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2017年11月

2017年11月19日 (日)

ハンブルク・バレエ ニジンスキー 2017年10月15日(日)@バーデン・バーデン

ニジンスキー3日目、17:00開演。

キャスト表(1日目と同じ)。
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ニジンスキー:アレクサンドル・リアブコ
ロモラ・ニジンスキー:カロリーナ・アグエロ
ディアギレフ:イヴァン・ウルバン
ブロニスラヴァ・ニジンスカ:パトリシア・フリッツァ
スタニスラフ・ニジンスキー:アレイシュ・マルティネス
タマラ・カルサーヴィナ:シルヴィア・アッツォーニ
ニジンスキー(道化、薔薇の精):アレクサンドル・トルシュ
ニジンスキー(金の奴隷、牧神):Marc Jubete
ニジンスキー(ペトルーシュカ):Konstantin Tselikov
レオニード・マシーン:Jacopo Bellussi


ニジンスキー最終日。
ただただ素晴らしかったです。
改めて、このキャストで見られたことに、ダンスの神様に感謝しました。
作品としてはまだ理解し切れてない所は多々ありますが、これから色々知っていくにつれて面白さも感動も深まっていくんだろうな。
名作が名作たり得るのは、そういう耐久性みたいなものだと思うんですよね。
(ニジンスキーの「遊戯」とか「ティル」とか、もう少し勉強しようっと・・・)

サーシャのニジンスキーは登場時からショパンの前奏曲ハ短調まで、他を寄せ付けない異様な空気をまとっていました。
シューマンはシューマンで、踊り自体はとても端正なのに、どこかイッちゃっていて、表情なのかな、むしろ行き過ぎた踊りの端整さがそう思わせるのかな。
踊りの綺麗さは、本当に哀しくなるほどで、完璧で破綻の無い美しさが、「神との結婚」という言葉を想起させます。

イヴァンは、立ってるだけで素敵なディアギレフであることよ(いやもちろん踊っても素敵なんだけど)。
ホント絵になりますなぁ。
で、やっぱりイヴァンのディアギレフには、ニジンスキーへの愛があるわけですよ。
シェエラザードのシーン、バラの精はニジンスキーとディアギレフの蜜月の象徴かなぁと思いました。
なお、トルシュは薔薇の精がやっぱり良かったです。

金の奴隷のMarc Jubeteは中々見栄が良いダンサー。
シェエラザードってゾベイダと金の奴隷と王の三角関係の話なわけで、ロモラと金の奴隷(ニジンスキー)を引き離すディアギレフを見て、そもそもニジンスキーって盛大な三角関係の話だということに思い至った次第。
(その場合は、ゾベイダ=ニジンスキー、王=ディアギレフ、金の奴隷=ロモラ、という構図か?)
三角の面子は、シーンごとに少しずつ変わるけれど。

ニジンスキーのソロ、ディアギレフとのPDDは、共に(芸術的に)何かを作り上げることと、その葛藤を表してるようでした。
途中までは二人三脚だけどやがて道が別れていくのが見える。
ニジンスキーが何かを思いついたような表情をして、ディアギレフは引き止めるんですが、結局2人の関係性は元には戻らない、ということ。
この何かを思いついた部分が牧神の午後の前奏曲の前衛的なアイディアで、牧神の午後の誕生と、2人の関係の変化が重ね合わされているように見えました。

ロモラとニジンスキー、船上の場面。
美しいシーンなんだけど、どこか食い違ってる2人。
このシーンで牧神が介在するのも、これ単に綺麗な恋愛話じゃないよね、と思わます(何しろ、牧神の午後って、牧神がニンフにフラれて最後自慰に耽る話なわけだし)。
有名人と結婚したいロモラとエロスに惹かれたニジンスキーのめくるめく一時というところかな。

ロモラとニジンスキー、ハッと我に返るニジンスキーとか、結婚式で呆然とする(サーシャの方がトルシュよりも、表情の変化の時間が長い)ニジンスキーとか、サーシャは「ズレ」の表現に容赦が無いなぁと思いました。
カロリーナのロモラは、悪意は無いけど牧神にとらわれてニジンスキーの本質を見ていない感じが、彼女の雰囲気に合っていたと思います。

2幕。
ペトリューシュカとロモラの不倫が鏡合わせになっています(ペトリューシュカも、ペトリューシュカと踊り子とムーア人の三角関係の話)。
ペトリューシュカは劇中で密室に閉じ込められるシーンがあるけれど、ニジンスキーの出口の無い孤独、恐怖のメタファー。
そこに発狂した兄スタニスラフの記憶と第一次世界大戦が重なって、この辺の追い詰められた悲痛な表現は、サーシャの真骨頂でしょう。

ニジンスキーが兄スタニスラフと同化して高笑いするシーン、ハルサイで椅子に立ってカウントするシーン、渾身の演技というフレーズすら生易しく感じられるサーシャの全身全霊の表現(そして結構声が通る)。
2幕は一人の人間が壊れていく、あるいは狂気と正気を行き来するのを固唾を飲んで見守る感じでした。

