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2012年11月

2012年11月30日 (金)

クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル

2012年11月27日(火)19:00開演 川口総合文化センター メインホール

<プログラム>
・ドビュッシー:版画
  1.パゴダ
  2.グラナダの夕べ
  3.雨の庭
・ドビュッシー:前奏曲集 第1集より
  2.帆
 12.吟遊詩人
  6.雪の上の足跡
  8.亜麻色の髪の乙女
 10.沈める寺
  7.西風の見たもの
・シマノフスキ:3 つの前奏曲(「9つの前奏曲 作品1」より)
 第1番 ロ短調
 第2番 ニ短調
 第8番 変ホ短調
・ショパン:ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 作品58

※オール・ドビュッシー・プログラムより変更
※アンコールは無し


私がドビュッシーが苦手だったり、12月は激務月間決定だったり、サバティカル明けたツィメルマンさんのリサイタル病欠が伝わってきたりで、今回の来日はテンションがいまいち上がらなかったのですが、とりあえず川口リリアに行って参りました。
アンデルさん@香港に行かずに、ツィメルマン@名古屋に行くという選択肢もあったのですが、そもそもツィメルマンさん、日本にちゃんと来るのか?と疑っていたこともあり、アンデルさんをとったというわけです(後悔はしてませんぜ、ええ)。

さて、そんなわけで、ツィメルマンさんの日本ツアー自体は11月半ばにスタートしていましたが、私は大分出遅れての初参戦となりました。

結論から言うと、ものすごーく良かったです。
12月のメイン公演(サントリー、TOC)とか行かないで、これで打ち止めにした方が良いんじゃないかって思ったくらい(まぁ一応行きますっていうか、あと3回くらいは何とか行けそうだなと)。


開場時間を大分過ぎて開場に到着したのですが、ホールに入るのに長蛇の列だし、ホールに入ったら人、人、人でナンジャコリャと。
開場が遅れて、ホールには入れるけれど客席には入れず状態。
まぁリハか調律が押しているのだろうとは思いましたが、ピアノか何かに気にいらないことがあってゴネてたら嫌だなぁ、、、と。
結局、開場は19:00ぴったりで、開演は15分押しでした。
開演前には、ツィメルマンの録音禁止メッセージをアナウンス嬢が読み上げ。
これ毎公演やるのか。。。

ツィメルマンさん、今来日中はずっと咳をしているときいていましたが、開演前には袖からゴホンと大きな咳が聞こえてきて、うーん、と思ってしまいました。
冒頭の「版画」は、一曲終わるごとにゴホンゴホンしてました。
この「版画」、特に「パゴダ」ではちょっと拍というかリズムの取り方が合わないな、と思ってしまいましたが(まぁこれは個人的嗜好の問題ですが)、それでものっけから響きの美しさは群を抜いており、これは役者が違う、その辺のピアニストとは比較にならない、という印象。

次の前奏曲集1、「帆」を聴くなり、あわわ、凄すぎる、、、と頭を抱えてしまいました。
この前奏曲集、大げさではなく、今、この世で一番美しいピアノの響きを聴いてるんじゃないのか?と思ってしまいました。
まじめな話、ことピアノの音色・音響だけに限って言えば、ほとんど生涯マイベストだったんじゃないかと思います。
席も良くて、2階右バルコニーの舞台に近いところだったので、ピアノからの直接音がバッチリ聞こえ、音の伸びや響きの減衰もすごくよく分かり、本当に音に耽溺するとはこのことか、と思いました。
耽溺というか、むしろ溺れ死ぬのではないかと。
水晶のように明晰かつクリアーだけれど、芳醇でふくらみがあり、ニュアンスがとても豊か。
ピアノってこんな音が出るんだ、こんなに美味しい音だったんだ、、、と一々感心してしまいましたよ。
とにかく、ものすごいコントロールの精度の高さでした。
「吟遊詩人」はテンポ速めのしゃきしゃきしした演奏でしたが、茶目っ気も感じられて、ああツィメルマンさんらしい、と。
「雪の上の足跡」は、クールで寒々しいというよりは、むしろ水のイメージでしめやかな響きが印象的でした。
最後の和音が綺麗だったー。
「.亜麻色の髪の乙女」は優しく穏やかな雰囲気で、普通に綺麗だなぁと。
「沈める寺」では、彼岸的というかこの世ならざる音というか、なんかピアノではないような音がいっぱい聞こえてきて、本当にびっくりしました。
今回あまりフォルテをはらないなぁと思っていましたが、ここで大伽藍登場!とばかりに、大変立派なffを繰り出してきました。
シメの「西風の見たもの」でもきちんと盛り上がり、お見事。
キャラクター、あるいは聴かせ所の全く異なる6曲のチョイスでしたが、ドビュッシーの色々な側面を見せてくれたなという印象。

