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2010年6月14日 (月)

クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル 2010年 日本公演 横浜みなとみらいホール

2010年6月11日(金)19:00開演 横浜みなとみらいホール

プログラム
ショパン:ノクターン第5番 嬰ヘ長調 Op.15-2
ショパン:ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 Op.35 「葬送」 
ショパン:スケルツォ第2番 変ロ短調 Op.31
休憩
ショパン:ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 Op.58 
ショパン:バラード第4番 ヘ短調 Op.52

アンコール無し。


りゅーとぴあショック(りゅーとぴあ感想)からいまいち立ち直っておりませんでしたが、10日のサントリーでBプロを聴かれた方複数から「バラ4無事でした。明日は安心きて来てくださいね」等々タレコミメールをいただきまして、なんとかかんとかみなとみらいまで行って参りました。

この日は2階席某所(個人的安全パイ席)で聴いておりまして、多少響き過ぎにも聴こえましたが、音の方向性、音量ともにばっちりで満足満足。

先週(5日)サントリーで聴いた時にはちょっと大人しいというか、若干まとめに入っているような気がしたのですが、この日は「安全運転やーめたっ」とばかりに、以前の攻めの姿勢に戻ったようでした。なおかつ音楽の息遣いが深くて、よりのびのびしていたようにも思いました。カメラが無くなって元気になったか、サントリーが終わってほっとしたのか。。。

ノクターンは相も変わらず、しっとりと美しく、良いですねぇ。うんうん。
ただし、ノクターン終了時に拍手が起きてしまいまして、うーん、という感じ。
こういう時にこそ空気読め!!って思うんですけどね。。。

ソナタ2番は、「お、今日は調子が良いな」と思わせる、シャキっとした音の立ち上がり方。音が上を向いていて、音楽に精彩が漲っておりました。
冒頭のスピード感と、じっくり伸びやかに歌う部分との緩急のコントラストが素晴らしく、ラストの怒涛の盛り上がりまで、実にメリハリの利いた第一楽章でした。素晴らしい。
でもここで、バチバチバチっと拍手が起こってしまったのですよね。しかも、一人二人ではなくて、結構皆さんつられて拍手しちゃった。うーん、気持ちはわかるんだけど、確かに拍手したくなるような渾身の演奏だったけど。うーん、うーん、うーん。
ツィメルマンはといえば、笑って客席に会釈していたので、これで機嫌斜めになるということもなかったと思いますが、2楽章はちょっと集中が散漫になって粗くなったかな、という部分が見受けられました(まぁ、元々、この楽章についてはあまり得意じゃなさそうというか、なんか弾きにくそうだなぁ、、、と思うことがあるのですが。気のせいだろうか)。
葬送行進曲から4楽章は、いつ聴いても、さすがの一言。冒頭の沈鬱さといったらなくて、たった一音で、あっという間にホールに「死」の臭いが充満したような気がしました。中間部は、それまでと打って変わって、どこまでも穏やかで優しい世界。そこから葬列の光景に戻って、葬列が去った後の風吹きすさぶ墓場の情景まで、本当に圧巻の演奏。

スケルツォは、2番が本当に素晴らしかったので、そっちにエネルギーをもってかれてしまったかな、、、という気がしなくもありません。ラスト、ちょっと流し(れ)ちゃったかな?
まぁあくまでも誤差の範囲内だと思いますが。

とりあえず調子は良さそうなので、休憩時にはロビーで皆さんと「後半も楽しみですね~」などと和やかに歓談。あ、かねこさんとは偶然席が近くて、開演前にばっちりお会いでき、休憩中もお話できて楽しかったです。

この分ならバラ4も心配することないかな、、、と、まずまず穏やかな気持ちで、いよいよ運命の後半へ。

バラ4は、丁寧に弾いている感じだったでしょうか。
先日つっかかった箇所ではついつい固唾を呑んでしまいましたが、全く問題なくクリア。
良かった良かった。
バラ4ってツィメルマンにとても合っている曲だと思うので、またいつか(こんなにドキドキすることなく)聴きたいものです。

そして3番が!!!!
もう、本当に本当に本当に素晴らしかった。
あれは一体、何だったのでしょう。
何が素晴らしいとかどこが凄い、とかそういうことを超越して、魔法がかかったような、いや、神々しいような時空間でありましたよ。
まさに音楽の神様が降りてきた、としかいいようがありませんでした。
ツィメルマンの3番って、基本的に解釈に隙が無くて、いつ聴いても「ああ、3番って名曲だわ」って唸らされるのですが、「うわ、神様来た~!」って思ったのは初めて。
私は記憶力が悪いので演奏の細部って覚えてられないんですが、この日の幸福感は多分ずっと忘れないと思います。
感涙。


最終日、所沢に続きます。

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Pianist: Krystian Zimerman」カテゴリの記事