ロモラとニジンスキーのPDDでは、2人の見ている世界がもはや違っていて、ニジンスキーは相当壊れてきていて痛々しかったです。
ラストのスヴレタ・ハウスでは、登場時は壊れきっているけれど、踊る前にこちら側に少し戻ってくる感じ。
サーシャの、この辺の狂気の段階的な演じ分けが、上手すぎて寒気がするレベルでした。
最後ニジンスキーがこちら側に戻ってくる契機は、決してロモラではなく、ディアギレフや子供時代の思い出だというのがキツイなぁ。
ロモラ、なんだかんだ言って精神の壊れた夫を見捨てることなく側にいたのになぁ、と切なくなるシーン。
でも、ニジンスキーは、正気の最後の砦でもあった思い出とも決別して、最後の「戦争」を踊るわけです。
ここはもう、劇場中が息を飲んで最後を見届ける、という雰囲気でした。
サーシャの、凄みのある、というより凄みしかない表情が、今でも目に焼き付いています。

終演時は、踊り終えたサーシャが結構ゼーゼーいってるのが聞こえてきたました。
この日は「戦争」で使う赤い布の翻りが大きくて、視覚的にもとても見応えがあったけど、狂気の縁に立ったニジンスキーと完全に同化したようなサーシャの前では、そういうことも些末なことに思えてしまいました。
感動したとか面白かった、というよりも、本当に凄いものを見たな、というのが一番正直な気持ちです。


というわけで、ニジンスキー3公演@バーデンバーデン、とても充実した遠征旅でした。
今までのバレエ遠征の中でも、群を抜く内容の濃さだったような。
しばらく遠征しなくても大丈夫(多分)。
でも、バーデンバーデンはご飯は美味しいし温泉もあるしで、とても楽しい街だったので、機会があればまた行きたいです。

あとは、今夜のNHKプレミアムシアターのニジンスキーを見るぞ!(何とかレビュー書き終わってよかった・・・)

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ハンブルク・バレエ ニジンスキー 2017年10月14日(土)@バーデン・バーデン

バーデン・バーデン、ハンブルク・バレエのニジンスキー、2日目(10/14)感想。

2日目はアレクサンドル・トルシュが主演。
サーシャ目当てではありましたが、せっかくなのでキャスト違いも見に行きました。

キャスト表
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ニジンスキー:アレクサンドル・トルシュ
ディアギレフ:エドウィン・レヴァツォフ
ロモラ:シルヴィア・アッツォーニ
ブロニスラヴァ・ニジンスカ:Lucia Rios・ヘイルマン
スタニスラフ・ニジンスキー:アレシュ・マルティネス
タマラ・カルサーヴィナ:Xue Lin
 
ニジンスキー(『謝肉祭』のアルルカン):クリストファー・エヴァンズ
ニジンスキー(『ばらの精』):クリストファー・エヴァンズ
ニジンスキー(『シェエラザード』の黄金の奴隷):マルセリーノ・リバオ
ニジンスキー(『牧神の午後』の牧神):マルセリーノ・リバオ
ニジンスキー(ペトルーシュカ):Konstantin Tselikov

レオニード・マシーン: Leeroy Boone


キャストが変わって、初日とは全然別の話みたいでした。
トルシュのニジンスキーは、外見も中身も若いです。
というか、幼い感じで、才能はあるけれどそれ以外は子供、みたいな役作りかな。
踊りは柔和で、ちょっと中性的な雰囲気があります(なので、初日の薔薇の精は合ってたと思う)。
線が丸くて、エッジが鋭い感じではなく、柔らかい感じがちょっとバリシニコフを思わせます。

レヴァツォフのディアギレフは傲慢というか酷薄というかで、ニジンスキーのと間にある感情は一体何なのか、と思ってしまうところがありまして。
ディアギレフがニジンスキーに対してかなり支配的、威圧的で、支配する/されるの、ネガティヴな関係に見えました。
初日のイヴァン・ディアギレフとサーシャ・ニジンスキーの間には素直に愛があって、むしろニジンスキーとロモラとの関係の方がよほど屈折してる印象だったので、あれれ?と。
2日目を見ての比較になりますが、イヴァン・ディアギレフとサーシャ・ニジンスキーの組み合わせは、この2人ならではのケミストリー、ポジティヴな関係性があったと思うんですよね。
いかがわし過ぎない色気があったのも良かったなぁ。。。

2日目、ロモラとの出会いのシーンは、割とシンプルなboy meets girl風。
華奢で少女っぽいシルヴィア・ロモラと、少年のようなトルシュ・ニジンスキーの組み合わせで、2人の物語が、あまり打算とかいやらしさを感じさせない、綺麗な愛の物語になってる感がありました。
シルヴィアのロモラは、さすがにトルシュよりもオトナな感じではありましたが、手練手管を駆使してニジンスキーを誘惑する、などという風には当然ならないわけで。

