カテゴリー「Pianist: Rafał Blechacz」の8件の記事

2014年1月 8日 (水)

ラファウ・ブレハッチ ピアノ・リサイタル

ラファウ・ブレハッチ ピアノ・リサイタル
2013年12月16日(月)19:00開演 横浜みなとみらいホール

<プログラム>
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第9番 二長調 K.311
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第7番 二長調 Op.10-3
- - - - - - - - - - - - - -
ショパン:夜想曲 第10番 変イ長調 Op.32-2
ショパン:ポロネーズ 第3番 イ長調 「軍隊」/第4番 ハ短調
ショパン:3つのマズルカ Op.63
ショパン:スケルツォ 第3番 嬰ハ短調 Op.39

ジャパン・アーツ公式サイト

本当は12月14日(土)のTOCの行きたかったんですけど、そちらは完売。
さすがショパコン優勝者ブランド強しというか、相変わらず人気あるな~と思いましたが、みなとみらいの方は平日ということもあってか、入りは7〜8割だったかと。
(きっと、週末みなとみらい、平日TOCの方が効率よくチケットはけるんだろうな、などと思ってみたり)

前半はモーツァルトのソナタ9番とベートーヴェンのソナタ7番。
しかし、音が綺麗ですね、ホント。
端正で品のある、だけど芯のしっかりしたピアニズム。
モーツァルトもベートーヴェンも端正で明るく、一つ一つの音が光彩を放っているようでした。
以前は線が細くて心配になるようなところもあったけど、大分雰囲気が変わったような気がします。
諸々、以前よりしっかりしてきたように感じるけれど、それは彼の(あるいは最大の)長所である繊細さを犠牲にするような類の強さやパワーではなく、例えるとインナーマッスルがしっかりしてきているような感じかと。

後半はショパン尽くし。
軍隊ポロネーズは、CDよりも断然良かったです。
毅然としていて、貴族的で優雅でもありました。
イメージは馬に乗った近衛兵かな(どこか品よく、エリートっぽいのね)。
4番は威厳も感じさせる演奏。
マズルカは可憐だったり飄々としていたり、やるせない哀切を帯びたりと、多彩な表情を見せつつも、若さも枯淡も感じさせないのが少々不思議でもありました。
あえて言うなら、普遍的ということになるんでしょうが、あるいは、若いけれど達観してる風でもあるのが結果的に年齢不詳な雰囲気につながっているのかもしれません。

スケ3は落ち着きとスケールを感じさせる堂々たる演奏でした。
しっかりしたフォルテを聞かせながらも、節度と端正さは失わず。
強奏しても全く下品にならないのは、本当に素晴らしいと思います。
中間部でふわっと旋律が浮き上がる様は、夢幻的なまでに美しかったです。

本編は20時35分に終了、アンコールでショパン3曲はサービスかな。
太田胃散で終演でした。

これを書くとファンの反感を買うような気がするんですが、最近のブレハッチはなんか普通のピアニストになってしまったな、と思っていたんですよね。
普通に上手くて音が綺麗なピアニストというか。
その根底にあるのは、ブレハッチってショパコン時の演奏が結局一番良かったんじゃ?という、ぬぐいきれない思いだったわけですが。
それは、20歳という年齢と、母国でのコンクールの尋常ではないプレッシャーや緊張感を耐え忍ぶが故に生まれる奇跡のような詩情やリリシズム、そしてショパンやポーランドとの同一性みたいなものであったと思うのですけれど。
もちろん、コンクールの時が一番良かった=成長していない、ということでは全くないんですが、これはもう一種のノスタルジーみたいなものなので、しょうがないというか。
そういった一期一会ともいえる輝き、あるいは若さゆえの危ういような煌めきが年月と共に(当然)失われていくのが残念でもあったんですが、この日は素直に「今」が素晴らしいと思えたし、未来も見えたような気がします。

とても良いコンサートでした。


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2009年2月17日 (火)

