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2015年11月30日 (月)

WEEKEND PIANO SERIES 休日に燦めくピアノの響き クリスチャン・ツィメルマン

WEEKEND PIANO SERIES 休日に燦めくピアノの響き クリスチャン・ツィメルマン
2015年11月29日(日)17:00開演 所沢ミューズ アークホール

オール・シューベルト・プログラム
7つの軽快な変奏曲 ト長調
ピアノ・ソナタ 第20番 イ長調 D959
ピアノ・ソナタ 第21番 変ロ長調 D960

ツィメルマンの所沢公演、皆勤賞更新中です。
2006年、2007年(クレーメルとのデュオ)、2009年、2010年、2012年、2013年、そして今回2015年。
いやはや、我ながら偉い、というか酔狂と思う。。。

さて、所沢ミューズ公演、まぁなんだ、色々ありました。
まず、隣の人が前半盛大に寝こけてて、寝息がやかましくて辛かったというのが一つ。
寝るなとは言わんが、うー、結構耳障りだったんですよねぇ。
起きたと思ったらチラシをバサバサ落とすし、色々残念な感じでした。
あと、21番の2楽章で、1階中央あたりで尋常じゃない大いびきをかく人あり。
ホールの方も大分バタバタしていたけれど、結局最後までいたのかな?
終演時には救急車が来てましたが、大丈夫だったんだろうか…。
あとは鈴を鳴らす人がいたり、アメの袋を開けるガサゴソが響き渡ったりで、なんだかんだと集中できず。

さて、プログラムは、シューベルトの軽快な7つの変奏曲、ソナタ20番(D959)、21番(D960)。
1曲めは、素朴で愛らしい主題が美しく伸びやかに、時に哀愁を帯びて、軽やかに、そして典雅に、表情豊かに変奏していきます。
いきなりソナタの大曲から始まるより、この一曲でお互いウォーミングアップした方が良い、という感じでしょうかね。
枕というかクッションというか。
まぁでも、枕でも何でも、こういうなんてことない曲を(前座色濃厚とはいえ)「聴かせる」ことができるのは、ツィメルマンさんの類稀な美音、音のクラリティあってのことだろうと思います。

なお、所沢ミューズは響きが大層芳醇ですが、締まりの無い響きではないというか、非常にすっきりとした響き方をするホールで、ツィメルマンのピアノとも実に好相性だと思います。
7つの変奏曲でも、ホールの響きと上手く折り合いをつけている印象がありました。

20番では響きに幻想性が加わり、とても夢幻的でした。
テンポはやはり速めでさくさくした印象もありましたが、旋律から旋律への流れ、曲想の個々の塊の間の繋がりはすこぶる良好で、曲が有機的に流れていく様子が目に見えるような印象がありました。
曲が上手く流れていくと、あわせて時間の流れみたいなものも感じられて、それ故に、連続する物語のようにも感じられるという側面があろうかと思います。

20番は取り留めない印象もありますが、そんなわけで、この日は流れが自然で、今私はどこにいるんだろう?と思う瞬間が無く、聞こえてくる旋律にそのままついて行けば大丈夫、というような安心感がありました。
ニュアンスの豊かさは言うに及ばず、エモーション、気分の移り変わりも繊細かつ明瞭に描写されており、色々な意味で聞き手を迷わせない演奏だったと思います。

全体的にウェットな方向に流れず、テンポが粘ることもあまり無く、むしろ軽さが天に向かうような明るさがありました。
曲としての流れの自然さ、全体のまとまりの良さが際立つ分、最終楽章の楽想の断絶に非常に大きなインパクトがありました。
奏者も聴き手も、シューベルトの思考の流れとふとした停滞、精神のぼっかりとあいた空白のようなを見つめる瞬間、あるいは作曲家の心の深淵を覗き込むような時間であり空間であったと思います。


後半はシューベルトの21番。
やはりテンポは速めですが、冒頭の優しく穏やかな主題は、雑念が削ぎ落とされて澄みわたった精神が目の前に立ち現れる、そんな趣でした。
長調から短調に切りかわり、時に転調し、メランコリーや哀愁もにじみ。
明から暗、暗から明へといった、気分の移り変わりが丁寧に描写されていきます。

1楽章は、音楽が広大な地平に広がっていき、そしてまたスタート地点(主題)に戻ってくる様子が丹念に提示されます。
寄せては返す波のように、少しずつ姿を変えながら拡大と収束を繰り返す楽想。
行きつ戻りつする音楽に身を委ねながら、ああこれは旅なんだな、と、ふと気が付きます。
旅というよりはむしろ、紆余曲折する人生を今まさに体験しているのだなと。

2楽章は、作曲家の内面世界に深く沈みこんでいくかのようであり、あるいは、悲しみを抑制して歩みを進める様子を眺めているようでもありました。
やがて曲想は暗から明に移り変わりますが、明るさに希望と強さを感じると同時に、どこか切なさを覚えます。
3楽章は軽快な愛らしさに満ち、ツィメルマン本人も楽しそうでした。
4楽章は諧謔、軽快さの合間に高揚と激情を見せつつ、収束します。
でも、必ずしも大団円、めでたしめでたしという風にも聴こえないのですよね。
人生という旅は、そんなに単純なものではないよ、とでも言いたげな。
その辺がベートーヴェンとは決定的に違うところかな。
個人的には、ベートーヴェンの曲の英雄的な有り様よりは、大分親近感が沸くような気がします。


次は名古屋です。

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