後半はピアノの鳴りがさらに良くなって、音にものすごく広がりが出たので、もはや「ピアノの蓋から音が鳴っている」という感じではなかったです。
ピアノの周囲数メートルの空間すべてが音場になってる、とでもいいましょうか。
シマノフスキの前奏曲は、いかにも初期の綺麗ドコロで、やや哀愁帯びつつエモーショナルな面も、という感じの曲でしたが、ちょっとブラームスの後期ピアノ小品を思い浮かべるような雰囲気もあり(あそこまで枯れてませんが)。
少し伏し目がちで、水滴がぽたりぽたり、途切れなくひそやかに落ちるような風情というか。
懐かしさを感じさせるとこrもあり、懐古趣味的ロマン主義、なんて言葉を思い浮かべてしまいました。

前奏曲集、前奏曲、この辺では咳もあまり出ず、やきもきすることなく聴けました。
ご本人も咳で集中がそがれるということはなかったのではないかと思います。

ショパンのソナタは、巨匠風というか大人の余裕というか、多少セーブ気味(体力温存?)でしたかね、あれは。
ピアノが上手く鳴り過ぎていたのか、まぁここはあまり無理しなくても良いよね、と思ったかどうか。
いつものドシリアスな空気、ギリギリのところを攻める緊張感、切迫感は無かったものの、要所要所でちゃんとアクセルを踏み込んでいたので、盛り上がりに欠けるということはありませんでした。
一楽章が終わったところで拍手が出てしまい、2楽章と3楽章の間で妙な間が開いて、ツィメルマンが客席を見て「ここはどうするの?」みたいに笑ってみせたという一コマも。
指回りも軽快で、スケルツォ楽章が良かったです。
全体的にちょっと明るいというか、歯切れが良いというか、特に4楽章は足取り軽く弾むような雰囲気もあり、ちょっと楽しそうに聞こえ過ぎたような感が無きにしもあらず。

まぁでもこれはやっぱり正統派の3番ですよね、うんうん。

客席も大いに盛り上がり、ツィメルマン、最後には投げキスをして終演となりました。
何回目かのカーテンコールで袖からぴょこっと顔を出したりして、可愛かったです。

あ、楽譜は全部アリでした(いや別にこれは構いませんです。見た方が安心というのならどうぞどうぞ見てください)。
まぁ端から端までずっと見ているわけではなかったですし、手の内に入ってないということも無かったと思うので、別に心配しておりません、ハイ。


そんなわけで、一発目にしてものすごく良い演奏を聴いてしまったような気がしており、サントリー他に行くのがむしろおっかないような気分です。
行くけど。
ブラームスのソナタも楽しみです。

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2012年11月26日 (月)

Piano Recital by Piotr Anderszewski

2012年11月19日(月) Concert Hall, Hong Kong City Hall

Bach English Suite No. 3 in G Minor, BWV808
Schuman Fantasie in C, Op. 17
Bach English Suite No. 6 in D Minor, BWV811 

11月上旬にぴおとるさんは日本に来ましたがモツコンを2回弾いたのみでリサイタルは行わず、だったので、やっぱりここはリサイタル(というかシューマン)を聴きたいでしょ!ということで、ちょっくら香港まで行ってきました(予定を立てたのは夏ですが)。

休み明けでメロメロだったらどうしようっていう心配は絶えずあったのですが、演奏というのは人間のやることなわけだし、腰をすえて一人の演奏家と相対する場合、色々な状況、状態の演奏を聴いた方が良いのではないか、という気持ちもあり、ある意味腹をくくって(大げさだなー)行ってきました。
まぁ香港なら英語も通じるだろうし、そんなに難易度も高くないだろうというという判断もあり。
バタバタの仕事の合間を縫って、ということもありましたが、ほとんど国内旅行のような気分で、ほぼ予習ゼロで行ってきてしまいました(こういうテキトーなことをすると危ないのよね……)。
まぁ旅行自体は特に何事もなく(というか満喫しまくって)、無事帰ってきましたが。