ラファウ・ブレハッチ ピアノリサイタル

2009年2月14日(土) 18時開演 東京オペラシティ コンサートホール
<プログラム>
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第16番 変ロ長調 K.570
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第2番 イ長調 Op.2-2
ショパン:4つのマズルカ Op.17
ショパン:ポロネーズ第6番 変イ長調「英雄」op.53
シマノフスキ:ピアノの変奏曲 変ロ短調 Op.3
アンコール:
ショパン:24の前奏曲より第4番
ショパン:マズルカop.56-2
ドビュッシー:月の光


席は3階席でしたが、結構良い席でした~。ちょっと残響が長いなとは思いましたが、まぁ好き嫌いの範囲内ではないかと(私はデッドな方が好き)。

さて、私はブレハッチというピアニストを大分見くびっていたようです。まさかここまで素晴らしい演奏を聴けるとは、全くもって夢にも思っておりませんでした。←失礼過ぎ

音がもうね、理想的としか言いようがないんですよ。「ブレハッチは音がきれい」っていうのは今更な事実だとは思いますが、こんなん今まであったかいな、、、というくらい美しかったです。よく真珠のような、なんていわれますけれど、決して金属的に響かない、それでいて品の良い華やかさも持ち合わせた音。スタインウェイらしい旨みや伸びの良さもあります。きっと調律師さんも優秀なんでしょうね。

モーツァルト、私はてっきり新譜に入ってる曲だと思ってたら全然違いました。。。あああ、予習ゼロだ。
モーツァルトはペダル踏み過ぎ…?って思ったら、近くでご覧になってたKさん曰くあまり踏んでなかったそうです。ホールと座った場所のせいですね、これは。
そんなわけで、最初は少々ピアノの蓋の中で音が混じってるような印象がありましたが、、モーツァルトがいまいち苦手(別に嫌いじゃないですよ)な私も非常に気持ちよく聴けました。っていうか、ここまで非の打ち所なく上手くて、それでいて機械的ではないモーツァルトはそうそう聴けないんじゃないでしょうか。

ベートーヴェンの2番は、CDで聴いた時はさほど良い曲とも思いませんでしたが、これがメリハリが利いてて、大変快活で、実に素晴らしかった!です。えーとですね、驚くべきことに、CDの演奏よりもテクニック的にも圧倒的に上だったと思います。音の粒の揃い方もそうだし、スタッカートのキレも良いし、休符の扱いがかっちりしてて、上記のメリハリはその辺から生み出されていたのかなと思います。安定感と生きの良さが両立してて、見事でした。
1楽章は、左手から右手へ、右手から左手へ忙しくメロディが移っていくのですが、その辺の流れや、両手の縦のラインの合いっぷりが、もう目を見張らんばかりに素晴らしかったです。4楽章の冒頭の左手~右手で上昇する音型、これは最後まで繰り返し繰り返し出てきますが、こういうのとか後半に頻出するスケール的な部分とか、いちいち「あ~、珠が転がる~、どこか(天国?)に連れてかれる~」とジタバタしたくなるほど麗しくて、もうどうしようかと思いましたです。

後半はショパンとシマノフスキで、いわばお国物特集。
「英雄ポロネーズ」が白眉でした。うーん、これはもう封印モノかも。。。
シマノフスキはブレハッチの演奏のCDを持ってるんですが、全然覚えてなく(オイ)、ほとんど初めてみたいな感覚で聴きました。ものすごく分かり易い、と思ったのは初期作品だからですかね。
最終曲がかなり重量級で、まぁちょっと「大変そうだな~」と思わせる部分はありましたが、和音が乱れることもなかったし、スケールの大きさを感じさせる演奏で良かったです。

アンコールは「月の光」に尽きます。
もうとにかく美しかった、とだけ書いておきましょう。
涙。


実は、聴く前は「英雄ポロネーズ?もう良いよ……」とか思ってた私ですが、大反省。同じ曲を繰り返し聴くのも、成長著しい場合にはこんなに感動的なのか、、、と思いました。

来年も来るようなので、楽しみに待ちたいと思います。来週いらっしゃる方は、どうぞ楽しんでらしてください。私もちらっと行こうかどうしようか考えたんですが、現実的にかなり厳しいんで、オペラシティの記憶を宝物に来年を待ちたいと思います。

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2009年2月10日 (火)

