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2011年5月23日 (月)

ピョートル・アンデルシェフスキ ピアノリサイタル

2011年5月21日(土)19時開演 サントリーホール

プログラム:
J.S.バッハ: フランス組曲第5番 ト長調 BWV816
シューマン(アンデルシェフスキ編): ペダル・ピアノのための練習曲(6つのカノン風小品)op.56
ショパン: 3つのマズルカ op.59
J.S.バッハ: イギリス組曲第6番 ニ短調 BWV811

[アンコール]
シューマン: 「森の情景」op.82 から
孤独な花
宿にて
予言の鳥
別れ

KAJIMOTOさんから、「サプライズ付リサイタル」と告知された今回のリサイタル。
サプライズ付って言っちゃったらサプライズではなかろ???と思いましたが、後で「知らなかった!」って文句言われるのもね。

Twitter上では、先にロンドン・パリでやったステージ上に椅子+お茶の日本版として、畳を持ち込んで緑茶を飲むのではないかという予想もありましたが、いざ開場してみたら、ステージ上には椅子と机。
さすがに畳は無し。

そうこうするうちに、アンデルさんと女性スタッフと思しき方が舞台に登場し、和やかに何やら打ち合わせかインタビューをしているような趣き。
そのうち緑茶(多分)も登場し、アンデルさん、結構ガブガブ飲んでました。
普段楽屋でやっていることを舞台上で再現かな?
アンデルさんは時々客席を見回したり、手を振ったり、開演前の緊張などというものは微塵も感じさせず、ひたすらリラックスムード。
手を冷やさないための巨大なミトンが可愛かった~。

妙にゆるーい空気が漂う中、何となく照明が落ちて、アンデルさんはおもむろに(というかかなりてきとーに)ピアノに座り、コンサートがスタート。
ピアノの椅子が本当にその辺の白っぽい椅子で「あ、あれで本当にやるんか?!」とかなり面食らった・・・。

本編は、なんだかものすごかったです。
スタートこそ緩かったですが、アンデルさんはあっという間にバチっと入ってしまって、集中MAX、みたいな感じ。
バッハのフランス組曲あたりは、まだ、ああ、アンデルさんの明るく快活なバッハ~ダンスみたい~などと喜んでいたのですが、なんか段々ものすごくなりましてですね。。。

シューマンは本当に素晴らしかった~。
ほの暗い幻想性、もの哀しさ、優しさ、切なさなどが万華鏡のように現れるシューマンの音楽を、世界そのものとして我々の前に立ち現してくれたような、そんなアンデルさんの慈愛に満ちたピアノでございました。
アンデルさんのシューマンって、本人いうところの「詩的で不完全、こわれもののように純粋ではかなく、危険」な作品世界を、弾いている、表現しているというよりも、「一体化」というかむしろ「体現」してしまっているように聞こえてきます。
そういう意味では、元々、アンデルさんの演奏というのは没入型といいましょうか、すごく内省的で、内側に掘り進んでいく傾向が強いものなんだろうと思うのですが、今回は内に向かうエネルギー量と外に表れているもののとのバランスが取れてきたような、そんな印象も受けました。

休憩中も、アンデルさん、舞台に出てきてお茶を飲んでました。

ショパンのマズルカは、プログラムにはop.17とありましたが結局op.59。
雄渾な感じもあり、のマズルカで、私は好きな演奏。
でも、ロマン派をひとつといわれたらショパンよりもシューマンの方が合ってると思いました。

そして、最後のイギリス組曲が圧巻でした。
特にプレリュードの後半やジーグなどの対位法バリバリの曲は、何かが憑いているような、すさまじく集中度の高い、切れ切れノリノリの演奏。
躍動感に満ちてて、うねるようなグルーヴ感をはらみ、時々ものすごくアグレッシブに聴こえるほど。
なんだか複数のマシンガンに色んな方向から撃たれてるみたい、、、とか思ってしまったくらい、旋律が重層的にたたみかけてくるのですよ(まぁ、席が近かったからっていうのはありますが)。
そして、他のどの曲もそうだったと思うのですが、ストイックな中にもどこか、精神がダンスを踊っているかのような自由さがあって、それでいて集中力は全く切らさない、、、本当に素晴らしかったです。

アンコールはひたすら「森の情景」。
出てきて座るたびに「Waldszenen・・・」っていうものだから、3曲目くらいからは会場から笑いが。
もしかして全曲やるつもりなんじゃなかろうか、、、と思ったくらいなんですが、4回目に出てきた時に「The last one, Departure」(だったかな)とアナウンスし、4曲にて終了。
大阪でもやった「予言の鳥」が白眉でした。


アンデルさん、年齢的なものがあるようにも思うのですが、スケールアップして円熟の領域に入ってきたような印象を受けました。
以前は、アンデルさんが作品世界を深く深く掘り下げて、自分の中に入っていく様子というのをこちらが見ている、そういうイメージが強かったのですが、ちょっと変わってきたのかなと。
開演前のパフォーマンスにも現れているのかもしれないけれど、アンデルさんはよりオープンに、外に向かって扉を開きつつある、そういうことなのかもしれません。

私は前回のリサイタルについて、こんな感想を書いておりました。
「とりあえず、オネストな人だとは思います。
基本的な音楽性としてはまず内省的であると思うのですが、曲にとことん向き合って、同時に自身の非常に深いところに降りていって、そこにあるもの、そこで感じたことを、飾ることなく表に出せる人なのではないかと。
そういう意味でオネスト。
でもそれは、自分の内面を顕示する、という押し付けがましいものではなく。
ベクトルは内に向かっていても、聴き手不在というわけでもなく。
結構トリップする瞬間がないわけではないんですが、でもまぁ、基本的に、アンデルさんはちゃんとそこにいて。
それでまぁ、時々ふっとこちらを向いてくれるような、そんな温度でしょうか。」
ピョートル・アンデルシェフスキ ピアノ・リサイタル


もう一歩、こちら側に近づいてきたように感じるのは私だけでしょうか。


終演後にはサイン会があり、私は最新のシューマンアルバムにしていただきました。
つい思わず、「今まで聴いた演奏の中で一番良かったです」って言ってしまいましたが、ご本人はどう思われたかな。。。
本人ができに不満だったりすると微妙な感想になっちゃうんですが、、、まぁ本当にそう思ったんだから良いや。


あ、どうでも良いですが、痩せましたね。
前回の時は結構心配したのですが、大分すっきりしていました。
髪の毛は、白髪が増えたのかなぁ?色が大分明るくなったような。
そろそろ「お兄さん」な雰囲気ではなくなってきましたね。
あ、でも、舞台袖に引っ込む時は相変らずポテポテ歩いてて(多分、演奏後は心ココにあらずでああなるんでしょうねー)、かわいらしかったです。←本当にどうでも良い

あと、客席に少し空席が目立ったことがとても残念でした。
土曜日なんだし、もう少し埋まってても良かったような。
こんな時期にわざわざ来てくれただけに、日本側ももうちょっと頑張って応えてあげて欲しかったな。
コンサートが次々とキャンセルになる中、チケットを買ってもキャンセル&払い戻しかも、、、などと思うって二の足を踏む気持ちは分からないではないのですが。。。

来ない人のことをどうのこうのいうことはしないようにしようと思っていますが(家族とか大使館とか外務省とか保険とかマネージメントとか色々あるでしょうから)、諸々のハードルをかいくぐってわざわざ来てくれる人については大事にしましょうね。

KAJIMOTOさん、アンデルさんのこと、どうか大切にしてあげて下さいね!!

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