初日の方が牧神がそこにいる意味が納得できる感じで、ニジンスキーがあまりロモラを見ていない感じがあって、牧神によってフェティッシュあるいは性愛の部分がフィーチャーされてたのかな、と。

2日目は、牧神が恋の訪れを象徴しているような印象。
恋の熱狂が去って我に帰るニジンスキーと、牧神が去っていくのがリンクしているような。

ニジンスキー、割と単純に恋が燃え上がって(ディアギレフからロモラに乗り換えて)結婚したはいいけれど、それがディアギレフにバレて怯える、というのがいかにも世間知らずな天才っぽいなぁと思いました。

兄スタニスラフのアレシュは三日連続(お疲れ様・・・)。
ペトリューシュカのシーンがあって兄、そしてハルサイという流れですが、ペトリューシュカはもう少し見せ場になっても良いかな、と思いました(これはダンサーの力量によるような気がする)。
まぁ、盛り上がりの山が2つあって、兄のシーンでグンとテンションが上がって、ピークでハルサイに突入という流れは、それはそれで良かったです。

シルヴィアのロモラは健気で、ロモラとニジンスキーのPDDは切なかったです。
トルシュは全体的に、狂気そのものというよりは、怯えや困惑、恐怖といった、狂気に至る原因の方が前に出てる感じがしました。
サーシャは逆に、常に狂気をはらんでいて、それがグラデーション的に現れる感じ。

2日目は、冷静に見られたらこともあり、その分全体がよく見えたのは良かったです。
どうしても初日との比較になりますが、2日目は主役が牽引というよりは総合力で見せる感じではあったかな。
ロモラの部分が綺麗な愛の物語になっていて(これはシルヴィアによるところが大きかったでしょう)、それはそれでありだろうと思います。

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ちょっとした近況

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雑雑とした呟きとか、仕事の愚痴とか、後に残したらマズイだろうなという壊れた叫びとか、そういうコーナーです。
従って、ここで書いた内容は、保存はせず内容は日替わり、コメントも受付しません。
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12月からこちら、仕事がド修羅場につき、沈没しておりました。
年末年始のご挨拶など諸々失礼しており、申し訳ありません(陳謝)。
忘年会も新年会も全部断り、2月頭まで休みもひたすら?仕事してたので、ご寛恕ください。。。

2月はちょっとだけマシになりましたが、ただ今年度末進行まっただ中です。
日本の年度末が憎い…(今の職場にいる限り、バーデンバーデンのイースター音楽祭はどうあがいても行けそうにありません)。

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2017年11月17日 (金)

ハンブルク・バレエ ニジンスキー 2017年10月13日(金)@バーデン・バーデン

先月、バーデン・バーデンまで、ハンブルク・バレエのニジンスキーを見に行ってきました。
(これがあったので、10月が結構ハードスケジュールでした…)

タイトル・ロールのニジンスキーは、ファーストキャストがアレクサンドル・リアブコ(サーシャ)。
サーシャさん、マイ・フェイバリット・ダンサーで、とにかくサーシャでニジンスキーを見たい!と思いつめ、バーデン・バーデン・ツアーの3公演目がけて遠征とあいなりました。
10/13(金)、10/14(土)、10/15(日)の3公演のうち、サーシャは初日と楽日に主演で、サーシャ・ニジンスキーで2回見られて幸せ~でした。
(キャストが出たのは直前で、大体2週間前だったので、大分ヤキモキさせられましたが、無事見られて良かった良かった)

いや、来年2月にハンブルク・バレエがニジンスキーをひっさげて来日するのは重々承知しているんですが、どうもその時期の仕事状況が怪しくてですね、行けるかどうか微妙な雲行きなんですよね。
まぁ、近場でやってても行けないというのはままあることなので、ナマモノは行ける時に行ける所で見る、というのが私の基本モットー。
ここは腹をくくって、えいや!と行ってきました。

会場はバーデン・バーデンの祝祭劇場(Festspielhaus)。
Festspielhaus HP

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10/13のキャスト表。
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ナマモノは、当日のキャスト表を見るまで安心できませんが、いやー、サーシャがちゃんと載っていて本当にほっとしましたよ。。。

<キャスト>
ニジンスキー:アレクサンドル・リアブコ
ロモラ・ニジンスキー:カロリーナ・アグエロ
ディアギレフ:イヴァン・ウルバン
ブロニスラヴァ・ニジンスカ:パトリシア・フリッツァ
スタニスラフ・ニジンスキー:アレイシュ・マルティネス
タマラ・カルサーヴィナ:シルヴィア・アッツォーニ

ニジンスキー(道化、薔薇の精):アレクサンドル・トルシュ
ニジンスキー(金の奴隷、牧神):Marc Jubete
ニジンスキー(ペトルーシュカ):Konstantin Tselikov


