カテゴリー「Pianist: Krystian Zimerman」の215件の記事

2016年12月 5日 (月)

Happy Birthday Mr. Zimerman !!

Happy 60th birthday to the greatest pianist of our age.

Thank you for always making such amazing music and for making my life colorful.
I hope you have a wonderful day, and this is the beginning of your greatest, most wonderful year ever!!


12月5日はツィメルマンさんのお誕生日ですね。
ツィメルマンさん、お誕生日おめでとうございます。
60歳におなりですね。
還暦か~、感慨深い。
どうぞ、健康で豊かな1年をお過ごしください。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年12月 6日 (日)

Happy Birthday Mr. Zimerman !!

5th December was Krystian Zimerman's birthday.

Happy belated birthday, Mr. Zimerman !!
Wishing you joy, success and happiness in life!

I am looking forward to the next concert in Nagoya, and more.

まだヨーロッパは5日だし、と思ってのんびりしてたんですが、ツィメルマンさん、ツアー中で日本にいらっしゃるんですよね。
というわけで、遅ればせながら、お誕生日おめでとうございました。
12月5日に59歳におなりですね~。
健康で幸せな1年をお過ごしいただければ、と思います。

来週、名古屋に参りますです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年11月30日 (月)

WEEKEND PIANO SERIES 休日に燦めくピアノの響き クリスチャン・ツィメルマン

WEEKEND PIANO SERIES 休日に燦めくピアノの響き クリスチャン・ツィメルマン
2015年11月29日(日)17:00開演 所沢ミューズ アークホール

オール・シューベルト・プログラム
7つの軽快な変奏曲 ト長調
ピアノ・ソナタ 第20番 イ長調 D959
ピアノ・ソナタ 第21番 変ロ長調 D960

ツィメルマンの所沢公演、皆勤賞更新中です。
2006年、2007年(クレーメルとのデュオ)、2009年、2010年、2012年、2013年、そして今回2015年。
いやはや、我ながら偉い、というか酔狂と思う。。。

さて、所沢ミューズ公演、まぁなんだ、色々ありました。
まず、隣の人が前半盛大に寝こけてて、寝息がやかましくて辛かったというのが一つ。
寝るなとは言わんが、うー、結構耳障りだったんですよねぇ。
起きたと思ったらチラシをバサバサ落とすし、色々残念な感じでした。
あと、21番の2楽章で、1階中央あたりで尋常じゃない大いびきをかく人あり。
ホールの方も大分バタバタしていたけれど、結局最後までいたのかな?
終演時には救急車が来てましたが、大丈夫だったんだろうか…。
あとは鈴を鳴らす人がいたり、アメの袋を開けるガサゴソが響き渡ったりで、なんだかんだと集中できず。

さて、プログラムは、シューベルトの軽快な7つの変奏曲、ソナタ20番(D959)、21番(D960)。
1曲めは、素朴で愛らしい主題が美しく伸びやかに、時に哀愁を帯びて、軽やかに、そして典雅に、表情豊かに変奏していきます。
いきなりソナタの大曲から始まるより、この一曲でお互いウォーミングアップした方が良い、という感じでしょうかね。
枕というかクッションというか。
まぁでも、枕でも何でも、こういうなんてことない曲を(前座色濃厚とはいえ)「聴かせる」ことができるのは、ツィメルマンさんの類稀な美音、音のクラリティあってのことだろうと思います。

なお、所沢ミューズは響きが大層芳醇ですが、締まりの無い響きではないというか、非常にすっきりとした響き方をするホールで、ツィメルマンのピアノとも実に好相性だと思います。
7つの変奏曲でも、ホールの響きと上手く折り合いをつけている印象がありました。

20番では響きに幻想性が加わり、とても夢幻的でした。
テンポはやはり速めでさくさくした印象もありましたが、旋律から旋律への流れ、曲想の個々の塊の間の繋がりはすこぶる良好で、曲が有機的に流れていく様子が目に見えるような印象がありました。
曲が上手く流れていくと、あわせて時間の流れみたいなものも感じられて、それ故に、連続する物語のようにも感じられるという側面があろうかと思います。

