クリスチャン・ツィメルマン ピアノ
2014年1月23日(木)19:00開演 フィリアホール
【11月22日(金)延期公演】
<プログラム>
ベートーヴェン:
ピアノ・ソナタ第30番ホ長調Op.109
ピアノ・ソナタ第31番変イ長調Op.110
ピアノ・ソナタ第32番ハ短調Op.111
これも大分時間が経ってしまいましたが、今回のツアーの最終日だし、記録として残しておきます。
あのサントリーの名演の後に何をどう弾くんじゃい、最悪燃え尽きているのでは?(失礼な)とも思ってましたが、最終日に相応しい良いコンサートでした。
サントリーより少しほどけた感じで、ずっと芳醇でまろやかな音楽になっていたかと。
座った場所もホールの音響も異なるので、単純な比較はできませんが、この日は今ツアー最高のピアノの響きを堪能いたしましたよ。
現代ピアノで、響きそのもので語るベートーヴェンの後期ソナタ、という方向性であれば、まさに極北だったのではないかと思います。
30番はとてもロマンチックで伸びやかな演奏でした。
この日の極めて豊麗な(ピアノの?ホールの?両方?)響きも相まって、さらなる幻想味が加わっていたような。
譬えていえば、まるで仙境で遊ぶような、融通無碍ともいうべき演奏でした。
ベートーヴェンって美しいんだ、という事実にも改めて気づかされました。
ツィメルマンさんのすごいところは、音響にとことん拘りつつも、無機的にも表層的にもならず、人工的(アーティフィシャル)な冷たさとは一線を画すところ。
そして、響きや音色とエモーションが分かちがたく連動するところでしょうか。
そういえば、ツィメルマンの場合、この人一体何考えて弾いてるんだろう?って思うことがほぼ無いのですよね。
そういう意味で、とても主観的。
この日は舞台に近い右バルコニー(まぁいつもの席ってやつですが)で聴いてましたが、とにかく場所が良かったです。
特に高音の響きが極上だったんですが、ピアノの蓋の中で色んな音がたゆたっていて、まるで池の中で魚が泳いでいるのを眺めるような感じ。
そして、池の中から、飛魚が跳び上がるかのように、あるフレーズがポーンと浮き上がるのが目に見えるようでした。
32番は、一楽章は(いや、二楽章も一部。ジャジーなところとか)割とガシャガシャしてるなぁという印象は無きにしもあらずでしたが、最後までたどり着いてみれば、ちゃんと落ちたなと。あ、ちゃんと終わったなって思ったんですよね。
一つの物語の終わりを目撃したような気分。
いや、むしろ憑き物が落ちたような感じといえば良いでしょうか。
終わりよければ全てよしというわけではありませんが、とても後味の良いコンサートでした。総じてハッピーなベートーヴェンだったか思いますが、それは底が浅いということではなくて、精神の強靱さがもたらす類の、そして何らかの到達点に辿り着いた結果のハピネスだったのではないかと思います。
結局、今回のツィメルマンは5回行ってしまった…。
最初はあまりやる気が全然無くて、繁忙期だしせいぜい2回くらいか?と思っていたんですが、なんでこうなってしまったのかしら(とじっと自分の手を見る)。
まぁでも腰痛&延期騒ぎからこっち、色々と気を揉んだりしましたが、良い形で終わって良かったなーとしみじみ思います。
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