クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル 2010年 日本公演 サントリーホール
2010年6月5日(土)18:00開演 サントリーホール
プログラム
ショパン:ノクターン第5番 嬰ヘ長調 Op.15-2
ショパン:ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 Op.35 「葬送」
ショパン:スケルツォ第2番 変ロ短調 Op.31
休憩
ショパン:ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 Op.58
ショパン:舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
アンコール無し。
東京3公演聴き比べ、という方も結構いらっしゃるのではないかと思いますが、私は今回はサントリーはこの1公演だけになるような気がします。
まぁ、ツィメルマンの場合、地方だから演奏が悪いなどということは全く無いので、サントリーにこだわる必要も無いんですけど。
強いていえば、サントリーはチケ代が高い分、冷やかしのお客さんが少ないせいか、比較的鑑賞環境は良い気はするんですが、この日は皆さん拍手が早くてですね~、他会場と変わりばえ無し。
ソナタ2つはちょっと安全運転気味かな?と思ったのですが、3日(木)に来た方にお話をきいたところ、3日の方がさらに安全運転だったとのこと。長丁場のツアーで、少々お疲れが出てきたか、カメラが入ってたので少し自重したか、はたまた別の理由か。
ノクターンはテンポがやや遅いのかどうなのか、若干重め、というかしっとりめ。
ソナタ2番も、テンポが気持ち遅いような気がしました(注:あくまでもツィメルマン比なので、標準と比べれば速いと思われる)。そのせいか、音楽の重心が少し低くて、それはそれで2番に合っていたようにも思います。丁寧で落ち着いて聴こえる分、「歌」の美しさもよく伝わってきました。1楽章って実はすごく綺麗なメロディがいっぱいあるのね~(今更)。
スケルツォ2番は、今回のツアーで聞いた中では最高の演奏だったと思います(少なくとも私にとっては)。
ソナタ2番と別人が弾いているのか、ピアノが変わったのか、はたまた袖でドーピング(アドレナリン注射?)でもしてきたのか、と疑いたくなるくらいの豹変ぶり。なんでいきなり、こんな元気になるんだ……。まるで、それまで伏し目がちだったお花が、いっせいに太陽に向かってお顔を上げたかのようでした。
そして、諧謔、飄逸さ、軽妙さ、疾走感、剛健さ、雄々しさ、華々しさといったさまざまな要素が入れ替わり立ち代り現れてきて、しかもそれがこれしかない!という絶妙さでツボをついてきます。スタイリッシュさも残しつつ、天衣無縫の自由さで、いやー、本当にカッコ良すぎて倒れるかと思ったー。
ツィメルマンって、この曲のことが本当に好きなんでしょうね。
聴くたびに(割と)毎回、「あれ、今日、何か良いことあったんですか?」って思わされます。それくらいいつも楽しそうだし、ガガッとギアがトップに入るのが分かって、聴いててすごく気持ちが良いです。
3番はまた少し安全運転気味というか手堅い感じで、熱量と密度がいつもより若干少なめだったかなぁ。スケルツォ楽章(2楽章)の軽やかさ、(涙を誘うというのとは少し違いましたが)小細工無しのごくごくストレートに綺麗な3楽章が素晴らしかったです。4楽章は、ツィメルマン自身は、なんだかえらく楽しそうでしたが、私は聴き終わって「はぁ、最後まで辿り着いた……」と少々ぐったり(なんでだろう、自分でもよく分からん)。
舟歌も良くて、この日はソナタ以外が印象に残った日でした。
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コメント
こんばんは、青猫さん。私もサントリーホールに行ってきました。私も聴いた演奏を、青猫さんはどのようにお聴きになったのかなとレビューを拝見したかったです。その前にお聞きしたかったのは、ステージ上のあのビデオカメラはなんでしょう?あれは、ご本人の記録用なのかしら。(だとしたら残念~)