コンサートはというと。

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まぁ、立派なチラシとプログラムではないですかー。
プログラムノートも充実してて、なかなか良い感じでした。

で、早速演奏についてなんですが。
こちらは無事というか、無事じゃないというか。
あえて辛口です。
今まで聴いたアンデルさんの演奏の中で一番良いものが一つのスタンダードになってしまっているので、我ながらシビアです。
一般的にどうか、という話ではなく、あくまでも本人比ということで。
初めてこれを聴いたらどう思ったかな、と考えた場合に、有体に言って、おそらくはその次も聴きに行くだろうとは思うけれど、恋に落ちるという程ではないよな、というのが偽らざるところといいますか。

この辺、職業演奏家の辛いところだとは思います。
いつもいつもベストの演奏ができるわけではないし、演奏の出来は本人以外の要素にも多分に左右されるにも関わらず、聴衆は無意識的にせよ意識的にせよ、以前聴いたものよりもさらに良いものを求めますから……。
いちいちあーだこーだ言って、本当に申し訳ないなと思います。

でも、ここはやっぱり正直に書いておかないと。
アンデルさんが正直な人ということもあって、私もお茶を濁すことができないというか。
もちろん、あの演奏を聴いて大満足、大感動、という人がいても全然、全くおかしくはないと思います。
でも、それとこれとは別、というか。

というわけで、長いです。

演奏のいわゆる「出来」については予想の範疇内で、心配していたほどにはアレではなかったというか。
実は、(前にも書いた通りですが)日本のモツコンを聴いた段階で、表現面はともかく、メカニックについてはまだ助走中というか、これやっぱり休み明けだよね、という感じだったので、正直、ちょっとバッハ(特にイギリス6番)は厳しいのではなかろうか、、、と思わないではありませんでした。
で、日本から中国の間にメカの精度自体がそんなに上がるわけもなく(兵庫が11/11で北京が11/15だったので、練習する暇はそんなに無いでしょうし)、まぁ日本とあまり変わらず、という印象でした。
といっても、全体がヨロヨロしている感じではなくて、要するにモツコンの時と同じで、いつもよりもミスタッチが目立つということなんですけど。
一つ一つの音自体はしっかりしていて、不安定というほどではなかったです。
まぁいろいろ総合的に考えると、全体としては少し上がってるかな?と(いや変わらんか……)。

というよりも、本人のメカ以前に、そもそもピアノ(楽器)の状態がよろしくなかったのだろうと思います。
何しろ、足の塗装は盛大に禿げているし、大きな傷も見えるし、一体どういう扱いを受けたピアノなんだろうか、と。
一聴して音が籠り気味というか、なんだか蓋の中で鳴っていて広がっていかないなぁ、という印象でしたが、ボディのみならず、おそらく鍵盤(アクション)自体もアレだったのだろうと。
何しろ、ppがしょっちゅう鳴り損ねるのですよね。
今回のモツコンでもppの鳴り損ねはあってアレっと思ったのですが、あの比ではないというか、あんなにぼろぼろスッポ抜けるのは初めてで、鍵盤の反応が大分悪かったのではないかと思われます。
特に低音部に顕著で、おそらく鍵盤が重かったんだろうなー。
これは本当に憶測ですが、鍵盤の反応速度というか、音の立ち上がり自体が遅いものだから(特に低い方)、鍵盤を押し込んだ瞬間に瞬時の判断で修正出来ない→鳴り損ね多発になったのではないかと。

前半はバッハのイギリス組曲3番とシューマンの幻想曲でしたが、特に前半はピアノを扱いあぐねているような感じで、楽器と格闘していたように聞こえてしまいました。
まぁ必ずしも全てが楽器のせいかというとそうとも言い切れず、(日本でのモツコンから判断するに)本人のメカが決して100%ではないという側面もあったのではないかと思いますが。