ストーリー(NBS ハンブルク・バレエ ニジンスキーより引用)---
1919年1月19日、スイス、サンモリッツのスヴレッタ・ハウス・ホテルのホールで行われた、稀代の天才ヴァスラフ・ニジンスキーの最後の公演。
舞台はニジンスキー自身が「神との結婚」と呼んだその公演から始まり、いつしか彼の記憶と幻影の中へと分け入っていきます。
20世紀のはじめ、東方ロシアからやってきて、ヨーロッパの芸術界と社交界をあっという間に魅了した伝説の〈バレエ・リュス〉。
その花形スターだったニジンスキーが人々を熱狂させた「シェエラザード」「ばらの精」、彼の革新的な創作の才能をあらわにした「牧神の午後」「遊戯」……。
第1幕は、ニジンスキーの分身たち、あるいはニジンスキー自身がこれら伝説の作品の断片を見せながら、バレエ・リュス時代の創造的で華やかで波乱に満ちた彼の人生が巧みに重ねられ、語られていきます。
第2幕は〈バレエ・リュス〉を追われたニジンスキーに、第一次世界大戦の恐怖が押し寄せるさまが描かれます。
ニジンスキーの鋭敏な神経はさまざまな幻影を生み出し、ついには兵士たちと、ニジンスキーが演じたキャラクターたち──黄金の奴隷やばらの精、ペトルーシュカらが共に踊り狂う壮絶な「戦争」のダンスに発展。混とんとして悲愴なニジンスキーの心の世界へと観る者を飲み込んでいきます。
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開演前にピアニストさんが舞台の上でずっと曲を弾いてます。
練習してますって感じの演奏(写真は開演前)。
最初はずっとシューマンで(曲は色々)、そのうちショパンになります。

ニジンスキーは、既存の曲を組み合わせて使用していますが、使用楽曲は以下の通り。
バーデンバーデンは生演奏ではなく、録音でした。

ショパンの「前奏曲ハ短調」
シューマンの「ウィーンの謝肉祭と道化」
リムスキー=コルサコフ 交響組曲「シェエラザード」
ショスタコーヴィチ 「ヴィオラとピアノのためのソナタ」第3楽章
ドミートリ・ショスタコーヴィチ 「交響曲第11番」(副題「1905年」)

細かくはもうちょっとあるんですが(開演前に弾いてる曲とか、シェエラザードやショスタコの楽章の演奏順とか)、大体こんな感じです。


序幕、ニジンスキーが最後に踊ったスプレッタ・ハウスのシーンから始まります。

物語の冒頭でショパンが入るのは(開演前もピアニストが弾いてる)、ニジンスキーがポーランド系だということを示唆しているのかなと思います。
シューマンは、ニジンスキーも狂気(統合失調症)の淵に沈んだ芸術家という共通項ゆえのチョイスなのかな、、、と。

ニジンスキーが踊るショパンの前奏曲は、世界にたった一人で立つ天才の孤独と絶望の叫びのように見えました。
シューマンの「ウィーンの謝肉祭の道化」は、一転して躁的で明るいけれど、いつ壊れるか分からない危うさが垣間見えます。
この2曲がニジンスキーのキャラクターを強烈に印象付け、これから始まる物語を暗示しています。

もうサーシャはですね、いくら褒めても褒めきれない感じで、、、上手い凄い痛々しい上手い凄い痛々しい(以下エンドレス)みたいな感じでしたよ。
天才の狂気がテーマの「ニジンスキー」、凄絶という言葉がこれほど似合う作品も無いと思いますが、サーシャは、「うわ、ここに北島マヤがいる…」と思わせる徹底した没入っぷりで、何かが憑依しているかのようでした。
もう、サーシャ以外のニジンスキーが想像できない、というか、受け入れられそうにない。。。

イヴァンのディアギレフは、さすがの存在感でした。
良いだろうと思っていましたが、期待通り!いや期待以上にダンディでカッコいい~(というか、実際のディアギレフとは似ても似つかない男前っぷりで、こんなにカッコ良くしちゃって良いのかコレ、、、とちょっと思った)。

ニジンスキー、ロモラ、ディアギレフ、三者の関係性がこの作品の一つの軸だと思いますが、そこにニジンスキーが演じた役(金の奴隷、牧神など)がさまざまに交錯していきます。
ニジンスキーとディアギレフより、ニジンスキーとロモラの方がより愛憎劇の色合いが強いような印象でした。

兄スタニスラフのアレシュ(マルティネス)はハマり役でした。
アレシュ、最近は随分顔が大人になったなーと思っていたら、ザ・少年!でした。
躍りが上手いのはもちろんなんだけれど、何かを突き刺すような鋭さとパワーがあって、無垢と狂気のコントラストが鮮烈でした。
ローザンヌ・バレエ・コンクールで課題曲にもなっているヴァリエーション、この作品の一つの見どころにもなっていました。

