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2013年10月

2013年10月26日 (土)

アンデルシェフスキ in 英国

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先月、ぴおとるさんのシューマンのピアノ協奏曲を聴きに行って参りました。
予定が出てからずっと、行きたいけど多分無理だよね~と思っていたんですが、なんか行けてしまった。
まぁそれなりに弾丸ではありましたが…。

さて、ぴおとるさん、今シーズンの初仕事としてフィルハーモニア管の定期にソリストとして登場だったんですが、ロンドンから電車で1時間弱のBaisingstokeという町にあるThe Anvilと、ロンドンのロイヤル・フェスティヴァル・ホールの2公演を聴いてきました。
指揮者はエサ・ペッカ・サロネン。
シューマンのピアノ協奏曲というアナウンスが出てから、本当にシューマンを弾くのかいな、モツコンに化けやしないか、と戦々恐々としておりましたが、プログラム変更無しで、まずはそれが一番の慶事でありました。

2013年9月28日(土)19:45~ The Anvil(Basingstoke)
2013年9月29日(日)15:00~ Royal Festival Hall(London)
Beethoven: Overture, Namensfeier, Op.115
Schumann: Piano Concerto, in A minor, Op.54
Berlioz: Symphonie Fantasique: episode de la cie d'un artiste, Op.14
Piano: Piotr Anderszewski
Conductor: Esa-Pekka Salonen
Philharmonia Orchestra

The Anvilでは、割と早く会場についてロビーでお茶を飲んでいたら、いきなりぴおとるさんがその辺のドアから登場し、びっくらこきました。。。
お声をかける暇(というか隙)は無かったのですが、開演前のぴりぴりした雰囲気は全然なく、ご機嫌良さげでまずはホッとしました。
どうでも良いですが、思いっきり「いつもの服」(グレーのカットソー)でしたよ…。

演奏はというと、個人的にはなんかちょっと釈然としないシューマンであったような。
一音一音、細部をよく突き詰めてあって、そういう意味では実にぴおとるさんらしい演奏だとは思ったんですが、特に一楽章が何となくこなれてないような印象を受けました。
何より、テンポが遅く、冒頭のピアノの入りから「お、遅っ」と思ってしまいました(ただこれは、予習が快速アンスネス版だったということが大きいかもしれず、一般的にはそんなに遅くないのかも)。
不自然なまでに遅いというわけではありませんでしたが、テンポも含め表現の振幅が大きく、各所モリモリ状態なので、どうしても足取りが重く聞こえてしまうところがありました。
弾き飛ばすようなところは全くなく、生真面目なまでに全ての音に意味を付しているものだから、その分ちょっと回りくどいのですよね。
もしかしたらこの人の最大の欠点であるところの(長所でもあるわけですが)、木を見て森を見ず、という面が出たというか。
ちゃんと随所に美しさのある演奏なんですが、ロマンチックな旋律の美しさに身を任せるではなく、リリシズムの中にもどこかもってまわったような、屈折した何かを感じるというか…。
アレは苦闘、煩悶の痕跡、でしょうかねぇ。
正直、ちょっと息が詰まるな。
ぴおとるさんのこういうところって、サロネンさんの音楽性と果たして合ってるんだろうか、、、と不安になってしまいました。
まぁ、指回りの点で若干弾きにくそうなところもあったように思うので(ミスが多いというわけではないもののスムースに流れていかないような)、単にスロースターターなだけかもしれません。
とはいえ、音のキレ自体は悪くなく、2楽章は表現として文句無し(これは想定内)、3楽章はリズム感にぴおとるさん特有のものがあり、生き生きとしたグルーヴ感も感じられ、全体としては決して悪い演奏ではなかったと思います(私が愛情に反比例するかのように辛口になるだけです)。

正直に言うと、ぴおとるさん、この曲好きなのかなぁ、どうなのかなぁ、これだったら別に無理してシューマン弾かなくても、モツコン25番でも良かったんじゃね?などとグルグル思ってしまったんですが…。