とはいえ、イギリス3番と幻想曲は、表現面ではとても濃密で、実に丁寧に作り込まれた音楽であったと思います。
3番については30歳頃に録音したライヴ音源を持っていて(「アンデルさんの来シーズン」参照)、相当に根の暗い演奏という印象だったのですが、今回は大分陽性に傾いた解釈で、これはかなりキャラが変わったなーという気がいたしました。
と同時に、(いつもながらではありますが)ピアノからフォルテの音のレインジが広く、表現の起伏もとても大きい、密度の濃いバッハでありました。
細部まで考え抜かれていながらも、音楽の流れが停滞するようなことはなく、また、以前ちょくちょく感じたアグレッシブさや棘のようなものはなりを潜めて、さらに言えばおそらくは若さの一つの発露であった陰鬱さも払拭され、なんだかとても大人になったなーと。
穏やかになったというか、円熟なんでしょうかね、やっぱり。
これはいよいよ永遠の青二才卒業でしょうかね?
って失礼だな、私もいい加減。

幻想曲は、文字通り泉のように何かが迸り出るかのような演奏で、とても劇的かつエモーショナル、コントラストをはっきり打ち出した解釈でした。
なんとまぁロマン主義な、、、と改めて感心してしまいましたよ。
シューマンでロマン主義、といっても、決してウェットに流れ過ぎず、嫋々、綿々、切々といった語り口というよりは、毅然とした雰囲気や意思の強さを感じさせました。
むしろオトコマエな雰囲気が勝っていたようにも思いましたが、同時に軽妙さや飄々とした部分もあったりで、一辺倒にならない多層的な表情が、アンデルさんらしいなぁと。
表現の幅が実に広く、また単なる音の強弱にとどまらない多彩な感情をてんこ盛りなまでに盛り込んでおり、極めて雄弁かつ説得力のある演奏であったと思います。
この人のシューマンの、ストーリーテリングというか、ある感情の軌跡を描き出す際に生まれる有無を言わさぬ説得力というのは、私にとって本当に別格にして唯一無二のものだなぁと改めて思いました。

ただ、兵庫で聴いたアンコールの演奏(幻想曲の3楽章)からすると少々肩すかしというか、もう少し出来上がってても良いのでは、、、と思わせる部分はあったように思います。
おそらくは扱い辛いピアノと、必ずしも万全ではないメカニックの相乗効果で、全体が若干ロウ(raw)というか生煮えな感じに聞こえてしまったのではないかと思いますが、なんとなく手が脳みそに追いついていないような印象が否めませんでした。
なんというか、やりたいことや伝えたいことはすごーく伝わってくるんだけれど、頭で考えていることを手が完璧には実現しきれていないような気がしてしまい、しかも肝心のキメどころでボロっとミスが出たりするものだからちょっともどかしいような気分になってしまったなぁ。
3楽章は、もちろん美しくはあったのですがちょっとさらさらしていて、内省的な表現の深さは兵庫に軍配が上がったように思いました。
イマイチなピアノに足をとられて、少し散漫になったのかな。。。
まぁ、音響もデッドだったと思うし、ピアノもアレだしというベストではない環境下にしては、傷は少なかったのかもしれません(多分、私が気にするほどには酷くないというか、あくまでも本人比の話なので)。

個人的には後半の方が問題だったというか。
サバティカル直前に、「もう無理、お家に帰りたい…」と息も絶え絶えになってしまった、すさまじく壮絶なイギリス組曲6番を聴いてしまっているので、比較するとどうしても点が辛くなってしまうのですが、狭量でごめんなさい、とあらかじめ謝っておきます。

単に解釈を変えただけだよ、ということはあるのかなぁ、どうかなぁ。。。

イギリス組曲6番、私には、Maxではなくて出力を少し落とした演奏に聞こえました。
集中していなかったわけではないし、曲の中にも入っていたと思いますが、何かを諦めて少し流したでしょう、と。
多分、120%の出力で頑張ってもピアノが手の要求に応えてくれないことが前半でよく分かっただろうし、いつもと同じ弾き方をしたら、6番はメカニック的に制御しきれなかったのではないかと(この辺、もう邪推の域ですが)。
なので、結構あっさり目というか、さらさら流れて終わってしまい、どうにも追い込み不足だったという印象。
状況に応じて無理をしないというのはプロとしては正しい判断だったんだろうと思うし、一見(聴)前半の3番よりも傷が少なくて、きちんとした端正なバッハに聴こえたと思うので、初めて聴く分には問題無いだろうとは思います。
ただ、私はといえば、どうしてもあの人を殺せるような6番のインパクトが強すぎて、この日の演奏は、一体何を伝えたいのか皆目分からないというか、今一体何を考えてるの?みたいなところもあったりで、奏者が遠くに感じられてしまってちょっと辛かったなー。
これだったら、前半のちょっと傷有り3番の方がきちんと気持ちが入っていたし、やりたいことが明確に伝わってきて、何よりも血が通っていて良かったなぁと。

