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2013年5月20日 (月)

[浜離宮ピアノ・セレクション]アレクサンダー・ロマノフスキー

アレクサンダー・ロマノフスキー
2013年5月14日(火)19時開演 浜離宮朝日ホール
<曲目>
J.S.バッハ:幻想曲とフーガ イ短調 BWV.904
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調「月光」op.27-2
ショパン:24の前奏曲 op.28
アンコール
①スクリャービン:12のエチュードop.8-2
②スクリャービン:エチュードop.8-12
③ショパン:ノクターン第20番嬰ハ短調
④J.S.バッハ/ユシュケヴィチ:管弦楽組曲第2番より“バディネリ”


今回、予習ゼロだったのでざっくり感想にて失礼。
浜離宮、実は初めて行きました。
小ぶりのシューボックスでした。

よく弾き込んで得意な曲ばかりなんだろうなぁと思った前のプログラムから一転し、今回のリサイタルではCDやネットラジオの中継などでも聴いたことのない曲ばかり並びました。
全体的な印象としては、ホールサイズ(552席)よりも、相当にガタイの良い演奏であったように思います。
よく響くホールということもあり、色々な意味でやや飽和気味だったかしらん。
決してサロン風の文弱な演奏ではなく、これはむしろ大ホール向きではないか、とすら思わせるスケールの大きい演奏で、かといってマッチョというわけでもなく、というくらいのバランスであったと思います。

さてバッハ。
最初の一音から音色の堂々たる輝かしさに耳を奪われます。
ホールの音響特性故か、輪郭が不明瞭に流れて聞こえる部分もあったように思われ、個人的にはちょっとインパクトに欠けたような印象も。
ロマノフスキーはプログラムの土台としてバッハを提示したい旨発言していましたが、であれば、もう少しガッツリとした構築感があっても良かったような気がします。
ただ、曲自体の持つ美しさは十二分にわってきたと思うので、一曲目としては重すぎず、良かったのかもしれません。

続く月光一楽章ではぐっと抑えた音色を繰り出し、大理石のような趣。
基本、キラキラしい音色の持ち主だと思いますが、抑制をきかせるべきところはきちんと抑制をきかせ、深い音色を聴かせてくれます。
月光二楽章はどちらかというと老成した雰囲気で、軽妙さや可憐さとは無縁の、ややウェットめな世界観。
もっと可憐な雰囲気の方が好き、という向きもありましょう(まぁこの辺は好き好きというか)。
三楽章は打って変わってスピードに乗った演奏で、二楽章との対比を明瞭に打ち出した感じでしょうか。
端正さやかっちりした構築感よりも年齢なりの若々しさを感じさせる演奏で、疾風のように駆け抜ける様にはカタルシスがありました。

後半はショパンの前奏曲全曲。
24曲もあるので、多少バラツキがあるかなぁという印象を受けました。
短調の、斬ったはった系の押せ押せの曲は総じて良かったと思いますが、曲によってはもう少し繊細さやデリカシーが欲しいというか、もう少し違った表情を見せられるんじゃないかなぁなどと思ったりもしました。
この辺は好みの範疇ですが、ショパンにしては少し骨太過ぎるようなところがあるかなぁと。
とはいえ、基本的にはエレガントさを失わない人なので、強奏しても乱暴にならないところは美点だろうと思います。
リズム感やアーティキュレーション、フレージングに不自然なところは無く、ポーランド人以外が弾くショパンとしては個人的には許容範囲かなぁ(すみません、基本的にロシア系ピアニズムのショパンが苦手なもので……)。

大盤振る舞いのアンコールを聴いていて思ったのですが、アンコールはおそらく気に入ってずっと弾き続けている曲ばかりで、おそらく完璧に手の内に入っているのだろうなと。
なので、基本的に余裕がある(もちろん難易度的なこともあるでしょうけれど)。
それはもう色々な側面が見えるというか、深みもあるし可憐さもあって、飄々としたところすら感じられる。
とにかく、表現の引き出し、音色のヴァリエーションがとても多いのですね。
翻って、ショパンの前奏曲はというと、まぁロウな状態であったのだろうなぁと思うわけです。
これはあくまでも想像ですけど、彼はきっとちゃっちゃと器用に曲を仕上げるタイプではなくて、熟成に時間を要するのではないでしょうかね。
ある意味不器用なのかもしれないけれど、私はこういう不器用さは好ましく思います。
ぱっと小奇麗にまとめてしまう人よりも、要領悪く、ある程度時間をかけてみじみじと積み上げていくタイプの方が、最終的には異次元の演奏を聞かせてくれるのではなかろうかと。
実際のところ、アンコールのショパンのノクターンは、ネトラジ、実演等で何回も聴いているけど、今日の演奏が一番しみじみした風情があって良かったと思います。

終演後は、どうしようかなと思ったのですが、結局サインをいただくことにしました。
そんなに人数が多くなかったということもあるでしょうけれど、流れ作業ではなく、しっかり目を見て丁寧に対応してくださいました。
写真よりもずっとキレイというか、姿が良いですね、本当。

今回、本編はロシア系はゼロでしたが、次はスクリャービンあたりを聴きたいものです。

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