そして、やはり後半の「春の祭典」のシーンが圧巻でした。
ノイマイヤーのガラでも見ていますが、全幕で見ると前後の繋がりが良く分かって、兄スタニスラフからの流れも実に見事だと思わせます。
とにもかくにも、このシーンはショスタコの交響曲11番がドンピシャですね。
ハルサイの振付や衣裳は、ニジンスキーが振り付けたものとは全然違いますが、ちょっとベジャールっぽいのかな、ショスタコの音楽とも違和感がありません。
ハルサイといえばもちろんストラヴィンスキーなんですが、いやもうこっちの曲(ショスタコ)で良いんじゃないかと思ってしまうほど、完璧な「もう一つのハルサイ」になっていました。
第一次大戦と重ね合わされているのも、説得力があります。

ハルサイのシーンの、舞台袖から(本作中は舞台上の椅子の上から)カウントするニジンスキーがもう、悲痛そのもので痛々しい。
実際のハルサイ初演時の実際のエピソードをもとにしたシーンですが、ダンサー=他人に声が届かない、すなわち世界と自分のいる層がズレている、ということを暗示しているのだろうと思いました。

最後はスヴレッタ・ハウスに戻り、ニジンスキーが最後に踊った「戦争」で終わります。
壊れかかったニジンスキーが、人前で踊るために、僅かにに残る正気をかき集めて、自らの全てを出し尽くし、その結果狂気の縁に沈んでいった、とも見えなくもない終幕。
ニジンスキーの狂気に満ちた手記は、これの直後に書き始まるという事実が何とも胸に迫ります。


サーシャはじめ、ダンサーももちろん素晴らしかったんですが、作品の力に圧倒されました。
ニジンスキーは本当に名作だと思います。
ニジンスキーという人についての知識はある程度あった方が良いと思いますし、バレエ・リュスの引用が多いので、バレエ・リュスの演目をある程度見ていることが必要だろうと思いますが、予習をしっかりして挑む価値のある作品です。
とにかく楽曲の選曲が良いし(ノイマイヤーの作品では、椿姫と双璧ではないかしら)、構成、舞台美術も素晴らしいです。
人間の深部に迫る作品でもあり、演劇が好きな人なんかが見ても面白いだろうと思います。


なお、ハンブルク・バレエのニジンスキー、今年の5月のハンブルク公演がNHKプレミアムシアターで放映されます(!!!)ので、皆さま是非ご覧ください。
サーシャでニジンスキーの映像を残してくれまいかノイマイヤー先生、、、と思い続けてン年でしたが、ついに念願が叶いました。。。(感涙)

全力でお勧めします。


11月20日(月)【11月19日(日)深夜】午前1時00分~
◇本日の番組紹介
◇ハンブルク・バレエ『ニジンスキー』
【5.1サラウンド】

◇ハンブルク・バレエ「ニジンスキー」(1:02:30~3:18:00)
<演 目>
バレエ「ニジンスキー」(全2幕)
音楽:前奏曲 ハ短調 作品28 第20 ショパン 作曲
ウィーンの謝肉祭の道化 シューマン 作曲
交響組曲「シェエラザード」から リムスキー・コルサコフ 作曲
ビオラ・ソナタ 作品147から ショスタコーヴィチ 作曲
交響曲 第11番 ト短調 作品103「1905年」 ショスタコーヴィチ 作曲
振付・照明・舞台美術・衣装:ジョン・ノイマイヤー

<出 演>
ヴァーツラフ・ニジンスキー:アレクサンドル・リアブコ
ロモラ・ニジンスキー(ヴァーツラフの妻):カロリーナ・アグエロ
ブロニスラヴァ・ニジンスカ(ヴァーツラフの妹):パトリシア・フリッツァ
スタニスラフ・ニジンスキー(ヴァーツラフの兄):アレイズ・マルティネス
セルゲイ・ディアギレフ(興行師):イヴァン・ウルバン
エレオノーラ・ベレーダ(ヴァーツラフの母):アンナ・ラウデール
トーマス・ニジンスキー(ヴァーツラフの父):カーステン・ユング
タマーラ・カルサヴィナ(バレエダンサー):シルヴィア・アッツォーニ
レオニード・マシーン(若いダンサー):ヤコポ・ベルーシ ほか
ハンブルク・バレエ団

収録:2017年5月25・27日 ハンブルク国立歌劇場(ドイツ)

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2017年11月14日 (火)

第100回定期演奏会 レヴィ×アンデルシェフスキ  東欧・ロシア音楽の魅力

PACオケ

兵庫県立芸術文化センター

兵庫県立芸術文化センター


2017年10月7日(土)、8日(日)
開演 15:00 (開場 14:15)
会場 芸術文化センター KOBELCO大ホール

コダーイ : ガランタ舞曲
バルトーク : ピアノ協奏曲 第3番
プロコフィエフ : 「ロメオとジュリエット」組曲 (抜粋)

