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2013年11月

2013年11月28日 (木)

マレイ・ペライア ピアノ・リサイタル

2013年10月15日(火)19:00開演 すみだトリフォニ―ホール

<プログラム>
バッハ:フランス組曲 第4番 変ホ長調 BWV 815
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第23番 へ短調「熱情」 Op.57
シューマン:ウィーンの謝肉祭の道化 Op.26
ショパン:即興曲 第2番 嬰ヘ長調 Op.36
ショパン:スケルツォ 第2番 変ロ短調 Op.31
アンコール
ショパン:ノクターン 作品15-1、エチュード 作品10-4、エチュード 作品25-1

台風が接近する中、マレイ・ペライアのリサイタルへ。
ペライアは、ここ数年聴きたい聴きたいと思いつつもなかなか日程等が合わず断念してきたのですが、今回やっとタイミングが合いました。
いくつか持っているCDのイメージだとリリカルで軽やかな印象でしたが、さて実演はいかに。

この日は結構空席があり、台風のせいで会場に辿り着けない人がいる、というだけではないような空き具合。
都内でTOCとすみだ2公演だと、すみだは集客的に厳しいでしょうかね。
あと、TOCでS席14000円、すみだでS席13000円というのは、ちょっとチケ代が高いかな、という印象です。
この値段では、いわゆる「ファン」じゃないと色々な意味で厳しい。

さて、演奏。
バッハは落ち着きと明るさ、軽快さの中にナチュラルな歌があり、非常に純度の高い音楽世界という印象を受けました。
特にトリルの洗練された美しさは特筆モノで、これはもうセンスなんだろうな、と。
熱情は意外なほどにスケールの大きい熱演で、雄々しいベートーヴェンでした。
シューマンも骨太な演奏で、どこか健康的にも響き、その分陰影に欠けるというか、ファンタジーやある種の危うさといったシューマンらしさ欠けるかなという印象。
楽しそうではあって、明るいお祭りといったところかしら。
おそらくペライアさんは人柄が良くてらして、あまり屈折したところが無いのろうだと思ったりもしました(実際はどうだか存じ上げませんが)。
実は、ここまでは極めてハイクオリティだとは思うものの、こう言ってはなんですが感心はすれど感動はしない、みたいな感じで、うーん、ピクリとも心が動かされないなぁ、、、と、やや頭を抱えてしまったのですが、ショパンは実に良かったです。
私は基本的にはショパンだったらポーランド系の人が良いと思っていて、それはリズム感やルバートの問題等色々あるんですけれど、その辺は我ながらかなり保守的だと思います。
なので、特定の人以外のショパンはわざわざ聴きたいとは思わないんですが、ペライアのショパンは聴いていてとても気持ちが良いものでした。
ペライア、ショパンがとても合っているんじゃないかと思うんですよね。
音の粒立ちとレガートの美しさが際立ち、リズムも節回しもとても自然で恣意的なところが無く、流麗な中に内声がよく聞こえてくる立体的な演奏でした。
スケルツォはちょっと粗いところも散見されましたが、全体的にエレガンスとパッションのバランスがちょうど良いショパンという印象で、雄渾なところもありつつ品を損なわないところがとても好ましかったです。
そういう意味で、アンコールがショパン3曲だったのも嬉しかったです。

ペライアだったらオール・ショパン・プログラムでも大歓迎です。
普段だったら、あまりショパンばかり突っ込まれると客に媚びてる感満載で胡散くさーと思ってしまうんですが(すみませんね、口が悪くて)。
あ、オール・バッハ・プログラムも聴いてみたいかも。

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ラドゥ・ルプー ピアノ・リサイタル

2013年10月14日(月) 19:00 いずみホール

ラドゥ・ルプー(p)
、プログラム>
シューマン:子供の情景 op.15
      色とりどりの小品 op.99
シューベルト:ピアノ・ソナタ 第20番 イ長調 D959(遺作)

去年、兵庫でルプーを聴こうとしたらキャンセルされてしまいまして、今年は大阪でリヴェンジ。
なんで大阪かっていう突っ込みは受け付けません(まぁTOCの都合が合わなかったってだけですが)。