20番は取り留めない印象もありますが、そんなわけで、この日は流れが自然で、今私はどこにいるんだろう?と思う瞬間が無く、聞こえてくる旋律にそのままついて行けば大丈夫、というような安心感がありました。
ニュアンスの豊かさは言うに及ばず、エモーション、気分の移り変わりも繊細かつ明瞭に描写されており、色々な意味で聞き手を迷わせない演奏だったと思います。

全体的にウェットな方向に流れず、テンポが粘ることもあまり無く、むしろ軽さが天に向かうような明るさがありました。
曲としての流れの自然さ、全体のまとまりの良さが際立つ分、最終楽章の楽想の断絶に非常に大きなインパクトがありました。
奏者も聴き手も、シューベルトの思考の流れとふとした停滞、精神のぼっかりとあいた空白のようなを見つめる瞬間、あるいは作曲家の心の深淵を覗き込むような時間であり空間であったと思います。


後半はシューベルトの21番。
やはりテンポは速めですが、冒頭の優しく穏やかな主題は、雑念が削ぎ落とされて澄みわたった精神が目の前に立ち現れる、そんな趣でした。
長調から短調に切りかわり、時に転調し、メランコリーや哀愁もにじみ。
明から暗、暗から明へといった、気分の移り変わりが丁寧に描写されていきます。

1楽章は、音楽が広大な地平に広がっていき、そしてまたスタート地点(主題)に戻ってくる様子が丹念に提示されます。
寄せては返す波のように、少しずつ姿を変えながら拡大と収束を繰り返す楽想。
行きつ戻りつする音楽に身を委ねながら、ああこれは旅なんだな、と、ふと気が付きます。
旅というよりはむしろ、紆余曲折する人生を今まさに体験しているのだなと。

2楽章は、作曲家の内面世界に深く沈みこんでいくかのようであり、あるいは、悲しみを抑制して歩みを進める様子を眺めているようでもありました。
やがて曲想は暗から明に移り変わりますが、明るさに希望と強さを感じると同時に、どこか切なさを覚えます。
3楽章は軽快な愛らしさに満ち、ツィメルマン本人も楽しそうでした。
4楽章は諧謔、軽快さの合間に高揚と激情を見せつつ、収束します。
でも、必ずしも大団円、めでたしめでたしという風にも聴こえないのですよね。
人生という旅は、そんなに単純なものではないよ、とでも言いたげな。
その辺がベートーヴェンとは決定的に違うところかな。
個人的には、ベートーヴェンの曲の英雄的な有り様よりは、大分親近感が沸くような気がします。


次は名古屋です。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル  

クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル  
2015年11月21日(土)17:00開演 兵庫県立芸術文化センター

オール・シューベルト・プログラム
7つの軽快な変奏曲 ト長調
ピアノ・ソナタ 第20番 イ長調 D959
ピアノ・ソナタ 第21番 変ロ長調 D960

久々に西宮遠征をしてまいりました。
ぴおとるさんのバンベルクとのモツコン(2012)以来ということになります。

ツィメルマンさんはツアー2公演目、私は今ツアーお初。

オール・シューベルト・プログラム、「7つの軽快な変奏曲」でスタートいたしました。
これ、初めて聴く曲でしたが、シューベルト13歳当時の作品とのことで(真作かどうかは不確定)、いかにも若書き、という作品でした。
概ね素朴でひねりもなく、コンサートよりはどこぞの発表会でちょっと上手い中高生が演奏しそうな曲、という感じ。
ツィメルマンの音色はキラキラ、ご本人はとて楽しそうに弾いていて、なかなか微笑ましい感じではありました。