コメント

青猫さん
こんばんは。ながらくご無沙汰しておりましたが、お髭の君の記事はずっとチェックしておりました!
私は6月3日(木)と5日(土)のサントリーと11日(金)のみなとみらいホールに行ってきました。
3日は、私自身がこの日相当疲れていたせいなのか、前の席の人が巨漢で、しきりに頭を動かすのが気になってしかたがなかったせいなのか、特に前半はあまり演奏に集中できず、やっぱり2006年にあまりにも凄すぎるソナタ2番を聴いてしまったせいで、もはやこの曲では感動できないのかな・・・等となんだか複雑な気持ちで帰宅の途につきました。(とは言っても、そんじゅうそこらのピアニストでは聴けないレベルの演奏であることは間違いなかったんですが)
しかし、5日はよかったです。明らかに3日とは違いました。そして、圧巻は11日。2番の1楽章、思わず拍手しちゃったんでしょうね~。よりによって(苦手そうな)2楽章の前というのが痛かったけど、気持ちはわかるっ!たしかにこの1楽章は凄かったですから。2楽章は私も、集中力切れちゃったかな、という印象を受けました。3楽章から先は私の日本語の表現能力を超えているので、あえて詳細コメントはしませんが、全身鳥肌が立ちました。。。
しかし、私もピアノを弾く人間の1人として、不思議でならないのは、曲による音色の違いです。物理的に同じピアノを使用して、途中で調律しなおしてもないのに、葬送ソナタとスケルツォではまったく音が違う。あの葬送の音色の直後にキラキラした
スケルツォの音色が・・・って何だか魔法をかけられているような気分でした。
バラ4は青猫さんの新潟のレポートを見てちょっと心配だったのですが、さすがの演奏で、やっぱりツィメルマンのバラ4は何度聴いても美しすぎるな~と納得。そしてソナタ3番は、なんか一生これ以上の演奏に出会うことはないかも・・・。曲が終わった後は呆然としてしまい、しばらく立ち上がれませんでした。
しかし、少し興奮がおさまってきた今、ふと自分が職業ピアニストの道を選ばなくてよかったな、なんて思いが頭をよぎりました。だって、こんな演奏聴いてしまったら、二度と自分でピアノ弾けなくなってしまいますもの。

投稿: 三毛猫 | 2010年6月15日 (火) 00:37

こんにちは。
つい最近知ったのですが・・・
私の学校にもツィメルマン演奏しにきてた事を知りました。
私もピアニストになりたいです。

投稿: haru | 2010年6月19日 (土) 13:22

三毛猫さん

お久しぶりです。
コメントありがとうございます。
祭りが終わってすっかり屍と化しておりまして、、、お返事が遅くて本っ当にごめんなさい!!

さてさて、3日、5日、11日のご感想ありがとうございます♪
複数公演を比較されてて、しかも、5日、11日と私が聴いている日が重なっているので、とっても参考になります(^_^)。
私の周囲では、3日はちょっと、、、という方が何人かいらっしゃいました。
といっても、皆様、複数回聴かれてる方ばかりなので、あくまでも比較の問題(対ツィメルマン比)という気もするのですが。
演奏家も、この日は良いあの日は悪い等々、いろいろ言われて大変ですよね。
空前絶後の名演なんて、そうそうできるわけではないでしょうに(^_^;)。

どの公演もそうだったような気がしますが、スケルツォになると音が変わりますね。本当に同じ人が同じピアノで弾いてるのかな~と狐につままれたような気持ちになります。

11日は本当に良かったですね。
2番もすごかったし、3番も神がかりでした。
3番については、もう思い残すことは無い、という演奏でしたね。
(贅沢を言えば、前日のサントリーの3番もそりゃー素晴らしい演奏だったそうなので、そちらも聴きたかったですが。←ホント贅沢(笑))

新潟のバラ4については、、、ああいうことを書くと、その後聴きに行く皆さんに余計な心配をかけるかなぁなんていう気持ちもあったのですが、記録もかねて書かせていただきました。
サントリーも無事(笑)だったみたいだし、横浜も事なきを得てホッといたしましたよ、本当。

ツアーが終わって完全に腑抜けておりましたが、考えてみたら、割とすぐ来日なんですよね(笑)。
CD発売を(少々空しく)お祈りしながら、秋のハーゲンを楽しみにいたしましょう♪

投稿: 青猫 | 2010年6月20日 (日) 17:33

haru さん

こんにちは。
お返事遅くなってごめんなさい。

ツィメルマンが学校に演奏に、、、というと、haruさんの学校は音楽学校なんでしょうか(あ、差しさわりがあったら答えなくても良いですよ)。

ピアニストになる道は険しいと思いますが、好きなことをお仕事にできると良いですね。好きなことで食べるというのは、それはそれでシンドイことも多いですが。。。

投稿: 青猫 | 2010年6月20日 (日) 17:38

私の学校 青森のカトリック系の中高一貫の女子校なんです。音楽学校ではないけど 音楽科がありますよ。
ツィメルマン 青森って検索すれば 私の学校の短大の方のホームページに ツィメルマンの記事あります。
ちなみに 私 中ニです。聞きたい事があるんですが・・・ 青猫さんって音楽雑誌買ってますか??
※下手な文ですみません。

投稿: haru | 2010年6月20日 (日) 21:10

haru さん

haruさんの学校のツィメルマンの記事、発見しました。
いろいろなところで演奏しているのですねぇ。

音楽雑誌は、定期的に買っているものはありません。
むしろあまり買わないかも。

※下手な文ということは無いですが、質問がある場合は、質問の意図を具体的に書いてくださると、こちらもいろいろ答えやすいです。えーと、つまりですね、「音楽雑誌買ってますか?」だけだと、haruさんが何を訊きたいか、知りたいかがイマイチ分からないので、「買ってます」か「買ってません」としかお答えのしようが無い、ということです。おススメが知りたいとかそういうことでしょうか?