前半のシューマンは、「子供の情景」は、どこか遠い国のでき事を聴いているかのようでした。
距離的な遠さ、あるいは時間的な遠さを感じさせる、どこか回顧的でもあるような、遠いということを慈しむような、そんな遠さ。
この遠さこそがシューマンのロマンティシズムなのかもしれない、などと思いました。
「色とりどりの小品」は、シューマンの霊感のあり様、つまり、インスピレーションが楽曲中、どこにどう降りてきたのか、みたいなことが目に見えるような気がしました。
随所で光が明滅するかのような、そんなシューマン。

シューベルトは、まさに至福の時間でした。

ああそういえば私はピアニシモフェチでした。
そうでした。
なんかもうそこら中地雷ならぬツボだらけで本気で悶え死ぬかと思いました…。
でも音が綺麗とかそんなことも瑣末事に思えてくる、シューベルトの妙なる世界が延々と広がっていました。
地平線を見渡せるような、茫漠とした音楽の景色。

ルプーのシューベルトは、天上と地上、どちらにあるのか。
どっちとも言い難い、なんとも不思議な情景なのですが、どちらかといえば天上に属するように思いました。
天上的に聴こえる部分も多々ある一方で、シューベルトという一人の人間の思考、感情の断片を丁寧に積み重ねている、そんなイメージの演奏だったように思います。
断片は断片のままに、シューベルトの感情の発露そのままに、一人の人の子の有り様をあるがままに示すように。

ルプーの語り口はとても自然で柔らかいのだけれど、随所に魔法が宿っていたように思います。
そういえば、風貌も魔法使いのようでした。
ルプーを語る時によく「リリシスト」という言葉が登場しますが、リリシズムという言葉では軽すぎるように思います。
というよりも、あの音楽に対しては、形容する言葉自体が陳腐なものになってしまうような。
どういう言葉を選んでも形容し切れないようなもどかしさ、言葉の無力さ、みたいなものを感じます。

アンコールは思いがけず2曲、シューマンの森の情景から「予言の鳥」と「別れ」。
ドイツの森はおそらくは禍々しいところがあるのだろうと思うけれど、ルプーの描く森は、賢者の住まう森ではなかろうか。
神秘の森。

余談ですが、ルプーのシューマンを聴きながら、(アンコール曲がかぶりまくりということもありつい比較して)私の大好きなぴおとるさんってばやっぱり青二才だよなぁとツラツラ思ったりもしたりして。
いや、良いんですよ、永遠の青二才で。
まぁ二十年後にルプーみたいになってくれたりしたら、かなり幸せだろうと思いますが。
ルプーは今年67歳なので、技術がどうのというのは野暮な気がするのですが、なんというか、実に理想的なお年の重ね方をされているようにお見受けいたしました。

ぴおとるさんの「予言の鳥」は、ぴーんとした緊張感があったな。
若干不穏なとこもあるような、何が起こるんだろう、と思わせる感じ。
異形の鳥。
ルプーの予言の鳥は、ふわっとしていてつかみどころがありませんが、悪いことは起きない気がします。
あれは祝福の鳥かな。
祝いと呪いは紙一重、予言も解釈次第、そんなことが脳裏に浮かびます。
予言の鳥というものは、ただそこ(森)に在るだけで、それをどう捉えるかは人間次第なのかしら…そんなことを考えてしまった夜。

どちらの演奏が良い、ということではありませんが、この夜の「予言の鳥」は優しくも霊妙であったなぁ。
ルプーが弾き終わると、夢から覚めたような感覚がありました。

やはりマジカル、の一言に尽きました。

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フランク・ペーター・ツィンマーマン ヴァイオリン・リサイタル

フランク・ペーター・ツィンマーマン ヴァイオリン・リサイタル
2013年10月7日(月)19:00開演 東京文化会館・大ホール
ヴァイオリン:フランク・ペーター・ツィンマーマン
ピアノ:エンリコ・パーチェ
<プログラム>
J.S.バッハ:ヴァイオリン・ソナタ第1番 BWV1014 ~第6番 BWV1019(全6曲)
アンコール
バッハ:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 第6番 ト長調 BWV1019a(BWV1019の異稿)第4楽章

こちらも当日で。
当日券は結構余裕ありだったかな?
都民劇場だから会員が多かった&年齢層も高めだったように思いますが、もっと若い人が気軽に当日券で聴きに来られれば良いのに、と思ったりもしました。
(というか、ヴァイオリン科の学生は是非聴くべきでは……)