アンコール(両日)
●ソリスト
バルトーク:3つのチーク県の民謡
●PAC
チャイコフスキー:「白鳥の湖」より“ハンガリーの踊り”


兵庫芸文で、アンデルシェフスキのバルトークp協3番を聴いてきました。
公演は6日(金)、7日(土)、8日(日)と3日連続だったんですが、さすがに金曜日はパスして、土日の2日間で。
ナメてかかって出遅れたら、週末の関西はホテルが混み混みで、押さえるのが大変でしたが。。。


相変わらずピアノのことしか語りませんが、悪しからずご了承を。

まず7日(土)。
甚だ意志の強いピアノで、終始揺るがず弛まず。
奏者のやりたい通りに音楽が鳴っている感じで、曲がすっと聴き手に届いてきます。
リズム感が非常に鋭利で、説得力抜群(さすがハンガリー語話者?と思わせる)。
全体、骨太・強靭な印象ながら、2楽章は思索的で、静謐な宗教音楽の趣でした。

ぴおとるさん超目の前の席で、まぁ特等席ではあったんですが、本人が弾きながら歌ってる声が結構聞こえてきて、若干音楽に集中できず、というアレな状況。
いくら好きでも、本人に近けりゃ良いというものでもない、ということが良く分かりました。
もう2、3席右側、本人ではなくてピアノの真下がベストかな、という気も。


翌日、日曜日。
全日はピアノの真ん前で音響も何もあったものではありませんでしたが、今日の席は右バルコンで、全体が把握できて良かったです(その分ピアノの細部は聞こえませんでしたが)。
兵庫芸文、ホールの印象としては、残響はあるけどややドライ?
ちょっと色気が無いというか。
悪いわけではないと思いますが、良いかと言われるとうーん、みたいな。
あと、ちょっとハコ(空間)が大きいですかね。

バルトークは、やはり、2楽章が印象的で、現世にそっとお別れを告げるような、透明感のある音楽でした。
3楽章のフーガはさすが歯切れが良くて男前。
総じて、ぴおとるさんのリズム感やアクセントの付け方がオケより数段シビアだなと思いました。
オケとピアノ、ちゃんと対話にはなっていますが、キャラが等価かというとそうでもなくて、エッジがちょっと丸いオケに、ピアノが鋭く斬り込んで音楽の輪郭をクリアにする形だったかなと思います。

ハコの大きさを考慮したピアノの鳴らし方なんだろうなぁ、、、と思う部分が多少ありまして。
ダイナミクス・レインジは大きいし、響きも締まってるけど、音色の多彩さ、精妙さからいえば、前回フルシャとやった時の方に軍配があがるような気がしました。
あの時は神演奏だったと思いますが。。。

などとブツブツ言ってますが、おそらくこの曲も、ぴおとるさん的にハズレ無しな曲なんだろうと思います。
安定してハイクオリティなレパートリーではないかと思うので、機会があればまた聴きたいです。

北九州のリサイタルはパスしたので、これにて秋のぴおとる祭りは終了。

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2017年11月13日 (月)

ピョートル・アンデルシェフスキ ピアノ・リサイタル

くらしきコンサート

第102回くらしきコンサート
「ピョートル・アンデルシェフスキ ピアノ・リサイタル」
2017年10月3日(火) 午後7時開演
倉敷市芸文館

プログラム
モーツァルト  幻想曲 ハ短調 K.475
モーツァルト  ピアノ・ソナタ 第14番 ハ短調 K.457
ショパン  ポロネーズ 第7番 変イ長調 op.61「幻想ポロネーズ」
             * * * * *
ヤナーチェク  草陰の小径にて 第2集
J.S.バッハ  イギリス組曲 第6番 ニ短調 BWV811
 
アンコール
ショパン  マズルカ ハ短調 op.56 NO.3
ショパン  マズルカ ロ長調 op.56 NO.1
ショパン  マズルカ イ短調 op.59 NO.1

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8月から10月にかけて公私ともに移動しまくりだったんですが、結構キツかったのがこの倉敷。
このすぐ後の週末の兵庫(バルトークのピアノ協奏曲3番)に行く気満々だったこともあり、倉敷は正直行かなくても良いかな、、、(どうせ来年の3月にリサイタルで来るし)と大分迷ったんですが、せっかく休みが取れたので、行ってきました。

結果的には大正解。
日頃なんだかんだと口煩いファンでごめんなさい、な私ですが、もう文句無しに良かった!!!です。
近年稀に見る素晴らしさで、個人的ぴおとるさん史では一二を争うレベル。
一番は2011年サントリーですが、方向性は全く違えどそれに匹敵するくらい素晴らしかったです。

いやー、本当に頑張って行って良かった…。
こういうことがあるものだから遠征は止められません。
別に東京公演だから演奏が良いってわけでも無いし(もちろん中央だと気合いが入る可能性は高いですが)、いつどこで大当たりコンサートに遭遇するか分からないんですよね。

