バンベルク交響楽団-ブロムシュテット85歳記念-
2012年11月6日 (火) 19:00 開演
サントリーホール
バンベルク交響楽団
指揮: ヘルベルト・ブロムシュテット
ピアノ: ピョートル・アンデルシェフスキ
<プログラム>
モーツァルト : ピアノ協奏曲第17番 ト長調 K.453
(ピアノ:ピョートル・アンデルシェフスキ)
アンコール:J.S.バッハ: フランス組曲第5番 ト長調 BWV816から サラバンド
ブルックナー: 交響曲第4番 変ホ長調 「ロマンティック」 (ノーヴァク版)
お帰りなさい、ピョートルさん。
というわけで、アンデルさんことアンデルシェフスキは先月1年半のサバティカルが明け、バンベルクの公演(共演者同上)で復帰した後、来日ということになりました。
バンベルク交響楽団の日本ツアー自体は11/1にスタートしていたので、ソリストのアンデルさんはいつ来るかいつ来るかと首を長くして待っていましたが、なかなか「来ました!」の第一報が出て来ず。
うーん、ドイツでの公演の後、家に帰ってせっせとさらってるのかねぇ、、、などとじりじりしていたところ、やっと11/3(土)にKajimotoさんより来日しましたツイートが。
お休み明けでいったいどんなことになっているかアレコレ心配しておりましたが(何しろ先月のバンベルクの演奏評というのが巷にほとんど出て来ず、一瞬、本当に復帰したのか?と疑ったくらいでして)、なにはともあれ無事来日の報にまずはホッ。
バンベルク公演後のあまりのスルーされっぷりに、やっぱりダメだったのか、休み明けで完全になまっていたらどうしてくれよう、まぁでも今回はどんなアンデルさんでも目をつぶろう、メロメロ演奏も3回までは許容範囲だ、人間いろいろあらーな……と甚だしく失礼なことを日々ぐるぐると思っていたのですわ、正直なところ(信頼無いなー、アンデルさん)。
あと、他にもちょっと気になることが。
4月のBBC Music Magazine Awards の授賞式の映像を見たところ、完璧に「ちょっとそれ、体重Max更新でしょう…。つか、上着のボタンとまんないでしょ!」という状態だったのですよね。
去年の11月の時には割と普通だったのに、どういう生活をするとたった5か月でああなるのだ、、、と、思わず天を仰いでしまいましたよ。
もう音楽さえ良ければ見てくれなんて、いやでもコンサート活動って一応ショウビズなんだしさー、少しは外見にも気を遣った方が、いやむしろそもそも勤勉に練習してるのか(もっぱらゴロゴロ?)?とさらにぐるぐるしてしまい、すっかりサバティカル明けのことが心配に。
いやー、本当にあたくしってば失礼過ぎる。。。
まぁ、結論から言いますと、大筋では大変よろしかったです。
私の席からはアンデルさんの表情なんかはあまりよく見えなかったのですが、気力が充実して元気そうだということは伝わってきました。
私は、「そこでアンデルさんが元気にピアノを弾いている」というだけで感極まってしまい(安いなー)、中欧的で優しい音のオケが紡ぎ出す明るくハッピーなモツコン1楽章を聴きながら、ちょっとうるっと来てしまったのでした。
ああ良かった、ここ(ステージ)に帰って来てくれて。
タッチ、音色の感じが少し変わったかな、どうかな(楽器のせいかな)。
粒のはっきりしたしっかりした打鍵で、足取りがしっかりしている印象。
ペダルが少なめだったこともあり、1楽章は明瞭さが前面に出た感じだったでしょうか。
特に良かったのが、予想通りではありますが、複雑な感情の流れを映し出すかのように様々な曲想が立ち現れる2楽章でした。
とりわけ、少しウェットなメランコリーの表出はアンデルさんの面目躍如といったところでしょう。
そして、2楽章で際立ったのが弱音における響きの精妙さ。
繊細で美しいという以上の、何かの深淵を思わせる深い深いピアニッシモは、本当に唯一無二と言ってしまって良いのではないでしょうか。
全楽章を通じて明と暗、悲と喜、緩と急のコントラストが見事で、表現の奥深さ、深遠さを追求したモーツァルトという点ではこれ以上のものは望めないのではないだろうか、と思いました(可憐、典雅、といった要素を求めるとなると違う人になるだろうと思うのですが)。
以上、絶賛大筋部分。
さて、枝葉の部分、今回の場合はいわゆるメカニック面なのですが、まぁサバティカル明けだよな、と思ってしまったのですよね。
ちょっと寝起きっぽいというか、時差ボケといわれたら納得するような、なんとなく助走中、みたいな。