全体的な印象は前日のトッパンと概ね同じです。
とはいえ、感動が薄れるということもなく。
いや、凄いね、FPZ。
全ての音があるべきところに完璧に収まっているような説得力と安定感。
この日は一階の脇の方で聴いていたけれど、音量的には意外とちゃんと聴こえてきました。
ただし響きは相当デッドでした。
ここはピアノには良いけれど、ヴァイオリンはちょっと、ですね。
会場の音響に豊潤さが無いので、残響が生み出す響きの「旨み」には欠けるのは、まぁ致し方ないところでしょう。
ただ、ヴァイオリンの音色自体は意外なほどに綺麗に、柔らかく聞こえてきました。
本当に良い音で楽器を鳴らしますねぇ。
無駄な負荷が一切かかっていない鳴り方、でしょうか。

FPZの音楽性は正当的かつ王道であるがゆえに、一見優等生的で中庸のようにも聞こえますが、優等生と言ってしまうにはあまりにも、一音一音に確固たる意志と必然性が宿っています。
FPZは冒頭から、丁寧で真摯なアプローチにより、観客を一気に作品世界に引き込む見事な求心力を見せます。
個々のフォルムも全体の設計も実に堅牢ですが、そこに厳しさや冷たさはありません。
そして精錬された音の連なりの中に時折見せるフッと力を抜くような瞬間、ある種の「緩み」、が、思いもかけぬ笑顔のようで大変魅力的です(一種のツンデレ?)。

とにもかくにも、まっすぐにバッハに肉薄しよう、あるべきバッハを追究しようと、至高の何ものかに向けて邁進する演奏家のひたむきさ、しなやかな強さを感じる演奏だったと思います。
「正しさ」というものは、正しいが故に時に息苦しいものでもありますが、「他人を追いつめない正しさ」というものがあるとすれば、FPZのバッハはそういう類のものであろうと思います。
優しい人は強い、そんなフレーズが思い浮かぶ演奏でありました。

個別の曲については、とりわけ2番では、音楽にまっすぐに切り込んで、怯むことも遅れることもないFPZの明るさ、精神の健やさが音楽に現れ出ていたと思います。
4番2楽章の三声のフーガの巻き具合、最終楽章でラストに向けてグングン盛り上げていく様は実に見事。
この楽章が全体のベストだったかな。
6番の最終楽章もFPZの茶目っ気がこぼれ出た快演でした。

こう言ってはなんですが、イケメン・ヴァイオリニストでない分、時々可愛げがあったり(注:演奏が)時々超絶オトコマエ(注:演奏が)だったりすると、心底ぐっとくるのですよねぇ。

いやいや、本当に楽しかった&堪能しました。
ありがとう、FPZ&エンリコさん。
またこの組み合わせで来日してくださいませ。
お待ちしております。

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フランク・ペーター・ツィンマーマン(ヴァイオリン)

フランク・ペーター・ツィンマーマン(ヴァイオリン)
2013年10月6日(日)15:00開演 トッパンホール
フランク・ペーター・ツィンマーマン(ヴァイオリン)
エンリコ・パーチェ(ピアノ)
<プログラム>
J.S.バッハ: ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 全6曲
第1番 ロ短調 BWV1014/第2番 イ長調 BWV1015/第3番 ホ長調 BWV1016/
第4番 ハ短調 BWV1017/第5番 ヘ短調 BWV1018/第6番 ト長調 BWV1019
アンコール:
J.S.バッハ:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第6番 ト長調 BWV1019aより 第4楽章

割と直前に行くことを思い立ったのですが、トッパンでFPZでは当然Sold Out。
まぁでもめげずに、当日チケットがあることもままあるので(戻りチケットとかそこは色々あるんでしょう。もちろん当日券が出ないこともあります、念のため)、行ってきました。
結論からいうと、無事チケットゲット。
いつもながら細やかな対応で、感謝感謝。

