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2012年11月30日 (金)

クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル

2012年11月27日(火)19:00開演 川口総合文化センター メインホール

<プログラム>
・ドビュッシー:版画
  1.パゴダ
  2.グラナダの夕べ
  3.雨の庭
・ドビュッシー:前奏曲集 第1集より
  2.帆
 12.吟遊詩人
  6.雪の上の足跡
  8.亜麻色の髪の乙女
 10.沈める寺
  7.西風の見たもの
・シマノフスキ:3 つの前奏曲(「9つの前奏曲 作品1」より)
 第1番 ロ短調
 第2番 ニ短調
 第8番 変ホ短調
・ショパン:ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 作品58

※オール・ドビュッシー・プログラムより変更
※アンコールは無し


私がドビュッシーが苦手だったり、12月は激務月間決定だったり、サバティカル明けたツィメルマンさんのリサイタル病欠が伝わってきたりで、今回の来日はテンションがいまいち上がらなかったのですが、とりあえず川口リリアに行って参りました。
アンデルさん@香港に行かずに、ツィメルマン@名古屋に行くという選択肢もあったのですが、そもそもツィメルマンさん、日本にちゃんと来るのか?と疑っていたこともあり、アンデルさんをとったというわけです(後悔はしてませんぜ、ええ)。

さて、そんなわけで、ツィメルマンさんの日本ツアー自体は11月半ばにスタートしていましたが、私は大分出遅れての初参戦となりました。

結論から言うと、ものすごーく良かったです。
12月のメイン公演(サントリー、TOC)とか行かないで、これで打ち止めにした方が良いんじゃないかって思ったくらい(まぁ一応行きますっていうか、あと3回くらいは何とか行けそうだなと)。


開場時間を大分過ぎて開場に到着したのですが、ホールに入るのに長蛇の列だし、ホールに入ったら人、人、人でナンジャコリャと。
開場が遅れて、ホールには入れるけれど客席には入れず状態。
まぁリハか調律が押しているのだろうとは思いましたが、ピアノか何かに気にいらないことがあってゴネてたら嫌だなぁ、、、と。
結局、開場は19:00ぴったりで、開演は15分押しでした。
開演前には、ツィメルマンの録音禁止メッセージをアナウンス嬢が読み上げ。
これ毎公演やるのか。。。

ツィメルマンさん、今来日中はずっと咳をしているときいていましたが、開演前には袖からゴホンと大きな咳が聞こえてきて、うーん、と思ってしまいました。
冒頭の「版画」は、一曲終わるごとにゴホンゴホンしてました。
この「版画」、特に「パゴダ」ではちょっと拍というかリズムの取り方が合わないな、と思ってしまいましたが(まぁこれは個人的嗜好の問題ですが)、それでものっけから響きの美しさは群を抜いており、これは役者が違う、その辺のピアニストとは比較にならない、という印象。

次の前奏曲集1、「帆」を聴くなり、あわわ、凄すぎる、、、と頭を抱えてしまいました。
この前奏曲集、大げさではなく、今、この世で一番美しいピアノの響きを聴いてるんじゃないのか?と思ってしまいました。
まじめな話、ことピアノの音色・音響だけに限って言えば、ほとんど生涯マイベストだったんじゃないかと思います。
席も良くて、2階右バルコニーの舞台に近いところだったので、ピアノからの直接音がバッチリ聞こえ、音の伸びや響きの減衰もすごくよく分かり、本当に音に耽溺するとはこのことか、と思いました。
耽溺というか、むしろ溺れ死ぬのではないかと。
水晶のように明晰かつクリアーだけれど、芳醇でふくらみがあり、ニュアンスがとても豊か。
ピアノってこんな音が出るんだ、こんなに美味しい音だったんだ、、、と一々感心してしまいましたよ。
とにかく、ものすごいコントロールの精度の高さでした。
「吟遊詩人」はテンポ速めのしゃきしゃきしした演奏でしたが、茶目っ気も感じられて、ああツィメルマンさんらしい、と。
「雪の上の足跡」は、クールで寒々しいというよりは、むしろ水のイメージでしめやかな響きが印象的でした。
最後の和音が綺麗だったー。
「.亜麻色の髪の乙女」は優しく穏やかな雰囲気で、普通に綺麗だなぁと。
「沈める寺」では、彼岸的というかこの世ならざる音というか、なんかピアノではないような音がいっぱい聞こえてきて、本当にびっくりしました。
今回あまりフォルテをはらないなぁと思っていましたが、ここで大伽藍登場!とばかりに、大変立派なffを繰り出してきました。
シメの「西風の見たもの」でもきちんと盛り上がり、お見事。
キャラクター、あるいは聴かせ所の全く異なる6曲のチョイスでしたが、ドビュッシーの色々な側面を見せてくれたなという印象。

後半はピアノの鳴りがさらに良くなって、音にものすごく広がりが出たので、もはや「ピアノの蓋から音が鳴っている」という感じではなかったです。
ピアノの周囲数メートルの空間すべてが音場になってる、とでもいいましょうか。
シマノフスキの前奏曲は、いかにも初期の綺麗ドコロで、やや哀愁帯びつつエモーショナルな面も、という感じの曲でしたが、ちょっとブラームスの後期ピアノ小品を思い浮かべるような雰囲気もあり(あそこまで枯れてませんが)。
少し伏し目がちで、水滴がぽたりぽたり、途切れなくひそやかに落ちるような風情というか。
懐かしさを感じさせるとこrもあり、懐古趣味的ロマン主義、なんて言葉を思い浮かべてしまいました。

前奏曲集、前奏曲、この辺では咳もあまり出ず、やきもきすることなく聴けました。
ご本人も咳で集中がそがれるということはなかったのではないかと思います。

ショパンのソナタは、巨匠風というか大人の余裕というか、多少セーブ気味(体力温存?)でしたかね、あれは。
ピアノが上手く鳴り過ぎていたのか、まぁここはあまり無理しなくても良いよね、と思ったかどうか。
いつものドシリアスな空気、ギリギリのところを攻める緊張感、切迫感は無かったものの、要所要所でちゃんとアクセルを踏み込んでいたので、盛り上がりに欠けるということはありませんでした。
一楽章が終わったところで拍手が出てしまい、2楽章と3楽章の間で妙な間が開いて、ツィメルマンが客席を見て「ここはどうするの?」みたいに笑ってみせたという一コマも。
指回りも軽快で、スケルツォ楽章が良かったです。
全体的にちょっと明るいというか、歯切れが良いというか、特に4楽章は足取り軽く弾むような雰囲気もあり、ちょっと楽しそうに聞こえ過ぎたような感が無きにしもあらず。

まぁでもこれはやっぱり正統派の3番ですよね、うんうん。

客席も大いに盛り上がり、ツィメルマン、最後には投げキスをして終演となりました。
何回目かのカーテンコールで袖からぴょこっと顔を出したりして、可愛かったです。

あ、楽譜は全部アリでした(いや別にこれは構いませんです。見た方が安心というのならどうぞどうぞ見てください)。
まぁ端から端までずっと見ているわけではなかったですし、手の内に入ってないということも無かったと思うので、別に心配しておりません、ハイ。


そんなわけで、一発目にしてものすごく良い演奏を聴いてしまったような気がしており、サントリー他に行くのがむしろおっかないような気分です。
行くけど。
ブラームスのソナタも楽しみです。

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