ベルリン放送交響楽団 2009年日本公演

ベルリン放送交響楽団 2009年日本公演
2009年2月9日(月) 19時開演 サントリーホール

指揮:マレク・ヤノフスキ
ピアノ:ラファウ・ブレハッチ 
ベルリン放送交響楽団

シューベルト:交響曲 第8番「未完成」変ロ短調 D.759
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第4番 ト長調 作品58 
ベートーヴェン:交響曲 第5番「運命」 ハ短調 作品67

このコンサート、「ドイツ名曲コンサート」ってタイトルがついてたんですね。
何もここまでベタベタじゃなくても良かろうに。私ってば、ブレハッチのベト4目当てでチケットを取ろうと思ってプログラムをチェックして、思わず「つまんねー!」と叫んだんですよね。。。いえ、未完成も5番も単独では別に嫌いじゃないんですが、わざわざベト4とカップリングで聴きたくはないというか。
平日夜ということもありましょうけれど、席が結構あいててちょっと勿体無いなって思いましたが、売れるプログラムを目指しすぎて逆に外しちゃったかな?という気がしなくもなく。。。


結論からいえば、良いコンサートだったと思います。
全体的にテンポ速め、力のこもった演奏で、しかもアンサンブルは上々で、聴き応えたっぷりでした。
オケの響きが肉厚で、温かみがあって、あの弦の厚みは得難いものがあります。
「未完成」のオーボエソロなんかも柔らかでまろやかで、音楽がふあーっと立ち上がってくる感じでとても良かったです。
これで指揮者と呼吸が合えば大感動コンサートだった可能性も大なんですが、残念ながらタメの感覚が合わず。ちゃんとメロディアスで美しい歌いっぷりではあるんですが、タメて欲しいところでことごとく先に行かれてしまい、おいていかれ感たっぷり。
まぁこの辺は感覚の問題というか、単純に好みなんで、しょうがないですね。

ブレハッチ氏ですが、相変わらず華奢で、髪の毛はちょっと短めで、なんか以前よりも少年っぽくなったような…?終演後に近くで見たら、今までになく(←失礼)ヨーロピアン美青年って感じでちょっとビックラしましたが。っていうのはどうでもいい話ですね。
で、肝心の演奏ですが、テンポ速めのオケに食らいつく、という大げさな風情もなく、徹頭徹尾ナチュラルな感じ。最初は「ああこれぞブレハッチ」な感じはさほど無くて(もちろん音のきれいさとか“らしさ”は色々ありましたが)、ついするするっと聴き流してしまったんですが、3楽章はきりっとしたところと可憐なところ(←私にとっての「ああこれぞブレハッチ」)があって良かったです。
4番って、彼のキャラに合ってると思うんですよね。で、あえて誤解と反発を恐れずにいえば、これからもっともっと良くなるような気がする。今回が悪いっていう意味ではないです。非常にフレッシュで若々しくて、それが大きな美質でもあるけれど、それだけに「弾き込んだ感」はそんなに無いよなって思っただけで。
あと、今回、指揮者のタメのセンスやテンポ感とブレハッチのそれが合ってるかどうか、私的にはちょっと?だったので、数年後、若いうちに別の指揮者でまた聴いてみたいなって思います。

次はリサイタルです。

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2007年6月18日 (月)

ラファウ・ブレハッチ ピアノ・リサイタル 2007年日本公演 in 横浜みなとみらいホール

<プログラム>
J.S.バッハ:イタリア風協奏曲 ヘ長調 BWV.971
リスト :3つの演奏会用練習曲より 「軽やかさ」 ヘ短調
     :2つの演奏会用練習曲より 「森のざわめき」「小人の踊り」
ドビュッシー:版画
        1.塔
        2.グラナダの夕べ
        3.雨の庭

休憩

ショパン:舟歌 嬰ヘ長調
     :2つの夜想曲 Op.62
      第17番 ロ長調 H major
      第18番 ホ長調 E major
     :24の前奏曲 Op.28 より 第13番~24番