ピアノはエンリコ・パーチェさん。
こちらのCD、DVDでもおなじみの共演者です。

B0020LSX42Sonatas for Violin & Piano Bwv 1014-1019 [DVD] [Import]
J.S. Bach Pace Zimmermann
Medici Arts 2009-06-29

by G-Tools

B000RO8T7KBach: Violin Sonatas
Johann Sebastian Bach
Sony Bmg Europe 2007-12-02

by G-Tools

バッハのソナタ集はフランク=ペーターだけではなくエンリコ・パーチェさんのピアノも素晴らしいので、エンリコさんのピアノも生で聴ける!と本当にワクワク状態でした。

前半終了時点で、もう溜息。
はー、もう文句のつけようが…。
フランク=ペーター、力みのない、端正かつ生き生きした演奏で、過不足の無い、卓越したバランス感覚の持ち主ですね~。
エンリコさんのピアノも、鈴を転がすようなエレガンスを体現。
そして、前半も良かったけれど、後半はさらに凄かったです。
ケレンや虚飾の無い、それでいて人間味や温かみのあるバッハに満たされた幸せ空間でした。
演奏はもちろんすごく端正で美しいんですが、決して天上の音楽ではない、というのがミソだったかと。
この世に在りながら俗っぽさや雑味とは無縁、という、人の世の至高の領域、ともいうべきバッハだったのでは
FPZの音楽って、基本的には「ああドイツ」と思わせる、非常に生真面目な作りで、地に足の着いた音楽でもあるんですが、同時に軽さも柔らかさもあり、決して四角四面に非ず、なのが最大の魅力ではないかと思います。
彼はすごくマジメで真摯な人なんだろうと思うのですが、基本的には陽性だし茶目っ気もあるよね、という感じで、音楽にも愛すべきキャラクターーがにじみ出ているように感じます。

演奏技術という点では、FPZは緩急の付け方が非常に上手く、特に緩徐楽章から速い楽章にかけては空気が一変します。
速い楽章のここぞというところでの追い込みや畳み掛けにも抜群のキレを見せます。
特に5番の2楽章の集中度の高さには目を見張るものがあり、完全に別次元に連れていかれた感がありました。
それにしても、FPZは途轍もなく上手い、です。
鬼のように上手い。
バカウマ。
右手は死角無しだし、シャキッとした音もフワッとした音も自由自在、音の減衰のコントロールも完璧なボウイングに痺れました。
音程の正確さもいうに及ばず。
特に和音の音程が素晴らしい~(きちんと合っている、のさらにもう一段上をいく合い方をしている。倍音が良く鳴っているんじゃないだろうか)。
まじめに、この人が今一番上手いんじゃないでしょうかね。
そして、単に上手いだけではなく、音楽への誠実な姿勢と、今まさに音楽が生まれてきているような新鮮さがあります。
文句のつけようがありません。

そして、楽しみにしていたエンリコ・パーチェのピアノ。
表情に富み、イタリア人らしく歌心が豊かで、それでいて決して大仰ではなく、音色にはどこか清々しさがあり、ピュアな透明感も漂います。
上品で典雅な雰囲気もあり、こじんまりとした空間が良く似合いますね。
エンリコさんのピアノは、FPZのきちんとした、それでいて器の大きい伸びやかな演奏と実に好相性でした。
この組み合わせでバッハというのは本当に僥倖といえるのではないでしょうか。
ドイツ的な堅牢な構築美とイタリアらしいロマンチックな歌心の融合、というと、ちょっと単純に過ぎるかもしれませんが、なんとも素晴らしいケミストリーでした。

終演後はお二人揃ってのサイン会がありました。
とても和やかで、お二人ともアハハウフフと気さくにお客さんと色々お話をされてました。
フランク・ペーターさんは良い人オーラ全開。
とってもチャーミングで、あちらから握手して下さって、久々に舞い上がりましたわ、ワタクシ。
お手手ほわほわでしたよ。
エンリコさんもお声が渋くてカッコよくて、本当に素敵でした。
ああイタリア男。

そんなわけで、つい翌日の東京文化も行ってしまったのでした……。

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ちょっとした近況

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雑雑とした呟きとか、仕事の愚痴とか、後に残したらマズイだろうなという壊れた叫びとか、そういうコーナーです。
従って、ここで書いた内容は、保存はせず内容は日替わり、コメントも受付しません。
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ブログの更新が滞りがちで、、、コンサート感想もたまりまくり。
よろしくないですね。
というわけで、連投。
遅ればせながらで申し訳ないですが(もはや読んでる方がいるのか、という気もするのですが)、記録ということで。

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