ミハイル・プレトニョフ 協奏曲の夕べ
協奏曲の夕べ
2016年7月1日(金) 19:00
東京オペラシティ コンサートホール
スクリャービン: ピアノ協奏曲 嬰ヘ短調
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ラフマニノフ: ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18
皆さま、お久しぶりです。
しばらくブログ休眠状態でしたが、今月のプレトニョフがなかなか衝撃的だったので、なんとなくまとめておこうかなと。
多忙なこともあって、協奏曲とリサイタル、どちらにしようかなぁと迷ってとりあえず協奏曲に行ったのが7月頭。
協奏曲を2曲聴いて、これは何が何でもリサイタルも行かねばなるまい・・・と決心し、なんとかオペラシティに行って完璧に降参、勢いで翌日の東京文化会館にも行き、ついでに週末の豊田市コンサートホールまで遠征するという大事に。
予想外に、ミーシャ祭りに入ってしまいました。
いやだってTOCがホント凄かったんですもん。。。
協奏曲は、席のチョイスが若干悪くてピアノが聴きづらく、若干欲求不満に。
2Fバルコンでしたが、もうちょっとピアノの蓋が開いている方の延長線上に座るべきだったなと。
あと、オケもちょっと鳴らし過ぎだと思いましたが。
スクリャービンのピアノ協奏曲は初めて聴きました(すみません)。
スクリャービン、プレトニョフと相性が良い作曲家だろうとは思っていましたが、思った通り。
初っぱなから、マジカルな音の響きに心臓鷲掴み状態でした。
精彩な響きのコントロールと、音色の色彩感といった、プレトニョフ最大の美点が存分に発揮されました。
ラフマニノフの2番は、分散和音から始まり、全体的に重厚さがあまり感じられない解釈。
メロディの美しさが際立ち、音楽の流れも流麗ながら、どこか冷ややかさもあるのがプレトニョフ流、でしょうか。
ベタに甘い、情緒的な演奏に慣れている身としては、なんとも不思議な印象もありました。
やっぱり普通じゃないよね、この人。。。
オケはごくオーソドックスな演奏でしたが、ピアノとオケの奏でる音楽がもう別物。
どのくらい別物かというと、全く違う音楽が同時に鳴ってるような気がするくらい。
拍がズレてるとかそういうことではなくて、そもそも指揮者&オケとピアニストが見てる世界が違う、ということなんだろうと思うのですが。
リハはしているんでしょうけれど、プレトヨフの独特のフレージングにオケがすぐに反応できるものでもないのでしょうね。
プレトニョフはその変のギャップはどこ吹く風という感じで、悠然とやりたいようにやってる、という風に見えました。
技術的には、プレトニョフの全盛期(ピアニスト引退前)の演奏を基準にしてしまうと、やや晩年様式か?と思うようなところもなくはないですが、メロディアスで甘美、それでいてどこか突き放した感もある演奏は、やはり唯一無二のものだと思いました。
この突き放したような感じ、ある意味とりつく島が無いようにも聞こえますが、プレトニョフは独特の歌い回しを織り交ぜながら、旋律の美しさをクリアに浮き上がらせていました。
とことん繊細な弱音のコントロールは見事としか言いようがなく、特に中高音域の響きの麗しさはもはやマジックの領域。
いかにもロマン主義的な感情、パッションの発露とは一線を画したスタイルで、演奏を通じて奏者の感情の動きを読みとるのは非常に困難ですが、出てきた音楽の「形」が、とにかく素晴らしい。
ちっとも感情移入できないのに、どうしてこんなに心動かされるのだろうか、と思います。
音楽の極めて純粋な形、奏者によって注意深く練磨された類い稀な美しさに触れることによる感動、ということになるんだろうと思います。
アンコールはラフマニノフのエレジーop.3-1でした。
リサイタルに続く。
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