さて、あとは、シューベルトの後期ソナタ2曲。
ちなみに私の予習はデイム光子です。

20番は、予想していたよりもサクサクしてるというか、あっさりした印象。
とても明瞭な演奏で、歌の美しさがクリアに際立ち、あまりデモーニッシュなところや切迫した感じは無いかなと。
むしろ、ポジティブというか、この辺はツィメルマンさんのキャラクターによるところも大きいと思うんですけど。
そう言う意味では、一曲目の超若々しいフレッシュな演奏に続く曲としては、違和感なく聴ける演奏でした。
ただ、曲自体が、聴いてて迷子になりそうというか、自分の居場所がわからない感満載なところはあるような。
正直、前半のソナタは眠気に負けてちょっと朦朧としてしまいました(ウィークデイの疲れがたまっており…)。
20番は、正直物足りない(食い足りない)ところがありましたが、何となく、ツアーを重ねて変わっていくのではないかなーと予想しています。

後半は別人28号か?というくらい趣が異なり、私もバチッと目が覚めました。
シューベルトの分裂的な部分を、コンサートの前後半のコントラストで表現する意図か?とも思いましたが、さてどうでしょう。

21番はああツィメルマンですね、という感じにがっちり作り込まれていたのではないかと思います。
冒頭、達観したかのような響きに始まり、明晰で研ぎ澄まされた音響世界にシューベルト特有の旋律の美しさ、可憐さが渾然となっていきました。
落ち着いた、円熟した音楽世界。
4楽章ではデフォルメした表現もありましたが、エキセントリックというよりは、飄々としたユーモアに転んでいたかな。

あ、楽譜は全部有でした。
全部見てるって感じでもありませんでしたが。
横に長い楽譜でセルフ譜めくりでございました。

今回(も)、あと何公演か行く予定です。
今回のツアーはなにしろ長丁場なので(11月~1月)、ご本人の演奏も変わるでしょうし、私も合間に少しずつシューベルトの勉強をしようかな、と。
聴き慣れてくるとまた印象も変わると思います。

| | コメント (3) | トラックバック (0)

2014年3月 2日 (日)

クリスチャン・ツィメルマン ピアノ

2014年1月23日(木)19:00開演 フィリアホール
【11月22日(金)延期公演】
<プログラム>
ベートーヴェン:
ピアノ・ソナタ第30番ホ長調Op.109
ピアノ・ソナタ第31番変イ長調Op.110
ピアノ・ソナタ第32番ハ短調Op.111

フィリア 公式サイト

これも大分時間が経ってしまいましたが、今回のツアーの最終日だし、記録として残しておきます。

あのサントリーの名演の後に何をどう弾くんじゃい、最悪燃え尽きているのでは?(失礼な)とも思ってましたが、最終日に相応しい良いコンサートでした。
サントリーより少しほどけた感じで、ずっと芳醇でまろやかな音楽になっていたかと。
座った場所もホールの音響も異なるので、単純な比較はできませんが、この日は今ツアー最高のピアノの響きを堪能いたしましたよ。
現代ピアノで、響きそのもので語るベートーヴェンの後期ソナタ、という方向性であれば、まさに極北だったのではないかと思います。

30番はとてもロマンチックで伸びやかな演奏でした。
この日の極めて豊麗な(ピアノの?ホールの?両方?)響きも相まって、さらなる幻想味が加わっていたような。
譬えていえば、まるで仙境で遊ぶような、融通無碍ともいうべき演奏でした。
ベートーヴェンって美しいんだ、という事実にも改めて気づかされました。

ツィメルマンさんのすごいところは、音響にとことん拘りつつも、無機的にも表層的にもならず、人工的(アーティフィシャル)な冷たさとは一線を画すところ。
そして、響きや音色とエモーションが分かちがたく連動するところでしょうか。
そういえば、ツィメルマンの場合、この人一体何考えて弾いてるんだろう?って思うことがほぼ無いのですよね。
そういう意味で、とても主観的。

この日は舞台に近い右バルコニー(まぁいつもの席ってやつですが)で聴いてましたが、とにかく場所が良かったです。
特に高音の響きが極上だったんですが、ピアノの蓋の中で色んな音がたゆたっていて、まるで池の中で魚が泳いでいるのを眺めるような感じ。
そして、池の中から、飛魚が跳び上がるかのように、あるフレーズがポーンと浮き上がるのが目に見えるようでした。

