内田光子 ピアノ・リサイタル
内田光子 ピアノ・リサイタル
2013年11月5日[火]19:00開演 水戸芸術館
<プログラム>
J.S.バッハ:〈平均律クラヴィーア曲集 第2巻〉から第1番 ハ長調 BWV870、第14番 嬰ヘ短調 BWV883
シェーンベルク:6つの小さなピアノ曲 作品19
シューマン:森の情景 作品82
シューマン:ピアノ・ソナタ 第2番 ト短調 作品22
シューマン:暁の歌 作品133
アンコール
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調 作品27の2 〈月光〉 より 第1楽章
バッハの平均律2番1番は響きがやや朴訥で、14番とのタッチの対比が際立つ演奏。
シェーンベルクは繊細を極め、調性を失った後に広がる、全く別種の美しく緊張感に満ちた音の風景が広がっていました。
とても聴き応えのある演奏でした。
シューマンは、時に力強く、時に神秘的に、透明感と共に森の情景を描写。
シューマンが思い描いたのは(当然)ドイツの森なんだろうけれど、ドイツの黒い森というよりは、日本の森なんじゃないかなぁ。
それも樹海とかではなくて、私は連想したのは、京都の糺の森。
余談ですが、シューマンのソナタの第二楽章で時計のアラームを長々と鳴らした人がいまして。
まぁそれ自体は珍しいことではないんですけど、アラームが鳴ったのが私の席の近くで、弾きながら内田さんがこっちを向いたんですよね。
「だーれーだー」というよりもむしろ「うらめしや~」という感じで、ほとんどなんとか怪談のようでした……。
シューマンのソナタ2番はサントリーの感想で色々書いたので詳細は割愛しますが、4楽章の盛り上がりは見事でした。
続く「暁の歌」はソナタの興奮を鎮めるかのようにじっくりと演奏されました。
随所に光彩が宿っていて、精神の昇華を静かに見守るような気分で聴いておりました。
精神を病む直前の束の間の安寧とみるか、これをもって永遠への旅立ちとみなすか。
いずれにせよ切ない気分にさせられますが、たとえ一瞬でも、このような音楽を生み出すひと時があったということは晩年のシューマンにおいて幸せなことではなかったかと思ったりもしました。
アンコールはまさかの「月光」ソナタ一楽章。
仄暗い月光に身を浸すような体験でありました。
内田さん、60代半ばですが、年齢よりもお若い感じだな。
風貌もですが(笑うと少女のよう)、演奏も。
これくらいの年齢になると、晩年様式に突入という方も多いと思いますが、内田さんは違う。
弛まず緩まず、本当に強靭でいらっしゃると感じました。
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