アンコール
ショパン:マズルカ op.17-2 ホ短調
モシュコフスキ:花火
ショパン:小犬のワルツ op.64-1

生ブレハッチさん、なんだかんだいいつつ4回目になるけれど、今回が一番良かったように思う。
有体にいって、非常に元気そうだった。

一曲目のバッハのイタリア協奏曲の最初の和音が鳴った瞬間から、「あ、なんか違う」。
鮮やか。
煌びやかなところもある。
溌剌としてて、華やかで、バッハにしては、結構ゴージャスな印象だった。
トリルのせいかな?
もっと楚々とした控え目なバッハを想像してた私は多少面くらわないではなかったけれど、なんだかワクワクしてしまった。
ついでに白状すると、今までブレハッチさんのことについてはもちろん上手いとは思ってたけれど、「げー、馬鹿ウマ!」と心底感心したのは今回が初めて。
そもそもバッハ聴いて感心することってあまり無いんだけど(バッハ自体をあまり聴かないということもあるけれど)、いや、抜群に上手かった。
崩さずにかっちり弾いてるのに、本当に生き生きしているのも良かったな。

リストもドビュッシーも軽やかさが際立つ演奏で、とにかく洗練されている印象。
どんなに速いパッセージでも、いや、速いパッセージこそ、素晴らしく綺麗に響かせていた。

後半はショパン。
舟歌はゆったりした歌い回しで、舟特有の浮遊感みたいな雰囲気もあって、ヴェネツィアのゴンドラの幻影が見えるような演奏(気持ち良くなって寝そうな演奏でもある…)。
この曲をさらさら軽く弾くとただ綺麗なだけで非常に浅薄な印象になってしまうと思うけれど、ブレハッチは決して軽く流すことなく、じっくり深い息遣いで歌ってた。
これを聴いて、「あれ、そういえば、彼ってまだ21歳か…」なんて思ってしまって(ついつい忘れてた)、そういう意味では年齢を感じさせない演奏なんだな、と思った。

前奏曲集は、長調→短調→長調→短調って調が変わるわけだけれど、一曲ごとに雰囲気がガラっと変わって、明⇔暗、剛⇔柔の移り変わりがなかなかドラマチックだった。
意外なほどに「剛」がしっかりしてて、大分力強さや芯みたいなものが加わったような印象を持った。
それでいて、23番なんかは聴いてて顔が緩々になるほど可憐。
ブレハッチさんも楽しそうだったな。
12曲の中に色んな表情が見えて、魅力的だった。

アンコールのモシュコフスキの花火では、最後の一音を弾き終わるなりバッと立ち上がり、あまつさえ、くるりん!と一回転。
本編の時から、随分のって弾いてるな、という印象ではあったけれど、ありゃー、ラファウさんってこういう人でしたか、とちょっと新鮮。
巷のイメージほど神経が細いタイプではない、ということなんだよな、きっと…。
去年よりも調子が良かったのか、自信が付いたのか、まぁ両方かもしれない。

これくらいの年齢だと、日々メキメキというかバキバキ成長するんだろうけれど、次に来る頃にはどんなことになっているんだろう。
楽しみなような怖いような今日この頃だけど、スイスのツィメルマンさん、どうか色々よろしくお願いします(って前にも書いたような気がするけれど、なんだかいよいよ現実味を帯びそうな気がするので)。
いざ本当に師事なんてことになったら、私的にはむしろ「過保護に教え過ぎ」を心配しないではないんだけど。。。だってあの方って、絶対、崖から突き落とすタイプではなさそうだから。

今回は、開演前にかねこさんとお喋りさせて頂きました。
お題はブレハッチ、アンスネス、ツィメルマン、あと某ピアニスト引退のマエストロをぐーるぐーるといった感じで、大変楽しゅうございました。
またよろしくお願いします。

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2007年6月11日 (月)

ロシア・ナショナル管弦楽団 2007年日本公演 in ザ・シンフォニーホール

<プログラム>
チャイコフスキー :幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」
ショパン :ピアノ協奏曲 第1番
チャイコフスキー :交響曲 第5番
アンコール
ショパン:マズルカ第11番ホ短調 Op.17-2
チャイコフスキー:バレエ音楽「眠りの森の美女」より
ハチャトゥリアン:バレエ音楽「ガイーヌ」より“ムスギンカ”