そういう目で見てるからかもしれませんが前半も後半も、拍手に応えるアンデルさん、少々心ここにあらずというか(まぁ弾き終わって放心というのは日本でもありますが)、平均的に笑顔が少なかったように思われました。
終演時には笑顔らしい笑顔が見られましたが、日本で見せてくれた顔中どばーっと笑み崩れた笑顔、みたいなのはついぞ見せてくれず仕舞い。
まぁ、逆に日本では、なんであなたそこまで上機嫌?!って思ったものですが。

それでもアンコールは2曲あって、バッハのパルティータ1番とシューマンの森の情景から一曲ずつで、アンデルさんの良いところがきちんと伝わる演奏で良かったです。

えーと、アンデルさんは、スロースターターというと言葉が悪いかもしれませんが、時間をかけて練り上げて、積み上げていく人であろうことが改めて分かったといいましょうか。
器用にぱっと曲を完成させてしまうタイプではないというのはご本人の談でもありますが、おそらくは、時とともに、莫大な何かを積み上げていく、のだと思います。
おそらくは、練習や研究だじけではなく、コンサート活動が組み込まれた日常、その経過する時間そのものがそのまま演奏の上に蓄積して影響を与えていくのでしょう。
あ、あと、つくづく正直というか、色々なことが音にしっかりのっかってしまう人だよな、とも(まぁ、顔にも出るかもですが)。

完璧に(本人は完璧なんてありえない、というでしょうが)出来上がったものを聴くのも良いですが、今この段階、シーズン頭のいわばスタート地点の演奏を聴けたのは、それはそれでとても良かったと思います。
願わくば、同じプログラムを1~2年後にもう1度聴きたいものです。


2013年はまぁ無理としても、2014年の早い時期にサントリーあたりで同じプログラムを聴けたらこんな幸せなことは無いと思います(Kajimotoさん、どうかよろしく!)。

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2012年11月13日 (火)

アンデルさん中国公演

アンデルさん、そろそろ中国に旅立たれましたかね。。。

一応、中国公演の情報など。

11月15日(木)北京 Beijing, People's Republic of China National Center for the Performing Arts
Bach: English Suite No.3
Bach: French Suite No.5
Janacek: On an Overgrown Path, Book II
Schumann: Fantaisie Op.17

11月16日(金)上海広州 Guangzhou, People's Republic of China ←都市名が間違っていました。申し訳ありません。ご指摘ありがとうございました。
Bach: English Suite No.3
Bach: French Suite No.5
Janacek: On an Overgrown Path, Book II
Schumann: Fantaisie Op.17

11月19日(月)香港 Concert Hall, Hong Kong City Hall
Bach: English Suite No. 3
Schumann: Fantasie in C, Op. 17
Bach: English Suite No. 6


いよいよ復帰一発目のリサイタル、今週は試練だよなーと思うのは私だけ?
(優しい日本の聴衆の前でリサイタルの一つもやっておけば大分気楽だったのではないかと←しつこい。あ、でも私なんかは愛はあっても全然優しくないけどさ……。アンデルさんのコアなファンは奏者本人に似て?とても厳しいような気がする)

この後もクリスマスまで、アメリカツアー、ドイツツアーと続くので大分忙しいだろうなぁという感じではあります。
お休みあけたら早速馬車馬モード突入とでも言いましょうか。

どうか体に気を付けて年内を乗り切ってくださいませませ。

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2012年11月12日 (月)

ヘルベルト・ブロムシュテット バンベルク交響楽団

2012年11月11日14:00開演 兵庫県立芸術文化センター 大ホール

プログラム
モーツァルト:ピアノ協奏曲第17番 ト長調 K.453

ブルックナー:交響曲第4番 変ホ長調「ロマンティック」(ノーヴァク版)