なお、いつもの黒ジャケットのボタンがパツパツで変なシワがよりまくりだったのはお約束というか。
あのジャケットが着られなくなったらマジやばいよ、ぴおとるさん。

まぁ、何しろシーズン初日なので早計に判断を下すことはせず、翌日のロンドン公演へ。

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ロイヤル・フェスティヴァル・ホール

前日は2階バルコニーでしたが、この日は最前列、ピアノの(というかピアニストの)真下で聴いて参りました。
だからということは(多分)ないですが、結論からいえば、ロンドンの方が良かったです。
ミスタッチ自体は前日よりもあったように思いますが、全体のイメージとしては折り合いがついてきているというか、こなれてきたように思いました。
単に私の慣れの問題かもしれませんが。
ただ、安易にサラサラ流れていかないのは前日と同様。
何しろ元々多い手数を総動員状態で、軽く弾き飛ばすor弾き流すようなことをせずに、どうかすると一音一音噛みしめるように弾くので、どうしたって爽やかさや清涼感、若さ、あるいはリリシズムとは全然違う方向に向かうのですよね。
まぁ、ピアニシモ、特に高音の響きは格別で、恐るべき純度の高さと言いましょうか、相変わらず彼岸と此岸の中間みたいな音がしましたが。
良くも悪くも手抜きの無い全力投球で、正直ロマン派で一音一音をあそこまでみっしり状態にすると、弾く方も聴く方も疲れるだろうって思いますが、まぁこれは性分だから仕方が無いと思います。

若さで押さない、要所要所で腰の入った演奏で、さすがにそろそろ永遠の青二才から中年オノコになってきたかなぁという印象も。
大人のロマンティシズム、といっても良いかもしれません(むしろハードボイルド、なんだろうか)。
なんとなくミドル・エイジ・クライシスを心配してしまうようなところがあるのよね。。。

なお、この日はオケとしっかりコミュニケートしていて、旋律の受け渡しや掛け合いなども丁寧だし、決め所の和音もダーン!としっかり伴奏に合わせてバッチリ決まり、実に爽快でした。
本人のピアノ自体もですが、オケとの調和も含め、諸々が上手くかみ合い、有機的に機能していたように思います。


ちなみに29日は Salonen 30th Anniversary concert とのことで、サロネンさんのフィルハーモニア管デビュー30周年という大変おめでたいメモリアルコンサートでありました。

終演後にサプライズで流れた映像がこちら↓。

サロネンさんは、1983年、マイケル・ティルソン・トーマスの代役としてマーラーの交響曲第3番でフィルハーモニア管デビューしたそうですが、映像に登場する20代のサロネンさんが本当に若くて(というか、まだ少年ぽい風情)、随所で会場から笑いも起きていました。サロネンさんが映像上映後にいかにも「参ったなぁ」というお顔をされてスピーチを始めたのが大変可愛らしく微笑ましかったです。
会場の雰囲気も和やかで、心温まる終演となりました。
サロネンさん、ますますのご活躍を!

ぴおとるさんはこれでしばらくシューマンのピアノ協奏曲はお休みですね。
じっくり寝かせて熟成、ということになりますかしら。
日本でも聴く機会がありますように。。。


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【浜離宮ピアノ・セレクション】 ニコライ・ホジャイノフ ピアノ・リサイタル

【浜離宮ピアノ・セレクション】ニコライ・ホジャイノフ ピアノ・リサイタル
2013年7月19日(金) 19:00~ 浜離宮朝日ホール

<プログラム>
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 Op.110
ラヴェル:夜のガスパール
ショパン:舟歌 嬰へ長調 Op.60、子守歌 変二長調 Op.57
リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調
<アンコール>
スクリャービン:エチュード No.5
リスト:愛の夢 第3番
リスト/ブゾーニ:モーツァルトのフィガロの結婚の主題による変奏曲
リスト:半音階的ギャロップ


3か月も前のリサイタルですが、各所に書き散らかした感想をまとめておきます。
(明らかに賞味期限切れですが、自分用メモとして)
ニコライ・ホジャイノフ、興味はあるものの生では聴いたことが無かったんですが、お友達からチケットをいただき、ありがたく聴いて参りました。

さて、ニコライ、先のショパンコンクールでは一次予選で素晴らしい演奏を披露して(点数もトップだった)一躍ピアノファンの注目を浴びた若手ピアニストです(確かに、一次の演奏はびっくりするくらい良かったんですが、その分、後のステージの失速ぶりがちと残念でありました)。

ニコライはショパンコンクールでYAMAHAのCFXを弾いて、「YAMAHAってこんなきれいな音が出るのね~」と唸らされたものですが、今回もYAMAHAでした。
昨今、圧倒的にスタインウェイが多いとはいえ、YAMAHAを弾くピアニストも皆無ではないので、生でも何度か聴いてきましたが、今まで聴いた中では、ニコライが一番YAMAHAのポテンシャルを引き出していたように感じました・YAMAHAの(私が思うところの)欠点が出て来にくいというか。
私はスタインウェイとYAMAHAだったら、スタインウェイの方が音に伸びと色艶があって好きなんですが、ニコライが弾くCFXの音は清々しく非常にストレートに響き、YAMAHAの美質がよく出ていたと思います。
ベートーヴェン31番では高音部の響きの抜けの良さが際立つ一方で中〜低音部はイマイチすっきりしないというか、ちょっともやっとしているようにも思いましたが、後半のリストは総じて明瞭だったので、31番については解釈の問題か、本人が左手にやや無頓着なのか、冒頭ピアノが寝てたかのどれかであろうと思います。