ソリストはラファウ・ブレハッチ。

ピアノのCDはちょこっと持ってるけれど、今回、初生プレトニョフ&初指揮者プレトニョフだった。

「頼むから真っ当にやって下さい」なショパンだったらどーしましょー、なんて思ってたんだけど、まぁなんだ、予想通りだったというか、いや違うな、予想を超えていたというか。

第1楽章の前奏部分からして、なんだかもう頭を抱えたくなった。
頭の中で、次はこの音、このメロディが来るって予想しているものと全然違うものが繰り出されてくるので、胃のあたりが引っくり返りそううな感じで、気持ちが悪い。
非常に落ち着かないというか、いたたまれない気分だった。
編曲の良し悪しというよりかは、オリジナルの方をちょっと一生懸命聴き過ぎということなんだと思うけれど。
聴き比べ企画とかで半端無い回数聴いてるから…。

プレトニョフのピアノって、時々こちらの神経をザリザリと逆撫でするすることがあるんだけど、今日ショパンを聴いてて「ああ、このいやんな感じはやっぱりプレトニョフだわ」って思ってしまった。
(誤解の無いようにいっておきますけれど、私はプレトニョフって嫌いじゃないんですよ。非常に感心させられることが多いピアニストで、カンに触るところも含めて大変面白いと思ってます)
これがプレトニョフの弾き振りだったりしたら、奇天烈×奇天烈で「おもしろい」と思ったような気もするんだけど(プレトニョフのショパンP協のピアノは未聴なのであくまでも想像ですが)、ブレハッチはやっぱり正統派なので、ちょっと溝を感じてしまったかな。

あ、ブレハッチのピアノは良かったです。
ショパンコンクールの演奏から、少しずつ表現が変わってきてる感じ。
ピアニシモがなんだか幽玄で、2楽章冒頭なんかは、本当にトリップしそうだった(ピアニシモフェチ)。
歌い回しが以前よりもたっぷり&ゆったりしたところが増えたような気がするのは、スイス合宿(?)の成果ということでよろしいでしょうか。

そんなわけで、ショパン終了時には「この拍手は全部ブレハッチ君へ~」などと思いつつ拍手してたわけだけれど、後半のチャイコを聴いたら「すげー、プレトニョフ!」と手の平を返しました、私。
どうでしょう、この節操の無さは。

いやー、チャイコ、良かったです。
特に、弦の中~低音域が素晴らしくて、重くなり過ぎない程度に腰が入ってるし、音に厚みがあってパワフル。
チャイコらしい、うねる波のようなメロディの盛り上がりも素晴らしい。
管も大変元気が良かった(っていうかちょっとうるさいと思ったのは座った席のせいかな)。

これだけ景気よく鳴るオケだとつい「爆演」とか言いたくなるけれど、決して勢い任せの「爆演」ではないのね。
管のソロの細かいミスなんかは置いといて、全体としては大雑把な感じやツメの甘さが無い。
とにかくよく締まってるし、本当に細かい表現までつめてある感じ。
リハ、相当厳しいんじゃないですかね。
プレトニョフって、指示が(ネチネチと)細かそうだよなぁ、って千秋君ですか。

さて、アンコール。
チャイコの眠りは、そうそうこれこれ!な色艶と膨らみでうっとり。
やっぱりチャイコはある程度色気が無いとねぇ、ただ綺麗なだけではあかん、と思いますですよ。
お次の「レスギンカ」は、これがまた怒涛の演奏で、「カッコいい!」を通り越してちょっと笑った…。
パーカッションの美少年がこれでもかってくらいノリノリに小太鼓を叩いてて、もしやこの曲は彼のためにあるのか?という感じに目立ちまくり。
客席も大盛り上がりで、拍手とともに口笛が聞こえました。

今日はツィメルマン関係でいつもお世話になっているpetit violaさんにお会いしました。
とてもお綺麗で、ほんわか柔らかな、素敵な方でした。
いつも脳ミソ半崩れなトークにお付き合いいただいてるので、いざお会いすると照れますね。ははは。。。
初対面の方相手に「(ショパンのオケパートが)気持ち悪い~」と文句をいいまくってしまい、申し訳なかったです。
今後ともよろしくお願いいたします。

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2006年12月 9日 (土)