32番は、一楽章は(いや、二楽章も一部。ジャジーなところとか)割とガシャガシャしてるなぁという印象は無きにしもあらずでしたが、最後までたどり着いてみれば、ちゃんと落ちたなと。あ、ちゃんと終わったなって思ったんですよね。
一つの物語の終わりを目撃したような気分。
いや、むしろ憑き物が落ちたような感じといえば良いでしょうか。

終わりよければ全てよしというわけではありませんが、とても後味の良いコンサートでした。総じてハッピーなベートーヴェンだったか思いますが、それは底が浅いということではなくて、精神の強靱さがもたらす類の、そして何らかの到達点に辿り着いた結果のハピネスだったのではないかと思います。

結局、今回のツィメルマンは5回行ってしまった…。
最初はあまりやる気が全然無くて、繁忙期だしせいぜい2回くらいか?と思っていたんですが、なんでこうなってしまったのかしら(とじっと自分の手を見る)。
まぁでも腰痛&延期騒ぎからこっち、色々と気を揉んだりしましたが、良い形で終わって良かったなーとしみじみ思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年2月 2日 (日)

クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル

2014年01月20日(月) 19時開演 サントリーホール
公式サイト
<プログラム>
ベートーヴェン後期3大ソナタ
ピアノ・ソナタ第30番 ホ長調 作品109
ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調 作品110
ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調 作品111

この日、いつもの開演前のツィメルマンさんの「録音しないでね」メッセージ代読を聞き流していたら、「アバドの思い出に」という言葉を漏れ聴いて、え?と。
アバド、ハンブルクで一度聴きました。
Claudio Abbado R.I.P.


さて、ツィメルマン@サントリー。
サントリーにきっと照準を合わせているんでしょうね、とは思ってはいましたが、もうもう凄かったですわ。
今回のツアー、これまで3回聴いてきて、公演ごとに階段を上がるように良くなっている印象でしたが、今回は全く次元が違いました。
ただただ音楽に身を浸す以外のことが罪悪であるような、目の前の音楽を言葉で形容するのが空しくなるような、まさにbeyond wordsな演奏だったと思います。

今回の演奏、私のキャパシティをややオーバーしまして(前半が終わった段階で気持ち悪くなった…)、どうにも上手く言葉にならないんですが、30番も31番も別世界に入っていたような。
別次元というか、それとも入魂、というべきでしょうか。
ツィメルマンさんの、一曲弾き終わって一瞬放心するような表情、今回のツアーでは初めて見たような気がします。

この日の演奏は終始エモーショナルで、とてもロマン主義的だったと思います。
最初、30番の、丁寧で一歩一歩噛みしめるような音の運びに、一瞬、今日は安全運転モードか?と思ったけれど、決してそうではなく。
一音一音への気持ちの入りようが違ったのではないかと思います。
本人の冒頭のメッセージにあったように、今日亡くなったアバド追悼の気持ちも多分に演奏に反映していたことでしょう。
ツィメルマンが東京でアバドの訃報を聞いて、その夜に私たちは特別な思いの込められた演奏を聴く。
不思議な縁というか、演奏って本当に一期一会だな、としみじみ。

常日頃、ピアノを聴く上でサントリーの音響って必ずしも最善ではないと思っているんですが(基本的にピアノには風呂場過ぎる)、今日は響きがひたすら神々しかったです。
ウェットでもドライでもなく、旨味が乗りすぎていない、それでいて素っ気なくない、えもいわれぬ響きでした。

個人的に一番ドキドキしながら迎えた32番。
いやはや、すごいところに行っちゃったな。
今回は、12月からこっちツィメルマンさんの登山(ベートーヴェン後期ソナタ登頂)に(僭越な物言いながら)ご一緒している気分でしたが、ここで登頂ではなくて、一気に雲上に行かれてしまったというか。
(みなとみらいの32番で、本当にぴくりとも心が動かなかったのが嘘のよーであることよ。。。)