とはいえ、31番の嘆きの歌の部分はしっかり表現がつめられている感じで、「若いのにねぇ」と感心いたしました。
ただし、より素晴らしかったのはラヴェルの「夜のガスパール」の「絞首台」の方で、独特の沈鬱な空気、緊張感があり、前半だけではなく全体を通しても白眉の演奏であったと思います。

ショパンの舟歌は、旋律の聞かせ所や勘所は心得えていて間違いなく美しい像を描いていたとは思うのですが、ややポリフォニックな感覚に欠けるという印象でした。
ベートーヴェンでも思ったことですが、全体的に意識が右手に寄っているのか、右手優勢のモノフォニーな音楽の作りになってしまっていました。
ショパンを弾く人はバッハを一生懸命弾かなきゃダメだと思うんですが、内声への関心が少々薄いのでは?と思わせる部分が散見されたように思います。
また、ラストの盛り上げがスムーズに言ったとは言い難く、クライマックスで上手く落とし損ねたような感も。
ただ、この曲を「聴かせる」のって相当に難しく、私はツィメルマンの演奏を生で8回聴いて、正解と思ったのは最後の1回だけです。
ただ綺麗なだけでもダメだし、情緒に流れ過ぎてもいけないし、究極的な美しさの中に独特のアトモスフィア、深みのようなものを付加するのが甚だしく難しい。
難曲だと思います。
舟歌よりも子守歌の方が良いように思ったのは、こちらはモノフォニーなアプローチでOK、ということかな。

リストのロ短調ソナタは、ニコライの鋭利な感覚が全開という感じで、キレの良さ、シャープネスが前面に立つ演奏で、音のダイナミクスレインジが大きくてメリハリが非常に効いていました。
ただ、それがエモーショナルな表現に直結してるかというとどうもそうは思えず、音の物理的な起伏(音量の大小)は伝わってくるのですが、弾き手の感情の動きが汲み取れないような、何を考えて弾いてるのかしらん、と思わせるところがあったというか。
ただ、この辺は単純に私とニコライの相性や波長の問題という気がしなくもありません。
インタビューなどで人となりを知った上で聴けば、あるいは全然違った感想になるような気もします。

ニコライは基本的には技術的によく「弾ける人」なんだろうなと思いましたが、いわゆる超絶技巧を押し出す曲よりも音符が少ない部分の方が表現がよく練られているように聞こえて好印象でした。
少々気になったのは、全体的に右手優勢気味というか、左手のタッチが少し管理不行き届きに聴こえることがあること(ただしこれはピアノのせいかも)。
緩徐部分の高音部の音色の精細さを聴く限り、耳は大層良いでしょうし繊細で鋭敏な感覚や技術もあると思うのですが、細やかさは右手限定なのか?と思うようなところがありました。
基本的にはやろうと思えばなんでもできる技術を持ってるように見受けられたので、もう少し左手が上手いと良いなぁ、、、と、これは無いモノねだりでしょうかね。

31番は、最初、表現・技術面双方において全然悪くないと思いましたが、夜のガスパールやリストのロ短調ソナタあたりを聴いた後に振り返ると、練り上げ方に大分差があるというか、よく弾き込まれて手の内に入ったものではなかったように思います(まぁでも完璧な31番を弾く21歳がいたら本気で気持ち悪いと思うでの、これはこれで構わないと思いますが)。

総じて、超絶技巧バリバリで聴き栄えのする演奏だなぁと感心させられる箇所は多いのですが、あれだけ弾ける割には安定感に欠けるところもあり、決して盤石という感じでもないのは、年齢なりの危うさ、不安定さなのかどうなのか。
老成した深い表現を聴かせるかと思えば、そうでもないところもあり、心技ともに少々アンバランスかもしれません。
あと、辛口なようですが、技巧を売りにするアクロバティックな曲が続くと、やや飽きます。
フォルテの音の引き出しが少ないのかもしれませんが、押せ押せの曲では表現が平板になりがちなところもあったかと思います。
曲芸系を弾けばお客さんは拍手喝采するかもしれないけれど、サーカスみたいな曲ばかりだと荒れて聴こえるし、せっかく繊細さや老成した感覚も持っているのに生かされないと思うので、あまり超絶系路線では押さない方が良いと思うんですけどね。

とまぁ小うるさいことを書き連ねておりますが、ラヴェルの「夜のガスパール」の「絞首台」は大変素晴らしい演奏で、ああいう陰鬱な雰囲気を静かに醸し出せるのはまことに稀有な才能であると思いました。


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