。ソナタ3番もとってもよかったけど、舟歌が今までで一番よかった。こんなに情熱的な部分と繊細なところがある舟歌。は~。
サントリーのツィメルマンさん、素敵でした。P席だったので、響きは大丈夫かしらと思ったのですが、問題なくきれいに響いていました。チケットを買うときにSはすでによい席がほとんどなくP席に。でも最前列だったので、指先までよく見えました。ノクターンのときの指の動きがしなやかで、どこまでもていねいで、こんなふうに鍵盤に指をあてる(?)弾き方があるのというくらいでした。ソナタ2番の葬送のおだやかな部分、じーんときてしまいました。
やっぱりスケルツォはものすごくよかったです。私も今までで1番と思いました。この曲になったとたんの、あの音のきらめきは何でしょう。きらきらと音の粒が転がるように弾かれてました。持てる力すべてを注ぎ込んだみたいな、全身全霊をこめた演奏。距離が近くて歌も声もよく聞こえました。気合の入った力強い部分のとき「ウッッン。」という声が聞こえ、左足をぐっと踏ん張る姿。かっこいい。この席は、左手がよく見えて、ウナコルダときの細やかなペダルの動きも見えて、いつもと違っていて新鮮でした。今回は、スケルツォの時点でもう涙
東京遠征で初めて出待ちをしてしまいました。係りの方が丁寧に、「本日はお疲れのためサインはいたしません。」と繰り返しお話されました。でも、長いこと待って現れたツィメ様は、にこやかで、車にまっすぐ行かずこちらに来てくださいました。そして、数人にサインをしてくださいました。時間の都合か何かで全員は無理でしたが、お会いできただけでもうれしかったです。「Sorry.」と何度も言ってくださいまして。こちらこそ気を遣わせて申し訳なく思ってしまいました。ツィメ様の生声ってきれいですね。初めてで感激。
青猫さんは、お話をしたこともあるのですよね。(サインも)うらやましいです。ところで。みなとみらいに私も行くのですが、バラ4はどうなるのでしょうね。心配?楽しみ・・・。
投稿: ふくしまpeach | 2010年6月10日 (木) 00:01
ふくしまpeach さん
10日のサントリーも終わってしまいましたが……(レスポンスが遅くて申し訳ありません)。
カメラは、一応業者さんらしき人が入っていて、結構な台数設置されていたので、個人の記録用ではないと思っているのですが。。。
まぁ、テレビ局のものだとしても、お蔵入りする可能性は結構あると思うので、あまり期待しすぎないようにしています。
サントリーのP席は座ったことが無いのですが、音も良いのですね。
P席最前列は場所にもよるでしょうが、距離が近くて良さそうですね。
近くで手が見える席に座ったことがほとんど無いので、どんな弾き方をしているのか、実はよく知らないのです(^_^;)。いかん。。。
テレビで放映してくれれば、手元アップでよく見えるんですけどね~。
そういえば、足元もあまりちゃんと見えない席に座ることが多くて、ペダルワークをよく見られなくてとても残念です。
お顔優先だからいけないんですね、多分。。。
スケルツォ、やっぱり、抜群に良かったですよね!
なんかいきなり元気になるからビックリしてしまいます。
まさに絶好調のドライブ感で、心からワクワクさせてもらったスケルツォでした。
舟歌もとてもしっくりきた演奏でした。
今回のツィメルマンの舟歌はスケールの大きさや明るさが際立つ印象ですが、繊細さも感じられましたね。
サントリーの出待ちは結構人数が多かったでしょうかね~。
あの時は、私は結構遠巻きだったような。
まぁ、お顔を見られるだけでも嬉しいものですよね。
お声は低くなくて、柔らかめですね。
サインは、えーと、今シーズン、いただいたにはいただいたんですが、プログラムのツィメルマンさんのお写真の頁を差し出したところ、ご自分の顔の真上にグリグリとサインされまして。そんなにご自分のビボーが憎いんでしょうかねぇ、、、といろいろ考えさせられるサインでした。。。
みなとみらい、いよいよ今日ですね。
サントリーでは、バラ4も無事(笑)だったようなので、安心してまいりたいと思います。
投稿: 青猫 | 2010年6月11日 (金) 01:10