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2013年4月15日 (月)

クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル

2012年12月11日(火) 19時開演 東京オペラシティ コンサートホール

<プログラム>
ドビュッシー:版画
 1.パゴダ 2.グラナダの夕べ 3.雨の庭

ドビュッシー:前奏曲集 第1集 より
 2.帆 12.吟遊詩人 6.雪の上の足跡 8.亜麻色の髪の乙女
 10.沈める寺  7.西風の見たもの

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シマノフスキ:3 つの前奏曲(「9つの前奏曲 作品1」より)

ショパン:ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 作品58

今更4か月も前の公演レビューを上げるのもどうかと思いますが、記録ということでまとめておきます。
ブログの軽い文章といえど、それなりに長い文章を書くには多少なりともエネルギーが必要なんですが、12月くらいからつい先月くらいまで本業の方が忙しく、放置状態となっておりました。

2012の来日公演は結局4回行ったことになるのですが、どの公演もとても充実していて、複数公演にいらした友人・知人の感想等をかんがみますと、私はかなり当たりを引いたのではないかなぁという印象です。
中でも、このTOCの公演が抜群に良かったです。
今回チケットの売り上げが悪かったようで(個人的には東京と近郊で1回多かったよね、という印象)、後ろの方が空いてましたが、ちょっと勿体なかったですね。
まぁでも席の空き具合と演奏の良し悪しは無関係ということです。


この日のドビュッシーの元気の良さといったら、サントリーをしのぐほど。
気力体力充実、みたいな感じで、咳も大分少なくなってました。
凄演、圧巻という言葉が浮かびますが、よもやドビュッシーで腰が抜けるとは思いませんでした。
この日は一番前で聴いていたのですが、奏者のエネルギーに当てられたというか、ピアノの音の洪水に負けたというか。
前半終わって喉はカラカラだし、それどころか吐きそう、という状態で、久々に「演奏が凄すぎて具合が悪くなる現象」が。
吐きそう、というのは別に大袈裟な表現ではなく、特にピアノ直下で聴いてたりすると、演奏が放つオーラに、こちらの体が耐え切れないという事が時々起こるんです。

などと書くと、まるでパワー勝負に徹していたかのような誤解を与えかねませんが、決してそのようなことはなく、あらゆる意味で会心のドビュッシーだったのではないでしょうか。
サントリーとも所沢とも異なる、TOCの芳醇過ぎる音響を存分に活かした、水面のようなたゆたい、揺らめきを感じさせるドビュッシーでありました。
音のレインジが驚異的に広く、表情がグラデーションのように千変万化する様はまさに魔法のようとしか言いようがありませんでした。

「帆」は風に吹かれた絹のヴェールで頬を撫でられるような趣。
「雪の上の足跡」は冷え冷えとした空気の中、シンプルな音が連なっていく時間の経過を意識させられました。
「沈める寺」は、絢爛たるゴシックの大聖堂というよりも、モンサンミッシェルのような島そのもの、天然の要塞が海からゴゴゴゴっと姿を現わしたような壮大さだったかと思います。
そしてシメの「西風」の問答無用のカッコよさといったら!(しかし相当な強風でありましたよ…)

今回、幸いなことにペダルが良く見える席でしたが、両足共に鬼のような精度の高さで、音色の変化だけでなく、同時に鳴る全ての音の減衰時間まで完璧にコントロールしていたのではないかと思います。
手の方、すなわち打鍵が精緻を極めていたのは当然として、足技の妙技との相乗効果によって、まさに神技の域ではなかったかと思います。


後半は、アナウンスでツィメルマンのコメントが読み上げられ、彼が3.11の時に私的に来日していたこと、毎月11日になると震災を思い出すこと、今日のシマノフスキの演奏を被災者に捧げる旨が伝えられました。
そのような前振りとともに演奏されたシマノフスキは、哀切の念と激情の入り交じった、極めてエモーショナルなものであったと思います。

ショパンのソナタ3番は、年齢のせいか、大らかというか、少し奔放になったよなぁなどと思ったりもして。
もしかしたらショパンは手の内に入り過ぎているのかもしれない、とも(文字通り、目をつぶってても弾けるだろうなーと)。
前回の来日あたりと比較すると、少しシリアスな表情が減じていて、3楽章あたりはちょっとあっさりしていたような気がします。
まぁ、ショパンイヤーとは気持ちの有り様も違うだろうし、それはそれで当然という気もするのですけれど。
ちょっとネガティヴに見える感想になってしまいましたが、個人的には全体の中で一番釈然としないのがショパンの3番であったんですよね。
初めて聴けば間違いなく「おおすごい!」と、それこそ腰を抜かすような演奏なのだろうと思うんですけど。

単に、前の解釈の方が好きだってだけの話です、ハイ。


最終日のすみだは残念ながらいけませんでしたが、個人的には最終的に4公演聴くことができ、しかもどの公演もとても聴き応えがあり、さらに最後に超弩級の公演を聴くことができ、超満喫&大満足の2012公演でした。


2013もヤル気満々の来日公演プログラム(ベートーヴェン後期ソナタ3曲)が発表されているので、楽しみにしたいと思います。
気が付いたらあと半年ちょっと?
早いなー。

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