アンデルさんの2公演目に行ってきました。
すみません、諸事情によりアンデルさんのことのみにて失礼。

サントリーから兵庫までの間にせっせと練習してるのかな~と思ったら、どうやらラドゥ・ルプーさんのTOCリサイタルに出没してらしたようで(ま、同じカジモトだしね)、あらまぁ余裕ですわね、、、と思わないではなかったのですが(いや別にそれくらいは良かろうて……)。
余談ですが、ルプーさん、私は兵庫で聴こうと思ったら前日の夜に急遽キャンセルされてしまい涙でございました。
これは浮気をするなという神様の思し召しなんだろうか。

さて、モツコンの感想、サントリーと同じことを書いてもアレなんでざっくりいきます。

あ、椅子なんですけど、前回リサイタル時もその辺の椅子(会議室用みたいなの)を使ってましたが、今日はオケの人たちと同じ椅子を二段重ねにしてました(一つでは低かったのだと思われる)。
なんか不安定な気もするんだけどそんなこと無いのかな。。。

演奏を比較すると兵庫の方が好印象ではありましたが、一週間で劇的に変化したなどということは無く、どちらが良いかは聴き手の好みの範疇かと思われます。
兵庫の方が、全体的に勢いがあって面白い感じではありました。
まぁ、アンデルさんってスロースターターじゃないかと思うのですが、サントリーで1回やって、2回目で少しこなれて「えーい、やっちゃえ」的な元気の良さが出てきたのかなぁと。
逆にいうとすこーしばかり大味風味。
2楽章などは霊性と言いましょうか、妙なる響きが生み出す神秘性、みたいな部分はサントリーの時よりはやや減じていたように思いました。
まぁその辺もあくまでも比較の問題であって、誤差の範囲内ではないかと思いますが。

常日頃アンデルさんをよく聴いているのである意味慣れがあったのですが、この兵庫公演では、あ、このモツコン、よくよく聴くと全然フツーじゃない……とまるで天啓のように気づいたりもしまして(遅いよ)、改めてにやにやしてしまったというか、なんだかものすごく嬉しくなってしまったりもして。
よく考えてみたら、こういう風にモーツァルトを弾く人って全然いないんですよね。

そんなわけで、この日のモツコンも楽しく拝聴いたしました。

で、アンコール。
これがねぇ、何というか、やっぱりただでは帰らせてくれないアンデルさんでありましたよ。
シューマンの幻想曲第3楽章で、この曲って今シーズンの新レパートリーなんですね。
続く中国公演の練習台だろうとも思いましたが、なんにせよ、ここで披露してくれて感涙でありました。

そして、つくづくと、この人は類稀なるシューマン弾きであるよなぁと唸らされてしまいました。

この第3楽章、幻想曲の中では緩徐楽章に当たり、基本的には大変に流麗で美々しい旋律に彩られた夢幻的な曲想です。
冒頭などは、アンデルさんが弾くにはちと甘口でロマンチック過ぎるというか、ストレートに綺麗過ぎやせんか、と思わないような旋律が綴られています。
しかしこの方が単純に旋律の美しさに耽溺するはずもなく、やっぱりアンデルさんはアンデルさんだった、としか言いようのない演奏でした。
たゆたうような詩的情緒の中、諦観と抑えがたい激情の間を行き来するような複雑な感情の陰影のようなものをごく自然に紡ぎ出しており、なんとも切なく、胸がつぶれるよう思いにとらわれてしまいました。

ちょっとブラームスの後期作品を連想してしまったかな。

わけもなく、そしてどうしようもなく哀しかったのは、こういう曲に完全に共鳴してしまうピアニストのことを思ってのことなのかな。
この辺はちょっとまだ自分でもよくわかりません。

ダメだな、サバティカル前のコンサート以来、ショーマンというカードを切られると、私はすこぶる弱いんですよね。
アンデルさんの伝家の宝刀といえばバッハだと思いますが、シューマンはどうも妖刀っぽいというか、魅入られてツボに入り過ぎるようなところがあって、もちろん冷静な判断などできるはずもなく、どうにも困ったものです。

一つ言えるのは、休み明け後、比較的すぐの来日ということで、正直色々心配をしていたのですが、あのシューマンを聴いて、あ、これなら私なんぞが心配するのは僭越以外の何物でもないよな、ということ。
やっぱりすげーわ、この人、と尊敬の念を新たにしたのでした。

しかし、ここまでできてるのなら、日本でリサイタルやってくれれば良かったのに……。
(復帰一発目のリサイタルが日本というのが嫌だったのか、はたまたホールの都合か、その辺の事情は全く分かりませんがー)

