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2013年11月28日 (木)

ラドゥ・ルプー ピアノ・リサイタル

2013年10月14日(月) 19:00 いずみホール

ラドゥ・ルプー(p)
、プログラム>
シューマン:子供の情景 op.15
      色とりどりの小品 op.99
シューベルト:ピアノ・ソナタ 第20番 イ長調 D959(遺作)

去年、兵庫でルプーを聴こうとしたらキャンセルされてしまいまして、今年は大阪でリヴェンジ。
なんで大阪かっていう突っ込みは受け付けません(まぁTOCの都合が合わなかったってだけですが)。

前半のシューマンは、「子供の情景」は、どこか遠い国のでき事を聴いているかのようでした。
距離的な遠さ、あるいは時間的な遠さを感じさせる、どこか回顧的でもあるような、遠いということを慈しむような、そんな遠さ。
この遠さこそがシューマンのロマンティシズムなのかもしれない、などと思いました。
「色とりどりの小品」は、シューマンの霊感のあり様、つまり、インスピレーションが楽曲中、どこにどう降りてきたのか、みたいなことが目に見えるような気がしました。
随所で光が明滅するかのような、そんなシューマン。

シューベルトは、まさに至福の時間でした。

ああそういえば私はピアニシモフェチでした。
そうでした。
なんかもうそこら中地雷ならぬツボだらけで本気で悶え死ぬかと思いました…。
でも音が綺麗とかそんなことも瑣末事に思えてくる、シューベルトの妙なる世界が延々と広がっていました。
地平線を見渡せるような、茫漠とした音楽の景色。

ルプーのシューベルトは、天上と地上、どちらにあるのか。
どっちとも言い難い、なんとも不思議な情景なのですが、どちらかといえば天上に属するように思いました。
天上的に聴こえる部分も多々ある一方で、シューベルトという一人の人間の思考、感情の断片を丁寧に積み重ねている、そんなイメージの演奏だったように思います。
断片は断片のままに、シューベルトの感情の発露そのままに、一人の人の子の有り様をあるがままに示すように。

ルプーの語り口はとても自然で柔らかいのだけれど、随所に魔法が宿っていたように思います。
そういえば、風貌も魔法使いのようでした。
ルプーを語る時によく「リリシスト」という言葉が登場しますが、リリシズムという言葉では軽すぎるように思います。
というよりも、あの音楽に対しては、形容する言葉自体が陳腐なものになってしまうような。
どういう言葉を選んでも形容し切れないようなもどかしさ、言葉の無力さ、みたいなものを感じます。

アンコールは思いがけず2曲、シューマンの森の情景から「予言の鳥」と「別れ」。
ドイツの森はおそらくは禍々しいところがあるのだろうと思うけれど、ルプーの描く森は、賢者の住まう森ではなかろうか。
神秘の森。

余談ですが、ルプーのシューマンを聴きながら、(アンコール曲がかぶりまくりということもありつい比較して)私の大好きなぴおとるさんってばやっぱり青二才だよなぁとツラツラ思ったりもしたりして。
いや、良いんですよ、永遠の青二才で。
まぁ二十年後にルプーみたいになってくれたりしたら、かなり幸せだろうと思いますが。
ルプーは今年67歳なので、技術がどうのというのは野暮な気がするのですが、なんというか、実に理想的なお年の重ね方をされているようにお見受けいたしました。

ぴおとるさんの「予言の鳥」は、ぴーんとした緊張感があったな。
若干不穏なとこもあるような、何が起こるんだろう、と思わせる感じ。
異形の鳥。
ルプーの予言の鳥は、ふわっとしていてつかみどころがありませんが、悪いことは起きない気がします。
あれは祝福の鳥かな。
祝いと呪いは紙一重、予言も解釈次第、そんなことが脳裏に浮かびます。
予言の鳥というものは、ただそこ(森)に在るだけで、それをどう捉えるかは人間次第なのかしら…そんなことを考えてしまった夜。

どちらの演奏が良い、ということではありませんが、この夜の「予言の鳥」は優しくも霊妙であったなぁ。
ルプーが弾き終わると、夢から覚めたような感覚がありました。

やはりマジカル、の一言に尽きました。

終演後は、楽屋口に結構な列ができていたのですが、なんと簡易サイン会が。
間近でお顔を拝見したいという誘惑に負けて、思わず並んでしまった……。
気難しいという噂もあり、いかめしい方かと思いきや、失礼ながら、素顔は子供のような表情をされるなぁと。
邪気が感じられないというか。
この方にしてあの音楽か、と納得。
ちょっとクマさんのようでもありました。

遠路はるばる大阪まで行って良かった!
2年連続で来てくださって大感謝です。

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