ラファウ・ブレハッチ ピアノ・リサイタル 2006年日本公演 in 宮城県民会館

<プログラム>
バラード 第3番 変イ長調 op.47
24の前奏曲 op.28より 第1番 ハ長調 ~ 第12番 嬰ト短調
ポロネーズ 第7番 変イ長調 op.61「幻想ポロネーズ」
休憩
3つのマズルカ op.50
1.ト長調 
2.変イ長調
3.嬰ハ短調
ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 op.58

以上、オールショパン。


ちょっと時期を外しててすみません(そんなんばっかり…)。
睡眠時間3時間(+移動中仮眠2時間弱)でコンサートに行くのはできるだけ避けた方が良いっていうのは私だってよく分かっている。しかも寝不足だけではなく、喉までイガイガしていたので、はっきりいって、コンサートに行く体調としてはかなり最悪に近かった。でも頑張って行ったきました、ブレハッチ君の日本ツアーファイナル(遠征したんですか?とか突っ込まないで下さい。よろしく)。

当日券を買ったのだけれど、関係者席の直前放出か?という感じのとても良い席だった。結構前方の席で、ピアノの音がよく聴こえる右側のブロック。ちなみに、私のすぐ近くにブレハッチパパ&ママがお座りでしたよ。パウリナちゃん(妹さん)はいなかったけれど。

ざっくり感想。

前半よりも後半の方が良かったと思う。尻上がりに調子が上がったのか、それともピアノが徐々に鳴るようになっていったのか。

とにかく、高音域が綺麗で惚れ惚れする。高音に限らないけれど、ピアノの響きを本当によく聴く人である。ペダルを長く踏んでびぃぃぃーんと鳴らし続けるところとか、こちらも思わず聴き入ってしまう。

・バラード3番
みなとみらいの時も思ったけれど、一発目にバラ3というのはどうなんだろう。余計なお世話なんだけど、もうちょっと準備体操的な曲にした方が良いと私は思ってしまったのだけど。サロン的に優美な演奏で、これといって文句があるというわけではないのだけれど、お客さんが入ったらリハの時と音響が大分変わるだろうし、本人もピアノもあたたまってないだろうから、一曲目というのはどうしたって手探りになるんじゃないかとか、いらん想像をしちゃってどうも素直に聴けないのですよ。。。

・24の前奏曲より1~12番。
全曲ではなくてきっちり前半分っていうのは、聴かせる方としては構成面で難しいかもしれない。曲と曲の間を開けずに、前の曲の最後の音にかぶせるようにして次の曲に入るなど、ブレハッチはかなり連続性を持たせて演奏してたけれど、そういうことであれば12番で終わりではなくて、全曲聴きたいような気がする。
基本的には、軽やかで正統的な印象。この人の演奏って、何をやってもケレンに聴こえないのが不思議。必ずしも模範演奏ってわけでもなくて、スタッカート(ノンレガート?)やノンペダルの表現とか、意外と芸が細かくて色々工夫しているとは思うんだけど。
あと、生真面目で真摯な雰囲気の中、時々ふっと肩の力が抜けるような、緊張がとける瞬間があって、それが心地よい。そういう時のブレハッチにはちょっと飄々とした雰囲気が宿って、「ああ、こういう表情をするのか」(顔はあまり見えないけれど)とちょっと新鮮でもあった。
時々、「誰かがピアノを弾いている」ではなくて、音楽が自ら沸き出でてくるかのような、そういう瞬間がある。例えば、8番なんかは、ぶわぁぁぁっと音が泉のように溢れ出てくるようで感動的だった。

・幻想ポロネーズ。
実は、この曲は私にとってよく分からない曲なので、あまりまともなコメントができない。色々なイメージが入れ替わり立ち替わり現れては消えていくかのようで、何とも掴み所が無いような印象を受ける。単に予習不足ってだけだと思うけれど(予習で聴いた演奏がまたえらくつまらん演奏で、、、っていうのはあまり関係無いか)。
だから一言だけ。
彼の幻想ポロネーズには、泣きたくなるような切なさがある。

休憩

・マズルカ
ブレハッチのマズルカは、「美しい」路線であればこれ以上のものは無いのではないか、と思わせる。民族色と洗練美というのは、なかなか両立しないものだと思うけれど、ブレハッチのマズルカにはその両方があって、非常に理想的に響く。同じ曲を聴いたわけではないから比較するのもどうかと思うけれど、髭師匠のマズルカよりもマズルカを聴いた、という気分になるような気がするかも。