そんなわけで、たった一曲で危うく腰が抜ける寸前というか、私にとっては破壊力抜群のアンコールで、かなりヘロヘロになってしまいました。
ともあれ、良いものを存分に聴かせてくださってありがとうございました。
3楽章って10分くらいはあるので、アンコールとしては大分長かったのですが、何とも贅沢な時間でありました。

次の来日はいつなんでしょうかね。
そんなに延々と待てないよー。
(というか待つつもりもないんですが)

とりあえず、今週始まる中国ツアー(リサイタル)、ぜひとも頑張っていただきたいものです。

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2012年11月 7日 (水)

バンベルク交響楽団-ブロムシュテット85歳記念-

2012年11月6日 (火) 19:00 開演
サントリーホール
バンベルク交響楽団
指揮: ヘルベルト・ブロムシュテット
ピアノ: ピョートル・アンデルシェフスキ

<プログラム>
モーツァルト : ピアノ協奏曲第17番 ト長調 K.453
(ピアノ:ピョートル・アンデルシェフスキ)
アンコール:J.S.バッハ: フランス組曲第5番 ト長調 BWV816から サラバンド

ブルックナー: 交響曲第4番 変ホ長調 「ロマンティック」 (ノーヴァク版)


お帰りなさい、ピョートルさん。

というわけで、アンデルさんことアンデルシェフスキは先月1年半のサバティカルが明け、バンベルクの公演(共演者同上)で復帰した後、来日ということになりました。

バンベルク交響楽団の日本ツアー自体は11/1にスタートしていたので、ソリストのアンデルさんはいつ来るかいつ来るかと首を長くして待っていましたが、なかなか「来ました!」の第一報が出て来ず。
うーん、ドイツでの公演の後、家に帰ってせっせとさらってるのかねぇ、、、などとじりじりしていたところ、やっと11/3(土)にKajimotoさんより来日しましたツイートが。

お休み明けでいったいどんなことになっているかアレコレ心配しておりましたが(何しろ先月のバンベルクの演奏評というのが巷にほとんど出て来ず、一瞬、本当に復帰したのか?と疑ったくらいでして)、なにはともあれ無事来日の報にまずはホッ。

バンベルク公演後のあまりのスルーされっぷりに、やっぱりダメだったのか、休み明けで完全になまっていたらどうしてくれよう、まぁでも今回はどんなアンデルさんでも目をつぶろう、メロメロ演奏も3回までは許容範囲だ、人間いろいろあらーな……と甚だしく失礼なことを日々ぐるぐると思っていたのですわ、正直なところ(信頼無いなー、アンデルさん)。

あと、他にもちょっと気になることが。
4月のBBC Music Magazine Awards の授賞式の映像を見たところ、完璧に「ちょっとそれ、体重Max更新でしょう…。つか、上着のボタンとまんないでしょ!」という状態だったのですよね。
去年の11月の時には割と普通だったのに、どういう生活をするとたった5か月でああなるのだ、、、と、思わず天を仰いでしまいましたよ。

もう音楽さえ良ければ見てくれなんて、いやでもコンサート活動って一応ショウビズなんだしさー、少しは外見にも気を遣った方が、いやむしろそもそも勤勉に練習してるのか(もっぱらゴロゴロ?)?とさらにぐるぐるしてしまい、すっかりサバティカル明けのことが心配に。

いやー、本当にあたくしってば失礼過ぎる。。。

まぁ、結論から言いますと、大筋では大変よろしかったです。

私の席からはアンデルさんの表情なんかはあまりよく見えなかったのですが、気力が充実して元気そうだということは伝わってきました。
私は、「そこでアンデルさんが元気にピアノを弾いている」というだけで感極まってしまい(安いなー)、中欧的で優しい音のオケが紡ぎ出す明るくハッピーなモツコン1楽章を聴きながら、ちょっとうるっと来てしまったのでした。
ああ良かった、ここ(ステージ)に帰って来てくれて。

タッチ、音色の感じが少し変わったかな、どうかな(楽器のせいかな)。
粒のはっきりしたしっかりした打鍵で、足取りがしっかりしている印象。
ペダルが少なめだったこともあり、1楽章は明瞭さが前面に出た感じだったでしょうか。