投稿: 青猫 | 2010年6月20日 (日) 22:11

すみませんでした。m(__)m

投稿: haru | 2010年6月20日 (日) 22:37

haru さん

謝らなくて良いですよ~。
ご質問には、できるだけ的外れにならないようにお答えしたい、というだけです。

投稿: 青猫 | 2010年6月20日 (日) 22:58

青猫さん
「屍と化しておりまして・・・」の言葉に妙に反応してしまいました!
コンサートツアーが終わった後はいつもそうなんですが、私もすっかり腑抜けのようになってしまって、「私は当面何を楽しみに生きていけばいいのだろう?」などと言ってはため息をつく毎日。。。
次の来日が割とすぐであることに気づいてちょっと立ち直りつつありますが、秋のプログラムが終わった後の自分を想像するのが怖いっ。
そうそう、お金と時間があればザルツブルグまで行くんですがねー。(8月18日にピアノソロコンサートありますね!)

投稿: 三毛猫 | 2010年6月22日 (火) 01:15

こんばんは。私にとっては、最高の日でした。どの曲もすごくよかったです。
あんなに立派なソナタ2番の1楽章。拍手がおきてしまって。え、みなとみらいの方でも拍手してしまうの?と思ってしまいましたが。お顔が見えない席だったので、そのときの表情が見られなくて残念。2番、とても良かったです。スケルツォは、私は5日のサントリーの力強く、遊び心のある感じが印象深いです。もちろん、みなとみらいもよかったのですよ。そして、初めて聴くツィメ様の生のバラード4番。心配していたけど、感激してしまいました。思わず涙。ツィメ様の深い歌が音楽となって・・・。ソナタ3番。このとき、この場所に一緒にいることができてどうぞ、このままずっとと思いました。時がこのままだったらいいのにと。ここまで思った演奏はなかったです。あまりにも素晴らしくて。最高でした。平日で、ちょっとたいへんでしたが、無理してでも来てよかったです。この日は、私の強い強いプッシュで、姉も来まして、すばらしかったと言ってました。感激の一夜でした。

投稿: ふくしまpeach | 2010年6月23日 (水) 22:46

三毛猫 さん

その後いかがお過ごしでしょうか(笑)。

今回は、ツアーが終わってしまった反動たるや凄まじかったです……。
仕事に支障を出さないようにするために、いつもより少ない時間の中でアレコレやりくりしていて、その疲労もあったんだと思いますが(^_^;)。

(秋のハーゲンはありますが)何を楽しみに生きたら良いのかって、本当に思いますよね。
ツアー中は本当にお財布・体力その他諸々大変なんですが、生きてる~って感じがしますもの(笑)。

ザルツブルク、ちょっと前に行こうかと画策をしたことがありますが、飛行機もホテルも高くて、断念しました。
まぁ、今後、ザルツブルクしか出ないよ、日本に来ないよ、なんていう機会があったら行ってしまうような気もいたしますが。

以前、ヨーロッパでツィメルマンのコンサートを聴いた時は大雨で湿度的には最悪だったので(^_^;)、ぜひともカラッとしたお天気の中でツィメルマンの音を聴いてみたいものです。

投稿: 青猫 | 2010年6月25日 (金) 19:01

ふくしまpeachさん

みなとみらい、本当に素晴らしいコンサートでしたね。
楽章間の拍手は、、、みなとみらいでは、以前、ブレハッチの時にもあったので、ここは意外と慣れてないお客さんがいらっしゃるのかもしれません。

スケルツォは、みなとみらいが悪かった、という意味ではもちろんありませんが、でも5日に軍配が上がりますよね、やっぱり。

バラ4は、本当にツィメルマンらしいというか、、、バラ4が名曲であるということがよく分かる演奏、といえば良いのでしょうか。ツィメルマンが弾くと、曲自体の素晴らしさというものが、きちんと伝わってくるのだと思います。そういう人って、実はなかなかいないのではないかと思います。

ソナタの3番も名曲ぶりが伝わるという意味では同様なんですが、みなとみらいの演奏は本当にどーかしてました(笑)。
本当に音楽の神様に愛されているというか、いや、そういう受身な感じではなくて、神様の領域に自力で辿り着いたというか(笑)、まぁとにかくすごい演奏でした。

お姉様も堪能されて、良かったですね(^_^)。

投稿: 青猫 | 2010年6月27日 (日) 23:04

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