冒頭でいっつもいっつも(ミスるというか引っかけるというかで)アレだった箇所も今日は無事クリアしてまして、良かった良かった。

壮絶で、切実でもあった32番。
ギリギリまで自己を追い込むような(out of control一歩手前か?)、そして魂の深いところにガツンと楔を打ち込むような演奏。
2楽章の冒頭の緩徐部分でもメロディが表面を揺蕩うのではなく、一つ一つの音が静かに深部に到達していきます。

聴けて、あの場にいられて本当に幸せだったと思います。
終演後のロビーで、「今日のこの演奏だけ聴いた人がニクイ!」などと叫んでいた私ですが、12月からこっちのモヤモヤがあったからこその達成感、感動もひとしお、という面もたぶんにあったと思いますので、まぁ結果オーライでしょう。

ホント、これだからコンサート通いはやめられません。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年1月21日 (火)

クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル

2014年1月10日(金)午後7時開演 武蔵野市民文化会館 大ホール

<プログラム>
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30番ホ長調 Op.109
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第31番変イ長調 Op.110
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第32番ハ短調 Op.111

武蔵野文化事業団HP

この日は階段状になっている右手のお席で。
ちょうどピアノの蓋よりちょっと高いくらいの位置で、音がよく飛んできて良かったです。

行けなかった8日のすみだの感想などをチラチラ眺めていたら、微妙な感想が散見されたので多少心配していたのですが、結論からいえば、去年とは別人か?という印象で、3公演中ではベストだろうと。
楽譜は置いてましたが、ずっと見ながら弾いてる感じの弾き方ではなかったです(まぁ至近距離ではなかったので詳細はよく分かりませんが)。

30番は幻想と慰撫に満ちた、愛おしくも神々しい世界でした。
水晶のような一楽章に、キリッと力強さを出した二楽章が好対照。
三楽章では水彩絵具の雫をポタッポタッと紙に丁寧に落としていくような音の連なりが印象的でした。
フーガを弾くツィ氏は、飄々としていてどこか楽しげでもありました。
30番って後期ソナタの中では一番小奇麗なところがあるというか、規模というか粒が小さいような印象がありましたが、なかなかどうして、終楽章で音楽の風景が壮大に広がっていく様と抑えきれない高揚感を、そして最後には見事な収束を見せてくれました。
あれはほとんど解脱みたいなものかも。
この昇華された世界が、次の31番の冒頭にすっと繋がるな、とも。
そして、今回、一番変化が著しいと感じたのが31番でした。
1楽章は比較的早めのテンポに感じましたが、音符が多くペダルが長い箇所でも響きが混濁することなく、とても幻想的な響きにきこえました。
一つ一つの音の粒立ちや滑舌の良さよりは流れや響きを重視するような所もあり、フーガもそういう表現だったと思いますが、これは意図的なものかな。
今回の31番では、たっぷりとしたタメや、ブレスの深い間(ま)が生まれていて、それがいかにもツィメルマンさんらしくもありました。
そうした緩急は独特の時間の流れを感じさせるものでしたが、決して恣意的に響かず、むしろ、音楽が落ち着くべき場所、安息の地を見出したかのような、そんな安堵感を抱かせる演奏でした。

前半は特に、音楽がしっかり手の内に入って、こうしかあり得ない、そんな説得力を帯びているような印象を受けました。
フォルテもしっかり腰が入った音が出ていてまずは一安心。

後半の32番は凄演だったとは思いますが、それが必然なのか、結果的にそうなっちゃった、のどちらかなのかは分かりません(まぁ「結果的に」なんだろうな……)。
31番は大分落ち着いたなぁと思ったんですが、32番も同じような方向性なのかと思いきや、特に1楽章は全然落ち着いてなかった……。
むしろ余計荒ぶっているというか、嵐のようというか、ますますロウ(生、じゃなくて生煮えか)。
1楽章は、なんだか生傷から血が噴き出しているようなイメージ映像が目の前をちらつきます。
まぁ、これは必ずしもミスが多いという意味ではないのですが。
他方、2楽章は自らの内に深く沈みこんで静かに自己を見つめ、徐々に浮上して自分の外に果敢に手を伸ばして、最終的に解放を得た、そういう音楽であったように思います。
割と分かり易く闘争の末のハッピーエンドという感じではあったんですが、奏者はこういう闘争を思い描いているのかしらん、と若干訝しく思ったりもして。
そういうヴィジョンを確固として抱いた結果の演奏なのか、今のところ不可抗力的に「闘争」になってしまっているのかよく分からんというか。