特に良かったのが、予想通りではありますが、複雑な感情の流れを映し出すかのように様々な曲想が立ち現れる2楽章でした。
とりわけ、少しウェットなメランコリーの表出はアンデルさんの面目躍如といったところでしょう。
そして、2楽章で際立ったのが弱音における響きの精妙さ。
繊細で美しいという以上の、何かの深淵を思わせる深い深いピアニッシモは、本当に唯一無二と言ってしまって良いのではないでしょうか。

全楽章を通じて明と暗、悲と喜、緩と急のコントラストが見事で、表現の奥深さ、深遠さを追求したモーツァルトという点ではこれ以上のものは望めないのではないだろうか、と思いました(可憐、典雅、といった要素を求めるとなると違う人になるだろうと思うのですが)。

以上、絶賛大筋部分。

さて、枝葉の部分、今回の場合はいわゆるメカニック面なのですが、まぁサバティカル明けだよな、と思ってしまったのですよね。
ちょっと寝起きっぽいというか、時差ボケといわれたら納得するような、なんとなく助走中、みたいな。
世間一般的には十分ハイレベルなんだろうと思うのですが、(あくまで本人比ではありますが)ちょっとミスが目立ったなと。
私は幸か不幸か、今までライヴでメカニックが怪しいアンデルさんというのに当たったことが無くてですね(ミスタッチ自体、あったんだろうけれどほとんど記憶にない)、アレレ?ダイジョブ?と思ってしまいました。


もちろんメカニックに拘って音楽の本質を見失うのは本末転倒だと思うし、こういうことってわざわざ書かない方が良いかもと思ったのですが、一方で私は器楽奏者ってアルチザンという側面も大きいと思っているのでね…。
それに、今回のアンデルさんの演奏、ツイッターを見ているとかなり好評というか、揃いも揃って大絶賛な気がするのですが、いやいや本当に良い時のアンデルさんのメカのキレっぷりはあんなものじゃないんだよ、実はもんのすごい上手いんだよ、あらゆる意味で!と主張したい気持ちもあったりして。

まぁ、万遍なく危うい感じではなかったので、そんなに心配はしていないのですけど。


アンコールはバッハ。
またこのバッハが反則的に素晴らしくて、いやほんとズルいわ、と。
アンデルさんって、こういう曲、本当にハマりますよね。
永遠を思わせる一つの世界、小宇宙。

きわめて個人的な印象ですが、以前はこういう曲って、孤独、じゃないな、えーと、孤独というほどネガティヴなニュアンスではなくて、もうちょっと即物的に「世界に一人在る」みたいな情景をイメージさせることが多かったように思うのですが、今回は不思議とそういうことはなかったです。
……ま、年齢、でしょうかね。


以下余談。
衣裳はたぶん前回と同じ、へにゃっとした笑顔は前のまま、外見もほとんど変わらずでした。
実は体形はよく見えなかったのですが、他の方の証言によれば前回並、とのこと。
ふーむ、とすると、4月からは多少絞ったということでしょうかね。。。
まぁあまりお太りになると健康に悪いと思うので、少しお気を付けくださいましまし(超余計なお世話)。

後半をさっくりと。
ブルックナー4番、圧巻の演奏でした。
前半はピアノの影になって全く見えなかったブロムシュテットさんの姿もちゃんと拝めました。
きりっと、毅然と立つ御年85歳のマエストロ、かっこええ。
バンベルク交響楽団の音にはふわっととした柔らかさがあり、それでいて密度がとても濃いのが印象的でした。
ブロムシュテットを尊敬しているのがとてもよく伝わってきて、マエストロの棒にひたすら応えるべく、本気度Maxでぶつかってくるかのような演奏ぶりは、聴いててすこぶる気持ちの良いものでした。
指揮者がオケの人々をきちんと働かせて、100%以上の力を出させるというのは、こういうことか、と思いましたよ。
圧倒的な凄演に、思わず「あー、これではアンデルさんのモツコンがスルーされまくるわけだわ…」と納得してしまいました。

終演後はブラボーの嵐で会場中がスタンディング・オベーション、マエストロ、本当にリスペクトされて愛されているのだなぁ……と、しみじみ感動のフィナーレと相成りました。

あー楽しかった。


私は11日の兵庫公演にも行く予定です。
サントリーとはまた違った演奏を聴けるものと期待しています。

最後にもう一回、ピョートルさん、お帰りなさい!!

Welcome back, Piotr!!

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