コメントありがとうございます。
あわわさんもびわ湖にいらしていたのですね。
ソナタ3番は、弾き直しではなく、「この辺、ちょっと調子が悪いな~。上手く鳴るのかな、どうしようかな」という確認だったんでしょうね。
アンコールでバラ4!!
まぁ、過去にそういうことをやったこともあるとチラときいたこともありますが(ウロ覚えです、すみません)、そろそろ50をいくつも超えておりますのでね~~~(^_^;)。
バラ4、舟歌よりもさらにシンドイと思うのですが、どうでしょう。
投稿: 青猫 | 2010年5月20日 (木) 23:50
こんにちは。
はじめまして。先ほど、倉敷のコンサートから帰ってきたところです。
「ツィメルマン」で検索をしてこのHPにヒットしました。
私は前から2列目で聴くことができました。
あんなに近くでツィメルマンを聴いたのが初めてなので、本当に感激です。
倉敷の聴衆のみなさんは、前半のソナタの2番こそ、楽章の途中で拍手する人がいましたが、マナーは良かったです。
ソナタ2番が終わった頃から、ツィメルマンさんも楽しそうにのびのびと弾いていました。(確かに鼻歌らしきものも聞こえました)
ソナタの3番の3楽章。私はこの楽章は退屈でついつい普段CDで聴くとき(ツィメルマンの演奏ではないです)はスキップしてしまうのですが、今日の演奏は聴かせてくれました。
ツィメルマンさんは、緩やかな楽章の一音一音を、本当に大切に弾きますね。
アンコールはなかったですが、満足です。これだけのプログラムですから。
昨年、2回ツィメルマンさんのコンサートに行きましたが、やはりアンコールはなかったです。
演奏会が終わった後、多くのお客さんがロビーでCDを購入したり、アンケート用紙に記入したりと、名残惜しそうでした。
それだけ、素晴らしい演奏でした。
投稿: はな | 2010年5月29日 (土) 23:32
はなさん
初めまして!
コメントありがとうございました♪
倉敷公演の詳細なレポート、ありがとうございます。
いろいろな方から「こんなだったよ~」と教えていただけて、とっても嬉しいです(ブログやってて良かった~と思う瞬間です)。
ソナタの2番、1楽章の終わりで拍手したくなるんですよね(拍手が起きたのは別のところでしょうか)。
あれだけの演奏されちゃぁ、、、って思います。
ソナタの3番の3楽章は本当に素晴らしいですね。
確かにあの楽章って、普通に弾くと緊張館が続かないでダラダラしてしまうか、妙に甘くなってしまうか、逆に情緒が足りなくなるかで、要するに音楽的には結構難しいんだと思います。
ツィメルマンの演奏する3楽章って、本当に本当に素晴らしくて、聴くたびにトリップものです。
ツィメルマンはゴリゴリ弾く曲もすごく良いと思いますが、実は、音符の数が少なければ少ないほど真価を発揮するという側面があるのではないかと……。
アンコールについては、会場のマナーが悪くてご機嫌を損ねたからアンコールなしではないか、とか、皆さんいろいろおっしゃいますが、去年のリサイタルでも(確か)全然してないハズですし、まぁ無しで普通なのかな、と思います。
ガーシュウィンの時はやったので、プログラム次第でしょうかね~。
あの入れ込み様からすると、アンコールの練習をするくらいだったら、本編(ソナタとかソナタとか)の方の研究・練習に時間を費やしたいのかなぁ、、、なんて想像したりもするのですが。。。
また遊びに来てくださいね~。
投稿: 青猫 | 2010年5月30日 (日) 22:14