・ピアノソナタ第3番
出だしを聴いて「あ、コレだ、この音がブレハッチの音だ」と思った。ブレハッチらしい、と私が思っている音である。そういう意味では、前半と後半で少し音色の雰囲気が変わったような気がする。ホールとピアノに合わせて調整したのかな?
コンクールの時よりも、ライヴっぽい熱っぽさのあるソナタだった(というか、コンクールの時はかなり安全運転だったのかも)。

・英雄ポロネーズ。
アンコールに一曲マズルカを弾いた後に、何を弾くんだろうと思ってたら英雄ポロネーズだった。体力大丈夫か?!とまたいらん心配をする私をよそに、毅然かつ高貴、汚れなき魂の、高潔な英雄の姿が見えるような演奏でコンサートをしめくくったラファウさん、とにかくお疲れ様でした。


まぁなんというか、大分疲れていたんじゃないかな、とは思う。もちろん、体調管理をきっちりするのはプロである以上当たり前だけど、新潟→仙台の移動で連日コンサートはちょっと可哀相ではないかなぁ。
「ただ今売り出し中」なのは分かるけれど、あまり馬車馬のように働かない(働かせない)ようにしていただきたいものです。

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2006年11月14日 (火)

ラファウ・ブレハッチ ピアノ・リサイタル 2006年日本公演 in 横浜みなとみらいホール

<プログラム>
バラード 第3番 変イ長調 op.47
24の前奏曲 op.28より 第1番 ハ長調 ~ 第12番 嬰ト短調
ポロネーズ 第7番 変イ長調 op.61「幻想ポロネーズ」
休憩
3つのマズルカ op.50
1.ト長調 
2.変イ長調
3.嬰ハ短調
ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 op.58
アンコール
マズルカ op.17-2
小犬のワルツ
マズルカ op.17-4

座席:2階右手バルコニー舞台に近め


CDは大体持ってるけれど、ブレハッチのコンサートは初めて。思わず、双眼鏡でクマの有無を確認してしまった…。

CDとは、というか、ショパン・コンクールの演奏とはイメージが全然違った。

バラ3聴くなり「あれ、こういう音の人だったかな」と少々面食らった私。音色の印象が大分違う。
コンクールの時の、痛々しいくらいにピーンと張り詰めた雰囲気がなくなっているのは当然としても、フォルテがよく鳴っていて「繊細で線が細い」というイメージを持っていた私には、ちょっと意外だった。本人のスタイルが少し変わったのかもしれないけれど、ピアノ(楽器)や調律のせいかもしれないし、ホールの音響の具合でそう聴こえたのかもしれない(みなとみらいは、ちょっと大味に響き過ぎなような気がするし)。

外的な要因はさて置いても、考えてみればブレハッチはまだ21歳である。改めて考えてみるまでもなく、本当に若いピアニストなのだ。日々めまぐるしく変化(進化)中、で当たり前。

音楽的には全く文句が無い。
もちろんこれで完成形ってことでは無いだろうし、これから表現にどんどん深みを増していく余地はおおいにあると思うのだけれど、だからといって、聴いていて、ここが食い足りないとかあそこが物足りないとか「この年齢にしては立派だね」とか、思わないんだよなぁ。ブレハッチの演奏は、音楽があるがまま、こちらの中にスルスルと流れ込んでくるような感じがあるんだけど、それは、彼が常にショパンの「歌」の部分をしっかり捕まえていて、決して核心を外すことが無いからなんだと思う。

端正でノーブルな雰囲気は相変わらずなんだけど、全体にフレージングの振幅が大分大きくなっていたり、軽妙さや洒脱さが加わっていたりして、やっぱり日々めまぐるしく(以下略)。特にアンコールの「小犬のワルツ」なんかは、結構奔放な印象。ブレハッチ、実は私が思ってたほどは、(演奏は)控え目でも優等生でも可愛くもなかったのかもしれない(「可愛い」というのは必ずしも褒め言葉ではありません、念のため)。