世間一般的には十分ハイレベルなんだろうと思うのですが、(あくまで本人比ではありますが)ちょっとミスが目立ったなと。
私は幸か不幸か、今までライヴでメカニックが怪しいアンデルさんというのに当たったことが無くてですね(ミスタッチ自体、あったんだろうけれどほとんど記憶にない)、アレレ?ダイジョブ?と思ってしまいました。
もちろんメカニックに拘って音楽の本質を見失うのは本末転倒だと思うし、こういうことってわざわざ書かない方が良いかもと思ったのですが、一方で私は器楽奏者ってアルチザンという側面も大きいと思っているのでね…。
それに、今回のアンデルさんの演奏、ツイッターを見ているとかなり好評というか、揃いも揃って大絶賛な気がするのですが、いやいや本当に良い時のアンデルさんのメカのキレっぷりはあんなものじゃないんだよ、実はもんのすごい上手いんだよ、あらゆる意味で!と主張したい気持ちもあったりして。
まぁ、万遍なく危うい感じではなかったので、そんなに心配はしていないのですけど。
アンコールはバッハ。
またこのバッハが反則的に素晴らしくて、いやほんとズルいわ、と。
アンデルさんって、こういう曲、本当にハマりますよね。
永遠を思わせる一つの世界、小宇宙。
きわめて個人的な印象ですが、以前はこういう曲って、孤独、じゃないな、えーと、孤独というほどネガティヴなニュアンスではなくて、もうちょっと即物的に「世界に一人在る」みたいな情景をイメージさせることが多かったように思うのですが、今回は不思議とそういうことはなかったです。
……ま、年齢、でしょうかね。
以下余談。
衣裳はたぶん前回と同じ、へにゃっとした笑顔は前のまま、外見もほとんど変わらずでした。
実は体形はよく見えなかったのですが、他の方の証言によれば前回並、とのこと。
ふーむ、とすると、4月からは多少絞ったということでしょうかね。。。
まぁあまりお太りになると健康に悪いと思うので、少しお気を付けくださいましまし(超余計なお世話)。
後半をさっくりと。
ブルックナー4番、圧巻の演奏でした。
前半はピアノの影になって全く見えなかったブロムシュテットさんの姿もちゃんと拝めました。
きりっと、毅然と立つ御年85歳のマエストロ、かっこええ。
バンベルク交響楽団の音にはふわっととした柔らかさがあり、それでいて密度がとても濃いのが印象的でした。
ブロムシュテットを尊敬しているのがとてもよく伝わってきて、マエストロの棒にひたすら応えるべく、本気度Maxでぶつかってくるかのような演奏ぶりは、聴いててすこぶる気持ちの良いものでした。
指揮者がオケの人々をきちんと働かせて、100%以上の力を出させるというのは、こういうことか、と思いましたよ。
圧倒的な凄演に、思わず「あー、これではアンデルさんのモツコンがスルーされまくるわけだわ…」と納得してしまいました。
終演後はブラボーの嵐で会場中がスタンディング・オベーション、マエストロ、本当にリスペクトされて愛されているのだなぁ……と、しみじみ感動のフィナーレと相成りました。
あー楽しかった。
私は11日の兵庫公演にも行く予定です。
サントリーとはまた違った演奏を聴けるものと期待しています。
最後にもう一回、ピョートルさん、お帰りなさい!!
Welcome back, Piotr!!
終演後、近くで姿を拝見する機会がありましたが、腹は、まぁ、四十路だしな……(以下言わぬが花)。
まぁでも全体の雰囲気自体は以前と変わらず、相変わらずのチャーミングさんでした。
兵庫でまた素敵な笑顔が見られますように。
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コメント
こんにちは! アンデル様、お姿お変わりなかったのですね。 香港のレポートもお待ちしております♪
以前、私もお気に入りのピアニストを聴きにいった時に、すっかりブロムステット様に陥落された経験あり。
素敵な方ですよね~
投稿: Malta | 2012年11月19日 (月) 18:21
Maltaさん♪
お久しぶりです。
アンデルさん、まずまずお変わりなく、ですね。
お腹まわりはちょっと太目ですが…。
まぁ四十男としては仕方が無いでしょうかねぇ。
ブロムシュテットさんは本当に、しゃきっ、きりっとしててカッコいいですね。
アンデルさん、少し見習った方が…(笑)。
投稿: 青猫 | 2012年11月22日 (木) 23:52