あまりにも素晴らしいものだから、モーツァルトではやたら幸福感に包まれ、もうこの世にピアニストはこの人だけで良いやと思ってしまいました。
もちろん、冷静に考えればそんなことは無いんですが(あの人もこの人も好きだ)、この時は本気でそう思ったんですよね。
バッハでは、無神論者のクセに、これは神様が何かご褒美をくれたのかな?私最近何か善行おこなったっけか?などと埒もないことをツラツラ考えてしまう始末。
いやでも本当に、音楽の神様ありがとう。


モーツァルトの幻想曲。
極小のピアニッシモの凄み。
ピアニッシモも、極めると恐いということが分かる。
前に聴いた時よりドス黒さは減じていましたが、音楽が完璧に手の内に入り、表情も起伏もここまで突き詰められるのか、という演奏。
間(ま)がとても印象的で、予想よりも気持ち(一呼吸)長め。
そこに空間が生まれる妙。
2次元ではなく、3次元の音楽。

私は黒アンデルさん、白アンデルさんと言ったりするんですが、この日は白アンデルさん降臨の日でした。
ものすごく集中はしていたけれど、骨身を削るような切迫した感じではなく、どこか明るさやポジティブなオーラがあって、まったき音楽に触れている感がありました。

それにしても、モツソナ14番の手の込みようといったらなかったです。
一楽章は緊張感が漂い、二楽章では極限まで音量を絞って、薄い氷の上を歩くような繊細さ。
フレーズフレーズ、一音一音とことん考え抜かれていて空恐ろしいほど。
それでいて、音楽は、今まさに生きて、滔々と流れている。
この両者(精巧な作り込みと、その結果の即興性とでも言いましょうか)が両立してしまうのが、ぴおとるさんの稀有なところなんですよね。

ショパンの幻想ポロネーズ。
これもまた鬼のような、限界に挑戦するようなピアニッシモで、音を、旋律を細心の注意を払いながら紡いでいましたが、聴きどころはピアニシモだけではなく。
大きく取られた間(ま)は、小宇宙的な雰囲気を醸し出します。
静けさの音楽かと思いきや、明暗のコントラスト、感情の振幅はとても大きく、哀切を湛え、毅然としていて勇ましくもあります。
幻ポロは、基本的に起承転結が分かり難く、とらえどころの無い曲だと思うので、聴き手に素直にああ良い曲だなと思わせるのは結構難しいような気がします。
この日の演奏は、幻想曲風の型や枠を逸脱するような雰囲気を帯びつつも、存在の確かさというのかな、しっかりした軸を感じさせる、説得力を備えた名演だったと思います。

幻ポロに関してはおそらく滅多にないことだと思いますが、もう、単純に感動したというか、グッときたというかで、ああこりゃ名曲だなって素直に思いましたね(結構泣きそうだった)。

あと、技術面が大分ブラッシュアップされたのか、苦手なのかな?と思っていた箇所も無事にクリアされててホッとしました。

以前聴いたものとは、外見も中身もなんだか別物のようでしたね。
やっぱりワンシーズン弾きこむと、技術面、表現面ともに大分違うんだろうなぁと思いました(まぁこの両者は両輪の輪みたいなもので、技術面が上がると表現面も深まるということはあるんでしょうけれど)。

ヤナーチェクの草陰の小径にて第2集。
安定のヤナーチェク、もはや十八番の域ですね。
ぴおとるさんって絶対、まんまこういう人だよねー以上、みたいな演奏でした。
風のようで、強靭で、くるくる表情が変わって、しなやかで、時々不条理で、でも一本芯が通っている。
演奏は人なり、だと思うんですが、どうでしょう。

バッハのイギリス組曲6番。
私この曲ピョートルさんで聴くの多分6回目ですが、本当によく弾き込んであるなーとしみじみ感動。
ヤナーチェクから拍手なしでプレリュードに突入、スラヴの超インナーワールドあるいは個人的なモノローグ的世界から、厳格なバッハの小宇宙へ一変。
これは見事な切替でした。

プレリュード、ゆったり深々と進む導入も素晴らしいけれど、テンポアップしてからが白眉。
キレキレノリノリで、実に鮮やか。
対位法の縦横無尽の応酬で、壮大な大伽藍が完成するのを見るよう。
全く隙が無く、息もつかせぬ押し押しモードのあまりのカッコよさに、思わず惚れ直しました

最後のジーグまで全く緩まず、でしたが、数年前(サントリー)の人を殺せそうな壮絶な終曲とはかなり別物でした。
音楽のフォルムの甘さを排除するストイシズムや、攻めるところは攻める攻撃的な面はありつつ、終始、これは今日は機嫌が良いよね、と思わせる明るさ(本人比)がありました。