終演後は、ロビーでサイン会があった。サインをもらうのにCDを買う必要も無く、写真もOKと随分寛大だったけれど、ものすごい長蛇の列になってしまっていた。「明日名古屋公演なのに、手大丈夫なのか?そもそも、明日の午前中移動で大丈夫なのか?」とか心配になってしまったけれど、私も列に並んでサインをいただいてきました。ごめんなさいね、疲れてるのに…。
ブレハッチさん、プログラムにサインしてこちらに差し出す時に、顔を上げてニッコリしてくれましたよ。

さて、彼はどのように成長していくのだろう。
思わず「髭師匠、なにとぞよろしくお願いします」とスイスの方を向いて拝みたくなるけれど(あれ、今はどこにいるんだっけ…)、髭の君の場合、誰に何を言われなくてもマメに世話を焼いてるんだろうなぁ、きっと。


コンサートにご一緒いただいたKサマ、お世話になりました。なんか調子にのってしょうもないことをいっぱい喋ってしまったような記憶が…。。。懲りずにまた、よろしくお願いします。

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2006年4月 4日 (火)

ブレハッチ君のことなど

なぜ君付けなのか、よく分かりませんが。

ラファウ・ブレハッチ。2005年のショパン・コンクールの優勝者。1985年生まれの20歳。ポーランド人。

といっても、去年のショパン・コンクール自体は全然追いかけてなくて、むしろお髭氏絡みというか、「1975年のツィマーマン以来、30年ぶりの地元ポーランド人優勝者」ということで引っかかったという感じ。
それでも、コンクール時のライヴCDの発売時に、町のCD屋でちょっとだけ試聴をしたことがある。聴いた瞬間に、「うわぉ、いかにもショパンだぁ~。それにしても、今回は随分王道路線できたもんねぇ」とそのあまりの正統派ぶりに驚いたんだよね。でも、その時はそのままスルー。

ところが、ここのところピアノを一生懸命聴いていたり、ブレハッチの「尊敬してるのはツィマーマン」発言とかもあって、ついつい2枚出てるコンクール時ライヴCDの本選の協奏曲第1番の方をぽちっとな。

B000CIXKH0ラファウ・ブレハッチII
ブレハッチ(ラファウ) ショパン
ビクターエンタテインメント 2006-01-21

by G-Tools

感想。
一見(聴)、没個性的である。インパクトに欠けるというか、少し地味かな、と思った。
全体的に、とつとつというか、えらく一生懸命弾いている感じがある。ただそれはあっぷあっぷしてるとか危なっかしいということではなくて、とにかく誠実に生真面目に弾いてるって感じで、思わず「がんばれ~」と応援したくなるような雰囲気があるということ。技術的には非常に安定していて破綻が無いし(っていうか、ものすごく上手い)、一つ一つの音色のクオリティは非常に高い。硬質で濁りの無い美音で、とにかく品が良くて端正である。
技巧によって聴き手を圧倒するような、自己顕示的なところは全く無くて、高い技術力に比してやや控え目でクラシカルな印象である。うーん、今時こういうタイプはちょっと珍しいかもなぁ。

なお、ショパン・コンクールというのは5年に1度の開催で、言ってみればピアノのオリンピックみたいなものである。そのオリンピックで、地元ポーランド国民の期待を一身に背負うというのはそれはそれは大変なことらしく、ブレハッチ君、コンクール期間中はあまりのプレッシャーの大きさに目の下クマクマ、頬はコケコケだったそうだ。

だけど、演奏自体は実に落ち着いている。むしろちょっと落ち着き過ぎというか、慎重過ぎたような感もあるけれど、コンクールという異常な状況下でこれだけきっちりと弾けるのは凄いと思うし、とにかく立派にショパンしてて、「ショパンの協奏曲っていうのはこういう風に弾くんですよ」というお手本のような演奏になっている。

今のままでも十分大したものだけど、数年後に大化けしたりするかなぁ。ちょっと楽しみではある。ただ、ツィメルマンくらい化けちゃうとそれはそれで反則という気がしなくもない(アレはどう考えても化け過ぎだろう…)。


というのは、ちょっと前に書いてた文章である。
色々あって、ダラダラと続きがある。

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