というわけで、特に32番はサントリー待ち。
まぁでも刻々と変化しつつ、着々と上がってきているようで、ほっとした夜でありました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年1月 7日 (火)

ベートーヴェン・スペシャル クリスチャン・ツィメルマン

2013年12月21日(土) 16:30 開場/17:00 開演 所沢ミューズ アークホール
公式サイト
<プログラム>
ベートーヴェン:ピアノソナタ第30番(op.109)、第31番(op.110)、第32番(op.111)

2013年11月24日(日)に予定されていたコンサートが、腰痛騒ぎで延期、2013年12月21日(土)に。
11月24日は仕事の都合で×だったんですが、日程変更のおかげで行くことができました。
これでツィメルマンの所沢公演は皆勤賞ということになりました。

お客さんの入りは若干微妙?
もちろん、延期騒ぎの影響はあると思いますが、当初上は売ってなかったのか?という感じの妙なあき方。。。

この日の私の席は、行けなくなったお友達の代わりに座らせてもらった席で、目の前でツィメルマンさんがお辞儀する特等席でした。
わはは。

さて、11月公演と12月頭の公演を延期した後、当初のスケジュールの通り開催したみなとみらい公演から一週間ちょっと経って所沢ミューズと相成りましたが、諸々において大分アップしたように感じました。
左手が(右手に比べると)若干安定しないようにも聴こえましたが、みなとみらいでしていた左手のサポーター(?)は無くなり、総じて手が鍵盤にちゃんとくっついている印象でした。
打鍵もとてもしっかりしていて、まずは一安心、といったところ。
表情を見る限り、ご本人のご機嫌も良かったのではないでしょうか(最後投げキッスしてなかったっけ?)。

今回のツアーは、ピアノの調整がいつもと違うのかな(私もそんなに耳が良い訳ではないので漠然とした印象でしかないのですが)。
音の伸び、響きが時々フォルテピアノのように聞こえなくもないというか。
通常のスタインウェイだとすごく音が伸びていくし、響きが強靭かつ艶がある印象なんですけど、今回は響きの質や減衰の仕方がちょっと違うような。
みなとみらいでは高音域、この日は低音域でそう思いました。
特に高音の響き方がスコーンとしてて純朴というか無垢に聞こえました。
それが雑味の無い、ピュアでどこか悟りにも似た世界を導くゆえんでもあると思うんですが。

みなとみらいでは30番が良かった(31番と32番は???というところもあった)んですが、この日は31番も32番も良かったです。
32番の1楽章は荒ぶるベートーヴェンという感じで、多少前のめりな印象はあったにせよ、決して粗いということではなしに、音楽が枠組みを逸脱していくような印象がありました。
感情が形式(フォルム)を超えるか超えないか、ギリギリのライン上にあるような。
これがおそらく、古典主義の枠組みの中でロマンチックに、ということだろうと思いました。

ところで、「嘆きの歌」や祈りのように聴こえる部分なんかは、とても素晴らしいとは思うんだけど、期待値が高すぎるのか(ファンってしょうがない生き物よね…)まだ感動するには至らないので、2014年の楽しみということにしておこうと思います。

まぁただ、嘆きの歌とか32番の2楽章とか聴いてると、ツィメルマンさんってなんだかんだいって、大変シリアスではあっても精神的に余裕がある人なんじゃないかと感じるんですよね(ボソ)。。。
この辺、1/20のサントリーでどうなりますか。

あ、その前に武蔵野に行ってきます。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2013年12月15日 (日)

クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル

クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル
2013年12月12日(木)19:00開演 横浜みなとみらいホール

<プログラム>
ピアノ・ソナタ第30番 ホ長調 作品109
ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調 作品110
ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調 作品111