この辺の明るさは、ある種の余裕なのかもしれないし、円熟と呼ぶべきものなのかもしれません。
以前の壮絶かつギリギリな感じのバッハもインパクト大だし、ぴおとるさんしか成しえない世界だとも思うけれど、今回は今回で大変に素晴らしいと思いました。
謹厳さと伸びやかさ、ガッチリとした構築美と縦横無尽の運動性など、明と暗、プラスとマイナス、相反する要素が見事に並び立っていて、それは見事なバッハでありましたよ。

アンコールはショパンのマズルカ3曲。
大サービスですね。
どんだけ機嫌良かったんだろ。
ピョートルさんのマズルカ、私は好きですけど、アレ、普通に良いんだろうか?とも思ってしまったのは、リズム感の部分。
二曲目はリズムの取り方(アクセント)が大分珍しい感じだったような。。。

なお、ショパン・マズルカのop.56とop.59は、昨シーズンのプログラムで幻想ポロネーズと合わせて弾いていた曲です。

北九州のリサイタルは諸般の事情でパスしましたが、もう完璧に満足しきったので、全然悔いは無かったです。
むしろ上書きしたくなかったので良かったかなと。


兵庫のバルトークに続く。

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2017年11月11日 (土)

Chopin and his Europe Festival

Chopin and his Europe Festival
26 Aug. 2017 20:00

公式サイト:26 August 2017

Piano recital
Warsaw Philharmonic Concert Hall
Piotr Anderszewski(piano)
Apollon Musagète QuartettApollon Musagète Quartett

プログラム:
Andrzej Panufnik String Quartet No. 2 'Messages'
Leoš Janáček On an Overgrown Path II
Fryderyk Chopin Polonaise-Fantasy in A flat major, Op. 61 Op. 61
Wolfgang Amadeus Mozart Piano Concerto in A major, KV 414 (cameral version)

Dscf6052_r

今年の夏は、念願のポーランドへ。
本命の用事は別にあったのですが、いつか行きたいと思っていたワルシャワの夏のショパン祭り(Chopin and his Europe)に寄ってきました。
結構長丁場の音楽祭で(今年は8/12-8/30)、若手から大御所(シモン・ネーリング、エリック・ルー、チョ・ソンジン、オールソン、プレトニョフ、アルゲリッチ等)まで錚々たるメンバーが集うので、しばらくワルシャワに滞在してコンサート三昧も良いだろうと思ったんですが、今回は諸般の事情で一つだけ。

今回のおめあてはアンデルシェフスキでしたが、ショパンコンクールが行われるワルシャワのフィルハーモニーホールは、ピアノクラスタ的には一度は行きたい場所。
さすがに雰囲気も音響も素晴らしかったです。
席は7列目くらいでやや右でしたが、音が上を素通りする感じは全くなく、非常に良好な音響で満足。

謎だったのが、なぜか廻りはフランス人ばかりで、皆さん、パリから追っかけてきてるのかしら???と、ちょっと不思議な感じでした。

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ピアノ・リサイタルだとばかり思っていたら、弦楽四重奏と一緒というやや変則的なコンサートで、あれ、いつ変わったのかな???と(それとも最初からそうで気がつかなかっただけかしら・・・)。

そして、曲順変更で、弦楽カルテットの後にいきなり幻想ポロネーズでした。
これが、凄かった。
こんなに繊細、玄妙で、しかもスケールの大きな幻ポロ、ピョートルさんに限らず、初めて聴きました。
ホールの音響のせいか楽器のせいなのか、ピアノがとにかくよく鳴るなぁと。
以前聴いて腑に落ちなかったところも、しっかり詰められているというか、ピースがピタピタとはまっていた印象です。
危ない箇所もありましたが、ああいうガラの大きいショパンなら、荒ぶる演奏も説得力があリます。

ヤナーチェクは安定のヤナーチェク。
ヤナーチェクってお国物だっけ?(違います)というくらいしっくりくる演奏。
ppからffのダイナミクスレインジの幅が非常に広く、音の階調、彩度も多彩。
どこか不可思議な印象もある曲調を、実に神秘的に紡いでいて、こういう普通ではない雰囲気を「自然に」出すのは、アンデルシェフスキの右に出る人はなかなかいないのではないかと思います。
アンデルシェフスキの場合、ことヤナーチェクに関しては、基本的にハズレの演奏を聴いたことがありません。

モツコン12番の室内楽版(コントラバスも有)、これもバッチリ隙無くハマっていました。
ショパン祭りだけど、ショパンは口実というか、メインはどうやらこっちではなかろうかと。
甘過ぎないモーツァルト。
なかなか貴重なものを聴いたな。

アンコールはショスタコーヴィチのピアノ五重奏曲の3楽章。
全く緩みのないギュッと締まった演奏で、リズムの刻みがカッコ良かったです。
ショスタコ、ピアニスト的にはお好みではないのでは?と思っていたけれど、意外や意外、男前度の高い、グイグイ前に出る演奏でした。

夏のワルシャワはとても気持ちが良いので、ピアノ好きには特にお勧めの音楽祭です。

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