ツィメルマンさん、急性腰痛症とのことで11月と12月頭の日本公演はキャンセル(延期)が発表され、12月6日の三原公演はやるはずだったけど結局前日にキャンセル(延期)になり、10日の福岡公演から当初のスケジュール通りに開催、首都圏は12日のみなとみらいが一発目ということになりました。

今回の腰痛&キャンセル(延期)騒ぎには大分ヤキモキしましたが、まぁ演奏家も人間なので仕方がないというか、色々出てくるお年頃ですよねぇ。
とりあえずは、無事に開催されたことを祝うとしましょう。

福岡公演では一曲ごとに休憩を入れていたようですが、この日は通常モードで休憩一回でした。
今回、ステージ上を歩く姿を見る限りは、比較的速足でしゃきしゃき歩いていて元気そうに見えましたが、実際はどうなのかなぁ。。。

椅子はいつぞやの斜めバージョンではなく、普通の椅子でした。
楽譜は有りでしたが、譜面たてはたてず、寝かせておいて、必要に応じて覗き込むような感じ。
まぁ、楽譜をみっちり見てるという感じではなかったんですが、それなりには見てはいたので、無理せずに譜面たて使ったら?と思ってしまいましたが。
左手は指無し手袋みたいなもの(サポーター?)をしてて、こちらも結構心配。

一曲目の30番。
柔和で自然な流れの中に時折ブレスの深いタメも効かせていて、とても抒情的な演奏でした。
スコンと抜けの良い高音が清新で瑞々しく、音楽の純度の高さを象徴するかのように響きました。
祈りのように響く部分と、確信に満ちた力強い表現との対比も見事だったと思います。
特にフーガは毅然としていて、さすが、という感じ。
全部聴き終わって改めて振り返ると、実に美しく完結した世界であったなぁと。

他方、31番、32番には粗さが散見されました。
腰痛のせいかもしれないし(現在進行形で痛いのかもしれないし)、腰痛のせいで十分に準備ができなかったのかもしれないし、左手のせいかもしれませんが、理由は分かりません。
ミスタッチ自体は多少はどうということは無いんですが、時々フレーズごともつれてヒヤっとさせられました。
楽譜を見ながら弾いてるな、という感じも全体的に。
あと、楽譜を見てるせいなのかもしれませんが、わずかではありますが万遍なく緩みが感じられました。
ギュッとしまった、ガッチリ構築的なベートーヴェンという感じではないというか。
どこか綻びを抱えたリアルな世界が現前しているような印象もありましたが、それは意図的なことなのかもしれないし、結果的にそうなってしまったのかもしれないし。
特に32番は、何かの制作過程を見ているような、一種の生々しさがあり、4年前に聴いた32番とは別物のように感じました。

もしかしたら、ベートーヴェンの後期作品というのは、綺麗に輪が閉じ切って一つの世界として完結した演奏というのは、違うのかもしれない、ともツラツラ。
もっと、曲の枠組みを音楽が超克していくような、そういう自由さや軽やかさのある、開かれた音楽なのかも、などと。

ううん、後を引くなぁ。
困った。
あと数回は聴く予定なので、もうちょっと考えたいと思います。
ツィメルマンの演奏もまた変わるかもしれないし。

コンサートはアンコール無しで、20時40分頃終演。
体調が万全でも、アンコールは無しだったかも。


復習にツィメルマンのインタビューをば。
クリスチャン・ツィメルマン、ベートーヴェン後期三大ソナタへの挑戦 Ⅰ
クリスチャン・ツィメルマン、ベートーヴェン後期三大ソナタへの挑戦 Ⅱ
クリスチャン・ツィメルマン、ベートーヴェン後期三大ソナタへの挑戦 Ⅲ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013年12月 5日 (木)

Happy birthday!! Mr. Zimerman

Happy Birthday!!!
I hope that today is the beginning of another wonderful year for you.

今日はツィメルマンさんの57歳のお誕生日。
健康で良き一年をお過ごしください。

来週、みなとみらいで無事なお姿を拝見できますように……。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